食料品の消費税1%とゼロ税率の違いはどこにあるのか|非課税とも比べて解説

2026年10月8日のニュース一覧にも、「食料品の消費税ゼロ」という言葉が並んでいました。ところが、2026年9月15日に閣議決定された大綱に盛り込まれたのは、ゼロではなく1%です。期間は2027年4月1日(令和9年4月1日)から2年間と、国税庁の資料に書かれています。

では、税率がゼロの場合と1%の場合で、何が違うのか。そもそも「ゼロ税率」と「非課税」は同じものなのか。この記事では、国税庁と経団連の公表資料で確かめた範囲で、食料品の消費税1%の中身と、ゼロ税率・非課税・免税の違いを、事業者の計算まで含めて整理します。

  • 食料品の消費税は2027年4月から2年間、国・地方合計で1%にする案(法案の成立が前提)
  • ゼロ税率は「課税取引のまま税率が0%」、非課税は「課税の枠の外」で、仕入れの消費税の扱いが逆になる
  • 売上が1%で経費が10%の事業者は、消費税が還付になる場合がある
  • 外食は10%のまま、持ち帰りと出前は1%で、判定は提供する時点で行う

食料品の消費税は「ゼロ」ではなく1%と示されている

食料品の消費税は「ゼロ」ではなく1%と示されている|スーパーの青果売場
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いつから、いくらになるのか

国税庁のパンフレットによると、令和9年4月1日(2027年4月1日)から令和11年3月31日までの2年間、飲食料品に係る消費税率が国・地方合計で1%に引き下げられます。内訳は消費税(国税)が0.78%、地方消費税が0.22%です。現在の軽減税率8%は、国税6.24%と地方消費税1.76%の合計ですから、同じ割り方で小さくなる形です。

ここで大事な注意が1つあります。国税庁の特設サイトには、この内容は「法案が国会に提出され、審議を経た上で可決・成立した場合のもの」と明記されています。2026年10月時点では、閣議決定された大綱の段階です。経団連も2026年9月29日付のお知らせで、9月15日の臨時閣議で決まった大綱に「飲食料品の消費税率を1%とする」ことが盛り込まれたと伝えています。

私はニュースの見出しを読んで、てっきり税率が0%になる話だと思っていました。資料の1行目を読んで、ようやく「1%」だと気づきました。見出しの熱と、資料の数字の落ち着きには、少し温度差があります。

1%になる食料品、ならない食料品

1%の対象は、食品表示法に規定する「食品」から酒類を除いたものです。範囲は、2027年3月31日以前に軽減税率8%の対象だった飲食料品と同じと、パンフレットに書かれています。つまり、いま8%のものが1%に、10%のものは10%のままです。

パンフレットが挙げる例を並べると、次のとおりです。

場面 適用税率 資料での説明
持ち帰り(テイクアウト) 1% 飲食店が行うものでも、単なる飲食料品の販売
出前・宅配 1% 単に飲食料品を届けるだけのもの
店内の飲食(外食) 10% テーブル・椅子などの飲食設備がある場所で飲食させる役務
酒類 10% 飲食料品から除かれている
新聞の定期購読 8% 税率表では「その他」の10%とは別枠で、6.24%+1.76%
※国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて(令和8年9月)」パンフレットより。内容は法案成立が前提

税率0%、非課税、免税は何が違うのか

「ゼロ」という言葉には、実は3つの別の仕組みが混ざっています。税率が0%の課税取引(ゼロ税率)、課税の対象外に置く非課税、そして税を免除する免税です。日本の制度では、ゼロ税率に近い働きをするのが輸出免税です。見分けるポイントは、売る側が仕入れで払った消費税を取り戻せるかどうかです。

非課税は「課税の枠の外」に置かれた取引

国税庁のタックスアンサーNo.6201によると、非課税取引とは、課税の対象になじまないものや社会政策的配慮から課税しないと定められた取引です。土地の譲渡や貸付け、社会保険医療の給付、介護保険サービス、学校教育などが挙がっています。

非課税の売上は、課税売上割合の計算では分母(総売上高)には入りますが、分子(課税売上高)には入りません。国税庁No.6405の説明どおりです。しかも課税売上高が5億円以下で課税売上割合が95パーセント以上なら仕入れの税額は全額控除されると、No.6421に書かれています。逆に言えば、非課税の売上が多い事業者は、この割合が下がって控除の扱いが不利になります。

免税(ゼロ税率)は「課税取引のまま、税だけ免除」

輸出免税が代表例です。国税庁No.6551は、輸出取引は消費税が免除される一方で、その取引に対応する課税仕入れに含まれる消費税は、申告のとき仕入税額控除ができると説明しています。「外国で消費されるものには課税しない」という考え方に基づく仕組みです。国内の外国人旅行者向けの免税制度も、同じ発想の延長にあります。

海外にも例があります。英国政府の案内では、人が食べる飲食料品は「usually zero-rated」、つまり通常はゼロ税率とされています。ただし、ケータリング、酒類、菓子類、スナック菓子、温かい食品などは、つねに標準税率です。食料品にゼロ税率を使う国は、外食や嗜好品を外す線引きも同時に持っています。

1%は「税率が低い課税取引」に入る

1%は、ゼロでも非課税でもなく、税率の低い普通の課税取引です。売上には1%の消費税がかかり、仕入れと経費の消費税は、これまでと同じ仕組みで控除できます。ゼロ税率との違いは、売上側の税額がゼロになるか、わずかに残るかだけです。非課税との違いは、控除の道が閉ざされるかどうかにあります。

区分 売上にかかる消費税 仕入れの消費税の控除 例
低い税率の課税(1%) 1%がかかる できる 2027年4月からの飲食料品(案)
免税(ゼロ税率型) 免除される できる 輸出取引
非課税 課税の枠の外 原則としてできない(課税売上割合による) 土地の譲渡、社会保険医療、学校教育

食料品の消費税が下がったら、いちばん気にするのは何ですか?

  1. レジやレシートの税率表示
  2. 店内と持ち帰りの価格差
  3. お店の値札が実際に下がるか
  4. 特に気にならない

📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・6票)

レジやレシートの税率表示:50%
お店の値札が実際に下がるか:33%
店内と持ち帰りの価格差:17%
特に気にならない:0%

仕入税額控除で見ると、1%でも還付が出る理由

仕入税額控除で見ると、1%でも還付が出る理由|電卓と書類の机
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消費税の納付額は「売上の税額−仕入れの税額」

国税庁No.6355は、消費税の納付額を、課税期間中の課税売上げに係る消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を差し引いて計算すると説明しています。差し引くことを仕入税額控除といいます。消費税が国に届くまでの流れは、この引き算の連鎖でできています。

売上が1%で、仕入れや経費の一部が10%なら、引き算の結果がマイナスになることがあります。国税庁のパンフレットも、仕入れが標準税率10%で売上が1%となる場合、課税事業者として一般課税で申告することで、消費税の還付を受けられる可能性があると書いています。

仮の数字で、現在の8%・1%・0%を比べる

パンフレットには金額の例がないので、前提を置いて私が計算してみました。食料品を年間1,000万円(税抜)売る小売店があり、食品の仕入れが600万円、包装資材や光熱費などの経費が200万円(税抜)とします。食品の売上・仕入れは同じ税率、経費は10%、端数は無視し、国と地方を合計した税率で考えます。

食品の税率 計算式(万円) 結果
8%(現在) 1,000×0.08−600×0.08−200×0.10=80−48−20 12万円を納付
1% 1,000×0.01−600×0.01−200×0.10=10−6−20 16万円の還付
0%(ゼロ税率の場合) 0−0−200×0.10=0−0−20 20万円の還付
※前提を置いた編集部の試算。実在の店の数字ではありません

1%とゼロ税率の差は、20−16=4万円です。これは売上1,000万円と仕入れ600万円の差である400万円に、1%を掛けた額(400×0.01=4万円)に一致します。

この試算で見えるのは、1%とゼロの差が、仕入れより売上が大きい分だけ生じる小さな額だということです。経費にかかる10%の消費税は、どちらの場合も同じように戻ります。非課税なら、その控除そのものが使えません。税率の数字より、控除の扉が開いているかどうかのほうが、事業者の手元に残るお金への影響は大きいと私は読みました。

店頭と請求書で何が変わるのか

インボイスには「適用税率1%」を書く

パンフレットによると、飲食料品を販売した場合のインボイスには、適用税率1%とその消費税額等を記載します。それ以外の記載事項に変更はなく、「軽減税率の対象品目である旨」を「税率1%の対象品目である旨」に書き換える必要もありません。

記載例は、4月8日の魚が5,000円、4月15日のタオルセットが2,000円の請求書です。合計は50,000円、消費税1,400円で、1%対象が40,000円(消費税400円)、10%対象が10,000円(消費税1,000円)、総額51,400円と整理されています。

値札の表示と古い契約の扱い

税率の切り替えに対応した総額表示が間に合わない場合、2027年2月1日から5月31日までは、実際の支払額と誤認させない掲示などを条件に、税率8%または1%での総額表示を認める特例があります。新旧の税率が混在した表示も認められています。

また、2027年1月1日前に締結した一定の定期供給契約(対価を4月1日前に領収済みのもの)や、通信販売で1月1日前に販売条件を示し4月1日前に申込みを受けたものは、4月1日以後に行う販売でも8%のままです。お中元のカタログ販売や、季節の食材が毎月届く定期便が例として挙げられています。

一体になった商品は「1万円以下・食品が3分の2以上」で判定

食品と食品以外があらかじめ一体になっていて、その価格だけが提示されている商品は、税抜1万円以下で、食品の価額の割合が3分の2以上なら、全体が1%の対象です。どれだけ食品が入っていれば1%になるのかという線引きは、資料を読んで初めて知りました。

買う側はレシートのどこを見ればいいのか

私はスーパーでも交通系ICとQR決済で払うので、レシートを細かく見る習慣がほとんどありません。家計簿アプリも固定費しか見ていません。それでも2027年4月以降は、同じ店で「持ち帰り1%、店内10%」が分かれるため、レシートの税率欄を一度は見ておこうと思っています。

パンフレットでは、イートインか持ち帰りかは、飲食料品を提供する時点で、顧客に意思確認をするなどの方法で判定するとされています。コンビニなら「イートインコーナーを利用する場合はお申し出ください」といった掲示でも差し支えないそうです。店内で食べるか迷う日は、買う前に伝えておくのが確実だと考えています。

値札の価格が実際にいくら下がるかは、各店の価格設定にかかっています。今回確かめた資料には、その見通しは書かれていません。ここは推測で書かないことにします。

食料品の消費税1%のデメリットと注意点

事務の負担は小さくない

経団連は、飲食料品を取り扱う事業者に「一定の影響が生じることが想定される」と書き、関係府省庁に制度の詳細の早期公表を求めています。レジやシステムの改修、税率ごとの区分経理、返品や貸倒れがあった場合の調整計算(2027年4月1日以後でも、8%で販売した分は8%で調整)など、現場の手間は確実に増えます。

特例が多く、自分がどれに当たるか分かりにくい

パンフレットには、課税事業者選択届出書の特例、簡易課税の2年縛りを外す特例、簡易課税の計算方法の特例、中間申告の特例など、7項目が並びます。たとえば簡易課税では、業種区分にかかわらず、飲食料品の販売(1%対象)に係る売上税額と同額の仕入税額を計上するとされています。

期間は2年間で、その後はこの資料からは分からない

引下げは令和9年4月1日から令和11年3月31日までの措置です。令和11年4月以降の税率について、国税庁の資料には書かれていません。法案がどう成立するかで細部が変わる可能性も、特設サイトが明記しています。

事業者は何を確認して判断するか

免税事業者や簡易課税の事業者は、還付の可能性と手続きの期限を、早めに確認しておく必要があります。パンフレットが挙げる確認点は次のとおりです。

事業者のタイプ パンフレットが示す特例
免税事業者で飲食料品を販売 2027年4月1日の属する課税期間中に「課税事業者選択届出書」を出せば、その課税期間から課税事業者になれる。還付を受けるには課税事業者になる必要がある
簡易課税で飲食料品を販売 同じ課税期間中に「簡易課税制度選択不適用届出書」を出せば、その課税期間から一般課税で申告できる。2年間の継続適用要件は適用しない
中間申告が必要な事業者 直前課税期間の飲食料品の売上・仕入れに1%を適用したものとして、仮決算による中間申告ができる

課税事業者になると、原則として2年間は消費税の申告が必要になる点も、パンフレットに書かれています。還付だけを見て届け出る前に、期間と手間も確かめてください。個別の判断は、税務署や税理士への確認が前提です。

食料品の消費税に関するよくある誤解

誤解1:税率が1%なら、ゼロ税率とほぼ同じ

消費者の負担だけを見れば、1%とゼロの差は小さく見えます。しかし制度上は、ゼロ税率は「課税取引のまま税が免除される」仕組みで、1%は「低い税率の課税取引」です。上の試算のとおり、事業者の手元に残る額の差は、売上と仕入れの差に1%を掛けた額にとどまります。

誤解2:ゼロ税率と非課税は同じ意味

同じではありません。非課税は課税の枠の外に置かれ、課税売上割合の分母にだけ入ります。免税は課税取引のまま税が免除され、仕入税額控除ができます。私も「ゼロなら全部同じ」と思っていた側で、この記事を書くために国税庁のページを読み直しました。

誤解3:食料品に関わるものは、外食も含めて全部1%になる

外食(飲食設備のある場所での飲食)と酒類は、10%のままです。持ち帰りと出前だけが1%の対象になります。

まとめ:食料品の消費税1%とゼロ税率の違い

食料品の消費税は、見出しの「ゼロ」ではなく、2027年4月から2年間は1%にする案です。法案の成立が前提で、2026年10月時点では大綱の段階です。

ゼロ税率(免税)は、課税取引のまま税率が0%で、仕入れの消費税を控除できます。非課税は課税の枠の外で、控除の扱いが変わります。1%は、そのどちらでもない低い税率の課税取引です。事業者の側では、売上が1%で経費が10%なら、消費税が還付になる場合があります。

買う側が覚えておくのは、持ち帰りと出前は1%、店内の飲食と酒類は10%という点です。最新の情報は、国税庁の特設サイトなど公的機関の発表で確認してください。2026年10月時点の公表資料にもとづいています。

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2026年10月9日 〜 2026年11月8日
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📚 参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は、税金の“仕組み”を知っていただくための読み物です。特定の手続きや商品をすすめるものではありません。申告や届出の判断は、税務署や税理士などの専門家へご相談ください。2026年10月時点の公表資料にもとづいており、制度の内容は法案の成立が前提です。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。