不動産登記の仕組みをわかりやすく解説|表題部・甲区・乙区から相続登記義務化・費用まで完全ガイド【2026年版】

「家を買ったけど、登記って結局何をしている書類なの?」「相続登記が義務化されたって聞いたけど、いつまでに何をすればいいの?」――そう感じている方は多いのではないでしょうか。不動産登記は普段あまり意識する機会がないものの、家を買う・相続する・住宅ローンを組むときには必ず登場する制度です。2024年4月には相続登記が義務化され、違反すると10万円以下の過料という罰則も導入されました。

この記事では、不動産登記の仕組みを「登記簿の構造」「申請の流れ」「相続登記義務化のルール」の3つに分けて、2026年5月時点の最新ルールに沿って図解で整理します。法務局での手続き、登録免許税の計算、司法書士に頼むべきかの判断基準まで、家を買う前・相続が起きる前に押さえておきたい知識をまとめました。

目次

不動産登記とは?権利を公的に「見える化」する制度

不動産登記とは、土地や建物の所在・面積・所有者・抵当権などの情報を、法務局が管理する登記簿に記録して公開する制度です。法務省「不動産登記のABC」によれば、登記の目的は「不動産取引の安全と円滑」。登記しておくと第三者に対して「これは私のものです」と法的に主張できる(対抗要件)ようになります。

そもそもなぜ登記が必要なのか

不動産は動産(車・家電など)と違って動かせず、外見を見ただけでは誰のものかわかりません。たとえば、ある土地についてAさんとBさんが二重に売買契約を結んでしまった場合、どちらが本物の所有者になるのかをはっきりさせる必要があります。民法177条はこの場面で「先に登記した方が勝つ」と定めており、登記は「権利を主張する切符」のような役割を果たします。

あなたが家を買ったあとに登記をしないでいると、売主が同じ家を別の人に売ってしまった場合、後から登記した相手に所有権を奪われるリスクがあります。これが登記制度の根本的な存在意義です。

登記情報は誰でも見られる:オンラインで500円

不動産登記は公示制度のため、原則として誰でも閲覧・取得できます。法務局の窓口で登記事項証明書(かつての登記簿謄本)を1通600円、登記情報提供サービスのオンライン取得なら1通332円(2026年5月時点、登記情報提供サービス公式)で確認可能です。中古住宅の購入前や、隣地トラブル対応で確認するのが定番の使い方です。

不動産登記簿の構造:表題部・権利部(甲区・乙区)の3層

登記簿(登記記録)は1個の不動産ごとに「表題部」と「権利部」の2つに区分され、権利部はさらに「甲区」と「乙区」に分かれます。法務省「不動産登記のABC」が公式に解説しているこの3層構造が、不動産登記の骨組みです。

登記簿の3層構造

表題部
物理的状況
(所在・面積・構造)
+
権利部 甲区
所有権
(誰の物か)
+
権利部 乙区
所有権以外
(抵当権・地上権)

表題部:不動産の「身分証明書」にあたる物理情報

表題部は、土地や建物そのものの物理的な状況を記録する部分です。

区分 記載される情報
土地の表題部 所在・地番・地目(宅地・畑・山林など)・地積(面積)
建物の表題部 所在・家屋番号・種類(居宅・店舗など)・構造(木造・RC造)・床面積
※出典: 法務省「不動産登記のABC」

「地番」と「住居表示」(住所)は別物です。地番は登記用の番号で、住所と一致しないことがよくあります。たとえば住所が「○町1-2-3」でも、地番は「○町1234番5」のように別の番号で振られているのが一般的です。

権利部 甲区:所有権に関する情報

甲区には「誰がいつどんな原因で所有権を取得したか」が時系列で記録されます。売買・相続・贈与・差押・仮処分などの履歴がすべて残るため、過去の所有者をたどることもできます。所有者が変わるたびに古い記録は消えるのではなく、追記されていく形です。

あなたが中古住宅の購入を検討するとき、甲区を見れば「数年で何度も所有者が変わっている」「差押の履歴がある」といった怪しい点に気づけます。これは登記簿を読む実用的なメリットです。

権利部 乙区:所有権以外の権利

乙区には抵当権・根抵当権・地上権・地役権など、所有権以外の権利が記録されます。住宅ローンを組むと銀行が抵当権を設定するため、ほとんどのマイホームの登記簿には乙区に銀行名が登場します。抵当権が抹消されているかどうかは、ローン完済後・物件売買時に必ず確認すべきポイントです。

すべての登記簿に乙区があるわけではありません。所有権以外の権利が存在しない場合、乙区は作成されないことがあります。「乙区がない=きれいな物件」とも読めますが、見落とした権利がないかは慎重にチェックが必要です。

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不動産登記の手続き:申請の流れと費用

登記申請は、不動産の所在地を管轄する法務局に行います。法務省によれば、申請方法には3種類あります。

登記申請の3つの方法

方法 特徴 向いている人
窓口申請 法務局へ書類を持参 対面で確認したい方
郵送申請 レターパック・書留 遠方の不動産
オンライン申請 登記・供託オンライン申請システム 司法書士・電子証明書がある人
※出典: 法務省「不動産登記」、登記・供託オンライン申請システム

登録免許税の計算:登記の種類で税率が違う

登記には登録免許税(国に納める税金)がかかります。税率は登記の原因によって異なるのが特徴で、家を買う場面・相続する場面・抵当権設定の場面で計算式が違います。

登記の種類 税率 課税標準
所有権移転(売買・土地) 2.0% 固定資産評価額
所有権移転(売買・建物) 2.0% 固定資産評価額
所有権移転(相続) 0.4% 固定資産評価額
所有権保存(新築) 0.4% 固定資産評価額
抵当権設定(住宅ローン) 0.4% 借入額
※出典: 国税庁タックスアンサーNo.7191「登録免許税の税額表」(2026年5月時点)
※住宅用家屋の軽減税率(0.3%等)はマイホーム要件を満たした場合のみ適用

たとえば固定資産評価額3,000万円の土地を相続する場合、登録免許税は3,000万円×0.4%=12万円です。同じ3,000万円の物件を売買で取得すると2.0%で60万円かかるため、相続のほうが税率は1/5程度に優遇されています。

司法書士に頼むかどうかの判断基準

不動産登記は本人申請も可能ですが、実務では9割以上のケースで司法書士に依頼されます。日本司法書士会連合会によれば、報酬の目安は所有権移転登記で5〜10万円、抵当権設定で3〜5万円。これに登録免許税が別途かかります。

  • 司法書士に頼むべき場面:住宅購入時(抵当権絡む)、相続登記で不動産が複数ある場合
  • 本人申請で十分な場面:住所変更登記、抵当権抹消登記(銀行から書類が届く)、ローン完済後の手続き

2024年4月開始:相続登記の義務化と過料10万円

2024年4月1日から、相続登記が義務化されました(法務省「相続登記の申請義務化」)。これは長年放置されてきた所有者不明土地問題への対応として、令和3年に成立した改正不動産登記法の施行による大きな転換点です。

義務化の3つの柱

⚠ 相続登記義務化の3点セット

  • 相続を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務
  • 正当な理由なく違反した場合は10万円以下の過料
  • 2024年4月以前に発生した相続も対象(2027年3月31日まで猶予)

「過去の相続も対象」というのが見落としがちなポイントです。祖父名義のまま放置されている土地があるなら、2027年3月末までに登記しないと過料の対象になります。家族の中で「うちの実家は誰名義だっけ?」を確認するのは、今このタイミングで必須の作業です。

相続人申告登記:遺産分割前でも義務を果たせる新制度

「兄弟間で遺産分割協議がまとまらないから登記できない」というケースでも対応できるよう、新しく「相続人申告登記」が創設されました。法務省によれば、相続人の1人が単独で「自分は相続人ですよ」と申し出るだけで登記義務を果たしたとみなされる仕組みで、登録免許税も非課税です。

遺産分割が長期化しそうなら、まずこの相続人申告登記で義務を果たし、後日遺産分割が整ってから本来の所有権移転登記に切り替える――というのが新しいセオリーです。

免税措置:100万円以下の土地は登録免許税ゼロ

相続登記を促進するため、100万円以下の土地の相続登記は登録免許税が免除されています(令和9年3月31日まで)。地方の山林・農地など、固定資産評価額が低い不動産であれば、この免税措置を使って登記費用を抑えられます。司法書士報酬は別途かかりますが、税金分は丸ごとセーブできる形です。

所有不動産記録証明制度(2026年2月開始)も活用しよう

政府広報オンラインによれば、2026年2月に「所有不動産記録証明制度」が新設される予定で、特定の人物が所有する不動産を全国まとめてリストアップできるようになります。これまでは法務局ごとに地番を指定して個別に検索する必要があったため、相続発生時の「亡くなった親が全国にどんな不動産を持っていたか」の把握が画期的に楽になります。

あなたが「実家のほかに親が遠方に山林を持っていたかもしれない」と心当たりがあるなら、この制度の利用が現実的な選択肢になります。詳しい運用は法務省サイトで2026年初頭に告知される予定です。

不動産登記のデメリット・注意点:見落としがちな落とし穴

登記制度は便利ですが、運用上の落とし穴も少なくありません。事前に押さえておきましょう。

登記しないと第三者に対抗できない

所有権を取得しても登記をしないままだと、別の善意の第三者に売られてしまった場合に「先に登記した方が勝つ」ルールで負けるリスクがあります。家を買ったらすぐに所有権移転登記を行うことが鉄則です。司法書士は通常、決済日(残金支払い日)に同席してその場で登記書類を法務局に持ち込みます。

未登記建物のリスク:固定資産税は課されるが売却できない

農村部や離島では、増築した建物や物置が表題部登記すらされていないケースが珍しくありません。未登記建物は固定資産税は課されますが、登記がないため売却・銀行担保差し入れ・相続登記などができません。気づいたら表題登記を司法書士または土地家屋調査士に依頼するのが基本です。

登記簿と現況の不一致:地目や面積のズレ

長期間登記が更新されていないと、登記簿上は「畑」なのに実際は宅地として住んでいる、登記面積より実測面積が大きい・小さい、といった不一致が起きます。売買時には、地目変更登記や地積更正登記を先行する必要があり、追加の費用と時間がかかります。

登記後の名義変更にも費用がかかる

結婚で名字が変わった、引っ越して住所が変わったといった場合、所有者の住所変更登記が必要です。これも2026年4月以降は義務化される予定で(改正不動産登記法)、住所変更から2年以内の申請が求められるようになります。

選び方・判断基準:あなたが今やるべき不動産登記アクション

あなたの状況別に、今動くべき優先度を整理します。

これから家を買う人:司法書士の見積もりは複数取る

住宅購入時の登記費用は、所有権移転+抵当権設定のセットで10〜20万円が相場。不動産会社が紹介する司法書士に任せるのが一般的ですが、報酬は2〜3社で見積もりを比較できるのが意外と知られていない点。3万円前後の差が出ることも珍しくありません。

親が高齢の人:相続が発生する前の準備が効く

親が元気なうちに登記事項証明書を取得して所有不動産を把握しておくと、いざ相続が発生してから慌てずに済みます。また、共有名義になっている古い土地があれば、生前に整理(共有持分の集約)しておくと、相続時のトラブルを大きく減らせます。

祖父・祖母名義の土地がある人:2027年3月までに登記

過去の相続が義務化対象に含まれるため、2027年3月31日が事実上のデッドライン。現在誰の名義かわからない土地があるなら、本籍地の市町村で戸籍謄本を集めて法定相続人を確定し、相続人申告登記または所有権移転登記を行います。司法書士に依頼するのが現実的です。

住宅ローン完済した人:抵当権抹消は早めに

ローンを完済しても銀行は自動的に抵当権を抹消してくれません。完済時に銀行から渡される書類(弁済証書・委任状など)を持って、法務局に抵当権抹消登記を申請する必要があります。本人申請なら登録免許税1筆1,000円(土地+建物で2,000円)で済むため、自分でやる人もいます。書類紛失すると再発行に手間がかかるため、書類が手元にあるうちに処理するのが鉄則です。

よくある誤解:こんな勘違いに注意

誤解1:「登記しなくても税金は払うから所有者だ」

固定資産税の納税義務者と登記上の所有者は別概念です。納税通知書は実態に基づいて市区町村が発送しますが、第三者に対する所有権の主張は登記がベース。登記がないと、二重売買のような場面で負けます。

誤解2:「契約書があれば登記しなくても大丈夫」

売買契約書は当事者間の合意を証明するだけで、第三者への対抗力はありません。登記をして初めて法的に「私のものです」と主張できるのが日本の法律です。家を買うなら絶対に登記しましょう。

誤解3:「相続登記なんて急がなくていい」

2024年4月以降は法律違反になります。3年以内の登記義務に違反すると10万円以下の過料です。さらに登記しないまま放置すると、相続人がさらに亡くなって「数次相続」となり、関係者が10人以上に増えて遺産分割協議が極めて困難になるリスクもあります。

誤解4:「登記簿があれば所有関係は完璧」

登記簿には誤った情報が記録されることもあります。日本の不動産登記は「登記の公信力」を認めていない(登記を信じて取引しても保護されないことがある)制度のため、購入時には登記簿だけでなく現地確認・売主の本人確認が必要です。これは一見不便ですが、虚偽登記による詐欺を法律全体で防ぐ枠組みになっています。

誤解5:「司法書士に頼まないと登記できない」

本人申請も可能です。とくに抵当権抹消登記・住所変更登記は書式も比較的シンプルで、法務局の登記相談窓口で書き方を教えてもらえます。何度か通う手間を惜しまなければ、報酬数万円を浮かせられます。

まとめ:不動産登記の仕組みを押さえて、義務化に備えよう

不動産登記は普段意識しない制度ですが、家を買う・相続する場面では必ず関わります。今日のポイントを最後に振り返ります。

  • 登記簿の構造:表題部(物理情報)+権利部(甲区=所有権/乙区=その他の権利)
  • 登録免許税:相続0.4%、売買2.0%、抵当権設定0.4%(借入額ベース)
  • 2024年4月から相続登記が義務化:3年以内、過料10万円以下
  • 過去の相続も対象。2027年3月31日が事実上のデッドライン
  • 相続人申告登記:遺産分割未了でも義務を果たせる新制度(登録免許税ゼロ)
  • 100万円以下の土地は登録免許税免除(令和9年3月31日まで)
  • 住宅ローン完済後は抵当権抹消を忘れずに(本人申請なら数千円)

結局のところ、不動産登記は「権利を法的に主張するためのチケット」です。買ったらすぐ登記、相続したら3年以内に登記――この2つを守るだけでトラブルの大半は避けられます。義務化対象に該当する方は、今すぐ実家の登記状況を確認することから始めてください。複雑な相続案件は司法書士への依頼が確実です。

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