弾道ミサイルが日本のEEZ外に落下とは何か|領海との違いとJアラートが鳴る・鳴らない境目

「北朝鮮の弾道ミサイルとみられるもの、日本のEEZ外に落下か」。10月12日のニュースを見て、私はこの「EEZ外」を、なんとなく日本から遠い場所のことだと読んでいました。ところが海上保安庁や防衛研究所の資料を読み直すと、EEZ(排他的経済水域)は日本の沿岸からおよそ370kmまで広がる水域で、外側と内側では、警報の出し方も国際法上の扱いも変わっていました。

防衛省は12日の午前9時20分ごろと9時40分ごろに、北朝鮮が弾道ミサイルの可能性があるものを発射したと発表しました。政府関係者の話として、いずれも日本のEEZの外に落下したと推定されると報じられています。被害情報はありません。この記事では、領海・EEZ・公海がどう違うのか、EEZの内側と外側で何が変わるのかを、公的機関の資料で確かめた範囲で整理します。最新の状況は防衛省や報道で確認してください。2026年10月時点の情報です。

  • EEZは領海の外側から、沿岸の基線(海岸線に近い基準線)の200海里(約370km)までの水域。領海のように「主権」は及ばず、資源などの権利が中心
  • 領海は12海里(約22km)まで。日本の領海とEEZを合わせた広さは約447万km2で、国土面積の約12倍
  • Jアラートは、ミサイルが日本の領土・領海に落ちる、または通過する可能性があるときに使う。EEZなど領海の外では使わず、船舶・航空機に警報を出す
  • EEZの中に落ちたから即「違法」とは言い切れない。日本は国際法ではなく安全保障の問題として抗議している
  • 「EEZ外」は安全の保証ではなく、警報の区分けを示す言葉として読むのが正確
目次

EEZ外に落下とは、沿岸から約370kmより外側のこと

今回の発表で分かっていること

KSBニュース(ANN)によると、防衛省は12日の午前9時20分ごろと9時40分ごろに、北朝鮮が弾道ミサイルの可能性があるものを発射したと発表しました。発射の間隔は9時40分−9時20分=20分です。政府関係者によると、すでに日本のEEZの外に落下したと推定され、今のところ被害情報はないとのことです。海上保安庁は船舶に対して、今後の情報に留意し、落下物に近付かず、関連情報を通報するよう呼びかけています。

このニュースで、落下地点は「EEZの外か、中か」という言い方で伝えられます。陸地からの距離そのものではなく、決まった線を基準にした言い方です。

領海・EEZ・公海は、海岸から広がる帯

海上保安庁の資料では、沿岸国の管轄海域は、海岸に近い順に領海、接続水域、排他的経済水域(EEZ)と並びます。そのさらに外側が、どの国の領海やEEZにも含まれない公海です。測る起点は「領海の基線」と呼ばれる線で、通常は海岸の低潮線(干満で海面が最も低くなったときの陸地と水面の境界)です。

ミサイルの警報に関わる区分けは、あとの章で説明します。Jアラートそのものの仕組みは、Jアラートの仕組みの記事で、通信衛星から自治体の機器までの流れを解説しています。

領海・接続水域・EEZ・公海は何が違うのか

区分 基線からの幅 沿岸国の権限
領海 12海里(約22km)まで 主権が及ぶ。上空・海底・海底下にも及ぶ。他国の船は無害通航権をもつ
接続水域 24海里(約44km)まで 通関・財政・出入国管理・衛生の法令違反を防ぎ、罰することができる
EEZ 200海里(約370km)まで(領海を除く) 天然資源の探査・開発などの主権的権利、人工島や施設の設置、海洋の科学的調査、環境保護に関する管轄権
公海 EEZの外側 どの国のものでもなく、すべての国が航行・上空飛行・漁獲などの自由をもつ
※海上保安庁海洋情報部のパンフレット(2025年)による一般的な場合の説明。接続水域はEEZと重なる部分があります。

領海は「主権」、EEZは「資源などの権利」

領海では、沿岸国の主権が上空や海底にまで及びます。一方でEEZの中身は、海底や水中の天然資源を探査して開発する権利、人工島や施設を置く権利、海洋調査や環境保護についての管轄権です。海そのものを自国の領土のように扱える水域ではありません。

ここは私が最初に勘違いしていた部分でした。「排他的」という言葉の印象が強く、EEZは領海の大きなものだと思い込んでいたのです。実際には、国連海洋法条約の58条で、すべての国がEEZで船舶や航空機の運航などの自由をもつと定められています。防衛研究所の論考も、EEZの沿岸国の権能は限定的だと説明しています。

なぜ200海里という線が生まれたのか

防衛研究所の論考によると、EEZの原型は第二次大戦後にあります。米国のトルーマン宣言に触発された南米諸国が、自国沿岸の漁業資源について200海里幅の管轄区域を主張し、1970年代にはアフリカ諸国も200海里水域を提唱しました。それが国連海洋法条約で、天然資源に関する主権的権利と、人工島の設置・海洋の科学的調査などに関する管轄権を沿岸国がもつ水域として制度化されました。

つまりEEZは、軍事や安全保障のための線として生まれたのではありません。水産資源や海底資源を沿岸国が管理するための線で、あとからミサイルの落下地点を説明する物差しにも使われるようになった、というのが私の理解です。

ミサイルのニュースで「EEZ外に落下」と聞いたとき、その意味を説明できますか?

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初めて意味を考えた:31%
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領海との違いが分からない:15%

日本の海は国土の約12倍もある

日本の領海とEEZは国土の約12倍|水平線まで広がる青い海
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領海とEEZを合わせて約447万km2

海上保安庁のパンフレットによると、日本は国土面積の約12倍、447万km2にのぼる領海とEEZをもっています。内閣府の「海洋に係る基本的情報」では、領海(内水を含む)が約43万km2、EEZが約405万km2とされ、後者には接続水域が含まれます。

この数字を割合にすると、領海は43÷447≒9.6%、EEZは405÷447≒90.6%です。日本の周りの海のうち、約9割はEEZにあたります。私は領海のほうが主役だと思っていたので、この割合には驚きました。

領海の外側にEEZが広がる幅

領海は約22km、EEZの外縁は約370kmです。領海の外側からEEZの外縁までの幅は370−22=約348kmになります。領海の外側には、陸から見えない距離の海が、これだけ広がっていることになります。

隣の国と重なるときは話し合いで線を引く

向かい合う国の距離が400海里未満の海では、お互いのEEZや大陸棚が重なります。海上保安庁によれば、その場合は国同士の合意で境界を決める必要があります。地図上のEEZの線が国境線のようにきれいに引かれているわけではなく、決まっていない部分もあります。

EEZの内か外かで、警報の出し方が変わる

EEZでは船舶や航空機に警報が出される|外洋を航行する船
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Jアラートが使われるのは領土・領海に関わるとき

鳥取県が掲載している政府の説明(令和7年7月1日更新)によると、Jアラートは、弾道ミサイルが日本の領土・領海に落下する可能性、または領土・領海を通過する可能性がある場合に使われます。領土・領海に関わる可能性がないと判断された場合には使われません。

そして領海の外側にあたる日本周辺の海域(EEZなど)にミサイルが落下する可能性がある場合は、Jアラートは使わず、船舶や航空機に迅速に警報を出す、と説明されています。EEZの内外という言葉は、まさにこの使い分けの文脈で出てきます。

船舶への情報提供と、落下物への注意

今回、海上保安庁は船舶に対し、今後の情報に留意し、落下物に近付かないこと、関連情報を通報することを呼びかけました。EEZは漁場でもあり、船が航行する海です。住民向けの避難の呼びかけとは別に、海を使う人向けの注意が出る、という分担になっています。

自治体の防災無線との関係は、防災無線の仕組みの記事で整理しています。

弾道ミサイルは10分もしないうちに届くことがある

政府広報オンラインは、弾道ミサイルは発射から10分もしないうちに飛来する可能性があると説明しています。そのため、領土・領海に落ちる可能性があると判断した場合は、時間的な余裕のない事態として、Jアラートで一斉に伝える仕組みになっています。

EEZの中に落ちたら違法なのか

2022年の中国の訓練で、日本のEEZに5発が落ちた

防衛研究所の論考によると、2022年8月4日に中国は9発の弾道ミサイルを発射し、うち5発が日本のEEZ内に落下したと推定されました。日本は中国を非難して強く抗議し、訓練の中止を申し入れました。理由として挙げたのは、日本の安全保障と国民の安全に関わる重大な問題だということです。

この事案では、与那国町漁業協同組合が組合員に出漁の自粛を求めました。EEZは漁場でもあるため、ミサイルが落ちると、安全保障の問題にとどまらず、海の権益や漁業にも影響が出ます。

国際法の線と、安全保障の線は同じではない

同じ論考は、沿岸国のEEZで他国が軍事訓練や演習をするときに、沿岸国の同意は特段の事情がない限り不要と解されるとしています。ただし、それで自分勝手な訓練が許されるという意味ではないとも書いています。国連海洋法条約の58条3項には、他国のEEZで権利を使うときは沿岸国の権利と義務に「妥当な考慮」を払う義務があるからです。

この論考は、防衛研究所の研究官の見解です。日本政府の公式見解そのものではありません。私が確かめられたのは、EEZ内への落下について「法律上は問題がない」「違法だ」と単純に言い切れる文章ではなく、日本が安全保障上の問題として抗議した、という点までです。

ニュースの「EEZ外」を読むときの見方

「落下とみられる」は推定の言葉

今回の報道でも「落下か」「落下したものと推定される」という表現でした。落下地点はこの時点では推定で、断定ではありません。10月3日の発射では、防衛省が最高高度や飛翔距離まで発表していました。速報のあとに詳しい発表が出ることがあるので、続報も確認してください。

海を使う人は、海上保安庁の情報を見る

漁業やヨットなどで海に出る人は、報道だけでなく、海上保安庁が呼びかける落下物への注意を確認してください。EEZの外に落ちた場合に落下物が流れ着くかどうかは、確かめられた資料がなかったので、ここでは書きません。

陸にいる人は、Jアラートが鳴ったかどうかで行動する

陸の上にいる人にとっては、EEZの内外よりも、Jアラートの有無のほうが行動に直結します。避難の呼びかけが出たら、政府広報オンラインの案内にあるとおり、屋外なら近くの建物や地下に入り、建物がなければ物陰に身を隠し、地面に伏せて頭部を守る行動を優先します。

EEZの考え方で、注意しておきたい点

「EEZ外」は安全を保証する言葉ではない

EEZの外に落下したという表現は、日本の領土・領海・EEZに入っていないという位置の説明です。日本にとって脅威でない、という意味ではありません。日本政府は、EEZの外に落ちた場合でも、国連安全保障理事会の決議に違反するとして抗議しています。

EEZの境界は国によって主張が重なる

前の章で書いたとおり、向かい合う国との間では、EEZは話し合いで決めます。ニュースの落下地点が「日本のEEZ外」かどうかは、日本が主張する線を基準にした表現です。

確かめられなかったこと

今回の発射の最高高度や飛翔距離は、記事の執筆時点では防衛省の発表原文を確認できていません。また、今回のミサイルに対してJアラートが使われたかどうかも、確認した資料には出ていなかったため書いていません。

EEZに関するよくある誤解

EEZは領海の大きいものですか?

違います。領海は主権が及ぶ水域で、12海里(約22km)までです。EEZは200海里(約370km)までで、沿岸国がもつのは天然資源や人工島、海洋調査などに関する権利と管轄権です。他国の船や航空機も、航行や上空飛行の自由をもちます。

EEZの外に落ちたら、日本は何もしないのですか?

違います。EEZの外に落下した場合でも、防衛省は国連安全保障理事会決議に違反するとして北朝鮮に抗議すると発表した例があります。警報の仕組みが変わるだけで、抗議や情報収集はされます。

EEZなどに落ちそうなときも、Jアラートは鳴りますか?

政府の説明では、領海の外側の日本周辺海域(EEZなど)に落下する可能性がある場合は、Jアラートは使わず、船舶や航空機に警報を出します。領土・領海に落ちる、または通過する可能性があるときがJアラートの対象です。

EEZが広いのは、日本の領土が大きいからですか?

EEZの幅は、基線から200海里という決まりで測ります。日本の領海とEEZを合わせた約447万km2は、海上保安庁によると国土面積の約12倍です。陸の面積だけでは、海の広さは決まりません。

まとめ:EEZ外は「領海でも住民向け警報の対象でもない場所」という位置の説明

領海は沿岸から12海里(約22km)まで、EEZは200海里(約370km)までです。領海は主権の水域、EEZは資源や調査などの権利の水域で、その外側が公海です。日本の領海とEEZを合わせた約447万km2のうち、約9割がEEZにあたります。

ミサイルのニュースで「EEZ外に落下」と聞いたら、次の3点で判断できます。第一に、日本の領土・領海への落下ではなく、Jアラートの対象になる場所ではないという位置の説明であること。第二に、船舶や航空機への警報と注意喚起は別に出ること。第三に、安全保障上の抗議は、EEZの内外にかかわらず行われること。私は、これまで「EEZ外」を距離の言葉として読んでいましたが、警報の使い分けを示す言葉として読むほうが、ニュースの意味がはっきりします。

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📚 参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は、防災や安全保障に関わる用語・制度の“仕組み”を知っていただくための読み物で、避難行動や個別の判断を指示するものではありません。実際の警報・避難の指示は、政府・自治体・気象庁などの公的機関の最新の情報に従ってください。2026年10月時点の公表資料にもとづいています。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。