図解でわかる街灯の仕組み|光センサーが夜を感知してから点灯するまでを解説【2026年版】

夕暮れ時に街を歩いていると、特に操作しなくても街灯がいっせいに灯る。タイマーで時刻をプログラムしているのだろうか、それとも誰かが手動でスイッチを入れているのだろうか。

実は、ほとんどの街灯は「光センサー(自動点滅器)」で夜の訪れを感知して自動点灯する。そのしくみは意外なほどシンプルかつ精巧だ。この記事では、光センサーの動作原理から光源の歴史的変遷、最新のスマート街灯まで、街灯の「なぜ」を一気に解説する。

  • 街灯には道路照明灯・防犯灯・商店街灯の3種類がある
  • 点灯を制御する光センサーはCdS(硫化カドミウム)で光を電気に変換する
  • 水銀灯は2020年に廃止、2026年は蛍光灯が規制開始——LED化が加速している
  • スマート街灯は人感センサーと5Gを組み合わせて電力消費を大幅削減

2026年6月時点の情報をもとに解説する。制度・仕様は変更されることがあるため、最新は各自治体・JLMA(日本照明工業会)でご確認ください。

目次

街灯とは何か|道路照明灯・防犯灯・商店街灯の3分類

「街灯」は日常語として広く使われるが、管理体制と目的によって3種類に分けられる。

道路照明灯:道路管理者が設置する大型の照明

国道・都道府県道・市道など道路の種別に応じて、国・都道府県・市区町村の道路管理部門が設置・維持管理する。幹線道路の交差点付近や歩道橋の上に設置されることが多く、電力会社との契約も道路管理者が行う。道路照明灯の電気料金には「公衆街路灯」として専用の料金プランが用意されており、一般家庭とは異なる定額制(電力量計なし・容量×点灯時間の固定料金)が適用される自治体もある。

防犯灯:自治会が管理する身近な街灯

住宅地の路地や公園周辺に設置される小型の照明。市区町村が補助金を出しつつ、自治会・町内会が実際の設置・電球交換・電気料金の支払いを担うケースが多い。全国の防犯灯・街路灯の総数は推計で約1,000万基にのぼる。東京都杉並区だけでも区管理の街路灯が33,884灯ある(2025年4月現在)。

商店街灯:商店街振興組合が管理するアーケード照明

商店街のアーケードや歩行者天国に設置され、商店街振興組合が管理・費用負担する。デザイン性を重視した装飾型も多く、LEDへの切り替えが進んでいる。

この3種類を混同したまま「街灯が消えている」と連絡先を間違えるトラブルが多い。どこに連絡すべきかは後述する。

夜になると自動で点く仕組み|光センサーの動作原理

街灯が夕暮れに自動点灯するのは、「光電式自動点滅器」という小型センサーが制御しているからだ。タイマーではなく光の強さで判断するため、曇りや雨の日でも適切なタイミングで点灯できる。

光センサーによる自動点灯フロー

夕暮れ
光が弱まる
CdSの抵抗が
増加する
電磁石への
電流が減少
接点が繋がり
街灯が点灯

CdS(硫化カドミウム)が光を感知するしくみ

自動点滅器の心臓部は「CdS(硫化カドミウム)」という半導体素子だ。CdSは照射される光が強いほど電気抵抗が小さくなり、弱いほど抵抗が大きくなる性質(光導電性)を持つ。

昼間は太陽光でCdSの抵抗が低く→電磁石に多くの電流が流れる→接点が離れる→街灯は消灯。夕方になり光が弱まるとCdSの抵抗が増し→電磁石への電流が減る→接点が繋がる→街灯が点灯する。このシンプルな回路が、季節や天候に関係なく「その日の実際の暗さ」に反応する。

自動点滅器の寿命と交換目安

自動点滅器は精密部品のため、想像より寿命が短い。JLMAの資料によると、一般型(1P形)の耐用年数は4〜5年、使用限界は10〜15年。故障するとセンサーが誤作動を起こし、「昼間でも点灯し続ける」「朝になっても消えない」という症状が出る。街灯が昼間から点いていたら、球切れではなく点滅器の故障を疑うとよい。

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光源の変遷:水銀灯がなぜ2020年に消えたのか

現代の街灯はほとんどLEDだが、つい最近まで水銀灯やナトリウム灯が主力だった。光源が変わった背景には、環境条約という強制力がある。

水銀灯・ナトリウム灯の時代

1960〜2000年代の日本の街路灯を支えたのが「高圧水銀ランプ」だ。電極から放出された電子が水銀蒸気に衝突して光を出す仕組みで、青白い光が特徴。消費電力は代表的な400W型が多く使われた。欠点は「再点灯に約5分かかること」。停電後も道路が数分間暗いままになる問題があった。

トンネルや幹線道路ではオレンジ色が特徴の「高圧ナトリウムランプ」も多用された。演色性(色の見え方)は悪いが発光効率が当時最高クラスだったため、省エネ重視の道路照明に採用されていた。見た目のオレンジ色が不自然に感じられながらも、エネルギー効率の良さから長年使われ続けた。

水俣条約で2020年に製造が終わった

転換点は2013年に採択された「水銀に関する水俣条約」だ。水銀を含む製品の製造・輸出入を段階的に禁止する国際条約で、一般照明用の高圧水銀ランプは2020年末までに製造・輸出入が禁止された。全国に当時約300万基あった水銀灯器具の交換が自治体に求められ、LEDへの大規模転換が進んだ。

さらに2026年からは蛍光灯の製造・輸入規制も始まった。水俣条約の第5回締約国会議の決定に基づき、2027年末には蛍光灯が全廃される見込みだ。

LEDで消費電力が75%削減される理由

LED(発光ダイオード)は半導体に電流を流すと光が出る「電気→光の直接変換」だ。水銀灯のように放電で水銀を加熱して発光させる多段プロセスが不要なため、エネルギーロスが大幅に少ない。

400W水銀灯がLEDになると102Wになる

JLMAの計算によると、400W型の水銀灯器具(消費電力は安定器込みで415W)をLEDに換えると102W相当で同等の照度が得られる。消費電力は約75%削減。年間点灯時間3,000時間換算で、電気料金は1基あたり約14,700円の削減になる。

防犯灯(40VA)をLEDに換えると10VAで同じ明るさを確保でき、約62%削減、年間約1,660円/基の節約になる。全国1,000万基が全てLED化すれば年間1兆円以上の電気代が節約できる計算だ。

寿命が5倍になり交換コストも下がる

水銀灯の定格寿命は約12,000時間だが、LEDは60,000時間(5倍)。街灯の年間点灯時間は約3,000〜4,000時間なので、水銀灯は3〜4年で球切れするのに対し、LEDは15〜20年交換不要になる。交換作業は高所作業車が必要なため人件費が高く、交換頻度の削減は維持コスト削減に直結する。

全国のLED化率は2024年末で約70%

屋外の非住宅用照明のLED化率は2024年末時点で約70%(市場調査データ)。杉並区では管理街路灯の94%がLED化完了(2025年4月)と先行している自治体もあるが、地方部では資金調達の遅れで水銀灯の置き換えが続いている状況だ。

スマート街灯が登場——人感センサーと5Gで消費を38%節約

スマート街灯が登場——人感センサーと5Gで消費を38%節約
Photo by Miguel Alcântara on Unsplash

LEDへの切り替えは「電球のLED化」にとどまらず、街灯そのものをIoT端末に進化させる「スマート街灯」へと発展している。

深夜に30%調光して人を検知したら100%点灯

スマート街灯では人感センサーと制御ソフトを組み合わせ、通行量の少ない深夜帯は照度を30%に絞り、歩行者を検知した瞬間に100%点灯する制御が可能だ。ソーラー式の街灯での実測では、このドリップ調光によってバッテリ消費が38%節約されたというデータもある。

国内初のスマート道路灯+ローカル5G実証(2024年1月)

2024年1月、NTTコミュニケーションズとスタンレー電気が共同で、国内自治体として初めてスマート道路灯とローカル5Gを組み合わせた実証実験を開始した。灯柱にカメラ・センサー・通信機器を搭載し、リアルタイムで交通状況を監視しながら照度を遠隔制御する。2026年に向けては環境省の補助を受け、ゼロカーボンシティを目指す自治体へのスマート街灯導入支援が加速している。

IoT化が進むと、街灯が「交通量センサー」「防犯カメラ」「気象観測装置」の役割も担うインフラに変わる。同様のLED化が進む信号機の制御システムと合わせて、道路インフラ全体のスマート化が進んでいる。

街灯が星空を消す理由——光害という見落とされがちな問題

街灯が星空を消す理由——光害という見落とされがちな問題
Photo by Luca Calderone on Unsplash

LED街灯の普及で省エネは達成できても、「光害(ひかりがい)」という新たな問題が浮上している。光害とは、過剰・不適切な照明が引き起こす環境問題の総称だ。

白い光(5,000K)はオレンジ色(3,000K)の3倍散乱する

色温度が高い白色光(5,000K程度)は、オレンジ系の暖色(3,000K程度)と比べて大気中で約3倍散乱しやすい。夜空の明るさ(スカイグロー)を引き起こし、星が見えなくなる。環境省の光害対策ガイドライン(令和3年改訂版)は、夜空を暗く保つために色温度3,000K以下を推奨している。

LEDになると虫が集まらなくなる理由

蛍光灯や水銀灯は紫外線成分を多く含み、紫外線に引き寄せられる虫が大量に集まっていた。LEDは紫外線をほぼ含まないため、従来より虫が集まりにくい。これは快適さだけでなく生態系への影響でもある。昆虫は照明で方向感覚を失い、光に集まる過程で捕食される。結果として昆虫が減少し→小動物→植物と生態系の連鎖に影響が及ぶ。パナソニックは2020年に国内メーカー初となる「星空に優しい照明」認証を取得したLED防犯灯・道路灯を展開しており、生態系への配慮が街灯選定の基準になりつつある。

街灯が故障・消灯していたら何をすべきか

街灯が点かない・消えない・明らかにおかしいと気づいたときの対処を整理する。

昼間でも点灯し続けている場合

光センサー(自動点滅器)の故障が最も多い原因だ。センサーが光を感知できなくなり「常夜」と誤判定して消灯できなくなる。球切れではないので電球交換では直らない。管理者に連絡して点滅器ごと交換してもらう必要がある。

夜なのに消灯している場合——どこに連絡するか

連絡先は街灯の種類で変わる。道路沿いの大型照明なら道路管理者(市区町村の道路課)、住宅地の小型防犯灯なら自治会か市区町村の防犯担当窓口、商店街内ならば商店街振興組合が管理していることが多い。近くに街灯管理ステッカーがあれば電話番号が記載されている。

管理者に伝える情報として「場所の住所または近くの交差点名」「灯柱のナンバープレートの番号(灯柱に貼られていることが多い)」「症状(消えている・点きっぱなし・明滅している等)」の3点をまとめておくと対応がスムーズだ。

よくある誤解:街灯はタイマー式ではないのか

「タイマーで点灯時間をプログラムしている」は誤り

前述のとおり、日本の大多数の街灯はタイマーではなく光センサー(自動点滅器)で制御している。タイマー式にすると、日の入り・日の出の時刻が季節によって変わるため毎月設定変更が必要になる。また曇天の早い日暮れに対応できない。光センサー式なら「実際の明るさ」を基準にするため、年間を通じて自動対応できる。

「熱センサーで点灯する」は誤り

街灯の自動点滅は「光感知」であって「温度・熱感知」ではない。熱感知は火災報知器や人感センサーで使われる方式だ。CdSが光量に反応して抵抗値が変わる「光導電性」の原理を利用している。

「LEDに換えると眩しすぎる」は必ずしも正しくない

初期のLED路灯への批判として「眩しい」「ギラついて不快」という声があったのは事実だ。原因はLED特有の強い指向性(点光源)にあった。現在は配光設計が進化し、拡散配光や非対称配光によって眩しさを抑えた製品が標準になっている。照度も以前の水銀灯と同等かそれ以上に保ちながら眩しさを低減できる。

まとめ:光センサーと半導体が支える夜の安全

街灯は単なる「明かり」ではなく、光センサー・LED半導体・IoT制御という現代技術が詰まったインフラだ。この記事のポイントを整理する。

点灯制御はCdSセンサーを使った自動点滅器が主流で、タイマーではなく「実際の光の強さ」で判断する。センサーの寿命は一般型4〜5年と短く、故障すると昼間も点灯し続ける。

光源は水俣条約によって水銀灯が2020年に廃止されLEDへ移行。400W水銀灯をLEDに換えると消費電力は75%削減、寿命は5倍になる。2024年末時点のLED化率は全国約70%だ。

次の進化はスマート街灯で、人感センサーと5Gを使った遠隔調光により深夜の電力消費をさらに削減する。光害対策として色温度3,000K以下の製品が推奨されており、生態系への配慮も求められるようになっている。

身近な街灯が消えていたら、種類を確認して適切な管理者に連絡しよう。

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