2026年10月2日、旭川地方気象台が北海道の旭岳で初冠雪を観測しました。NHKは、2日朝に標高2291メートルの旭岳の頂上付近が雪に覆われているのが観測され、全国で今シーズン最も早い初冠雪になったと伝えています。
ただ、今年の初冠雪は、例年と同じ手順で決まったわけではありません。気象庁は全国44の山を対象に職員の目視で初冠雪を観測してきましたが、令和8年度の冬シーズンから目視をやめ、解析積雪深という推定値で山頂の積雪を示す方式に切り替えました。
- 初冠雪は山頂付近が雪で白くなった状態の初日で、雪の量は問われない
- 2026寒候年までは気象台の職員が山を見て決め、雲や夜間は発表できなかった
- 2027寒候年(2026年8月から)は、解析積雪深で山頂の積雪を示す
- 方式が違うため、去年までの日付とは単純に並べて比べられない
旭岳の初冠雪は新方式の最初の記録になった
「全国で今季最も早い」という見出しは、そのとおりです。ただ、この日付を過去の記録と並べてよいのかというと、気象庁は注意書きを付けています。見出しの熱さと注意書きの冷静さの差が、私にはこの記事を書く理由になりました。
気象庁の一覧ページに載っている旭岳の日付
気象庁の「初冠雪の記録等」のページは、2026年10月2日11時時点の山頂の積雪の状況を表示しています。この時点で4日以内に初冠雪した山は旭岳だけで、初冠雪日は2026年10月02日です。ほかの山の欄は「積雪なし」でした。ページは毎時25分頃に更新されます。
今季から何が変わったのか
気象庁の案内によると、これまでは職員が目視で観測してきました。近年はアメダスや気象レーダー、気象衛星ひまわりなどの観測技術を使うことで、積雪の状況を解析積雪深として客観的かつ定量的に把握できるようになったため、令和8年度の冬シーズンから目視に代えました。山頂が雲に覆われている場合や夜間でも、積雪の情報を出せる点が理由として挙げられています。
アメダスやひまわりは、天気予報を支える観測網でもあります。観測から予報が出るまでの流れは、天気予報の仕組みの記事で整理しています。
初冠雪とは、山頂付近の雪を数える言葉です
私は初冠雪を、その山に初めて雪が積もった日だと思っていました。気象庁の「初冠雪の観測」を読むと、目視の時代の定義には「気象台から見えた」という条件が入っています。間違っていたのは山ではなく、私の見方でした。
冠雪は量の多少を問わない
気象庁の定義では、雪やあられなどが山頂付近に積もって白く見えることを冠雪と呼び、量の多少は問いません。通常は、寒候年(前年8月1日から当年7月31日まで)に気象台から初めて見えた時を、その山の初冠雪としてきました。記録は日単位です。
たとえ薄く積もっただけでも、白く見えれば冠雪です。「本格的に雪が積もった日」ではないところが、ニュースを読むときに引っかかりやすい点でした。
初雪とは別の記録
同じ季節現象でも、初雪は秋から冬にかけて初めて降る雪で、みぞれでもよいとされています。初雪は降った雪、初冠雪は山頂付近に積もって白く見える雪です。季節現象とは、ある季節にだけ現れ、その季節を特徴づける大気や地面などの現象を指します。
新潟の長岡で育った私にとって、雪は街に降るものでした。山に積もった雪の最初の日を、気象台が数えているという感覚は、これまでありませんでした。
富士山だけは決め方が違う
標高の高い富士山には特例があります。当年の富士山特別地域気象観測所の日平均気温の最高値が出た日以降に、初めて冠雪を観測した日を初冠雪とします。なぜその決め方なのかは、確認した資料には書かれていませんでした。
初冠雪のニュースを、これまでどのくらい意識して見ていましたか?
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目視の初冠雪は、気象台から山が見えた日の記録でした
雲に隠れた日と夜は記録できなかった
旭川地方気象台は、山頂付近が積雪になっていても、雲に覆われていたり視程が悪かったりして気象台から山頂や中腹の状況が確認できない場合は、初冠雪にならないと説明していました。気象庁の今回の案内は、雲に覆われている場合や夜間でも積雪の情報を出せるようになった点を、切り替えの理由に挙げています。
この仕組みでは、記録された日付は「最初に雪が積もった日」ではなく、「最初に気象台から見えた日」です。雪が先に降っていても、曇りが続けば記録は遅れる余地がありました。ここは仕組みから導いた私の理解で、公式資料がそう書いているわけではありません。
旭岳の記録は1888年から続いている
旭川地方気象台の令和7年10月9日の発表によると、旭岳の初冠雪の観測開始は1888(明治21)年です。平年値は9月25日、最も早かったのは1925年の9月6日、最も遅かったのは10月20日でした。平年値は、気象庁の用語では1991年から2020年までの平均値です。
9月6日から10月20日までを数えると、9月の残り24日に10月の20日を足して44日です(9月は30日まで)。同じ山の同じ現象が、年によって44日も動くことになります。
2025年は10月9日に観測され、平年より14日遅く、昨年より11日早い日付でした。観測開始からの遅い記録では第4位です。数字を並べて、私は少し驚きました。初冠雪の日付は、年ごとのぶれがとても大きい現象です。
解析積雪深は、山の雪をどう数えているのか
解析積雪深は、積雪の深さを1時間ごとに約5km四方の細かさで推定したものです。人が山を見るのではなく、観測値と計算で面として雪の深さを出す方式です。
解析積雪深ができるまで
(解析雨量や局地モデル)
積雪の深さを計算
観測値で補正
降水量・気温・日射量を積雪変質モデルに入れる
気象庁の説明では、解析雨量や局地数値予報モデルの降水量、気温、日射量などを積雪変質モデルに与えて、積雪の深さを計算します。モデルが計算するのは、新たに積もる雪の量、とける雪の量、時間がたつにつれて雪が沈み込む深さです。降水量の観測そのものが気になる方は、雨量計の仕組みを扱った記事も読んでみてください。
アメダスの積雪計で答え合わせをする
計算した積雪の深さは、アメダスの積雪計の観測値で補正されます。旭岳の山頂に積雪計があるのかどうかは、私が確認した資料には書かれていませんでした。補正の基準になる地点がどこにあるかで、山頂の推定の確からしさは変わるはずなので、気になっている点です。
積雪計のない場所も面で見られる
気象庁は、積雪計による観測が行われていない地域を含めて、積雪や降雪の面的な状況を把握できる点を利点に挙げています。目視の弱点だった「雲」「夜間」を越えられるのは、このためです。
新方式の弱点は、5km平均と気温1〜3℃のあたりにある
山頂の一点の値とは一致しない
解析積雪深は約5km四方の平均的な値です。気象庁は、局地的な降雪の多寡は表現できないこと、値が個別地点の観測値と必ずしも一致しないことを留意点に挙げています。山の頂上のごく狭い範囲だけが白くなる初冠雪の場面と、5km四方の平均は、相性が良いとは言えない部分があります。
雨か雪かの境目に弱い
気象庁は、次のような条件では精度が下がる可能性があるとしています。風が強い場合は雪が流されるため、地上の気温が1〜3℃のときは雨と雪の判別が難しいため、上空に暖かい空気が入っているときは上空で雪がとけるためです。
初冠雪が話題になる秋の初めは、雨と雪が入れ替わる気温の範囲に山頂が入りやすい時期です。これは私の見立てですが、新方式が一番むずかしい場面に、初冠雪の判定が置かれているように思います。
何cmで初冠雪と見なすのかは確認できなかった
解析積雪深から初冠雪を決める数値の基準は、私が確認した気象庁のページには書かれていませんでした。分かるのは、天候や時間帯によらず山頂の積雪の状況を示すこと、初冠雪に加えて山頂の現在の積雪の状況も提供することまでです。
去年までの日付と並べて比べてはいけない理由
気象庁が付けている注意書き
気象庁の「初冠雪の記録等」のページは、2027寒候年(2026年8月から2027年7月)からは解析積雪深を用いた山頂の積雪の状況を提供していると説明しています。続けて、2026寒候年までの目視による初冠雪の観測日とは手法が異なり、単純比較できないと注意しています。目視で記録した過去の日付は、2026寒候年までの記録として公開が続いています。
| 項目 | 2026寒候年まで(目視) | 2027寒候年から(解析積雪深) |
|---|---|---|
| 判定の主体 | 気象台の職員 | アメダス・レーダー・ひまわりを使った推定 |
| 雲に覆われた日 | 気象台から見えないと記録されない | 積雪の状況を出せる |
| 夜間 | 発表できないことがあった | 時間帯によらず出せる |
| 粒度 | 日単位の記録 | 1時間ごと・約5km四方の推定 |
| 過去との比較 | 観測開始からの記録と比べられる | 単純比較はできない |
| ※気象庁「初冠雪の記録等」「初冠雪に関する情報提供の改善について」の説明をもとに作成 | ||
初雪でも同じ切り替えが起きていた
彦根地方気象台の季節現象のページには、前例が載っています。2020年2月3日から、雨・みぞれ・雪の現象を自動で判別するようになり、目視観測を自動化しました。目視と自動観測では統計結果が異なるため、初雪の最早・最晩の統計は切断された、という説明です。
初霜と初氷は先に目視をやめている
同じページに、初霜と初氷についても記載があります。2026寒候年(令和7年度の冬シーズン)から、初霜および初氷の目視観測を終了したそうです。初冠雪はそれに続く切り替えということになります。
人の目で数える季節の記録が、データで測る記録へ移っていく流れは、否定する理由の見つからない変化です。曇りの日も夜も同じ基準で出せるのは、確かに強みです。その一方で、1888年からの連続した日付の線が、ここで折れ曲がる点は、素直に惜しいと思います。
初冠雪のニュースは、こう読むと判断を誤りません
同じ方式の記録同士で比べる
「今季最も早い」は、今季の新方式のなかでの順位として読むのが安全です。過去の平年値や昨年との差は、方式が違うので今季は並べられません。比べるなら、今季の新方式で積み上がる翌年以降の記録とです。
近くの山の今の様子は一覧ページで見る
気象庁の「初冠雪の記録等」のページは、全国44の山それぞれについて、初冠雪日と最新の積雪状況を表で示します。2026年10月2日11時の時点では、旭岳以外の山は「積雪なし」でした。毎時25分頃に更新されるので、夜の間に変わった様子も朝に確認できます。
見出しの日付と、方式の注意書きをセットで見る
日付が出たら、方式の名前と注意書きを一緒に見ます。この癖をつけると、「過去最も早い」「平年より遅い」といった言い切りが、どの範囲まで言えるのかが分かります。
よくある誤解
初冠雪は、その山に初めて雪が降った日?
降った日とは限りません。初冠雪は、山頂付近に雪が積もって白く見える状態の初日で、量の多少は問われません。降った雪がみぞれでもよい初雪とは、別の記録です。
今年から初冠雪は発表されなくなった?
発表されなくなったわけではありません。観測方法が職員の目視から解析積雪深に変わっただけで、気象庁は初冠雪に加えて山頂の現在の積雪の状況も提供しています。
旭岳の今年の初冠雪は、平年より遅い?
平年値の9月25日と並べて何日遅いと言いたくなりますが、言えません。気象庁は、2026寒候年までの目視による観測日とは手法が異なり、単純比較できないと注意書きをしています。この記事の情報は2026年10月時点のものです。最新の状況は気象庁のページで確認してください。
まとめ:旭岳の初冠雪は、日付よりも測り方に注目
2026年10月2日の旭岳の初冠雪は、気象庁が目視をやめて解析積雪深に切り替えた最初のシーズンの記録です。初冠雪は山頂付近の雪で、量は問われません。目視の時代は気象台から見えた日の記録で、雲や夜間は発表できませんでした。
新方式は、降水量や気温、日射量を積雪変質モデルで計算し、アメダスの積雪計の観測値で補正して、1時間ごと・約5km四方で積雪の深さを推定します。曇りの日も夜も出せる一方で、5km平均であること、気温1〜3℃や強風のときに精度が落ちることが気象庁の留意点です。
旭岳の日付は、今季の方式のなかでの最初の記録として読むのが妥当です。去年までの日付とは、気象庁自身が単純比較できないと書いています。次にこの手のニュースを見るときは、日付と一緒に、その日付がどう決まったのかを見てみてください。
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参考文献・出典
- ・気象庁 鹿児島地方気象台「初冠雪に関する情報提供の改善について」(令和8年7月31日) https://www.data.jma.go.jp/kagoshima/update/houdou/jma-kagoshima-20260731.pdf
- ・気象庁「初冠雪の観測」(令和8年7月31日) https://www.data.jma.go.jp/stats/data/mdrr/fsn_cap/obs_method.pdf
- ・気象庁「初冠雪の記録等」(今季の山頂における積雪の状況・解説) https://www.data.jma.go.jp/stats/data/mdrr/fsn_cap/index.php
- ・気象庁 旭川地方気象台「旭岳の『初冠雪』を観測しました」(令和7年10月9日) https://www.jma-net.go.jp/asahikawa/shosai/houdou/houdou_file/houdou251009.pdf
- ・気象庁「解析積雪深・解析降雪量、降雪短時間予報」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/snow.html
- ・気象庁 彦根地方気象台「季節現象」 https://www.data.jma.go.jp/hikone/kisetsu/kisetsu.html
- ・NHK「北海道 大雪山系旭岳で初冠雪観測 全国で今シーズン最も早く」(2026年10月2日) https://news.web.nhk/newsweb/na/nd-20261002de53783










































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