玄関の呼出ボタンが押されると、なぜ室内のチャイムが鳴るのか。カメラ付きインターホンはどうやって映像を室内に送っているのか。よく使うのに、仕組みを考えたことのない方は多いのではないでしょうか。さらに「インターホン」「ドアホン」「テレビドアホン」と呼び方が複数あって混乱しやすく、賃貸で交換できるのか、自分で取り付けられるのかも判断に迷うところです。
この記事では、インターホンの基本構造(親機・子機・配線)から、2線式・3線式の配線方式、ワイヤレス方式の電波伝送、カメラ付きモデルの映像伝送までを図解で解説します。さらに、賃貸住宅で使える方法、Panasonic・アイホンといった主要メーカーの違い、交換費用の相場まで踏み込んで紹介します。
インターホンとは?ドアホン・チャイムとの違い
インターホンとは、建物内外で会話するための通信装置のことで、玄関に設置する「子機」と、室内に設置する「親機」がペアで動作します。子機のボタンを押すと電気信号が配線(または電波)を通って親機に伝わり、呼出音を鳴らすと同時に通話回路が接続される仕組みです。
言葉として混同されやすい3つを整理すると以下の通りです。
| 名称 | 機能 | 通話 | 映像 |
|---|---|---|---|
| チャイム | 呼出音だけ鳴らす単純な装置 | × | × |
| インターホン | 呼出+音声通話ができる通信装置(広義の総称) | ○ | △(一部) |
| ドアホン | 玄関と室内をつなぐインターホン | ○ | △(一部) |
| テレビドアホン | カメラで来客映像が見えるドアホン | ○ | ○ |
厳密にはドアホンはインターホンの一種ですが、日常会話ではほぼ同じ意味で使われています。一方、玄関で使われている現代の機器のほとんどは「テレビドアホン」と呼ばれるカメラ付きタイプです。
インターホンの基本構造:親機・子機・配線の3要素
インターホンは大きく3つの要素で構成されています。あなたの家にあるインターホンも、この基本構造を持っているはずです。
玄関子機(インターホンの「外側」)
子機は玄関の外壁に設置される機器で、訪問者が操作する部分です。中には以下のパーツが入っています。
- 押しボタン(呼出スイッチ):押すと電気信号が親機に送られる
- マイク:訪問者の声を電気信号に変換する
- スピーカー:親機からの音声を再生する
- カメラ(テレビドアホンのみ):訪問者の姿を撮影する
- LED照明(夜間用):暗い時に自動点灯してカメラ映像を補助
室内親機(インターホンの「内側」)
親機は室内(多くはキッチン・廊下・リビング)に設置される機器で、住人が操作する部分です。
- 液晶モニター(テレビドアホンのみ):来客映像を表示
- 呼出音スピーカー:チャイム音を鳴らす
- 通話ボタン:応答するときに押す
- マイク・スピーカー:双方向の音声通話用
- 録画・録音回路(高機能機種):留守中の来客記録
配線(または電波)
子機と親機をつなぐのが配線または無線通信です。有線式の場合、内部に銅線が2〜4本通っており、これが電源・音声・映像信号を運びます。配線方式によってインターホンの種類が分かれるため、後ほど詳しく解説します。
あなたの自宅のインターホンはどのタイプですか?
- カメラ付きで録画もできる
- カメラ付きだが録画なし
- 音声のみ(チャイム式)
- そもそも設置されていない
インターホンが鳴る仕組みをフロー図で理解する
玄関の呼出ボタンを押してから、室内のチャイムが鳴り、通話が成立するまでの流れを図解します。
呼出から通話までの5ステップ
子機のボタンが
押される
電気信号が配線
を通って親機へ
親機がチャイム
音を鳴らす
住人が通話ボタン
を押す
音声通話回路が
双方向で接続
※テレビドアホンの場合、②と③の間に映像信号も同時送信される
呼出音が鳴る瞬間の電気的しくみ
子機のボタンを押すと、内部のスイッチが閉じて電気回路が成立します。この瞬間に親機側にある「呼出検知回路」が電圧変化を読み取り、内蔵スピーカーから「ピンポーン」というチャイム音を再生します。これが一般的な「呼出音」の正体です。チャイム音自体は親機のメモリに音声データとして保存されており、機種によっては「ピンポーン」「キンコン」「メロディ」など切り替えが可能です。
双方向通話を実現する音声回路
通話ボタンを押すと、子機・親機の両方にあるマイクとスピーカーが電気的に接続され、互いの声が配線を通じて伝わります。古いタイプは「ハーフデュプレックス(一方通行で交互に話す)」方式が多く、ボタンを押している間だけ自分の声が相手に届きました。現在は「フルデュプレックス(双方向同時通話)」が主流で、電話と同じように自然に会話できます。
配線の種類:2線式・3線式・モジュラージャック式
有線インターホンは配線方式によって機種が大きく分かれます。あなたの家のインターホンを交換したい場合、まずこの配線タイプを確認することが必須です。アイホン公式FAQには配線の詳細解説があるので、自分の機種が分からない場合はそちらも参考になります。
| 配線方式 | 特徴 | 主な機能 | 対応住宅 |
|---|---|---|---|
| 2線式 | 電源・通話・映像をすべて2本の配線で送る現代の主流 | 音声+映像 | 築20年以内の多くの住宅 |
| 3線式 | 電源と通話を別配線で送る古いタイプ | 音声のみ | 築30年以上の住宅 |
| 4線式 | 電源・通話・映像を分離して送る業務用に多い方式 | 音声+映像 | マンション共用・店舗 |
| モジュラージャック式 | 親機をコンセントに差すだけで使えるDIYタイプ | 音声+映像(機種による) | 既存配線を流用 |
2線式が現代の主流である理由(深層)
かつてはアナログ電話と同じく音声に1組、電源に1組と複数の配線が必要でしたが、2000年代以降のデジタル信号処理技術の進歩により、たった2本の銅線で電源供給・音声・映像のすべてを送れるようになりました。これは「電力線通信(PLC)」技術の応用で、低周波で電源を供給しつつ、高周波に音声や映像のデジタル信号を重畳する仕組みです。
この技術により、新築・リフォーム時の配線コストが大幅に下がり、テレビドアホン普及の決定的な後押しとなりました。配線が2本で済むので、施工時間も短く、見た目もすっきりします。
ワイヤレスインターホンの仕組み
有線配線を引けない、または工事費を抑えたい場合の選択肢がワイヤレスインターホンです。配線本数は0本で、子機と親機が無線通信で接続されます。
使用する電波帯域
家庭用ワイヤレスインターホンは主に2.4GHz帯または426MHz帯(特定小電力無線)を使用します。2.4GHzはWi-FiやBluetoothと同じ帯域で、データ伝送量が大きいため映像送信が可能。426MHz帯は電波の到達距離が長く(屋外で約100m以上)、壁や障害物に強い特徴があります。
子機の電源はどうする?
有線式は配線から電源を供給できますが、ワイヤレス式の子機は乾電池駆動が一般的です。単3電池4〜6本で半年〜1年程度持つ機種が多く、最近では太陽光(ソーラーパネル内蔵)で充電するタイプも登場しています。あなたが脚立を使って高所の電池交換をしたくないなら、ソーラータイプを検討する価値があります。
ワイヤレス式のメリットと弱点
ワイヤレス式は工事不要で30分以内に設置でき、賃貸住宅でも問題なく使えるのが最大の魅力です。一方で、電波の干渉(電子レンジ・Wi-Fi)で音声が途切れたり、電池切れの心配があるという弱点もあります。これは無線通信である以上、避けられないトレードオフです。
カメラ付きインターホン(テレビドアホン)の仕組み
カメラ付きインターホンは、玄関子機に内蔵されたCMOSイメージセンサーが訪問者の姿を撮影し、その映像信号を配線または電波で親機の液晶モニターに送る仕組みです。スマートフォンと同じカメラ技術が使われており、200万〜500万画素クラスが一般的です。
映像信号の伝送方式
2線式の場合、映像信号はデジタル化された後、電源信号と多重化されて送られます。フレームレートは30fps前後で、ほぼ滑らかな映像が表示されます。古いアナログ方式の場合は画質が粗く、白黒映像のものもありましたが、現在販売されているほぼすべての機種はカラー・高解像度です。
夜間撮影と暗視機能
子機の周辺が暗くなると、自動的にLEDライトが点灯して訪問者を照らします。さらに高機能機種では、赤外線LED(不可視光)を使った暗視撮影に対応しており、ライトを点けずに白黒映像で来客の顔を確認できます。これは防犯カメラと同じ技術で、防犯性の高さにつながります。
録画機能とクラウド連携
最近のテレビドアホンは、留守中に押されたボタンの来客映像を自動録画する機能を備えています。SDカードや内蔵メモリに保存するほか、Panasonicの「外でもドアホン」やアイホンの「JP-DA WiFi対応シリーズ」など、Wi-Fi連携でスマートフォンから外出先でも応対できる機種が普及しています。
主要メーカーの違い:Panasonicとアイホン
家庭用インターホン市場は実質的にPanasonicとアイホンの2社で90%以上のシェアを占めています。あなたが家電量販店やネット通販で見かけるドアホンも、ほぼこのいずれかです。
| 項目 | Panasonic | アイホン |
|---|---|---|
| 主な強み | 家電連動・スマホアプリ | 業務用・マンション市場 |
| 家庭用代表機種 | VL-SZ35KF・VL-SWZ700KF | WP-24・WP-DA |
| スマホ連携 | 「外でもドアホン」アプリ | 「アイホン インターホンアプリ」 |
| 価格帯(本体) | 15,000円〜60,000円 | 18,000円〜80,000円 |
| マンション集合住宅 | 対応機種は限定的 | 業界シェア最大 |
| ※2026年時点の代表機種・価格帯。詳細はメーカー公式サイトを確認 | ||
インターホンを交換するメリット
カメラで来客を確認できる安心感
音声だけのインターホンと比べ、テレビドアホンは訪問者の顔を映像で確認できるため、不審者対応や宅配業者の確認に圧倒的に便利です。最近は宅配トラブルや訪問詐欺が増えているため、防犯対策として導入する家庭が急増しています。宅配ボックスとの併用で、配達対応の手間をさらに削減できます。
留守中の来客記録
仕事や買い物で家を空けていても、後から「誰がいつ来たか」を映像で確認できます。重要な配達を逃したり、不審者の下見を見落とすリスクが減ります。
スマホでの応対
Wi-Fi対応機種なら、外出先のスマートフォンで来客に応答できます。たとえば旅行中でも、宅配業者に「不在票を入れてください」と直接伝えられるのは大きな利便性です。スマートホームとの連動も進んでおり、玄関を中心とした住宅の見守り機能が高度化しています。
非常通報・警報連動
高機能機種では、火災報知器やセキュリティシステムと連動して、異常を親機の液晶で表示する機能があります。高齢者世帯では、緊急ボタンを押すと家族のスマホに通知が届く機種もあります。
インターホン交換のデメリット・注意点
2線式以外の住宅は工事費が高くなる
築30年以上の住宅で3線式・4線式の場合、2線式のテレビドアホンに交換するには配線工事が必要になり、本体価格に加えて15,000〜30,000円の追加費用がかかります。配線を新規敷設する場合、壁を一部削る必要もあり、賃貸では現実的でないケースもあります。
電源直結タイプは電気工事士の資格が必要
子機への電源供給を直接配線する電源直結型は、電気工事士法に基づき有資格者でないと工事できません。自分でDIY交換しようとして配線をいじると、感電・火災のリスクがあるだけでなく、法律違反になります。電源コード差込タイプであれば資格不要でDIY可能です。
Wi-Fi連携には別途設定が必要
スマートフォン応対機能を使うには、自宅のWi-Fi環境とインターホンとの接続設定が必要です。スマホアプリのインストール、ルーター設定の知識が求められるため、ITに不慣れな方は導入時のハードルが上がります。
プライバシーへの配慮
カメラで道路や隣家が映り込む場合、近隣トラブルになるケースがあります。設置角度の調整や、カメラの撮影範囲を確認することが大切です。
インターホンの交換費用と選び方
取り付け・交換費用の相場
インターホン交換の費用は、本体価格と工事費の合計で決まります。一般的な相場は以下の通りです。
| タイプ | 本体価格 | 工事費 | 合計目安 |
|---|---|---|---|
| 音声のみ(旧式→旧式) | 5,000〜10,000円 | 8,000〜15,000円 | 15,000〜25,000円 |
| 基本テレビドアホン | 15,000〜25,000円 | 10,000〜20,000円 | 25,000〜45,000円 |
| 高機能(録画・Wi-Fi) | 30,000〜60,000円 | 15,000〜30,000円 | 45,000〜90,000円 |
| ワイヤレス(DIY) | 8,000〜25,000円 | 0円 | 8,000〜25,000円 |
| マンション一括更新 | – | – | 10〜18万円/戸 |
こんな人にはこのタイプがおすすめ
あなたの状況に応じて、最適なタイプを選んでください。
- 戸建て・持ち家でしっかりした防犯機能が欲しい→ Panasonic VL-SZ35KF系の録画+自動応答機能付きテレビドアホン
- マンションで管理組合の規約内で交換したい→ アイホンのマンション用テレビドアホン(管理組合の承認が必要)
- 賃貸で工事ができない→ ワイヤレスインターホン(電池式・モジュラージャック式)
- 外出が多くスマホで応対したい→ Wi-Fi対応モデル(PanasonicまたはアイホンのIoT連携機種)
- 高齢者・防犯重視→ 非常ボタン付き・人感センサー連動機種
賃貸住宅で使う場合の選択肢
賃貸住宅では原則として既存のインターホン本体を交換できませんが、以下の方法で実質的に機能アップは可能です。
- 後付け型ワイヤレスドアホンを玄関に貼り付けて使う(既存と独立して動く)
- 玄関カメラ単体(人感センサー付き)を取り付けて録画
- スマートドアベル(リング、Google Nest Doorbellなど)で来客通知をスマホに飛ばす
いずれも本体交換せず追加機器として使うため、退去時に取り外せます。スマートロックと組み合わせれば、賃貸でも本格的なスマートホーム化が可能です。
インターホンに関するよくある誤解
誤解1:「インターホンは電池が切れたら使えない」
これはワイヤレス式の話で、有線式インターホンには当てはまりません。有線式は配線から電源を供給するか、親機がコンセントから電気を取るので、電池切れの概念はありません。停電時には使えなくなるのが弱点です。
誤解2:「カメラ付きは常に録画している」
多くの機種はボタンが押されたときだけ録画する仕組みで、24時間常時録画ではありません。常時録画したい場合は防犯カメラを別途設置する必要があります。
誤解3:「ワイヤレスは盗聴される」
家庭用ワイヤレスインターホンは暗号化通信を採用しており、簡単に盗聴できる仕組みではありません。Bluetoothと同様のセキュリティ規格が組み込まれており、一般的な家庭利用では問題ありません。
誤解4:「Wi-Fi連携は通信費がかかる」
自宅Wi-Fiを使う場合は追加通信費はかかりません。外出先からスマホでアクセスする際は、スマホのデータ通信を使うので、その分のパケット使用量は発生しますが、画像・音声のみなので大きくはありません。
まとめ:インターホン選びで押さえるべきポイント
インターホンの仕組みと選び方について、押さえておくべきポイントをまとめます。
- インターホンは「子機(玄関)」「親機(室内)」「配線または電波」の3要素で構成される
- 呼出ボタンを押すと電気信号が親機に届き、チャイム音が鳴った後、双方向通話が成立する
- 現代の主流は2線式配線で、電源・音声・映像をたった2本の銅線で送れる
- ワイヤレス式は工事不要だが、電池交換と電波干渉という弱点がある
- カメラ付きテレビドアホンは200万画素以上のCMOSセンサーで30fpsの映像を伝送
- Panasonicとアイホンが市場の90%以上を占有、機種選択は両社で比較するのが基本
- 交換費用は基本テレビドアホンで2.5〜4.5万円、高機能機種で4.5〜9万円が相場
- 賃貸ではワイヤレスやスマートドアベルで実質的な機能アップが可能
「結局どのインターホンを選べばいい?」という質問には、① 持ち家なら録画+Wi-Fi対応のテレビドアホン、② マンションなら管理組合確認の上アイホン製、③ 賃貸ならワイヤレス追加機器がおすすめです。インターホンは10年以上使う設備なので、初期費用より「長く使える機能と防犯性」を重視して選ぶのが賢明でしょう。
あなたの自宅のインターホンはどのタイプですか?
- カメラ付きで録画もできる
- カメラ付きだが録画なし
- 音声のみ(チャイム式)
- そもそも設置されていない
📚 参考文献・出典
- ・アイホン株式会社「インターホン配線をわかりやすく解説」 https://www.faq-aiphone.jp/intercom-wiring/
- ・パナソニック「テレビドアホン・インターホン製品情報」
- ・経済産業省「特定小電力無線局制度の概要」
- ・総務省「電波の利用ルールについて」









































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