「奨学金を借りているけど、利率はどう決まるの?」「もし返済が厳しくなったらどうなるの?」――社会人になってから初めて実感する不安は意外と多いものです。日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は大学生の約2人に1人が利用していますが、返還の仕組みを正確に理解している人は決して多くありません。
この記事では、奨学金返済の全体像を「貸与中→返還期間→延滞時の対応」の時系列で図解しながら、第一種と第二種の違い、利率の決まり方、延滞時のリスク、救済制度まで詳しく解説します。返済中の社会人の方も、お子さんがこれから奨学金を借りる予定の保護者の方も、知っておくべきポイントを網羅しました。
奨学金返済とは?貸与型と給付型の違い
「奨学金」という言葉は広い意味で使われますが、返済が必要なのは「貸与型」、返済が不要なのは「給付型」です。JASSO(日本学生支援機構)の奨学金は、貸与型と給付型の両方が存在します。
貸与型と給付型の違い
| タイプ | 第一種(貸与型) | 第二種(貸与型) | 給付型 |
|---|---|---|---|
| 利息 | 無利子 | 有利子(上限3.0%) | 利息なし |
| 返済義務 | あり | あり | なし |
| 採用条件 | 学力・家計とも厳しい | 第一種よりは緩い | 住民税非課税世帯等が中心 |
| 月額 | 2万〜6万4,000円 | 2万〜12万円 | 2万〜7万5,800円程度 |
| 併用 | 第一種+第二種、給付型+第一種などの併用も可能 | ||
| ※2026年度募集要項より。実際の支給額は学校種・自宅通学/自宅外通学で変動します。 | |||
この記事では返済が必要な「貸与型(第一種・第二種)」を中心に解説します。
奨学金返済の全体フロー|貸与中から完済まで
奨学金返済の仕組みを時系列で見ると、4つの段階があります。多くの人が躓くのは「卒業後7ヶ月後から始まる返済開始」のタイミングです。
返済開始までの4ステップ
奨学金 貸与〜返還の流れ
毎月決まった額が
口座に振込まれる
卒業時に返還誓約書
を最終確認
卒業から6ヶ月間
返済猶予
卒業の翌年10月から
口座振替で引落し
標準13〜20年で
返済完了
返還方式は「定額返還方式」と「所得連動返還方式」の2種類
第一種奨学金には2つの返還方式があり、貸与申込時に選択できます(第二種は定額返還方式のみ)。あなたの就職後の年収予測に応じて選ぶことが大切です。
- 定額返還方式:毎月の返還額が固定。家計管理がしやすい
- 所得連動返還方式:前年度の課税所得に応じて返還額が変動。返済額は課税対象所得の9%程度
所得連動返還方式は2017年度の制度改正で導入されました。低収入の時期は返還額が抑えられる代わりに、完済までの期間が長くなる仕組みです。
あなたは奨学金を借りた経験がありますか?
- 現在も返済中
- 返済を完了した
- 借りていない
- 今後借りる予定がある
第二種奨学金の利率|固定方式と見直し方式の違い
有利子の第二種奨学金には、利率の決め方が2種類あります。これは住宅ローンの「全期間固定金利」と「変動金利」のような関係に似ています。
利率固定方式
貸与終了時の利率が、返還完了まで適用される方式です。途中で金利が変動しても影響を受けないため、長期的な返済計画を立てやすいのが特徴です。
利率見直し方式
おおむね5年ごとに利率が見直される方式です。市場金利が下がれば利率も下がりますが、上昇すれば利率も上がります。
利率の上限は3.0%|法令で守られている
独立行政法人日本学生支援機構法により、第二種奨学金の利率上限は3.0%と定められています。市場金利が急上昇しても、この上限を超えることはありません。これがここが意外と見落としがちなポイントですが、銀行の教育ローンとの大きな違いです。
2026年度の実際の利率は、最新月で年0.5〜1.0%前後の水準で推移しており、上限3.0%にはまだ余裕があります。
返還額の計算方法|実際にいくら毎月引かれる?
返還額は「貸与総額」「返還回数(=返還年数×12回)」「利率」の3要素で決まります。
第一種奨学金の返還額(無利子・例)
たとえば月額5万4,000円を大学4年間借りた場合、貸与総額は259万2,000円。返還回数は156回(13年)が標準で、月額返還は約16,615円となります。
第二種奨学金の返還額(有利子・例)
月額8万円を大学4年間借りた場合、貸与総額は384万円。返還回数240回(20年)、利率0.5%(固定方式)で計算すると、月額返還は約16,824円、返済総額約403万円。利息で約19万円が増える計算です。
シミュレーターで自分の返済額を計算する
JASSO公式サイトに返還シミュレーションが用意されています。あなたが借りる予定の金額・利率・期間を入力すれば、月額返済額と総返済額がすぐに分かります。借りる前に必ず一度試算しておくことをおすすめします。
JASSO公式の奨学金貸与・返還シミュレーションで、月額・年数を変えて比較することができます。
返済が厳しい場合の救済制度|延滞前に必ず使う3つの制度
JASSOには、返済が困難になった人向けの救済制度が複数用意されています。返済が厳しくなったら「延滞」する前に必ず手続きをしてください。延滞してから救済制度を使うのと、延滞前に使うのとでは雲泥の差が出ます。
救済制度1:減額返還
毎月の返還額を1/2もしくは1/3にする制度です。最長15年(180ヶ月)まで利用可能です。返還額は減りますが、減額した分だけ返還期間が伸びるため、総額は変わりません(無利子の第一種なら金利負担なし)。
救済制度2:返還期限猶予
一定期間(最長10年)、返還を停止できる制度です。失業・経済困難・病気・災害などが対象です。第二種奨学金の場合、猶予期間中は無利息扱いとなります。これは大きなメリットです。
救済制度3:所得連動返還方式への変更
第一種奨学金の貸与を平成29年度以降に受けている場合、定額返還方式から所得連動返還方式へ後から変更することができます。
延滞すると何が起きる?|信用情報への深刻な影響
救済制度を使わずに延滞してしまった場合、想像以上に深刻なペナルティが発生します。学生時代に借りた数百万円が、社会人としての信用情報に致命傷を与えるケースもあります。
延滞金は年5%が上乗せされる
第一種・第二種を問わず、奨学金を延滞すると年5%の延滞金が発生します。これは元金に加えて課されるため、未払い額が雪だるま式に増えていきます。
滞納3ヶ月で個人信用情報機関に登録される
これが最も深刻です。返還開始から6ヶ月以降に延滞が3ヶ月に達した時点で、JASSOが加盟する全国銀行個人信用情報センター(KSC)に事故情報が登録されます。これがいわゆる「ブラックリスト入り」です。
信用情報に傷がつくと何ができなくなる?
- クレジットカードの新規発行・更新ができない
- 住宅ローン・自動車ローンが組めない
- 携帯電話の分割払いができない
- 新たな借入(カードローン等)が事実上不可
記録は完済から5年間消えません。仮に延滞したのが23歳のときで、30歳で完済したとしても、35歳まで信用情報に傷が残ります。
滞納が続くとどうなる?
JASSOは振替不能(銀行口座の残高不足など)が3回続くと、督促・連帯保証人への請求・最終的には法的措置(給与差押え)まで進みます。連帯保証人にも迷惑がかかるため、絶対に放置してはいけません。
奨学金返済はNISA・iDeCoより優先すべき?
「奨学金返済とNISAの積立、どちらを優先すべき?」というのは、社会人になりたての方からよく聞かれる悩みです。これは利率次第で結論が変わります。
第一種(無利子)の場合
金利負担がないため、繰上返済の経済合理性は低くなります。同じ金額を投資信託でNISAに積み立てたほうが、長期的には資産形成のメリットが大きい可能性があります。
第二種(有利子・利率0.5〜1.0%)の場合
現状の利率水準なら、NISAでの長期投資(期待リターン年4〜6%)のほうが理論上は有利です。ただし投資にはリスクがあるため、心理的負担が大きい方は繰上返済を選ぶのも合理的です。
選び方の判断基準
| あなたの状況 | 優先すべき選択 |
|---|---|
| 無利子の第一種で家計に余裕がある | NISAで積立投資 |
| 有利子で利率1.5%超 | 繰上返済を優先検討 |
| 家計に不安がある | 救済制度を申請+生活防衛資金確保 |
| 心理的負担を減らしたい | 繰上返済(精神的メリット重視) |
所得控除は使える?|年末調整・確定申告での扱い
奨学金の返還金は、残念ながら所得控除の対象になりません。住宅ローンの「住宅ローン控除」のような税制優遇は、奨学金にはないのです。
ただし、企業によっては「奨学金返還支援制度」を導入しており、会社が肩代わりしてJASSOに返済する例があります。2021年度から代理返還制度が始まり、福利厚生として導入する企業が増えています。給与扱いではなく、企業側にも所得控除のメリットがあるため、新卒採用の差別化策としても活用されています。
奨学金返済のメリット・デメリット|借りる前に知っておくべきこと
メリット
- 金利が低い(第一種無利子、第二種でも上限3.0%)
- 銀行の教育ローンより圧倒的に低利
- 連帯保証人の代わりに保証機関を選択可(手数料あり)
- 救済制度が充実している
- 進学機会の確保という社会的意義
デメリット・注意点
- 卒業時に大きな借金を抱えてスタート(平均的な完済年齢は30代後半)
- 結婚・住宅購入・子育てなどライフイベントへの影響
- 連帯保証人への迷惑リスク(人的保証選択時)
- 延滞時の信用情報への打撃
- 給付型と異なり返済義務が長期化
よくある誤解|奨学金返済で勘違いされやすい3つのポイント
誤解1:「卒業したらすぐ返済が始まる」
実際は卒業から6ヶ月の据置期間があり、返済は卒業翌年度の10月から開始されます。最初の引落し日を勘違いして口座残高不足を起こすケースが意外と多いため、注意が必要です。
誤解2:「働いて稼げば自動的に多く返せる」
定額返還方式では年収が増えても自動的に返還額は増えません。早く返したい場合は別途「繰上返還」の手続きが必要です。手続きはJASSO のスカラネット・パーソナル(スカラPS)から行えます。
誤解3:「奨学金は親(保護者)に返済義務がある」
奨学金は本人が借主であり、返済義務は本人にあります。連帯保証人(多くは親)は本人が返済できなくなった場合の代位弁済義務を負うのみで、原則として本人がすべての責任を負います。投資と同じく、自分の財務として向き合う姿勢が大切です。
まとめ|奨学金返済の仕組みを正しく理解して計画的に
奨学金返済の仕組みを整理します。
- JASSO奨学金は給付型(返済不要)と貸与型(返済必要)に分かれる
- 貸与型は無利子の第一種、有利子の第二種があり、第二種の利率上限は法令で3.0%
- 2026年度の実際の利率は0.5〜1.0%前後と低水準
- 返還方式は「定額返還」と「所得連動返還」の2種類
- 救済制度は「減額返還」「返還期限猶予」「所得連動方式への変更」の3つ
- 延滞3ヶ月で個人信用情報(KSC)に登録され、5年間消えない
- 延滞金は年5%。延滞前に必ず救済制度を申請すること
- 無利子の第一種ならNISA投資、利率1.5%超なら繰上返済が合理的
結局どうすればいい?――返済が厳しいと感じたら、迷わずJASSOに相談して救済制度を使ってください。延滞前なら手続きは簡単で、信用情報にも傷がつきません。あなたが返済中であれ、これから借りるのであれ、奨学金は「金融商品の一種」と捉えて計画的に向き合うことが、人生設計を狂わせないコツです。
あなたは奨学金を借りた経験がありますか?
- 現在も返済中
- 返済を完了した
- 借りていない
- 今後借りる予定がある
📚 参考文献・出典
- ・独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)「奨学金」
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/ - ・JASSO「第二種奨学金の貸与利率」
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/taiyo/taiyo_2shu/riritsu/index.html - ・JASSO「奨学金の返還について」
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan/houhou/index.html - ・JASSO「振替不能3回目」
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/entai/funo/funo_3.html - ・全国銀行個人信用情報センター(KSC)「個人信用情報の取扱い」
- ・独立行政法人日本学生支援機構法(第二種奨学金 利率上限3.0%)









































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