
最近の研究によると、立体視(3D)ビデオゲームをプレイすることで奥行き知覚の精度が向上することが示されました。しかし、その正確性には影響を与えないことが判明しました。この研究は、視覚認識の改善や治療への応用可能性を探る重要な一歩です。
視覚認識は人間の知覚機能において非常に重要な役割を果たし、特に奥行き知覚は空間認識や運動制御において必要不可欠です。近年の研究では、ビデオゲームが視覚や認知機能に与える影響が注目されており、今回の研究では3Dビデオゲームが奥行き知覚に与える具体的な影響が検証されました。
引用元:Nature
研究の背景
視覚機能は、日常生活で非常に重要な役割を果たします。特に立体視は、奥行き知覚に関わる重要な要素です。本研究では、21人の若年成人を対象に、立体視ビデオゲームのプレイが奥行き知覚にどのような影響を与えるかを検証しました。
参加者は、40時間にわたり3Dシューティングゲームをプレイしました。その後、ランダムドットステレオグラムを用いて奥行き検出性能を評価しました。
この研究の特徴は、従来の2Dビデオゲームでは得られなかった立体視の向上が3Dビデオゲームによって実現される点にあります。従来の2Dゲームでは視覚機能の一部のみが強化されると報告されていましたが、3Dビデオゲームは特に奥行き認識能力を強化する可能性を示しました。

実験結果
精度の向上
ゲームプレイ後、奥行き知覚の精度(stereoacuity)は統計的に有意に向上しました。
- ゲーム前の精度:33.05秒角
- ゲーム後の精度:22.19秒角
この結果は、参加者が視覚的な空間情報をより正確に処理できるようになったことを示唆しています。また、この精度向上は短期間のトレーニングでも達成可能であることが示されました。
正確性の維持
一方で、奥行き知覚の正確性(bias)には変化が見られませんでした。
- ゲーム前のバイアス:-4.42秒角
- ゲーム後のバイアス:-4.17秒角
この結果は、精度向上が視差ペデスタルの低減によるものではないことを示唆しています。つまり、視覚的な「ずれ」を修正する能力ではなく、純粋に精度が向上したことがわかりました。
さらに、研究では正確性に影響を与えなかった理由について、視覚の基本的な処理能力と空間認識の違いが関与している可能性を指摘しています。
結論と今後の応用
立体視ビデオゲームは、奥行き知覚の精度を改善する可能性を示しましたが、正確性には大きな変化を与えませんでした。これにより、将来的には視覚障害や弱視患者に対する新しい治療法としての応用が期待されます。
特に、弱視や立体視機能に問題を抱える患者に対して、これらのゲームを利用したトレーニングが有効である可能性が高く、従来の視覚療法を補完または強化する手段として注目されています。
今後の研究では、長期間の訓練効果や他の視覚機能への影響をさらに検証する必要があります。また、異なる年齢層や視覚障害者を対象にした追加研究が求められます。
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