なぜ産休・育休中も生活できるのか|給付金・社保免除・手続きの仕組み【2026年版】

「育休中って、給料はゼロになるの?」「産休と育休って、どう違うの?」——子どもが生まれる前後、多くの人がこんな不安を抱えます。収入が途絶える恐怖は、出産・育児への喜びと同時に押し寄せてきます。でも安心してください。2026年8月時点の日本では、産休・育休中の生活を支えるための仕組みが複数の制度として整備されています。給付金・社会保険料の免除・手続きの3つを理解すれば、「なぜ生活できるのか」が明確に見えてきます。この記事でその全体像を解説します。

目次

産休と育休は「別の制度」—期間・根拠法の違い

まず、多くの人が混同しがちな点から整理しましょう。産休と育休は、名前は似ていますがまったく別の法律に基づく、まったく別の権利です。ここを知るだけで、制度の見通しがぐっとよくなります。

産前産後休業(産休)は労働基準法の権利

産休の正式名称は「産前産後休業」。これは労働基準法第65条に定められた権利です。

  • 産前休業:出産予定日前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)。本人が請求した場合に取得できます。
  • 産後休業:出産後8週間。こちらは本人の意志にかかわらず、就業させることが法律で禁止されています(産後6週間経過後に本人が請求し、医師が認めた場合のみ就業可)。

つまり産後8週間は、会社側が「復帰してくれ」と言うことすら許されません。母体保護のための強力な権利なのです。

育児休業(育休)は育介法に基づく別の権利

育休は「育児・介護休業法(育介法)」を根拠とする制度で、産休とは別物です。

  • 取得可能期間:原則として子が1歳になるまで。保育所に入れないなどやむを得ない事情があれば、最長2歳まで延長できます。
  • 対象者:男女問わず、一定の要件を満たす労働者(正社員・パート・契約社員なども含む)。
  • 分割取得:2022年の法改正で、育休は2回に分割して取得できるようになりました。

「実は産休と育休は根拠法が違う2本立て」——この視点を持つだけで、なぜ手続き先が複数になるのかも理解しやすくなります。

育休中に手取り8割が実現する「2段ロケット」の仕組み【図解】

「給料が出ないのに、なぜ生活できるの?」——これが最大の疑問だと思います。答えはシンプルで、2つの仕組みが同時に働くからです。ロケットの第1段・第2段のように、それぞれが「収入を守る役割」と「支出を減らす役割」を担っています。

2段ロケット図解:育休中の家計を守る仕組み

🚀 第1段:給付金で収入をつくる

雇用保険から
育児休業給付金を支給
最初の180日:賃金の67%
181日目以降:賃金の50%
出生後休業支援給付金(+13%)で
最大80%に引き上げ

🚀 第2段:支出を丸ごとゼロに

育休中は
社会保険料が全額免除
健康保険料:免除
厚生年金保険料:免除
本人負担分だけでなく
会社負担分も免除

= 合計:実質手取りに近い水準

給付金67〜80%
+社保免除で支出減
実質ほぼ手取りと同水準
(所得税・住民税は別途必要)

第1段:雇用保険から育児休業給付金(67%→80%)

育児休業給付金は、雇用保険から支給されます。会社の給料ではなく、ハローワーク(公共職業安定所)を通じて支払われる公的給付金です。

  • 育休開始から最初の180日間:休業前賃金の67%を支給
  • 181日目以降:休業前賃金の50%に変わります
  • 2025年施行の「出生後休業支援給付金」(+13%)との合算で、要件を満たした場合に最大80%まで引き上げられます

「実は67%ってかなり高い」——一般的な傷病手当金が67%なので、育休給付金もほぼ同水準の手厚い設計になっています。

第2段:健康保険料・厚生年金が全額免除

社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)は、通常は毎月の給料から天引きされますが、育休中は本人分も会社負担分も全額免除になります。

この免除の仕組みは、健康保険の扶養制度とは別の話です。育休中の労働者本人が、在籍したまま保険料を払わなくてよくなる特別措置と理解してください。免除されている間も、健康保険証は使えますし、将来の年金受給額にも影響しません(免除期間は保険料を納めたものとして計算される)。

合わせると「実質ほぼ手取りと同じ」になる理由

在職中の手取りとは、「総支給額から社会保険料・所得税・住民税を引いた金額」です。育休中は:

  • 給付金:休業前賃金の67〜80%が入る
  • 社会保険料:ゼロ(免除)
  • 所得税:給付金は非課税のためゼロ

住民税は前年分が課税されるので注意が必要ですが(詳しくはH2-8で解説)、それを除けば「実質の手取りはほぼ同水準」になるケースが多いのです。

育休中の手取りを実感できる数字で見る

産休・育休を取ったことはありますか?

  1. 取ったことがある(女性)
  2. 取ったことがある(男性)
  3. まだ取っていない
  4. 取りたいが取れなかった

📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・7票)

まだ取っていない:71%
取ったことがある(女性):14%
取ったことがある(男性):14%
取りたいが取れなかった:0%

数字の話になると急に実感が湧きます。具体的なケースでシミュレーションしてみましょう。

月収30万円の人が育休を取ったら?

月収(額面)30万円の人を例に計算します。

項目 在職中 育休中(180日以内)
給料 / 給付金 300,000円 201,000円(67%)
健康保険料(本人分) ▲ 約15,000円 0円(免除)
厚生年金保険料(本人分) ▲ 約27,450円 0円(免除)
所得税 ▲ 約5,000円 0円(給付金は非課税)
実質手取り概算 約252,550円 約201,000円

在職中の手取り約25.3万円に対し、育休中は約20.1万円。差額は約5万円ですが、住居費・食費などの固定出費はほぼ変わらないことを考えると、生活水準を維持しやすい設計になっていることがわかります。さらに出生後休業支援給付金を含む「80%給付」が適用されれば、差額はさらに縮まります。

申請の流れ—会社・ハローワーク・年金機構への3段手続き【実用シーン】

申請の流れ—会社・ハローワーク・年金機構への3段手続き
Photo by Scott Graham on Unsplash

「手続きが複雑そう」と感じる方が多いのですが、実は窓口は会社1カ所に絞られていて、自分で動く場面は少ないのが実態です。順番に確認しましょう。

①産前産後休業の届け出

届け出先:勤務先(会社)

出産予定日が決まったら、まず会社の人事・総務担当者に報告し、産休の開始予定日を伝えます。産休中の健康保険料・厚生年金保険料も免除されますが、こちらの手続きも会社が日本年金機構に申請します。自分で年金機構に行く必要はありません。

届け出のタイミング:産前休業に入る前(妊娠がわかった時点で早めに報告するのがベター)

②育児休業給付金の申請(会社経由)

申請先:ハローワーク(会社が代行)

育児休業給付金の申請は、会社がハローワークに代わりに申請します。本人が直接ハローワークに出向く必要は基本的にありません。

  • 育休開始後、会社から「育児休業給付金支給申請書」の記入を求められます
  • 給付金は2か月ごとにまとめて振り込まれます(初回は育休開始から2〜3か月後)
  • 振込先は本人の銀行口座を届け出ます

「初回の振込が遅い」と焦る人が多いですが、最初の2か月分がまとめて振り込まれるので、育休開始直後の2〜3か月間は収入がゼロになります。あらかじめ生活費を手元に準備しておくことが大切です。

③社会保険料免除の手続き

申請先:日本年金機構(会社が代行)

社会保険料の免除手続きも、会社が日本年金機構に申請します。本人は基本的に何もしなくてよいです。ただし、育休の開始・終了日が変わった場合は会社に速やかに連絡しましょう。

まとめると、産休・育休中の手続きは「会社に報告する」ことが主な役割で、各機関への申請は会社が代行してくれる設計になっています。

産後パパ育休が2022年に生まれた本当の理由【意外な切り口】

産後パパ育休が2022年に生まれた本当の理由
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2022年10月、「産後パパ育休(出生時育児休業)」という制度が新たに創設されました。でも、なぜこの時期に、わざわざ新しい制度が必要だったのでしょうか?

「産後うつ」予防が設計の出発点だった

産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に最大4週間(28日)取得できる男性向けの育休です。分割して2回に分けて取ることもでき、条件を満たせば育休中でも一部就業が可能です。

この制度が設計された背景には、「産後うつ」の深刻化がありました。産後うつは母親だけでなく父親にも発症することが知られていますが、特に産後4〜8週間の母親にとって、この時期に父親がそばにいるかどうかは精神的な安定に大きく影響します。

「実は産後パパ育休は、経済政策ではなく、家族の精神保健を守るための医療・福祉的な観点から生まれた制度」——この切り口を知ると、単なる「男性育休の促進」以上の意味があることがわかります。

また、産後パパ育休は既存の育児休業とは別に取得できます。つまり産後8週間以内に産後パパ育休を取り、その後さらに育児休業(最長2歳まで)を取ることが可能です。

2026年最新動向:男性育休取得率40%超の衝撃【時事ネタ】

「男性育休なんて取れない雰囲気」——そう感じる職場もまだあるかもしれません。ただ、数字を見ると状況は急速に変わっています。

厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」によれば、2024年度の男性育休取得率は40.5%(前年比+10.4ポイント)。調査開始以来の過去最高を更新しました。一方、女性育休取得率は86.6%で引き続き高い水準を保っています。

2030年の政府目標は85%

政府が掲げる男性育休取得率の目標は、2025年に50%、2030年に85%。2024年時点で40.5%を達成したことで、2025年目標の達成もほぼ現実的な射程に入りました。

この数字の変化には、2022年の育介法改正・産後パパ育休創設・1,000人超の企業への育休取得状況の開示義務化などが重なっています。「男性が育休を取る」ことが珍しくなくなりつつある時代に、制度の使い方を知っておくことはより一層重要になっています。

「小さい会社には産休・育休がない」は本当か【デメリット・注意点】

「うちは中小企業だから産休・育休は取れないのでは?」という声をよく聞きます。結論から言えば、これは誤解です。

法律は全企業に適用される

産前産後休業(労働基準法)も育児休業(育介法)も、従業員数に関係なく全企業に適用されます。1人の従業員しかいない会社でも、法律上は同じルールが適用されます。「うちは中小だから」という理由で取得を拒否することは法律違反です。

扶養控除などの税制上の扱いも含め、産休・育休中の権利は法律で守られています。知らずに諦めてしまうのは、最も損をするパターンです。

中小企業で発生しやすい3つの困りごと

法律上の権利は守られていても、実態として中小企業では次のような困りごとが起きやすいです。

  1. 代替要員の確保が難しい:人員に余裕がないため、業務が特定の人に集中しやすい。事前に引き継ぎ計画を詳細に立てることが大切です。
  2. 制度の説明が曖昧:人事部門が整備されていない企業では、担当者が制度を詳しく知らないケースがあります。自分で厚生労働省のガイドラインを確認し、書類を用意して相談するのが得策です。
  3. 職場復帰後の待遇変更リスク:育休前後で不利益な配置転換などをすることは「育介法違反(ハラスメント)」にあたります。ただ、実態的に発生するケースもあります。都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談窓口があります。

よくある誤解3つ

産休・育休にまつわる誤解は根強く残っています。正確な知識を持っておきましょう。

「育休中に一切収入がない」

これは最もよくある誤解です。給料の支払いはゼロになりますが、雇用保険から育児休業給付金が支給されます(賃金の67〜80%)。しかも給付金は所得税が非課税なので、受け取った全額が手元に残ります。

「育休を取ると昇進に響く」

育休取得を理由に昇進・昇給を不利に扱うことは、育介法22条の3(マタハラ・パタハラ防止)の観点から問題とされます。ただ、「響かないか」と問われれば、職場環境によって異なるのが現実です。

法律的には保護されていますが、キャリアへの影響を最小化するためには、復帰後の業務計画を事前に上司と話し合っておくことが実務的な対策になります。

「住民税も免除される」

住民税は育休中も免除されません。住民税は前年の収入に基づいて課税され、通常は6月から翌年5月に分割して支払います。育休開始後も、前年に収入があれば住民税の納付義務が続きます。

育休中に住民税の通知が届いて慌てる人は少なくありません。社会保険料(健康保険料・厚生年金)のみが免除される点を覚えておきましょう。

まとめ:産休・育休は「もらうもの」ではなく「仕組みで守られている」

産休・育休の仕組みをここまで読んで、どう感じましたか?

「産休はもらえるもの」「育休中は手当をもらう」——そんなふうに漠然と思っていた方も多いかもしれません。でも実態を見ると、産前産後を守る労働基準法・育休を保障する育介法・収入を補填する雇用保険・保険料を免除する社会保険制度——これだけの法律と制度が組み合わさって、一人の人間の子育て期間を支えています。

「実はたくさんの仕組みが、出産・育児という人生の大きな局面を支えるために設計されている」——この事実を知ると、少し安心できるのではないでしょうか。そして、知っているかどうかで使える権利は大きく変わります。ぜひ自分自身の状況に照らし合わせて、制度を活用してください。

  • 産休(労基法)と育休(育介法)は別制度。産後8週間は就業禁止。
  • 育休中の収入は「給付金(67〜80%)+社保免除」の2段構えで守られる。
  • 手続きの多くは会社が代行。本人がすることは「会社への申告」。
  • 産後パパ育休(最大4週間)は母親の精神保健保護も設計意図のひとつ。
  • 男性育休取得率は2024年度に40.5%と過去最高。法律は全企業に適用される。
  • 住民税は育休中も免除されない。社保免除とは別の話。

📚 参考文献・出典

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📖 この記事について 本記事は、社会の制度や法律の”仕組み”を知る面白さをお届けし、世の中のルールに興味を持っていただくための読み物です。個別の法的判断を示すものではなく、制度は改正されることもあります。具体的なケースは専門家や公的機関にご確認ください。

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