自動運転の未来に暗雲が立ち込めている。2025年2月、ゼネラルモーターズ(GM)傘下の自動運転企業「Cruise」が従業員の約50%を解雇し、CEOや最高幹部も退任することが明らかになった。これは単なる「1社の経営問題」ではなく、自動運転業界全体の転換点を示唆する出来事かもしれない。
特に、日本も含めた世界の自動運転開発に影響を与える可能性があり、「他人事ではない」状況になりつつある。本記事では、Cruiseの解雇騒動の背景、他の自動運転企業の現状、日本国内の自動運転業界への影響について解説する。

引用元情報
- TechCrunch: Cruise to slash workforce by nearly 50% after GM cuts funding to robotaxi operations
- CNBC: GM cuts 50% of Cruise staff after ending robotaxi business
- Cruise公式サイト: Cruise Driverless Rides | Autonomous Vehicles | Self-Driving Cars
Cruiseが大規模解雇を決定した背景
ロボタクシー事業の停止

GMは2024年12月、「自動運転戦略の再編」としてCruiseへの出資を停止し、ロボタクシー事業から撤退すると発表した。背景には、以下のような問題があったとされる。
- 事故・安全性への懸念
- Cruiseのロボタクシーは複数の事故を起こしており、安全性が疑問視されていた。
- 規制の壁
- カリフォルニア州などでは、自動運転車の商業運行に対する規制が強化されている。
- 高コスト・低収益
- ロボタクシーは開発コストが高く、収益化が難しいビジネスモデルだった。
結果として、Cruiseは自動運転技術の開発に特化する方向へ転換することになった。
大規模な人員削減

2025年2月、Cruiseは従業員約2300人のうち約50%(約1000人)を解雇することを発表。特に影響が大きいのは非エンジニア職であり、エンジニアの88%は引き続き雇用されるという。
さらに、CEOのマーク・ウィッテン氏や最高安全責任者のスティーブ・ケーナー氏など、経営トップも退任することが決定した。
他の自動運転企業の動向──競争は加速するのか?
Cruiseの苦境とは対照的に、他の自動運転企業は新たな展開を見せている。
Waymo(Google系)

- アメリカの一部都市でロボタクシーの運行を拡大中。
- Cruiseと異なり、大きな事故が少なく、安全性への信頼が高い。
- 2025年内にニューヨークやシカゴへの進出を計画。
Tesla(イーロン・マスク)

- FSD(Full Self-Driving)のアップデートを続け、完全自動運転の実現を目指す。
- 2024年末には、「FSDの月額プラン」を開始し、一般ユーザー向けの普及を加速。
中国勢(Baidu・Pony.aiなど)

- 北京や深センでのロボタクシーサービスを拡大中。
- 政府の強力な支援を受け、規制のハードルが低い。
- 2026年までに、完全無人運転の商用化を目指している。
Cruiseの撤退は、自動運転競争からの「脱落」とも言えるが、他の企業は依然として開発を加速させているのが現状だ。
日本の自動運転業界への影響──「他人事ではない」理由
日本でも自動運転技術の開発が進んでおり、Cruiseの撤退は無関係ではない。
トヨタの「e-Palette」計画

- トヨタは2025年の大阪・関西万博で自動運転シャトルバス「e-Palette」を運行予定。
- ただし、Cruiseと同様に安全性や規制の問題が課題となっている。
ホンダのレベル3自動運転

- 2021年に世界初のレベル3自動運転車「Honda Legend」を発売。
- ただし、現時点では一般向け販売には至っていない。
政府の規制と市場環境

- 日本政府は2023年に「自動運転レベル4」の法整備を実施。
- しかし、ロボタクシー事業の採算性が疑問視されており、民間企業が参入しにくい状況。
Cruiseの撤退は、日本企業にとっても「ロボタクシービジネスは本当に成り立つのか?」という課題を改めて突きつけるものだ。
結論・まとめ

GM傘下のCruiseがロボタクシー事業から撤退し、従業員の50%を解雇するというニュースは、単なる企業の戦略転換ではなく、自動運転業界全体に影響を及ぼす出来事といえる。
- ロボタクシービジネスは、収益化が難しく、規制の壁も高い。
- WaymoやTesla、中国勢は開発を加速しているが、成功する保証はない。
- 日本も同じ課題を抱えており、トヨタやホンダの今後の動きが重要。
「自動運転は未来の技術」と言われて久しいが、本当に社会に普及するのか?
Cruiseの撤退は、その問いに対する重要なシグナルかもしれない。