神嘗祭と新嘗祭の違いとは|10月17日と11月23日に新穀を供える理由と順番

神嘗祭と新嘗祭は、どちらもその年の新穀を神に供えて収穫に感謝する祭りです。違いは、供える相手と、祭りの舞台と、誰が新米を口にするかにあります。10月17日の神嘗祭は伊勢の神宮が中心で、天照大御神に新穀を奉る祭典です。11月23日の新嘗祭は宮中が中心で、天皇が新穀を皇祖はじめ神々に供え、自らも召し上がります。

私は長いあいだ、神嘗祭は「伊勢神宮版の新嘗祭」くらいに思っていました。新潟育ちで米にはうるさいほうなのに、いざ違いを聞かれると答えられません。宮内庁と伊勢神宮の公式ページを読み比べると、似て見えるのは偶然ではなく、二つの祭りが一続きの順番になっていることがわかりました。今年の神嘗祭は10月17日(土)にあたります。この記事は2026年10月時点の公表資料にもとづいています。

  • 神嘗祭は10月17日、新嘗祭は11月23日で、先に天照大御神、次にすべての神々へ新穀を供える順番になっている
  • 宮内庁の説明では、神嘗祭は賢所に新穀を供える祭典、新嘗祭は天皇が新穀を供えて自らも召し上がる祭典
  • 伊勢の神宮では神嘗祭が10月15〜25日、新嘗祭は11月23〜29日に行われる
  • 11月23日は勤労感謝の日で、祝日法の条文には新嘗祭の名前は出てこない
  • 神嘗祭の10月17日は、明治時代の改暦以前は9月だった
目次

神嘗祭と新嘗祭の違いは、供える相手と舞台と日付

宮内庁と伊勢神宮の説明を並べると

宮内庁の「主要祭儀一覧」は、神嘗祭を「賢所に新穀をお供えになる神恩感謝の祭典」と説明しています。この朝、天皇は神嘉殿で伊勢の神宮を遙拝します。新嘗祭は「天皇陛下が、神嘉殿において新穀を皇祖はじめ神々にお供えになって、神恩を感謝された後、陛下自らもお召し上がりになる祭典」で、宮中恒例祭典の中で最も重要なものとされています。

伊勢神宮の公式ページは、神嘗祭を「神宮で最も古い由緒をもち、天皇陛下の大御心を体して、天照大御神に新穀を奉り収穫の感謝を捧げる祭典」と書いています。同じ「新穀を供える」でも、神嘗祭は天照大御神を祀る神宮が舞台で、新嘗祭は宮中の神嘉殿が舞台です。

項目 神嘗祭 新嘗祭
日付 10月17日(神宮では10月15〜25日) 11月23日(神宮では11月23〜29日)
中心になる場所 伊勢の神宮、宮中の賢所 宮中の神嘉殿、全国の神社
新穀を供える相手 天照大御神(神宮の説明) 皇祖はじめ神々(宮内庁の説明)
天皇の関わり方 勅使を神宮へ差し遣わし、神嘉殿で神宮を遙拝する 神嘉殿で新穀を供え、自らも召し上がる
祝日か 祝日ではない 11月23日は勤労感謝の日で祝日
出典:宮内庁「主要祭儀一覧」、伊勢神宮「神嘗祭」「年間行事 恒例祭典」、国民の祝日に関する法律。2026年10月時点

祝日法の一覧に10月17日はない

表の最後の行は、国民の祝日に関する法律の第2条を読んで確かめました。10月の祝日はスポーツの日(第2月曜)だけで、10月17日は載っていません。秋分の日は祝日ですが、宮内庁の一覧では同じ日に皇霊殿で秋季皇霊祭というご先祖祭が行われる日でもあります。祝日の裏には、祭りに由来する日がほかにもあるわけです。同じ秋分の日前後でも、仏教側のお彼岸がなぜ前後3日間なのかは、別の仕組みで決まっています。

神嘗祭は天照大御神に「初穂」を捧げる祭り

神嘗祭は天照大御神に「初穂」を捧げる祭り|実った稲穂
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外宮から内宮へ、15日から17日の流れ

伊勢神宮の公式ページによると、神嘗祭は10月15日の興玉神祭と御卜から始まります。御卜は、奉仕する神職が神嘗祭にふさわしいかを神の御心にうかがう儀式です。神宮には「外宮先祭」といって、先に外宮で祭儀を行う習わしがあるため、豊受大神宮(外宮)では10月15日の午後10時と16日の午前2時に由貴大御饌、16日の正午に奉幣、午後6時に御神楽が行われます。

皇大神宮(内宮)はその翌日にあたり、今年は10月16日(金)午後10時と17日(土)午前2時に由貴大御饌、17日正午に奉幣、午後6時に御神楽の予定です。祭典は両正宮に引き続き25日まで、別宮・摂社・末社・所管社のすべてで行われます。

由貴大御饌は「清浄で立派な食事」

由貴大御饌とは、清浄で立派な食事という意味だと神宮は説明しています。海川山野のお供え物を取り揃え、神田で収穫された新米を玄米のまま蒸して土器に盛り、御餅をつき、白酒と黒酒のお酒を醸して供えます。精米した白いご飯ではなく玄米のまま蒸す点は、私の頭にあった「新米のおにぎり」とはかなり違う姿でした。

天皇の御初穂と全国の農家の稲束

天皇は皇居の御田で育てた稲穂を御初穂として神宮に献進し、両正宮の内玉垣に懸けられます。内玉垣には全国の農家が奉献した稲穂も懸けられていて、これを懸税と呼びます。神宮は、ここに天皇と国民の収穫奉謝の真心が一体となった光景が見られると説明しています。

神宮のお米づくりは神嘗祭の1日だけで完結しません。年間行事を見ると、4月上旬の神田下種祭で御料米の種を神田に蒔き、9月上旬の抜穂祭で稲を刈って初穂を抜き、10月の神嘗祭に至ります。神宮は、この二つを神嘗祭に付属するお祭りと位置づけています。

新米の季節に、神社の収穫感謝の祭りに触れる機会はありますか?

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神嘗祭の日付は、改暦の前と後で変わった

以前は9月に行われていた

伊勢神宮の公式ページには「明治時代の改暦以前は9月に行われていました」とあります。江戸時代まで使われた旧暦から現在の暦に切り替わったのが、明治時代の改暦です。改暦そのものの経緯は、西暦と和暦の違いを解説した記事に書いています。

なぜ17日なのかは確かめられなかった

ここは確かめられた範囲だけを書きます。改暦のあとに10月17日となった理由を、宮内庁と神宮の公式ページで私は確認できませんでした。インターネット上には理由を書いた記事がありますが、原典まで辿れなかったので、この記事では採りません。確かなのは、現在は宮中でも神宮でも10月17日が中心の日になっていることと、神宮では15日から25日まで祭典が続くことの二点です。

新嘗祭は、天皇が新穀を供えて自らも召し上がる祭り

「新」は新穀、「嘗」は召し上がること

伊勢神宮の説明では、新嘗祭は「しんじょうさい」とも読み、「新」は新穀を、「嘗」はお召し上がりいただくことを意味します。収穫された新穀を神に奉り、その恵みに感謝し、国家安泰と国民の繁栄を祈る祭りです。現在は毎年11月23日に宮中をはじめ全国の神社で行われ、宮中では天皇が自ら育てた新穀を奉るとともに、自らもその新穀を召し上がります。

宮内庁の資料によると、7世紀の中頃まで、一代に一度の大嘗祭と毎年の新嘗祭に区別はありませんでした。第40代の天武天皇の時代(在位673〜686年)に初めて両者が区別され、大嘗祭は一世に一度の皇位継承の儀式となっています。

なぜ収穫の祭りが11月下旬なのか

収穫が10月ごろに終わるなら、感謝の祭りも早くてよさそうに見えます。神宮は、新嘗祭が11月下旬なのは、全国各地での収穫が終了する時期に御親祭が行われたためと考えられている、と説明しています。「考えられています」という書き方なので、確定した事実ではなく有力な説明、という位置づけです。

神宮の新嘗祭は明治5年に始まった

意外だったのは、神宮での新嘗祭の歴史が浅いことです。神宮のページには、神宮では神嘗祭で新穀が奉られるため新嘗祭はなかったが、明治5年に勅使が差遣されて行われたのが始まり、とあります。宮中の神嘉殿で天皇が新嘗祭を行うのに合わせて、神宮には勅使が差し遣わされ、11月23日に外宮は午前4時に大御饌、午前7時に奉幣、内宮は午前11時に大御饌、午後2時に奉幣と進みます。

先に天照大御神へ、次にすべての神々へという順番

先に天照大御神へ、次にすべての神々へという順番|しめ縄と紙垂のある小さな社
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二つの祭りをつなぐ一文

伊勢神宮の神嘗祭のページに、二つの祭りの関係を一文で言い表した部分があります。神嘗祭は「諸神に先立ち収穫の感謝を天照大御神に捧げ、翌11月に天皇陛下は新嘗祭を行われて天神地祇すべての神々に収穫を感謝される」のだと書かれています。先に天照大御神、その次にすべての神々、という順番です。

私が「伊勢版の新嘗祭」と考えていたのは、半分しか合っていませんでした。同じ型の祭りを場所だけ変えて二回行っているのではなく、感謝の宛先を段階的に広げる二段構えになっていたわけです。間違っていたのは神宮のほうではなく、二つを並列に見ていた私の見方でした。

10月17日から11月23日までの間隔

10月17日から11月23日までの日数は、10月の残り14日と11月の23日を足して、14+23=37日です。

この37日の間に、新穀はまず神宮と賢所に供えられ、続いて神嘉殿で天皇が新穀を供えて自らも召し上がります。37日。短いと感じるか長いと感じるかは人それぞれでしょうが、私は、収穫感謝がこの間隔で順番に並んでいること自体に驚きました。

稲穂の神話と2000年以上の稲作

神宮の説明では、『日本書紀』に天照大御神が斎庭の稲穂を天孫の瓊瓊杵尊に授けたことが記されており、そこに日本の始まりが位置づけられることは大きな意味を持つとされています。春に豊作を祈り、秋に収穫に感謝する稲作中心の営みを、日本人は2000年以上繰り返してきたと神宮は書いています。

勤労感謝の日は、新嘗祭がもとになった祝日

祝日法が定める勤労感謝の日の意味

国民の祝日に関する法律は、勤労感謝の日を11月23日と定め、その意味を「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」と書いています。新嘗祭の名前も、神という言葉も、条文には出てきません。

戦後に皇室行事から切り離された

nippon.comの特集記事は、明治時代に祝祭日となった新嘗祭が、戦後にGHQの指令で皇室行事と切り離されて改称され、現在の勤労感謝の日になったと説明しています。日付が同じ11月23日なのはそのためで、休日としての勤労感謝の日と、宮中で行われる祭典としての新嘗祭が、同じ日に別々の意味で並んでいる状態です。

ここにも少し落とし穴があります。勤労感謝の日を「働く人に感謝する日」とだけ覚えていると、条文の「生産を祝い」という言葉が抜け落ちます。収穫を祝う祭りが、勤労と生産を祝う祝日になったという流れを知ると、条文の言葉の選び方にも納得がいきます。

今年の神嘗祭はどこで、どう見られるのか

神宮の公式ページが案内している時刻

今年の神嘗祭は、外宮が10月15日(木)から16日(金)、内宮が16日(金)から17日(土)です。神宮の公式ページによると、参拝時間内の祭典は参道などから見られますが、夜間の参拝停止時間中の祭儀は奉拝できません。由貴大御饌は午後10時と午前2時なので、見られるのは正午の奉幣などです。

初穂曳と、全国の神社の新嘗祭

関連行事として、外宮では10月15日(木)に初穂曳の陸曳き、内宮では16日(金)に川曳きが案内されています。新嘗祭は11月23日に全国の神社で行われ、神宮では11月23〜29日が祭典の期間です。お住まいの地域の神社が新嘗祭を行うかどうかは、各神社の案内で確かめてください。

家庭でできることは多くありませんが、この時期に新米を炊いたら、10月と11月に祭りの順番があることを思い出すのも一つの楽しみ方です。私も、新米を炊くときには、玄米のまま蒸して供える神宮の話を思い出しそうです。

神嘗祭と新嘗祭でよくある誤解

神嘗祭は新嘗祭の伊勢版にすぎない?

そうとは言い切れません。神宮の説明では、神嘗祭は天照大御神に新穀を奉る祭典、新嘗祭は翌11月に天皇がすべての神々に収穫を感謝する祭典で、供える相手の範囲が違います。順番も、神嘗祭が先です。

伊勢神宮には新嘗祭がない?

現在はあります。神宮では神嘗祭で新穀が奉られるため新嘗祭はなかったものの、明治5年に勅使が差遣されて行われたのが始まりで、現在は11月23日から29日にかけて祭典が行われています。

勤労感謝の日は、働く人への感謝だけの日?

祝日法は「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」と定めており、生産を祝う意味も含みます。もとになった新嘗祭は収穫に感謝する祭りで、戦後にGHQの指令で皇室行事と切り離されて改称されたと、nippon.comの特集記事は説明しています。

神嘗祭は祝日ではないのに、重要な祭りなのか?

祝日であるかどうかと、祭りの重さは別の話です。神宮は神嘗祭を、6月・12月の月次祭とともに「三節祭」と呼ばれる神宮の最も由緒深い祭典と説明しています。

見分けるときの三つの判断基準

ニュースや行事の案内で「収穫の祭り」と出てきたとき、神嘗祭か新嘗祭かを見分けるには、次の三つを見れば足ります。

  • 日付が10月17日の前後なら神嘗祭、11月23日なら新嘗祭
  • 供える相手が天照大御神と書かれていれば神嘗祭、すべての神々と書かれていれば新嘗祭
  • 休日として話題になっていれば、新嘗祭がもとの勤労感謝の日

私は、この三つを手帳に書いておくだけで十分だと感じています。信仰や皇室の祭祀をどう受け止めるかは人それぞれで、この記事は評価ではなく、公式ページに書かれている説明の整理にとどめました。

まとめ:神嘗祭と新嘗祭の違いを振り返る

神嘗祭は10月17日を中心に、伊勢の神宮で天照大御神に新穀を奉る祭典です。新嘗祭は11月23日に、宮中で天皇が新穀を神々に供えて自らも召し上がる祭典で、全国の神社でも行われます。10月17日から11月23日までの間に、感謝の宛先が天照大御神からすべての神々へと広がる二段構えになっています。

11月23日の勤労感謝の日は、新嘗祭がもとになった祝日です。神嘗祭の10月17日は祝日ではなく、明治の改暦以前は9月でした。10月17日となった理由は、公式ページでは確かめられませんでした。最新の日程や参拝のしかたは、伊勢神宮と各神社の公式案内で確認してください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。