犬や猫のマイクロチップはなぜ迷子の飼い主探しに役立つのか|15桁の番号と登録制度の仕組み

犬や猫の体に入れるマイクロチップに記録されているのは、15桁の番号だけです。飼い主の名前も住所も、チップの中には入っていません。それでも迷子の犬や猫が飼い主の元へ戻れるのは、読み取った番号の行き先に、環境大臣が指定した登録機関のデータベースがあるからです。

この登録制度は令和4年6月1日に始まりました。この記事では、環境省と東京都の公式ページ、環境省の統計を読んで、番号が飼い主に届くまでの流れ、手続きと費用、迷子の犬猫が実際にどれだけ返っているかを確かめます。2026年10月時点の内容です。制度は改正されることがあるので、手続きの前に環境省と日本獣医師会の最新のページを確認してください。

開始から2026年10月までは、12か月×4年+4か月=52か月で、4年4か月です。

  • チップに記録されているのは15桁の識別番号で、飼い主の情報は登録機関のデータベースにある
  • 令和4年6月1日以降、ブリーダーやペットショップは犬猫へのチップ装着が義務
  • 購入した飼い主は変更登録が必要で、期限は30日以内
  • 登録手数料は、オンライン申請が400円、紙の申請が1,400円
  • 令和6年度に自治体が引き取った犬猫のうち、飼い主などに返還されたのは犬6,630頭、猫225頭
目次

マイクロチップに入っているのは15桁の番号だけ

私はペットを飼っていません。このテーマを調べ始める前は、マイクロチップを「迷子になったら居場所が分かる小さな発信機」のようなものだと思っていました。元IT企業の広報だったのに、仕組みを聞かれたら説明できなかったと思います。公式の説明を読むと、中身はもっと地味でした。

大きさは直径2mm・長さ12mm程度で、いまは1.4mm×8.2mmが主流

環境省のQ&Aは、マイクロチップを「直径2mm、長さ12mm程度の円筒形で、外側に生体適合ガラスを使用した電子標識器具」と説明しています。最近は直径1.4mm×長さ8.2mm程度のものが主流になりつつあるそうです。東京都の案内には、内部にアンテナとIC部が入っていると書かれています。

記録されているのは世界で唯一の15桁の番号

記録されているのは、ISO規格の個体識別番号である15桁の数字です。この番号を専用のリーダーで読み取ります。環境省は、一度埋め込むと首輪や名札のように外れ落ちる心配が少なく、半永久的に読み取りが可能な個体識別証になる、と説明しています。

位置を知らせる機能については、私が読んだ環境省・東京都のページには説明が出てきませんでした。電池の記載も見当たりません。わかっているのは、番号を読み取る仕組みだということです。発信機だと思っていた私の見方は、ここで間違いだったと分かりました。

保護された犬や猫が新しい家族に迎えられるまでの流れは、保護犬・保護猫はどうやって家族になるのかで扱っています。この記事は、迷子や災害で離ればなれになったとき、飼い主へ戻る側の話です。

装着は獣医師が皮下に注入する。犬は生後2週齢、猫は4週齢から

装着は獣医師が皮下に注入する。犬は生後2週齢、猫は4週齢から
Photo by Jonatan Bustos on Unsplash

注入できるのは獣医師などに限られる

環境省によると、マイクロチップは動物病院などで獣医師が専用の注入器を使って皮下に埋め込みます。東京都の案内も、獣医療行為なので必ず獣医師等が行うとしています。飼い主が自分で入れるものではありません。

体への影響について、東京都は「表面に副作用がない材質が使われており、獣医師が正しく施術すれば、動物の体に負担をかけることはありません」と説明しています。時期は個体差があるものの、犬は生後2週齢、猫は4週齢から入れられるとされています。環境省のQ&Aは、品種にもよりますが、犬は生後2週齢、猫は生後4週齢頃から埋め込むことができるとしています。

装着証明書がないと登録できない

装着した獣医師からは「マイクロチップ装着証明書」が発行されます。飼い主の情報をデータベースに登録するときに必要な書類です。なくした場合は、装着した獣医師に再発行を依頼します。装着した獣医師が分からないときは、別の獣医師にチップの有無を確認してもらい、読み取った識別番号が書かれた書面(診断書等)を受け取る方法が案内されています。

あなたの犬や猫には、マイクロチップが入っていますか?

  1. 入っていて、登録も済んでいる
  2. 入っているが、登録は確認していない
  3. 入っていない
  4. 犬も猫も飼っていない

📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・12票)

入っているが、登録は確認していない:50%
入っていない:33%
入っていて、登録も済んでいる:17%
犬も猫も飼っていない:0%

番号を読み取ってから飼い主に連絡が届くまでの流れ

迷子の犬猫が飼い主に戻るまで

犬や猫が保護される
(保健所・動物病院など)
→
リーダーで
15桁の番号を読み取る
→
登録機関のデータベースで
飼い主情報と照合
→
自治体の職員などから
飼い主へ連絡

環境省のQ&Aによると、動物愛護管理センターや保健所に保護された場合は、自治体の職員から電話で連絡があります。動物病院で保護された場合は、動物病院か指定登録機関(日本獣医師会)からの連絡です。登録情報にアクセスするのは自治体と警察に限られる、とも書かれています。

番号だけを読み取り、中身は別のデータベースで照合する形は、社員証や交通系ICカードと共通する発想です。ただし通信の方式まで同じかどうかは今回確かめていないので、ここでは比べません。

データベースに入っている情報

東京都の案内によると、登録するのは次の3種類です。マイクロチップの識別番号、所有者情報(氏名・住所・電話番号・メールアドレスなど)、動物情報(名前・品種・毛色・生年月日・性別・犬は狂犬病予防法の登録番号など)です。

チップ側に飼い主の情報を書き込まない設計には、理由が読み取れます。引っ越しや電話番号の変更があっても、体に入れたチップを入れ替えず、登録情報の届出だけで済みます。

連絡先が古いと、ここで止まる

環境省は、確実な返還につなげるために、犬や猫が逃げてしまったときは公的機関から連絡が取れるようにしておいてください、と呼びかけています。番号が読み取れても、登録された電話番号が使われていなければ、連絡は届きません。

だれにどんな義務があるのか

立場 義務の内容
ブリーダー・ペットショップ 令和4年6月以降に取得した犬猫へのチップ装着と情報登録が義務。怠ると、都道府県知事等による勧告・命令・登録の取消しの対象
購入した飼い主 登録証明書とともに受け取り、自分の情報に変更登録する義務(30日以内)
すでに飼っている飼い主 装着は努力義務。装着した場合は、30日以内の登録が義務
知人・保護団体から譲り受けた飼い主 チップがなければ装着は努力義務。チップ付きなら変更登録が必要
※環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録に関するQ&A」、東京都「犬、猫へのマイクロチップ装着に関する制度について」より作成

ペットショップで買った場合

ブリーダーやペットショップで販売されている犬猫には、チップが装着され、販売業者の情報が登録されています。購入者の情報に書き換える手続きが変更登録です。東京都は、令和4年6月以降にペットショップ等から購入した犬猫にはチップが装着されている(一部例外あり)としています。

すでに飼っている犬や猫の場合

家庭で飼っている犬猫への装着は努力義務です。ただし動物病院でチップを入れた場合は、指定登録機関への登録が義務になります。環境省は、登録や届出を行わないと法律違反になる、と明記しています。

知人や保護団体から譲り受けた場合

販売業者以外から譲り受けた犬猫には、装着は必須ではなく努力義務です。迷子になったときにチップがあれば、飼い主へ返還できる可能性が高まる、と環境省は説明しています。チップが入った犬猫を譲り受けたときは、前の飼い主から登録証明書を受け取り、変更登録をします。犬や猫を譲り渡すときも、登録証明書を一緒に渡す必要があります。

登録の費用と手続きは、オンラインなら400円

手続き オンライン 紙
登録・変更登録(1回) 400円 1,400円
登録証明書の再交付 300円 1,300円
住所・電話番号などの変更届、死亡の届出 無料
※環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録について」より

パソコンやスマートフォンで、その場で証明書が受け取れる

環境省の案内では、オンライン申請の流れは、登録証明書の準備、申請、手数料の支払い(クレジットカードまたはバーコード決済)、登録証明書のダウンロードと保管です。環境省は、オンラインで申請した場合に交付される登録証明書はすぐに受け取れる、と説明しています。紙の申請の支払いは、銀行振込かコンビニ決済です。

オンラインと紙の差は、1,400円−400円=1,000円です。登録する頭数が1頭なら、紙を選ぶだけで1,000円多くかかります。

引っ越しや結婚で姓が変わったとき、犬猫が亡くなったとき

氏名・住所・電話番号を変えるときは、指定登録機関に届出をします。手数料はかかりません。飼っている犬や猫が亡くなったときも、死亡の届出が必要で、こちらも手数料は無料です。どちらの届出でも登録証明書が必要になるので、保管しておく必要があります。

犬は、チップが鑑札とみなされることがある

東京都の案内によると、この制度に沿ってチップの登録等を行った場合、狂犬病予防法上の犬の登録の手続きが不要になることがあり、その場合はチップが鑑札とみなされます。犬の登録が別途必要かどうかは、住んでいる区市町村に問い合わせるよう案内されています。環境省は、チップの登録手数料と、市町村が徴収する犬の登録手数料は別のものだと注意しています。

迷子の犬と猫は、どれだけ飼い主の元に戻っているのか

迷子の犬と猫は、どれだけ飼い主の元に戻っているのか
Photo by 12photostory on Unsplash

環境省は、都道府県などが引き取った犬猫の数を毎年まとめています。令和6年度(2024年4月1日〜2025年3月31日)の数字は次のとおりです。

引取り合計 所有者不明(成熟個体) 所有者不明(幼齢) 返還数
犬 17,399頭 12,300頭 2,884頭 6,630頭
猫 22,010頭 2,626頭 11,062頭 225頭
※環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」令和6年度。幼齢の個体は主に離乳していない個体

成熟した犬と猫では、返還の割合に大きな差がある

この表から、成熟個体の返還の割合を計算しました。環境省の表にある返還数のうち幼齢の個体(犬33頭、猫36頭)を除いた数を、所有者不明の成熟個体の引取り数で割っています。

項目 計算式 結果
成熟した犬の返還の割合 (6,630−33)÷12,300 約53.6%
成熟した猫の返還の割合 (225−36)÷2,626 約7.2%
猫の所有者不明のうち幼齢の割合 11,062÷(2,626+11,062) 約80.8%

成熟した犬は2頭に1頭以上が戻っています。猫は7.2%。……差が大きすぎます。私は計算し直しましたが、結果は同じでした。

この数字だけでは、マイクロチップの効果は測れない

ここで気をつけたいのは、環境省の統計に「チップが入っていたかどうか」の区別がないことです。犬と猫の差が、チップの有無によるものか、飼い方の違い(犬は登録と鑑札が決まっているなど)によるものか、この表からは判断できません。猫は所有者不明の引取りの約8割が、離乳していない幼齢の個体です。野外で生まれた子猫が多く含まれていて、飼い主がそもそもいない可能性があります。

この表で言えるのは、保護される犬と猫の返還には、種類によって大きな差があるという事実までです。チップがあれば返還が増えると統計で確かめられたわけではありません。環境省のQ&Aも、チップがあれば飼い主へ返還できる可能性が高まる、と書くにとどめています。

引取り数は、犬も猫も年々減っている

同じ統計の過去の数字を並べると、引取り数は犬も猫も減っています。令和4年度、令和5年度、令和6年度の順で、犬は22,392頭、19,352頭、17,399頭です。猫は30,401頭、25,224頭、22,010頭です。

犬の令和6年度の引取り数は、令和4年度の17,399÷22,392≒0.78、つまり約22%減です。猫は22,010÷30,401≒0.72で、約28%減になります。

この減少の理由は、統計からは分かりません。チップの登録制度が影響したのかどうかも、この数字だけでは言えません。

マイクロチップの限界とデメリット・注意点

登録しなければ、番号は飼い主につながらない

チップに入っているのは番号だけなので、データベースに飼い主の情報がなければ、読み取っても飼い主に連絡できません。環境省は、チップを装着した場合は登録が義務になる、としています。装着で終わりではなく、登録まで済ませて初めて役に立ちます。

連絡先を変えたら、届出まで忘れない

引っ越しや電話番号の変更をしても、届出をしなければ登録情報は古いままです。届出は無料ですが、登録証明書が必要です。私も賃貸暮らしで、住所を変える可能性は人並みにあります。更新の手間はこの制度の弱点だと感じました。

以前の民間登録とは別の制度

環境省は、令和4年6月1日より前から民間の登録団体で登録している場合、販売業者以外の飼い主が現在所有している犬猫には登録の義務はない、と説明しています。環境省の登録制度は、日本獣医師会が民間団体として実施している登録事業(AIPO)とは異なるので注意するよう、Q&Aに書かれています。登録を希望する場合は、指定登録機関のコールセンターに問い合わせます。

装着費用は公式資料に書かれていない

登録手数料400円とは別に、動物病院でチップを入れる費用がかかります。この装着費用は、私が読んだ環境省・東京都のページには書かれていませんでした。動物病院ごとに料金を確認する必要があります。また、データベースに登録できるのはISO規格に適合したチップに限られるので、規格を病院に確認しておくと安心です。

どのケースで何をするか:手続きの判断早見表

状況 必要な手続き 期限・費用
ペットショップなどで犬猫を買った 登録証明書を使って変更登録 30日以内・オンライン400円
チップ付きの犬猫を譲り受けた 前の飼い主から登録証明書をもらい、変更登録 30日以内・オンライン400円
飼っている犬猫にチップを入れた 装着証明書を使って登録 30日以内・オンライン400円
住所・電話番号・氏名が変わった 変更の届出(登録証明書が必要) 無料
犬や猫が亡くなった 死亡の届出(登録証明書が必要) 無料
犬や猫を譲り渡す 登録証明書を一緒に渡す —
※環境省・東京都の公式ページより作成。期限の30日は東京都の案内による

すでに犬や猫を飼っている人は、まず手元の登録証明書を探し、登録されている電話番号が今も使えるものか確かめてください。台風の季節は、災害で離ればなれになる可能性が頭をよぎる時期です。環境省は、地震や水害などの災害で飼い主と離れたときにも、チップの番号から飼い主に戻せる、と説明しています。

これからペットショップで迎える人は、お店から渡される登録証明書を受け取り、30日以内の変更登録を予定に入れておくのが確実です。動物を売る側の事業者は、購入者に変更登録の法的義務があることを情報提供しなければならない、と環境省に書かれています。

マイクロチップのよくある誤解

マイクロチップがあれば、居場所が分かりますか

居場所が分かる仕組みではありません。環境省や東京都の説明では、チップには15桁の番号が記録され、保護された先でリーダーで読み取って、登録情報と照合する仕組みです。

チップを入れれば、飼い主の情報は自動で登録されますか

自動では登録されません。チップを入れたあと、獣医師が発行する装着証明書を使って、飼い主自身が指定登録機関に申請します。装着した場合は30日以内の登録が義務です。

以前から飼っている犬や猫も、装着と登録が義務ですか

家庭で飼っている犬や猫への装着は努力義務です。装着した場合は登録が義務になります。令和4年6月1日より前に民間団体へ登録している場合、現在所有している犬猫には、環境省の制度への登録義務はありません。

まとめ:マイクロチップの仕組みと、登録で確かめること

犬や猫のマイクロチップに入っているのは15桁の番号で、飼い主の情報は日本獣医師会が運営する指定登録機関のデータベースにあります。迷子や災害で保護されたときは、リーダーで番号を読み取り、自治体や動物病院を通じて飼い主へ連絡が届きます。

飼い主の義務は、状況によって異なります。ペットショップで買った場合や、チップ付きの犬猫を譲り受けた場合は変更登録が必要です。すでに飼っている犬猫にチップを入れた場合は登録が必要で、どちらも30日以内、オンラインなら400円です。住所や電話番号の変更と死亡の届出は無料です。

令和6年度の統計では、保護された成熟した犬の返還は約53.6%、猫は約7.2%でした。ただし、チップの有無を分けた統計ではないので、効果の大きさまでは確かめられません。確実に言えるのは、番号が読まれても連絡先が古ければ飼い主に届かない、という点です。登録証明書を探して、登録情報を一度確かめてみてください。

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  2. なんとなく知っていた
  3. 初めて知った
  4. 誤解していた

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なんとなく知っていた:55%
誤解していた:27%
知っていた:9%
初めて知った:9%

📚 参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は、社会の制度や法律の“仕組み”を知る面白さをお届けし、世の中のルールに興味を持っていただくための読み物です。個別の法的判断を示すものではなく、制度は改正されることもあります。具体的なケースは専門家や公的機関にご確認ください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。