退職金と企業年金の違いをわかりやすく解説|DB・DC・退職一時金の制度比較から選び方まで【2026年版】

「退職金と企業年金って何が違うの?」「うちの会社の退職金制度はDB?DC?どっちなんだろう?」——こうした疑問を持ちながらも、なんとなく放置している方は多いのではないでしょうか。特に転職や早期退職を検討している方にとって、退職金と企業年金の違いを正しく理解しておくことは、老後の資金計画において極めて重要です。

この記事では、退職金(退職一時金)と企業年金(DB・DC)の違いを、仕組み・受取方法・税制・2026年の制度改正まで、図解付きでわかりやすく解説します。「結局、自分にとってはどれが有利なの?」という問いに答えられるよう、具体的な数字と判断基準をお伝えします。

目次

結論ファースト:退職金と企業年金の違いを一言で言うと

退職金(退職一時金)は「退職時にまとめて受け取る一時金」、企業年金は「退職後に分割して受け取る年金」です。受取方法が根本的に異なります。さらに企業年金には「確定給付型(DB)」と「確定拠出型(DC)」の2種類があり、運用リスクを誰が負うかが大きく違います。

忙しい方のために先に結論を言うと、DBは「会社が受取額を保証してくれる安心型」、DCは「自分で運用して増やせるチャレンジ型」、退職一時金は「まとめて受け取れるシンプル型」です。

退職金と企業年金の比較表|5つの制度を一覧で比較

比較項目 退職一時金 確定給付年金(DB) 確定拠出年金(DC) 中退共
受取方法 一括 年金(一括選択可) 年金 or 一括 一括(分割可)
受取額の決まり方 社内規程で固定 事前に確定(会社保証) 運用結果次第 掛金×納付月数
運用リスク なし(会社負担) 会社が負担 従業員が負担 なし(機構運用)
掛金上限 規程による 企業の規約による 月額5.5万円(2026年4月〜6.2万円) 月額3万円
ポータビリティ なし 連合会に移換可 転職先DCやiDeCoに移換可 転職先中退共に移換可
税制優遇 退職所得控除 退職所得控除 or 公的年金等控除 退職所得控除 or 公的年金等控除 退職所得控除
主な対象企業 大企業〜中小 大企業中心 大企業〜中小 中小企業
※DC拠出限度額は2026年4月より月額6.2万円に引き上げ予定(厚生労働省)

退職金(退職一時金)の仕組み|退職時にまとめて受け取る

退職一時金とは

退職一時金は、従業員が退職する際に企業が一括で支払う金銭のことです。労働基準法で義務付けられた制度ではなく、各企業が就業規則や退職金規程で独自に設ける制度です。厚生労働省の「就労条件総合調査」(2023年)によると、退職金制度がある企業の割合は約74.9%であり、4分の3の企業が何らかの退職金制度を持っています。

受取額は「勤続年数」と「退職時の基本給」に連動するケースが一般的です。大卒で勤続35年以上の場合、大企業の退職一時金の平均額は約2,000万〜2,500万円(厚生労働省、就労条件総合調査)とされています。ただし中小企業では1,000万円前後にとどまるケースも多く、企業規模による格差が大きいのが実態です。

退職一時金の税制メリット

退職一時金には「退職所得控除」という強力な税制優遇があります。勤続年数20年以下の部分は年40万円、20年超の部分は年70万円が控除されます。例えば勤続30年なら、退職所得控除額は40万円 × 20年 + 70万円 × 10年 = 1,500万円です。この控除を超えた部分も、2分の1のみが課税対象となるため、通常の給与所得と比べて格段に税負担が軽くなります。

確定給付企業年金(DB)の仕組み|受取額を会社が保証する

DB(確定給付企業年金)のお金の流れ

企業
掛金を拠出
年金基金
企業が運用指示
従業員
確定額を受取

DBの特徴と仕組み

DB(Defined Benefit)は、将来受け取れる年金額があらかじめ決まっている制度です。企業が掛金を拠出し、信託銀行や生命保険会社などの運用機関が運用します。運用がうまくいかなかった場合でも、約束した年金額は変わりません。不足分は企業が追加拠出して穴埋めする義務があります。

ここが意外と見落としがちなポイントですが、DBの最大のリスクは「企業側」にあります。運用が想定通りにいかなければ、企業は追加の掛金(不足金)を拠出しなければならず、これが企業の財務を圧迫することがあります。実際に、低金利環境が長期化した日本では、多くの企業がDB制度の維持に苦しみ、DCへの移行を進めてきました。

DBの受取額の目安

DBの受取額は企業の規約によって異なりますが、大企業のDB加入者の場合、勤続35年で年金月額8〜15万円程度が相場です。一時金で受け取ることも可能で、その場合は退職所得控除が適用されます。

確定拠出年金(DC)の仕組み|自分で運用して増やす

DC(確定拠出年金)のお金の流れ

企業
掛金を拠出
従業員
自分で運用商品を選択
受取
運用結果で変動

DCの特徴と仕組み

DC(Defined Contribution)は、企業が拠出する掛金の額が決まっていて、その掛金を従業員自身が運用する制度です。投資信託、定期預金、保険商品などの中から運用先を選び、その運用成果に応じて将来の受取額が変動します。うまく運用できれば退職一時金よりも大きなリターンが得られますが、元本割れのリスクもあります。

2024年3月末時点で、企業型DC加入者数は約832万人(企業年金連合会)に達しています。企業にとってはDBのような追加拠出リスクがないため、導入企業数は年々増加しています。

2026年4月の制度改正:拠出限度額の引き上げ

2026年4月1日から、企業型DCの拠出限度額が現行の月額5.5万円から6.2万円に引き上げられます(厚生労働省)。また、これまで「加入者掛金(マッチング拠出)は事業主掛金を超えてはならない」という制約がありましたが、この制約も撤廃される予定です。あなたがもしDC加入者なら、2026年4月以降は自分の掛金を増やせる可能性があるため、要チェックです。

iDeCoとの関係

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、DCの「個人版」です。企業型DCがある会社員もiDeCoに加入できますが、拠出限度額の合計には上限があります。株式投資で資産形成を考えている方にとって、DCやiDeCoは税制優遇のある「最強の投資口座」として活用できます。

退職金・DB・DCのメリット・デメリット比較

退職一時金のメリットとデメリット

メリットは「確実に受け取れるシンプルさ」と「退職所得控除による税制優遇の大きさ」です。デメリットは「ポータビリティがない(転職すると持ち運べない)」ことと、「企業の業績悪化で減額・廃止される可能性がある」ことです。退職金は法的義務ではないため、経営が悪化した企業が退職金規程を改定して減額するケースは珍しくありません。

DBのメリットとデメリット

DBのメリットは「受取額が保証されている安心感」です。市場がどう動こうと、約束された年金額を受け取れます。デメリットは「企業の倒産リスク」です。企業が倒産した場合、DBの年金資産が全額保全されるとは限りません。また、転職時のポータビリティもDCに比べて低く、企業年金連合会への移換手続きが必要です。

DCのメリットとデメリット

DCのメリットは「ポータビリティの高さ」と「運用次第で受取額を増やせる可能性」です。転職時にも転職先のDCやiDeCoに資産を持ち運べるため、転職が多い現代のキャリアスタイルに合っています。デメリットは「運用リスクを自分で負う」ことと「60歳まで引き出せない(原則)」ことです。投資知識がないまま元本確保型商品だけに投資し、インフレに負けてしまう「実質目減り」のリスクもあります。

こんな人には退職一時金がおすすめ/DBがおすすめ/DCがおすすめ

あなたに合う退職金制度は?

退職一時金向き

✅ 同じ会社に長く勤める予定
✅ まとまった資金が必要
✅ 運用に興味がない

DB向き

✅ 安定企業に勤めている
✅ 受取額の保証が欲しい
✅ 運用は会社に任せたい

DC向き

✅ 転職の可能性がある
✅ 投資に興味がある
✅ 自分で資産を増やしたい

経営者(制度を設計する側)の判断ポイント

企業経営者の視点で見ると、近年はDB→DCへの移行が顕著なトレンドです。なぜかというと、DBは運用の不足分を企業が負担する義務があり、長期の低金利環境下では追加拠出が経営を圧迫するためです。一方でDCなら掛金額が固定されるため、将来の財務リスクを予測しやすいメリットがあります。ストックオプションと組み合わせて、多角的な報酬制度を設計する企業も増えています。

従業員(受け取る側)の判断ポイント

受け取る側として最も重要なのは、「自分の会社がどの制度を導入しているか」を正確に把握することです。意外なことに、自社の退職金制度を正確に理解している従業員は少数派です。人事部に確認するか、社内イントラネットで退職金規程を確認しましょう。DC加入者なら、運用商品の見直しを定期的に行うことが将来の受取額に大きく影響します。

退職金の受け取り方で税金が変わる|一時金 vs 年金

一時金で受け取る場合

退職一時金やDB・DCを一括で受け取る場合、「退職所得」として課税されます。退職所得控除は勤続年数に応じて計算され、勤続20年超の場合は年70万円が控除されます。勤続30年なら1,500万円まで非課税、控除を超えた部分も2分の1だけが課税対象です。

年金で受け取る場合

年金で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用されます。65歳以上で年間受取額330万円以下なら、110万円の控除が受けられます。ただし、公的年金(厚生年金・国民年金)と合算されるため、合計額が大きいほど課税額も増えます。

ではどちらが得かというと、一般的には「退職所得控除の範囲内に収まる金額は一時金で受け取り、残りを年金で受け取る」というハイブリッド方式が最も税効率が良いとされています。ただし個人の所得状況によって最適解は異なるため、退職前に税理士やFPに相談することをおすすめします。

よくある誤解|退職金と企業年金の勘違いを正す

誤解1:「退職金は法律で義務付けられている」

退職金制度は法的義務ではありません。労働基準法は退職金制度の設置を義務付けておらず、就業規則に定めがない限り、企業に支払い義務はありません。ただし、就業規則に退職金規程があれば、それは労働条件の一部となり、支払い義務が生じます。

誤解2:「DCで元本割れしたら会社が補填してくれる」

DCの運用リスクは完全に従業員個人の責任です。元本割れしても会社は補填しません。これがDBとの最大の違いです。だからこそ、DC加入者は投資の基本知識を身につけ、長期・分散・積立の原則に従って運用することが重要です。

誤解3:「転職したら退職金は全額もらえる」

退職一時金は勤続年数に連動するため、自己都合退職の場合は支給率が大幅に下がるのが一般的です。例えば勤続3年で自己都合退職すると、支給率が50%以下になるケースも珍しくありません。一方、DCは掛金の積立額がそのまま個人の資産となるため、退職理由による減額はありません。

誤解4:「退職金が多いほど手取りも多い」

退職金が退職所得控除を超える部分には課税されます。また、年金で受け取る場合は公的年金と合算されて税率が上がる可能性があります。「もらえる額」と「手取り額」は必ずしも比例しないことを覚えておきましょう。

まとめ:退職金と企業年金の違いを理解して老後に備えよう

この記事では、退職金(退職一時金)と企業年金(DB・DC)の違いを5つの制度で比較し、税制・受取方法・2026年改正情報まで解説しました。ポイントを振り返ります。

  • 退職一時金は退職時に一括受取、企業年金(DB・DC)は分割受取が基本
  • DBは受取額を企業が保証(運用リスクは企業)、DCは自分で運用(リスクも自分)
  • 退職所得控除は勤続20年超で年70万円。勤続30年なら1,500万円まで非課税
  • 退職金制度がある企業は約74.9%(厚生労働省、2023年)
  • 2026年4月からDC拠出限度額が月額6.2万円に引き上げ(現行5.5万円)
  • 転職が多い人はDCのポータビリティが有利。安定志向ならDBの保証が安心
  • 税効率を最大化するなら、一時金と年金のハイブリッド受取を検討すべき

📚 参考文献・出典