毎月の給与明細を見るたびに、「社会保険料ってこんなに引かれるの?」と思っていませんか。
手取り額が想像より少ないのは、「社会保険料」と「所得税・住民税」が天引きされているからです。その中でも社会保険料の占める割合は、会社員の手取りに大きな影響を与えています。
しかし「社会保険料って何がどう引かれているの?」を正確に説明できる人は、意外と少ないものです。
この記事では、給与から天引きされる社会保険料の5つの種類・計算の仕組み・年齢で変わるポイント・2026年の制度改正まで、一気に整理します。
- 社会保険料は5種類:健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険・労災保険
- 計算の基準は「標準報酬月額」:実際の月給を32段階のランクに当てはめる
- 労使折半:会社もあなたと同額の保険料を負担している
- 40歳・70歳・75歳で負担が変わる:年齢による転換点を解説
給与明細を見て「なぜこんなに引かれるの?」と感じた方へ
月給30万円の人の手取りはいくらでしょうか?なんとなく「27〜28万円くらい?」と思っていませんか。
実際は、社会保険料だけで約4〜5万円が天引きされます。さらに所得税・住民税も引かれるため、手取りは23〜25万円程度になることが多い。総支給の20〜25%が最初から手元に残らない計算です。
「こんなに取られて何のためになっているの?」——その疑問は正当です。でも実は、あなたの老後・病気・失業・介護・労働災害を支える「5つの安全網」がここから作られています。
さらに多くの人が知らない事実があります。あなたが払う社会保険料と、同額を会社も負担しているのです(一部を除く)。月給30万円なら、実はあなたの採用コストは会社にとって「35〜36万円」に近い金額です。
社会保険料とは何か:5種類の保険と役割
「社会保険料」という言葉は複数の保険をまとめた総称です。会社員(厚生年金被保険者)が加入する社会保険は5種類あります。
| 保険の種類 | もらえる・使える場面 | 負担者 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 病院での医療費(3割負担に)・出産手当金・傷病手当金 | 労使折半 |
| 厚生年金 | 老後の年金・障害年金・遺族年金 | 労使折半 |
| 介護保険 | 介護サービスの利用(40歳から徴収) | 労使折半 |
| 雇用保険 | 失業給付・育児休業給付・教育訓練給付 | 労使分担(会社の方が多い) |
| 労災保険 | 業務中のケガ・病気・死亡への補償 | 事業主が全額負担 |
| ※2026年6月時点。詳細は日本年金機構・協会けんぽ・厚生労働省の各公式サイトでご確認ください | ||
この5種類の保険が、あなたの人生で起こりうるリスク(病気・老後・介護・失業・労働事故)をカバーしています。
給与明細で社会保険料の内訳を確認したことがありますか?
- 毎月確認している
- たまに見る
- ほとんど見ない
- 見方がわからない
保険料はどうやって計算されるのか:標準報酬月額の仕組み
社会保険料の計算の基準になるのが「標準報酬月額」です。毎月の実際の給与(基本給+手当等)を、32段階(厚生年金の場合)のランク(等級)に当てはめた「目安額」です。
標準報酬月額の決まり方
平均月給を計算
(基本給+諸手当)
(例:月給300,000円
→ 等級21・30万円)
保険料を算出
(9月から翌8月まで適用)
厚生年金の標準報酬月額の上限は現在65万円(2026年時点)ですが、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円と段階的に引き上げられることが2024年6月の法改正で決まっています。高所得者の保険料負担は今後増える予定です。
なお、健康保険の等級は50等級(58,000円〜1,390,000円)で、厚生年金の32等級とは別の区分になっています。
給与明細に並ぶ5つの保険料(2026年度の料率)
月給30万円の会社員(東京在住・40歳未満)の社会保険料を試算します。
| 保険の種類 | 料率(全体) | 労働者負担分 | 月額(概算) |
|---|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ・東京) | 9.98% | 4.99% | 約14,970円 |
| 厚生年金 | 18.30% | 9.15% | 約27,450円 |
| 介護保険(40歳以上の場合) | 1.62% | 0.81% | 約2,430円 |
| 雇用保険(一般事業) | 13.5/1000 | 5/1000(0.5%) | 約1,500円 |
| 労災保険 | 業種別 | 0円(全額事業主負担) | 0円 |
| ※標準報酬月額30万円・東京・令和8年度。子ども・子育て支援金(0.23%、4月〜)は健康保険料と合算で徴収。概算額のため実際の月給・等級・健保組合により異なります | |||
月給30万円の場合、労働者が負担する社会保険料は合計で約4万3,920円〜4万6,350円(40歳以上の場合)になります(子育て支援金0.23%分を含む2026年4月以降の試算)。これに加えて会社も同程度の保険料を負担しており、合計では月給の約30%が社会保険に充てられています。
雇用保険と労災保険のより詳しい仕組みについては、雇用保険と労災保険の違いを詳しく解説した記事も参考にしてください。
年齢で変わる3つの転換点:40歳・70歳・75歳
社会保険料の負担は年齢によって変化します。特に重要な転換点を3つ押さえておきましょう。
40歳:介護保険料の徴収が始まる
40歳になると、医療保険(健康保険)に介護保険料が上乗せされます。2026年度の協会けんぽの介護保険料率は1.62%(前年1.59%から改定)で、労使折半です。本人負担分は0.81%。月給30万円なら月約2,430円が追加されます。
介護保険料が加わることを「第2号被保険者になる」といいます。40〜64歳は第2号、65歳以上は第1号(市区町村が個別に料率を設定)として区分が変わります。
70歳:厚生年金の被保険者資格を失う
70歳になると厚生年金の被保険者資格を喪失します。会社員として働いていても、70歳以降は厚生年金保険料の納付義務がなくなります(ただし在職老齢年金の仕組みにより年金額が調整される場合があります)。
健康保険は75歳まで継続して加入します。
75歳:後期高齢者医療制度へ移行
75歳になると、これまでの健康保険(協会けんぽや組合健保)から自動的に「後期高齢者医療制度」へ移行します。扶養家族として加入していた場合も、本人が75歳になると独立して後期高齢者医療制度に加入し、個別に保険料が発生します。
今すぐ自分の保険料を確認する方法
自分の社会保険料を正確に知りたい場合、最もシンプルな方法は次の3つです。
- 給与明細を見る:「健康保険」「厚生年金」「雇用保険」(と「介護保険」)が別々に記載されているはずです
- 日本年金機構の「ねんきんネット」でこれまでの保険料納付実績が確認できます(要マイナンバーカードまたはねんきん定期便の情報)
- 協会けんぽの保険料額表(都道府県別・月別)で試算できます(kyoukaikenpo.or.jp)
特に転職・昇給・産休/育休後に保険料が変わっていることがあります。「気がついたら保険料が上がっていた」という事態を防ぐため、年に一度は給与明細を確認する習慣をつけましょう。
2026年の制度改正:2つの大きな変更点
2026年は社会保険に関して2つの重要な改正が施行されました。
① 子ども・子育て支援金(2026年4月〜)
少子化対策の財源として、医療保険(健康保険・国民健康保険等)に上乗せして「子ども・子育て支援金」が2026年4月から徴収されています。協会けんぽの加入者の場合、概ね0.23%程度の追加負担(労使折半)です。月給30万円なら月345円程度の追加になります。
金額は小さく見えますが、これは初年度(2026年度)の段階的導入分で、2028年度には0.44%前後まで段階的に引き上げられる予定です。
② 短時間労働者の社会保険適用拡大(2026年10月〜)
2026年10月から、社会保険の適用要件が緩和されます。週20時間以上勤務していれば、これまで加入対象外だった「月額賃金8.8万円超」という要件が撤廃されます。新たに約200万人がパート・アルバイトとして厚生年金・健康保険に加入することになります。パートとして働く方にとっては「手取りが減る」という面がある一方、将来の年金や傷病手当金の対象になるという保障面での恩恵もあります。
国民健康保険とどう違うのか
自営業者・フリーランス・退職後の人が加入するのが「国民健康保険(国保)」です。会社員の「健康保険(社保)」との主な違いを整理します。
| 項目 | 健康保険(社保) | 国民健康保険(国保) |
|---|---|---|
| 加入者 | 会社員・公務員 | 自営業・退職者等 |
| 保険料の計算 | 標準報酬月額×料率 | 前年所得ベース(市区町村ごとに異なる) |
| 会社負担 | 労使折半(会社も半額負担) | 全額自己負担 |
| 扶養家族 | 追加保険料なしで扶養に入れる | 世帯で別途加入・人数分の保険料 |
| 傷病手当金 | あり(病気で休業時に給付) | 原則なし(自治体独自給付を除く) |
| ※2026年6月時点の概要。詳細は各保険者・市区町村にご確認ください | ||
会社員の「社保」は、扶養家族を追加保険料なしで入れられる・傷病手当金がある・会社が半額負担してくれる、という3つの大きなメリットがあります。逆にいえば、退職して国保になると同じ保障を全額自己負担で賄う必要が出てきます。
よくある誤解
Q「社会保険料は全部年金に使われるの?」
いいえ。社会保険料は5種類あり、厚生年金保険料のみが将来の年金給付に充てられます。健康保険料は医療費給付・出産手当金・傷病手当金に、介護保険料は介護サービスに、雇用保険料は失業給付・育休給付に使われます。「年金だけに使われている」という誤解がとても多いです。
Q「労災保険は給与から引かれる?」
労災保険は事業主(会社)が全額負担します。労働者の給与から天引きされることはありません。給与明細に「労災保険料」という欄がないのはそのためです。一方で雇用保険料は本人負担分(0.5%)が天引きされます。
Q「フリーランスは社会保険に入れない?」
入れない、ではなく「入り方が変わる」です。フリーランス(自営業)は国民健康保険+国民年金の加入になります。扶養制度がなく、自分で全額支払う必要があります。2024年の「フリーランス保護新法」等で社会保険加入の環境整備も進んでいますが、厚生年金適用は現時点では会社員のみです。
まとめ:「引かれる」から「つながる」に視点を変えてみる
社会保険料は確かに「手取りを減らす」ものです。でも、それが何を支えているかを知ると、少し見え方が変わります。
- 社会保険料は5種類(健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険・労災保険)の合計
- 計算基準は「標準報酬月額」(毎年4〜6月の給与をもとに9月に更新)
- 健康保険(9.98%)+厚生年金(18.3%)+介護保険(1.62%/40歳〜)+雇用保険(0.5%)が労働者負担分
- 会社もほぼ同額を負担しており、合計では月給の30%近くが社会保険に充てられている
- 40歳で介護保険が加わり、70歳で厚生年金が終わり、75歳で後期高齢者医療に移行
- 2026年の大きな変更:子育て支援金(4月〜)・適用拡大(10月〜)
社会保障給付費は2025年度で140.7兆円(対GDP比22.4%)に上ります(厚生労働省)。その約60%を賄う保険料が、毎月の給与明細の小さな数字として積み重なっています。
2026年は社会保険の適用拡大や支援金の新設など、制度の変わり目の年です。最新の料率・手続きは、必ず日本年金機構・協会けんぽ・厚生労働省の各公式サイトでご確認ください。
この記事の内容、読む前から知っていましたか?
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- 誤解していた
📚 参考文献・出典
- ・日本年金機構「厚生年金保険の保険料」https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-01.html
- ・協会けんぽ「令和8年度保険料率」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/lp/2026hokenryou/
- ・厚生労働省「令和8年度雇用保険料率」https://www.mhlw.go.jp/content/001692566.pdf
- ・厚生労働省「厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00024.html
- ・厚生労働省「短時間労働者に対する社会保険の適用拡大」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html
📖 この記事について 本記事は、社会の制度や法律の”仕組み”を知る面白さをお届けし、世の中のルールに興味を持っていただくための読み物です。個別の法的判断を示すものではなく、制度は改正されることもあります。具体的なケースは専門家や公的機関にご確認ください。







































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