30〜40代女性の体力低下はなぜ起きたのか|スポーツ庁の調査で読む運動習慣の差

スポーツ庁が2026年10月に公表した令和7年度の「体力・運動能力調査」で、30代と40代の女性だけが、25年前の平成13年度の水準を下回り続けていることが示されました。40代女性の体力合計点は、平成13年度を100%として93.6%です。ニュースでは「30〜40代女性の体力低下傾向」として伝えられています。

私は最初、30〜40代は年齢のせいで体力が落ちる世代だから、当たり前の話だと思っていました。ところが資料を読むと、比べているのは「同じ年代の25年前」でした。この記事では、数字が何と何を比べているのか、運動習慣やスポーツクラブの所属率がどう関わっているのかを、スポーツ庁と厚生労働省の資料の範囲で整理します。2026年10月時点の情報です。

  • 40代女性の体力合計点は平成13年度比93.6%で、6.4%下がっている
  • 比べているのは同じ年代の25年前なので、加齢だけでは説明できない
  • 35〜39歳の女性は、週1日以上運動する人が4割から3割に減っている
  • スポーツクラブに所属している人としていない人の差は、35〜39歳の女性で6.1点
  • 厚生労働省が成人に示す目安は、1日60分の身体活動(約8,000歩)と週2〜3日の筋トレ
目次

体力合計点が25年前を下回っているのは30代・40代の女性だけ

平成13年度を100%とした推移

スポーツ庁は今回、平成13年度から令和7年度までの25年分のデータを使い、年代別の体力合計点の推移をまとめました。平成13年度の合計点を100%として、各年度がどれだけ上下したかを見る方法です。

女性の令和7年度は、20代が103.2%、50代が104.2%、60代が118.2%、70代が114.7%と、いずれも平成13年度より高くなっています。下回っているのは30代と40代だけで、特に40代は93.6%です。産経新聞の報道では、30代女性は96.3%とされています。

年代 男子 女子
20歳代 103.0% 103.2%
30歳代 資料の図で確認 96.3%(報道)
40歳代 98.8% 93.6%
50歳代 104.1% 104.2%
60歳代 114.1% 118.2%
70歳代 109.8% 114.7%
※平成13年度の体力合計点を100%とした令和7年度の値。出典:スポーツ庁「令和7年度体力・運動能力調査 調査結果の分析」、30歳代女子は産経新聞の報道

男性の40代も下がっているが、幅は小さい

同じ40代でも、男子は98.8%で、平成13年度を少し下回る程度です。女子の93.6%と並べると、女性側の下がり方のほうが大きいとわかります。スポーツ庁の分析は、30代・40代の女子で長期的な低下傾向がみられ、特に40代で低下幅が大きいとまとめています。

最近10年でも40代女子は下がっている

最近10年の動きでも、40歳代の女子はほとんどの項目と合計点で低下傾向でした。25年前より下がっているだけでなく、いまも下がる方向にあるということです。

体力テストの成年版は何を測っているのか

20〜64歳が受ける6項目

体力合計点は、いわゆる新体力テストの結果を点数にしたものです。20〜64歳の成年が受けるのは、握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、急歩または20mシャトルラン、立ち幅とびの6項目です。筋力、筋持久力、柔軟性、敏捷性、全身持久力、筋パワーを、それぞれ1項目ずつ見ています。

全身持久力を支える運動の種類については、有酸素運動と無酸素運動の違いの記事で整理しています。

どのくらいの人数で測った数字か

令和7年度は、5月から10月に実施されました。成年の標本数は33,840人、回収数は20,148人で、回収率は59.5%です。全体では74,194人に対して60,213人分の回答があり、回収率は81.2%でした。小学生から高齢者までを含む調査の中で、成年は回収率がやや低い層になります。

合計点はA〜Eの総合評価にもなる

各種目の記録は点数になり、合計点が高い順にA〜Eの5段階の総合評価がつきます。この記事の後半に出てくる「C以上の割合」は、この総合評価でC以上だった人の割合のことです。

1日の歩数は、8,000歩の目安に届いていると思いますか?

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握力は30〜40代でピーク、そこから直線的に下がる

加齢による変化は誰にでもある

報告書によると、ほとんどの項目で、記録はピークを過ぎると年齢とともに直線的に下がっていきます。握力は他の項目よりピークが遅く、男女とも青少年期以降もゆるやかに伸び続け、30〜40代でピークレベルに達します。

この記述だけを読むと、30〜40代で体力が落ちるのは自然な流れのように見えます。

それでも「年齢のせい」では説明がつかない理由

ここで私は考えを改めました。今回のニュースは、30〜40代の女性が50代の女性より低い、という話ではありません。令和7年度の40代女性を、平成13年度の40代女性と比べた数字です。年齢は同じなので、加齢の影響は両方に同じようにかかっています。

それでも25年前より6.4%低いのは、同じ40代でも、いまの40代のほうが25年前の40代より体力が下がっている人が多いということです。間違っていたのは数字ではなく、「加齢の話だ」と決めてかかった私の読み方でした。

100%−93.6%=6.4%。平成13年度の40代女子を100としたとき、令和7年度は6.4低い計算です。

スポーツクラブに所属しているかどうかで体力に差がつく

スポーツクラブに所属しているかどうかで体力に差がつく|運動を楽しむ女性たち
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所属している人のほうが、すべての年代で合計点が高い

スポーツ庁の分析では、すべての年代・男女で、スポーツクラブなどに所属している人の体力合計点が、所属していない人を上回りました。35〜39歳の女子では、所属している人のほうが6.1点高く、男子の3.3点より差が大きくなっています。

6.1点÷3.3点=約1.8倍。35〜39歳では、女子の差は男子の約1.8倍です。

45〜49歳の女子では4.4点、25〜29歳の女子では6.3点の差でした。35〜39歳の女子では、この差が長期的に広がってきたとされています。

そもそも所属している女性が少ない

所属率は、25〜29歳、35〜39歳、45〜49歳の女子でいずれも低い水準です。報告書は、特に女子でその傾向が顕著だとしています。35〜39歳では男女とも所属率が下がり、女子は特に低くなっています。45〜49歳は男女とも低下して、2割弱です。

週1日以上の運動実施率は4割から3割へ

運動・スポーツを週1日以上している人の割合も、同じ向きに動いています。35〜39歳の女子は、4割から3割に下がりました。45〜49歳の女子も、4割後半から4割前半へ少し下がっています。男子は35〜39歳で4割から5割に上がっているので、男女の差は開きました。

運動している人としていない人の差も大きく、35〜39歳の女子で週1日以上の人のC以上の割合は、週1日未満の人を23.1ポイント上回っています。

子育てや仕事が理由と報じられている

産経新聞は、子育てや仕事が中心の生活で運動習慣が定着しにくいことが、体力低下の背景にあるとみられると伝えています。調査の資料自体は、原因をこれだと断定していません。所属率や実施率の低下と体力の低下が同じ年代に重なっている、というところまでが、いまわかっていることです。

国が示す目安と、実際の歩数のあいだにある差

国が示す目安と、実際の歩数のあいだにある差|公園の道を歩く人
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成人は1日60分、約8,000歩が目安

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、成人に歩行またはそれと同等以上の強さの身体活動を1日60分以上、歩数にして1日約8,000歩以上と示しています。運動としては、息が弾み汗をかく程度のものを週60分以上、筋力トレーニングを週2〜3日が目安です。座りっぱなしの時間が長くなりすぎないようにすることも、あわせて挙げています。

正直に言うと、私はこの8,000歩という数字を、調べるまで具体的に知りませんでした。

20〜64歳の女性の平均は6,685歩

国の健康づくりの計画である健康日本21(第三次)の資料には、20〜64歳の1日の平均歩数の現状値が載っています。男性は7,864歩、女性は6,685歩で、目標はどちらも8,000歩です。

8,000歩−6,685歩=1,315歩。女性の平均は目標より1,315歩少なく、目標の約84%(6,685÷8,000)にあたります。男性との差は7,864−6,685=1,179歩です。

運動習慣者(1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上続けている人)の割合も、20〜64歳の女性は16.9%で、男性の23.5%より低く、目標は30%です。体力調査の結果と、同じ向きの数字が並んでいます。

1日あたりに直すとどのくらいか

週60分の運動と聞くと大変そうですが、1日に割れば小さくなります。

60分÷7日=約8.6分。週60分は、毎日続けるなら1日あたり約9分弱です。

歩数や運動量を自分で確かめたいときは、スマートウォッチや活動量計が使えます。違いはスマートウォッチと活動量計の違いの記事にまとめています。

この数字を読むときの注意点

平均の話で、個人の話ではない

93.6%は、40代女性の平均値が25年前の平均値の93.6%だったという意味です。40代の女性全員が体力の低い状態にあるわけではありません。運動習慣のある人は、同じ年代でも総合評価が高い傾向にあります。

因果関係は断定できない

所属率が低い年代で体力が低い、という関係はあっても、運動しないから下がったのか、体力が落ちたから運動しなくなったのかは、この調査だけでは決められません。サンプルは調査に回答した人で、成年の回収率は59.5%です。

30代女性の数字は報道に頼っている

報告書の本文には、40代の93.6%は書かれています。30代の96.3%は、本文では確認できず、産経新聞の報道によるものです。この記事では報道の数字として扱っています。

体力の数字は、体調の診断ではない

体力テストの結果は、健康状態の診断ではありません。疲れやすい、息切れがするなど気になる症状がある場合は、体力の数字より先に医療機関への相談が必要です。健診の種類は健康診断と人間ドックの違いの記事で整理しています。

自分の運動量を判断する目安

まず、いまの運動量を数える

判断に使えるのは、厚生労働省の目安です。1日の歩数が8,000歩に届いているか、息が弾む運動が週60分あるか、筋力トレーニングが週2〜3日あるか。この3つのうち、いくつ足りないかを数えるだけで、自分の位置がわかります。

足りないときは、全部ではなく1つから

ガイド自体が、個人差を踏まえて強度や量を調整し、可能なものから取り組むことを全体の方向性としています。女性の平均が目標に1,315歩(8,000歩−6,685歩)足りないなら、その分だけ歩く距離を延ばす、という考え方で足ります。筋力トレーニングは、ダンベルを使うものに限らず、自重で行うスクワットや腕立て伏せも含まれます。

仕事や育児で時間が取れない人へ

週60分は、1日あたりに直すと9分弱です。まとまった時間が取れない日が続いても、数字のうえでは小さな量です。続けるほうが難しいのは確かですが、まず量の大きさを知っておくと、運動のハードルを見誤りません。

体力低下についてのよくある誤解

Q. 30〜40代になれば、誰でも体力が落ちるのですか

A. 加齢で下がる項目はありますが、今回の数字は同じ年代の25年前との比較です。同じ年代で、女性の30代・40代だけが下回っています。女性の20代・50代以上は、25年前より高くなっています。

Q. 体力が低いのは本人の努力不足ですか

A. 資料は、そのような見方をしていません。スポーツクラブへの所属率や週1日以上の運動実施率が、30〜40代の女性で低い水準にあることを示しているだけです。子育てや仕事の時間の使い方が背景にあるとみられると報じられていますが、原因は断定されていません。

Q. 運動は毎日長時間しないと意味がないのですか

A. 厚生労働省の目安は、息が弾む運動で週60分以上、筋力トレーニングで週2〜3日です。毎日長時間という数字ではありません。体力調査でも、週1日以上運動している人のほうが、週1日未満の人よりC以上の割合が高くなっています。

まとめ:30〜40代女性の体力低下を、数字から読む

30〜40代の女性の体力低下傾向は、同じ年代の25年前との比較で見えてきた数字です。40代女性の体力合計点は平成13年度比93.6%で、30代もやはり下回っています。他の年代は25年前より高くなっています。

背景として資料に出てくるのは、スポーツクラブの所属率の低さと、週1日以上の運動実施率の低下です。35〜39歳の女子では4割から3割に下がりました。原因が断定されたわけではありません。

読んだあとに判断できることは1つです。歩数、息が弾む運動、筋力トレーニングの3つのうち、国の目安に足りないものはどれか。足りない分を、少しずつ足すことを考えてみてください。体調に不安がある場合は、運動を始める前に医療機関に相談してください。

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2026年10月13日 〜 2026年11月12日
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📚 参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は、公的な調査結果の数字と運動の目安を整理した読み物で、医療上の診断や個別の運動指導を行うものではありません。体調に不安がある方は、運動を始める前に医療機関にご相談ください。最新の情報は、スポーツ庁・厚生労働省の公式サイトをご確認ください。2026年10月時点の公表資料にもとづいています。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。