サイゼリヤが2026年10月14日に価格改定を発表し、10月29日からミラノ風ドリアは300円から320円になります。私はこの300円を、値段というより「そういう決まり」のように覚えていました。客が増え続けているチェーンなのに、なぜ値上げになるのでしょうか。
この記事では、サイゼリヤ公式の発表と、2026年8月期の決算説明資料を開いて、原価率という数字で値上げの理由を確かめます。2026年10月時点で公開されている資料だけを使い、資料に書かれていないことは書きません。
- 値上げはメニュー全般で平均6%。ミラノ風ドリアは300円から320円、400円のメニューは420〜430円
- 連結の売上原価率は41.9%から43.7%へ、1年で1.8ポイント上がった
- 国内の既存店は客数が前年の108.6%に増えたが、営業利益率は6.0%から5.4%に下がった
- 公式発表は理由を「原材料価格の高騰やエネルギー等のコスト上昇」と書いている。原価率の数字は発表文には出てこない
サイゼリヤの価格改定で、公式発表に書かれていること
10月29日から平均6%、ミラノ風ドリアは320円
サイゼリヤの発表文によると、価格改定は2026年10月29日(木)から実施されます。メニュー全般について平均6%の価格改定になり、一例として300円(税込)のミラノ風ドリアは320円(税込)、400円(税込)のメニューは420〜430円(税込)です。
ドリアの値上がり幅は20円で、20÷300で約6.7%です。400円のメニューは20÷400=5.0%から30÷400=7.5%の範囲になります。平均6%という数字は、メニューごとに上げ幅が違うことを前提にした平均だと読めます。
据え置きのメニューと、上げ幅が違う24店舗
発表文では、フレッシュワイン、ランチ、モーニング限定メニューの価格は変わりません。レジャー施設周辺・都市部の一部の24店舗は、平均10%の改定です。同じサイゼリヤでも、店によって値上げ幅が違います。
公式が挙げた理由は、原材料とエネルギー
発表文は、値上げの理由を次のように書いています。「昨今の原材料価格の高騰や、エネルギー等のコスト上昇が続く中、当社ではこれまで価格維持に向けた取り組みを進めてまいりました。しかしながら、当社の努力不足により、食材の不足や原価上昇を吸収できない事態が発生しております」。
理由は文章で書かれていて、原価率や金額は発表文にありません。数字で確かめるには、決算資料を見る必要があります。次の章から、その数字を順に開いていきます。
原価率とは何か|売上100円が3つに分かれる
売上から原価と販管費を引いた残りが営業利益
原価率は、売上高のうち、料理の材料費などの売上原価がどれだけを占めるかを表す割合です。サイゼリヤの決算説明資料は、売上原価を売上高に対する比率(売上比)で載せています。
決算では、売上高から売上原価を引いたものが売上総利益、そこから販管費(販売費及び一般管理費)を引いたものが営業利益です。資料の数字で確かめると、売上総利益169,790百万円から販管費153,371百万円を引いて、営業利益は16,419百万円になります(連結・2026年8月期)。固定費と変動費の考え方は損益分岐点の仕組みの記事でも整理しています。
2026年8月期は、100円の売上のうち5.4円が営業利益
資料の売上比をそのまま使うと、サイゼリヤの連結売上100円は、原価が43.7円、販管費が50.9円、営業利益が5.4円に分かれます。
連結売上100円の内訳(2026年8月期)
43.7円
50.9円
5.4円
出典:サイゼリヤ「決算説明資料 2026年8月期」の連結業績(売上比)
43.7+50.9+5.4=100.0で、3つを足すと100円になります。私は「安さの王者なら、原価率も王者級に低いのだろう」と思っていました。実際は、売上の4割強が原価で、5割強が販管費です。利益として残るのは5円台で、薄い構造だと分かります。
外食チェーンが値上げしても、利用する回数は変わりますか?
- 変わらない
- 少し減らす
- ランチなど安い時間帯に寄せる
- 大きく減らす
📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・5票)
原価率は1年で1.8ポイント上がった
連結で41.9%から43.7%へ
決算説明資料の連結業績では、売上原価率は2025年8月期の41.9%から43.7%になり、資料は「売上原価率は1.8ポイント悪化」と書いています。売上総利益率は58.1%から56.3%に下がりました。
金額で見ると、売上原価は107,632百万円から131,693百万円に増えました。131,693÷107,632で前年の約122.4%です。売上高は前期比117.4%なので、原価の増え方が売上の増え方を約5ポイント上回っています。
単体(国内の中心)は48.3%で、2.4ポイント悪化
資料の単体業績では、売上原価率は45.9%から48.3%へ、2.4ポイント悪化しています。連結よりも悪化幅が大きく、国内で原価の上昇がより強く出たことが分かります。
| 指標 | 2025年8月期 | 2026年8月期 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 連結 売上原価率 | 41.9% | 43.7% | 1.8ポイント悪化 |
| 連結 販管費率 | 52.0% | 50.9% | 1.1ポイント改善 |
| 連結 営業利益率 | 6.0% | 5.4% | 0.6ポイント悪化 |
| 単体 売上原価率 | 45.9% | 48.3% | 2.4ポイント悪化 |
| ※出典:サイゼリヤ「決算説明資料 2026年8月期」連結業績・単体業績 | |||
国内の原価が増えた中身は、為替と仕入れ単価
営業利益の増減表に、原価の内訳が載っている
決算説明資料には、営業利益が前期からどう増減したかを分解したページがあります。国内の影響額は9.7億円の増加で、その内訳は原価が△44.7億円、販管費が54.4億円です。
原価の△44.7億円は、さらに次の項目に分かれています。
- 為替の影響:△31.7億円
- 単価(資料の注記は「ハンバーグ、チキン等が悪化」):△18.7億円
- 物流費:△6.2億円
- メニューミックス:+10.3億円
- その他ロスなど:+1.6億円
為替の影響が、原価悪化の約7割
為替の影響△31.7億円は、原価の悪化△44.7億円の31.7÷44.7で約71%にあたります。資料には「為替の影響」としか書かれておらず、どの食材のどの通貨かまでは説明がありません。ただ、円安で輸入食材の円建ての仕入れ値が上がる流れは円安と円高の仕組みで解説している基本の動きです。この資料の数字はその流れと矛盾しません。
プラス側のメニューミックスについて、資料に説明はありません。名前どおり、売れるメニューの組み合わせが変わった影響と読めます。
販管費は54.4億円の改善、ただし理由は売上の増加
販管費は労務費17.5億円、設備費22.7億円、水光熱費9.5億円、その他経費4.8億円と、すべてプラス側です。これは費用が減ったというより、売上が前期比117.4%に増えたことで、売上に対する比率が下がった分を表していると読めます。資料の販管費率が52.0%から50.9%に下がったことと整合します。
客数が増えても利益率が下がる理由
国内既存店は客数が前年の108.6%
決算説明資料の国内既存店の前年比(2026年9月)は、売上高110.6%、客数108.6%、客単価101.8%です。客数は8.6%増え、客単価は1.8%しか上がっていません。売上の伸びのほとんどは客数の増加でできています。
客が増えると、店の家賃や設備の費用は同じままで売上だけが増えるので、販管費率は下がります。実際に販管費率は1.1ポイント改善しました。ところが原価は、客が増えるほど材料を多く使うため、売上と一緒に増えます。そこに為替などの値上がりが重なり、原価率が1.8ポイント悪化しました。
営業利益は増えたのに、営業利益率は下がった
営業利益は15,499百万円から16,419百万円に増え、前期比105.9%です。営業利益は155.0億円から164.2億円で、9.2億円の増加です。しかし営業利益率は6.0%から5.4%に下がりました。売上が117.4%に増えたのに、利益は105.9%しか増えていないためです。
2026年4月の予想には届かなかった
資料の「予算」は2026年4月8日に発表した業績予想です。売上高は予想297,000百万円に対して実績301,483百万円で、予想の101.5%でした。一方、営業利益は予想18,200百万円に対して実績16,419百万円で、予想の90.2%、差額は1,781百万円です。客は想定以上に来たのに、利益は予想に届きませんでした。
私が数字を並べて意外だったのはここです。客数が増えている会社は強いと思い込んでいましたが、客単価を動かさずに客数だけで売上を伸ばすと、原価が上がったときに利益率がそのまま削られていきます。
平均6%の値上げで、数字はどう動くのか
原価率は計算上、前年の水準に戻る
仕入れや販売数量が変わらないと仮定して、平均6%の値上げを売上高に当てはめてみます。売上は1.06倍になり、原価の金額は同じなので、原価率は43.7÷1.06で約41.2%になります。前期の41.9%と同じ水準です。
これは私が仮定を置いて計算した数字で、サイゼリヤが示した予測ではありません。値上げで客数が減れば、販管費率は上がります。原価が今後も上がれば、原価率はこの計算より高くなります。
値上げだけで、年間の売上がどれだけ増える計算になるか
2026年8月期の連結売上高301,483百万円に6%をかけると、301,483×0.06=18,089百万円で約181億円です。1%あたりでは301,483×0.01で約30億円になります。この約181億円は、同じ年の営業利益164.2億円より大きい金額です。
ただし、これは条件つきの計算です。改定は10月29日からなので、通期ではありません。値上げは平均値で、据え置きのメニューもあります。値上げ後に客数が変わることも考えていません。それでも、価格を6%動かすことが、会社全体の利益の規模に比べて大きいことは分かります。値上げの理由を、物価全体の動きから見たい方はインフレとデフレの違いの記事もあわせて読んでください。
会社が出した2027年8月期の計画
決算説明資料の連結業績予想は、2027年8月期の売上高を3,337億円(前期比110.7%)、営業利益を212億円(前期比129.1%)としています。212−164.2で、営業利益は47.8億円の増加です。この計画には値上げ以外に、連結で純増123店舗の出店予算も含まれます。どこまでが値上げの効果かは、資料から切り分けられません。
見出しにあった中国事業は、決算でどう見えるか
上海の営業利益は前期の77.7%
今回の値上げを伝えた記事の見出しには、中国事業の異変という言葉もありました。決算説明資料で確かめられるのは、次の数字です。上海法人の営業利益は3,189百万円から2,479百万円に減り、前期比77.7%でした。
直近の様子は、既存店の売上高前年比(2026年9月)で見られます。上海98.9%、広州103.0%、北京99.2%です。上海も北京も前年をわずかに下回っていますが、広州は上回っています。
海外全体の営業利益は2.7億円の減少
海外全体の営業利益は、前期比97.3%で2.7億円の減少です。為替影響は+5.7億円で、為替を除いた減少分は△8.3億円でした。店舗数は、連結で1,765店、うち国内1,070店、海外695店です。海外が原価面でも利益面でも国内とは違う動きをしていることは分かりますが、異変と呼べるかどうかは資料からは判断できません。
値上げのデメリットと、データで分からないこと
客数が減れば、値上げの効果は小さくなる
値上げは、客単価が上がる代わりに客数が減るリスクがあります。サイゼリヤの客数は国内既存店で前年の108.6%と伸びていますが、これは価格が据え置かれた期間の数字です。値上げ後の客数は、まだ決算資料に出ていません。
この記事の試算で分からないこと
この記事の試算は、仕入れ・数量・販管費を動かさないという仮定で作ったものです。実際には原価も販管費も動きます。公式発表も、平均6%の根拠となる原価の見通しは書いていません。値上げの効果は、2027年8月期の決算が出てから答え合わせができます。
消費者にとっての影響
ドリアは20円、400円のメニューは20〜30円の値上がりです。たとえば400円のメニューを月に4回食べる人なら、20円×4回=80円から30円×4回=120円の増加になります。ランチとモーニング限定メニューは据え置きなので、時間帯で払う金額が変わります。
値上げの理由を、決算資料で判断するには
外食チェーンの値上げを見る3つの数字
他の外食チェーンが値上げを発表したときも、同じ見方ができます。上場企業の決算説明資料や決算短信には、売上高・売上原価・販管費・営業利益が載っています。見るのは次の3つです。
- 売上原価率:売上原価÷売上高。1年で何ポイント動いたか
- 販管費率:客数が増えると下がる。原価率の悪化を打ち消しているか
- 客数と客単価の前年比:売上の伸びが、客数と値上げのどちらから来ているか
「理由」と「数字」を分けて読む
発表文には理由が文章で書かれ、決算資料には数字が出ています。両方を並べると、「原材料の高騰」が数字では何ポイントの原価率悪化にあたるのかが分かります。今回のサイゼリヤでは、原価率の1.8ポイント悪化と、為替の影響△31.7億円がそれにあたります。
よくある誤解
客が増えているなら、値上げは不要では?
客数が増えても、1人あたりの原価が上がれば利益率は下がります。サイゼリヤの連結営業利益は増えましたが、利益率は6.0%から5.4%に下がり、営業利益は2026年4月の予想の90.2%でした。
値上げ分は、そのまま全部が利益になる?
なりません。値上げで増える売上は、客数が変わらなければ原価の上昇分や人件費の増加を補う原資になります。この記事の約181億円は、売上が増える額であって、利益が増える額ではありません。
全店が同じ値上げ幅?
違います。メニュー全般の平均は6%ですが、レジャー施設周辺・都市部の24店舗は平均10%で、ランチやモーニング限定メニューなどは据え置きです。
まとめ:サイゼリヤの値上げを数字で読むと
サイゼリヤの2026年10月29日の価格改定は、メニュー全般で平均6%、ミラノ風ドリアは300円から320円です。公式の理由は、原材料価格の高騰とエネルギー等のコスト上昇で、決算資料では連結の売上原価率が41.9%から43.7%に上がっていました。国内の原価では、為替の影響が△31.7億円で最も大きい項目です。
客数は伸びているのに、客単価はほぼ動かず、営業利益率は6.0%から5.4%に下がりました。私の仮定の計算では、平均6%の値上げで原価率は約41.2%に戻ります。ただし客数や原価の変化は含まれていないので、効果は2027年8月期の決算で確かめることになります。2026年10月時点の公開資料に基づく整理で、最新の価格やメニューはサイゼリヤの公式サイトで確認してください。
この記事の内容、読む前から知っていましたか?
- 知っていた
- なんとなく知っていた
- 初めて知った
- 誤解していた
📚 参考文献・出典
- ・株式会社サイゼリヤ「10月29日(木)価格改定のお知らせ」(2026年10月14日) https://www.saizeriya.co.jp/files/261014-10%E6%9C%88%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%A1%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E6%94%B9%E5%AE%9A5.pdf
- ・株式会社サイゼリヤ「決算説明資料 2026年8月期(第54期)」 https://www.saizeriya.co.jp/files/544q%E6%B1%BA%E7%AE%97%E8%AA%AC%E6%98%8E%E8%B3%87%E6%96%99-%E7%A4%BE%E5%A4%96%E7%94%A88.pdf
📖 この記事について 本記事は、ものごとの“仕組み”を知る面白さをお届けする読み物です。重要な判断は、必要に応じて各分野の専門家や公的機関にご確認ください。









































コメントを残す