有給休暇と欠勤の違いをわかりやすく解説|給与控除・査定・社会保険まで【2026年版】

「来週、有給を取りたいんだけど、もうすぐ使い切ってしまう…そうしたら欠勤扱い?」「欠勤すると給料はいくら引かれるの?」「賞与の査定にも響く?」――会社員として働いていると、こうした疑問にぶつかる場面は意外と多いものです。同じ「会社を休む」でも、有給休暇欠勤は法律上の扱いがまったく異なり、給与・評価・社会保険などへの影響も大きく変わってきます。

この記事では、有給休暇と欠勤の本質的な違いを整理したうえで、欠勤控除(給与カット)の計算方法、賞与・査定への影響、退職時の有給消化、そして法律上のグレーゾーンの注意点まで、労働基準法と厚生労働省の公開資料を踏まえて2026年版として徹底解説します。会社員の方が自分を守るために知っておくべき知識として、また人事・労務担当者の方が制度を正しく運用するためのリファレンスとして役立つ内容を目指しました。

目次

有給休暇と欠勤の違い――一言でいうと「権利か否か」

結論から先に言うと、両者の決定的な違いは「労働基準法が保障する権利か、無断・無許可で休んだ状態か」です。有給休暇は労働者の正当な権利として法律で守られており、給与が支払われます。一方の欠勤は本来出勤すべき日に労務を提供しなかった状態であり、ノーワーク・ノーペイの原則に基づき給与が支払われません。

項目 有給休暇 欠勤
法的根拠 労働基準法第39条(労働者の権利) 法律上の規定なし(就業規則で運用)
給与 通常どおり支給 欠勤控除で減額
会社の承諾 原則必要(時季変更権あり) 事前承諾なしも含む
査定への影響 マイナス評価は労基法違反 評価対象になる場合あり
出勤率の計算 「出勤した」として扱う 「出勤しなかった」として扱う
解雇・懲戒 理由にできない 継続すれば対象になり得る
※出典: 労働基準法、厚生労働省「労働条件相談ほっとライン」

有給休暇は労働基準法第39条で保障された強い権利

あなたが勤続6か月以上、出勤率8割以上の労働者であれば、雇用形態(正社員・パート・アルバイト)を問わず、勤続年数に応じて年10日〜最大20日の有給休暇を取得する権利があります。これは「会社の温情」ではなく労働者の法定権利で、会社が「忙しいから取らせない」と拒否することは原則できません(業務に著しい支障が出る場合のみ時季変更権で日程を変えられるのみ)。

欠勤は「労務提供義務を果たせなかった」状態

欠勤は、雇用契約で約束した労務提供を行わなかった状態です。日本の労働法はノーワーク・ノーペイの原則(働かなければ給与を支払う義務はない)が前提のため、欠勤すれば該当時間分の給与は控除されます。事前申請がなければ「無断欠勤」となり、繰り返せば懲戒や解雇の理由になることもあります。

欠勤控除の計算方法――月給はどれくらい減るのか

「1日休んだら、いくら引かれるんだろう?」――これは誰もが気になるところです。実は法律上の明確な計算式はなく、就業規則で定めることになっています。ただし、厚生労働省のモデル就業規則が示す標準的な計算式は次のとおりです。

厚労省モデル就業規則の欠勤控除計算式

欠勤控除額 = 月給 ÷ 月平均所定労働時間 × 欠勤時間数

※基本給だけを基準にするか、各種手当を含むかは会社ごと

具体的な計算例(月給25万円・所定労働160時間の場合)

あなたが月給25万円、月平均所定労働時間160時間の会社に勤めていて、1日(8時間)欠勤したとします。

欠勤控除額 = 250,000円 ÷ 160時間 × 8時間 = 12,500円

つまり、その月の給与は 250,000 − 12,500 = 237,500円 になります。

3つの計算方式――会社によって違う

多くの企業が採用している計算方式は次の3パターンです。

方式 計算式 特徴
月平均所定労働日数 月給 ÷ 年間平均月間所定労働日数 × 欠勤日数 月ごとの変動なし、計算しやすい
当月所定労働日数 月給 ÷ その月の所定労働日数 × 欠勤日数 月により1日あたり単価が変動
時間単価方式 月給 ÷ 月平均所定労働時間 × 欠勤時間 遅刻・早退の処理にも使える

ここが意外と見落としがちなポイントです。あなたの会社がどの方式を採用しているかは就業規則の「賃金規程」に必ず明記されているはずなので、入社時や疑問が出たときに一度確認しておくと安心です。

あなたは過去1年で「有給を使い切り欠勤になった」経験はありますか?

  1. 何度かある
  2. 1回だけある
  3. ギリギリ有給で済ませた
  4. そもそも有給を毎年使い切らない

賞与・査定への影響――ここで最大の差が出る

欠勤と有給休暇で実は一番大きく差がつくのは賞与(ボーナス)と人事評価です。月給の欠勤控除よりも、賞与カットや評価ダウンによる年収影響のほうが大きいケースが珍しくありません。

有給休暇取得を理由に賞与を減らすのは違法

労働基準法附則第136条は「使用者は、有給休暇を取得した労働者に対して賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」と明確に定めています。具体的には次のような取り扱いはいずれも違法とされます。

  • 有給取得日数に応じて賞与の支給率を下げる
  • 精皆勤手当の算定で有給を欠勤扱いにする
  • 昇給・昇格の判定で有給取得を「マイナス勤怠」として記録する
  • 有給を多く取った社員を「協調性なし」と評価する

欠勤は賞与の査定対象になり得る

一方の欠勤は、業務への支障や勤怠不良として人事評価で考慮される正当な対象です。賞与の算定式に「出勤率」が含まれているなら、欠勤分は直接賞与額に響きます。たとえば賞与=基本給×3か月分という会社で、当該査定期間(6か月)で5日欠勤すると、計算上の出勤率が約4%下がり、賞与額もそれに応じて減額されることがあります。

社会保険・税金への影響の違い

給与計算の表面だけ見ていると気づきにくいのが、社会保険料や所得税への影響です。あなたが知っておくと得をするポイントを整理します。

社会保険料は原則「翌々月」に効いてくる

健康保険料・厚生年金保険料は、4〜6月の平均報酬月額(標準報酬月額)をもとに毎年9月から1年間の保険料が決まります(定時決定)。この4〜6月に欠勤が多くて給与が減ると、翌年の保険料が下がる一方で、将来の年金額にも影響します。逆に有給を使った場合は通常の給与水準で計算されるため、保険料も年金記録も「働いていた扱い」のまま維持されます。

所得税は控除後の額で再計算

欠勤控除で給与が減れば、その月の社会保険料も住民税も天引きされたうえで、課税対象が小さくなった金額に対して所得税が源泉徴収されます。結果として「働いた分だけ手取りも減る」シンプルな構造です。

退職時の有給消化と欠勤の関係

退職を決めたあと、残った有給休暇をどう扱うかは多くの社会人が一度は悩むテーマです。あなたが「もう辞めるから消化したい」と思っても、対応がスムーズにいかないこともあります。

会社は時季変更権を行使できない

通常の有給取得時は会社に時季変更権(別の日に振り替える権利)がありますが、退職日が決まっている場合は変更先がないため、時季変更権を行使できません。つまり残った有給は退職日までに全部消化する権利があります。

「有給買い取り」は原則違法、ただし退職時のみ例外

労働基準法では有給を金銭で買い取ること(買い取って取得させない)は原則違法です。ただし退職時に消化しきれない残日数については、会社の任意で金銭精算することが認められています。あなたの会社が買い取りに応じてくれるかは就業規則と上司の判断次第なので、退職交渉時に確認しておきましょう。

有給と欠勤、上手な使い分けの判断基準

「いつ有給を使うべきか、いつ欠勤になっても仕方ないか」――シーン別の判断基準をまとめました。

シーン おすすめの対応 理由
急な体調不良で当日休む 事後申請で有給に振替 多くの会社で事後申請も認められる
家族の介護で長期休む 介護休業+有給を併用 介護休業給付金を活用、欠勤は最小化
病気で長期療養 傷病手当金+有給 健康保険から給与の約3分の2が支給
有給を使い切ってしまった 特別休暇制度を確認 慶弔・リフレッシュ休暇等が使える場合あり
面接・私用で平日休む 事前申請で有給 理由を伝える義務はない

有給・欠勤のメリット・デメリット比較

有給休暇のメリット・デメリット

  • メリット:給与が満額支給される、評価マイナスにできない、出勤率の計算で出勤扱い
  • メリット:会社の承諾なしでも事実上取得できる(時季変更権の範囲のみ)
  • デメリット:付与日数の上限がある(最大年20日)、繰り越しは2年まで
  • デメリット:使い切ると次の付与日まで欠勤扱いになる

欠勤のメリット・デメリット

  • メリット:有給を温存できる、無制限に休める(解雇リスクは別)
  • デメリット:給与が控除される(1日約5%減)、賞与査定マイナス
  • デメリット:定時決定で社会保険料が下がる代わりに年金も減る
  • デメリット:繰り返すと懲戒・解雇の理由になる

こんな人には「絶対に有給」/ こんな人は「欠勤もアリ」

  • 絶対に有給を選ぶべき人:賞与の査定期間中、昇格を狙っている時期、転職活動中で給与水準を維持したい人
  • 欠勤でも問題が少ない人:有給を完全に使い切った後の単発休暇、退職を控えて評価が関係ない時期
  • 有給枯渇前に手を打つべき人:慢性疾患で通院頻度が高い人、育児・介護で休みが読めない人

よくある誤解

誤解①「有給を取ると同僚に迷惑がかかるから取らない方がいい」

労働基準法は2019年4月から、年10日以上の有給を付与される労働者に対し年5日の取得を義務化しています。取得させなかった場合は会社が30万円以下の罰金を受けるため、「取らない方が良い」ではなく「会社のために取らなければならない」が正しい認識です。

誤解②「無断欠勤を1日でもしたら即解雇」

無断欠勤を理由とした解雇は、判例上2週間以上の継続的な無断欠勤+出社督促への無視といった厳しい要件が必要とされます。1日の無断欠勤で即解雇は社会通念上認められず、不当解雇となる可能性が高いです。

誤解③「有給は退職時に必ず買い取ってもらえる」

退職時の有給買い取りは会社の任意です。買い取り義務はないため、消化しきれない有給は退職日までに自分で使い切るのが基本となります。

まとめ:有給休暇と欠勤の違いをおさえる7つのポイント

  • 有給休暇は労働基準法第39条で保障された権利、欠勤は労務提供義務を果たせなかった状態
  • 給与は有給=満額支給、欠勤=ノーワーク・ノーペイで控除
  • 欠勤控除の標準計算は「月給÷月平均所定労働時間×欠勤時間」(厚労省モデル)
  • 労基法附則136条により、有給取得を理由とした査定マイナスは違法
  • 欠勤は賞与査定・出勤率・社会保険・将来の年金に多面的な影響
  • 退職時の有給消化に会社は時季変更権を行使できない
  • 2019年4月以降、年10日以上の有給付与者は年5日取得が義務化されている

結局のところ、有給と欠勤は「同じ休む」でも経済的・キャリア的に大きな差を生む選択肢です。あなたが今いる会社の就業規則と有給残日数を一度確認してみると、自分のリスク管理に役立つ知識になります。困ったときには都道府県の労働局や厚生労働省の「労働条件相談ほっとライン」に無料で相談できることも、覚えておくと心強いはずです。

あなたは過去1年で「有給を使い切り欠勤になった」経験はありますか?

  1. 何度かある
  2. 1回だけある
  3. ギリギリ有給で済ませた
  4. そもそも有給を毎年使い切らない

📚 参考文献・出典

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