「DeepSearch」とは何者か?

ChatGPTでもPerplexityでもない、まったく新しいAI検索体験
それが、Elon MuskのX(旧Twitter)で提供される「Grok DeepSearch」だ。
この機能は、Grok 3モデルをベースに構築された調査用AIツールであり、検索キーワードを入力するだけで、関連するWebサイトを自動収集・要約し、論理的なレポートを1分程度で生成してくれるという。
まるで「調査アシスタントが100人いる」ような体験。とはいえ、それが本当に使えるのか?
特に日本語ユーザーにとって実用的なのか?を含め、徹底検証してみた。
UI・UX:シンプルながら思考過程が「見える化」されている

GrokのDeepSearchは、Xアプリ/Grok専用サイトからアクセス可能。検索バー横の「DeepSearch」ボタンを有効にすると起動する。
UIは驚くほどシンプルで、検索の思考プロセスがステップごとに可視化されるのが大きな特徴だ。「何を探して、どう考えたか」が表示されるため、AIがブラックボックスにならない安心感がある。
また、ユーザーの入力スタイル(丁寧語/カジュアル)に応じて、思考過程の言葉遣いまで変わるというユニークな設計がされているのもポイントだ。
言語対応:日本語でも使えるが、精度とソース選定に注意が必要
DeepSearchは日本語での質問にも対応している。が、実際に使ってみると参照される情報源の大半が英語圏のサイトであることがわかる。
たとえば「日本で自動車メーカーを立ち上げるには?」といった質問に対して、国内メディアではなく、海外の経済ニュースや論文を中心に引用してくる。
これはある意味正確さと信頼性を担保している一方で、「日本語ユーザーにとっての最適な答え」ではないというケースもある。
つまり、「日本語で使えるが、日本語で完結するわけではない」のが現在のDeepSearchだ。
検索精度と構造化:1分未満で論文級レポートが出る衝撃

実際に使ってみて驚くのは、DeepSearchの出力精度と構造化されたレポートの完成度である。
例えば「日本でEVメーカーを立ち上げるには?」という難問に対し、
- 市場調査
- 資金調達
- 法規制
- 工場立地
- 人材確保
- サプライチェーン
- マーケティング戦略
……といった要素に分解して提示。140以上のWebページを参照し、適切な引用付きで整理されていた。
PerplexityやChatGPTと比べても、処理スピードは最速(約30秒〜90秒)。構成も「ビジネス提案書」のようなロジカルさで、知識ゼロからの出発でも迷わない。
料金:無料でも使えるが、回数制限あり

現在、Grok DeepSearchは無料で使える。ただし、非プレミアムユーザーでは5回程度の利用制限がかかるようだ。
一方で、Xのプレミアムプラン(月額約1,200円〜)に加入していると、利用制限が実質解除される。
また、プレミアム加入者はGrok 3の通常チャット機能も併用可能なため、実質的には「AIリサーチツール付きX利用権」という形になっている。
懸念点:英語偏重・誤回答・マルチモーダル非対応

評価すべき点が多い一方、以下のような実務上の注意点もある:
- 情報源が英語に偏り、日本語関連の検索では不足感が出る
- ごくまれに誤情報を含む回答を出す
- Grok 3自体がマルチモーダル(画像・音声)には未対応
また、引用元が学術論文や信頼性の高いWebメディアであることが多いとはいえ、必ず自分でファクトチェックを行う必要がある点も忘れてはならない。
結論:英語圏ユーザー向けでは最高峰、日本語ユーザーは用途選別が鍵

GrokのDeepSearchは、論理的でスピーディー、構造化された回答を自動で生成する強力なAIリサーチツールだ。特に英語圏の情報に強く、大学レベルのレポートを短時間で生成できるのは大きな魅力。
ただし、日本語で使う場合は「翻訳前提」または「英語で再検索」などの工夫が求められる。
情報探索やビジネス資料のたたき台づくりには非常に強い。日本語ユーザーでも、「英語もある程度読める」「検索リテラシーが高い」人にとっては、大きな武器となるだろう。