世論調査で内閣支持率45%という数字はどうやって作られるのか|dサーベイの仕組みと標本誤差

2026年9月26、27の両日に毎日新聞が実施した世論調査で、高市内閣の支持率は45%でした。前回調査(8月)の41%から4ポイント上がり、3カ月ぶりに不支持率(40%)を逆転しています。ところが同じ月の11〜14日に時事通信が実施した調査では、内閣支持率は44.1%で、こちらは逆に過去最低を更新していました。

同じ「内閣支持率」という言葉を使っているのに、調査によって数字が違います。私は大学時代のゼミが社会調査法で、アンケートの設計や集計を卒業論文のテーマにしていました。当時から「なぜ会社によって支持率が違うのか」は定番の疑問でしたが、今回のニュースをきっかけに、仕組みから確かめ直してみることにしました。

目次

今回何が起きたのか:同じ「内閣支持率」で45%と44.1%

まず、今回話題になっている2つの世論調査を整理します。

今回何が起きたのか:同じ「内閣支持率」で45%と44.1%
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毎日新聞の調査:支持率45%、裏金議員の起用「問題だ」61%

毎日新聞は9月26、27の両日に全国世論調査を実施しました。内閣支持率は45%で、前回(8月)の41%から4ポイント上昇。不支持率は40%で、前回の44%から4ポイント下がり、3カ月ぶりに支持率が不支持率を上回りました。調査は、スマートフォンを対象とした調査方式「dサーベイ」で、全国の18歳以上約8000万人から調査対象者を無作為に抽出し、1944人から有効回答を得ています。

同じ調査では、自民党派閥の政治資金問題(いわゆる裏金事件)で問題となった議員を、高市首相が9月16日の党役員人事と17日の内閣改造で要職に起用したことについても尋ねています。「問題だ」と答えた人は61%で、「問題だとは思わない」の22%を大きく上回りました。

時事通信の調査:支持率44.1%、過去最低を更新

一方、時事通信が9月11〜14日にかけて実施した調査では、内閣支持率は44.1%で、前月比4.3ポイント減。この内閣として過去最低を更新しました。不支持率は29.3%(前月比2.4ポイント増)です。裏金議員の起用については「反対」が68.6%で、「賛成」の11.8%を大きく上回りました。この調査は全国18歳以上の2,000人を対象に個別面接方式で行われ、有効回収率は57.1%でした。9月16日の党役員人事、17日の内閣改造より前に行われているため、人事そのものへの評価はまだ反映されていません。

数字だけを見ると、支持率が上がったのか下がったのか分かりにくく感じます。ただ、2つの調査を並べると見えてくることがあります。支持率が45%まで持ち直した毎日新聞の調査でも、裏金議員の起用への不満(61%)は、時事通信の68.6%とそれほど変わらない水準で残っています。支持率の上下と、個別の人事評価は、必ずしも同じ方向には動かないということです。

項目 毎日新聞 時事通信
調査日 9月26・27の両日 9月11〜14日
調査方法 dサーベイ(スマホ) 個別面接方式
対象 18歳以上約8000万人から無作為抽出 18歳以上2,000人
有効回答数 1944人 57.1%(回収率)
内閣支持率 45% 44.1%(過去最低)
裏金議員起用 「問題だ」61% 「反対」68.6%
※出典:毎日新聞(2026年9月26・27の両日実施)、時事通信(2026年9月11〜14日実施)の各報道

世論調査は「1944人」からどうやって「日本全体の意見」を測るのか

そもそも、なぜ1944人や2,000人といった一部の人に聞いただけで、「内閣支持率」を名乗れるのでしょうか。ここには「全数調査」と「標本調査」という、統計学の基本的な考え方があります。

全数調査と標本調査の違い

日本で行われる調査のうち、対象者全員に聞く「全数調査」の代表例が国勢調査です。5年に1度、日本に住むすべての人と世帯が対象で、一人も漏らさないことを目指します。国勢調査の仕組みを調べたときに知ったのですが、全員に聞くことを目指す調査でも、実際には一定数の「捕捉漏れ」が発生し、総務省が事後に補正しています。全数調査でさえ、文字どおり全員を捕まえるのは簡単ではありません。

一方、世論調査は「全員には聞かない」ことを最初から前提にした標本調査です。母集団(調べたい対象全体、たとえば「日本の18歳以上の有権者」)の中から一部を無作為に選び出し、その回答から母集団全体の傾向を推定します。「無作為」という言葉がポイントで、年齢や地域、支持政党にかかわらず、対象者全員が同じ確率で選ばれる状態を指します。

無作為抽出が崩れると何が起きるか

たとえば、SNS上でアンケートを取って「支持率20%だった」と言っても、そもそも回答者がSNSを積極的に使う人に偏っていて、無作為抽出にはなっていません。世論調査が、電話番号を乱数で作る、有権者名簿から抽選する、通信会社の会員データベースから無作為に選ぶ、といった手間のかかる方法にこだわるのは、この無作為性を守るためです。

あなたは世論調査の電話やアンケート依頼を受けたことがありますか?

  1. ある・回答した
  2. ある・出なかった/断った
  3. ない
  4. 覚えていない

📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・13票)

ある・回答した:46%
ある・出なかった/断った:31%
ない:15%
覚えていない:8%

たった1944人の回答で8000万人の意見が分かるのはなぜか

ここで、少し意外に感じる数字を計算してみます。毎日新聞のdサーベイは、全国18歳以上の約8000万人を母集団としています。そこから無作為に選ばれた有効回答は1944人でした。

1944人 ÷ 8000万人 × 100 ≒ 0.00243%(計算:1944÷80,000,000×100)

回答した人は、もとの母集団のごくわずかな割合にすぎません。1万人に1人にも満たない声が、8000万人の「内閣支持率」として報じられている。計算としては正しいのですが、数字を並べてみると、やはり少し不思議な気持ちになります。

この違和感の正体は、標本誤差の性質にあります。総務省統計局が公開している標本誤差の計算式では、母集団の規模はほとんど誤差の大きさに影響しません。誤差を決めているのは、母集団が何人かではなく、標本の人数がいくつかです。同じ1944人の標本なら、母集団が8000万人の日本でも、1億人を超える別の国でも、理論上はほぼ同じ精度になります。

世論調査で「支持率」を推定するまでの流れ

母集団
約8000万人
→
無作為抽出
→
標本
1944人
→
推定値
45%(誤差付き)

1944人。数字だけ見ると心もとない気もしますが、無作為に選ばれている限り、統計的には8000万人の意見を映す鏡になります。それでも、ゼミでこの仕組みを最初に習ったときも、今回計算し直したときも、どこか信じきれない気持ちが少し残りました。数字は合っているのに、実感が追いつかない。これが標本調査の面白いところだと思います。

dサーベイという新しい調査方法の仕組み

毎日新聞が使っている「dサーベイ」は、電話ではなくスマートフォンを使ったインターネット調査です。毎日新聞などが出資する社会調査研究センターが、NTTドコモと提携して提供しています。主にドコモの「dポイントクラブ」会員からなる約6000万人をパネルとして、インターネット調査を行うものです。

dサーベイという新しい調査方法の仕組み
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dサーベイの抽出方法

抽出された対象者には、ドコモからスマートフォンにメッセージが届き、受け取った人はその場でアンケートに回答できます。今回の内閣支持率調査では、全国18歳以上の約8000万人の中から対象を選び、1944人から有効回答を得ています。

電話調査(RDD)との違い

従来型の電話調査は、コンピューターで無作為に電話番号を作る「RDD」(Random Digit Dialing)という方法が主流です。固定電話と携帯電話の両方に発信し、電話に出た人に調査を依頼します。ただ、この方法には近年、はっきりした弱点が出てきました。見知らぬ番号からの電話に、特殊詐欺などを警戒して出ない人が増えているのです。2022年、岸田内閣当時の日経新聞の調査では、固定電話と携帯電話にかけて全国の18歳以上の男女から929件の回答を得ており、「誤差の目安は、この規模ではおよそ3ポイント以内におさまる」とされていました。

dサーベイは、ドコモが自社の会員に見慣れたメッセージで依頼するため、知らない番号からの電話という不安を与えずに済みます。低コストで大人数に依頼できる点も、電話調査にはない強みです。標本の人数を増やしやすいネット調査は、条件がそろえば電話調査と同程度かそれ以上の精度を、より低いコストで出せる可能性があります。

数字には「誤差」がある:45%は45%ちょうどではない

ここまでの説明で1つ気になるのが、「1944人に聞いた45%」と「本当の(全員に聞いたときの)支持率」は、どのくらいズレる可能性があるのか、という点です。これを表すのが標本誤差です。

総務省統計局の解説ページでは、母集団20万人の都市で標本として1,000人を無作為抽出した場合、回答比率0.5(ばらつきが最大になる想定)での標本誤差はおよそプラスマイナス3.2%になると例示されています。同ページでは、95%の確率で真の値が収まる範囲を求める係数(t)としておよそ2を使っています。標本誤差はおおまかに次の式で求められます。

標本誤差 ≒ 2 × √(p×(1-p) ÷ n) (pは回答の比率、nは有効回答数)

毎日新聞の支持率45%(n=1944人)の場合:2×√(0.45×0.55÷1944)≒0.023 → 誤差は約±2.3ポイント

「問題だ」61%(n=1944人)の場合:2×√(0.61×0.39÷1944)≒0.022 → 誤差は約±2.2ポイント

時事通信の有効回答数は、対象2,000人×回収率57.1%=1,142人と計算できます。支持率44.1%(n=1142人)の場合:2×√(0.441×0.559÷1142)≒0.029 → 誤差は約±2.9ポイント

この誤差を踏まえると、毎日新聞の45%は「42.7%〜47.3%」の範囲に、時事通信の44.1%は「41.2%〜47.0%」の範囲に、それぞれ真の値がある可能性が高いということになります(各支持率±上記の誤差で計算)。

2つの範囲は大きく重なっています。45%と44.1%の差はわずか0.9ポイント(45-44.1で計算)で、そもそも標本誤差の範囲に収まってしまう程度の差です。「毎日新聞の方法の方が高く出る」と単純には言い切れません。

調査時期も9月11〜14日と9月26・27の両日で異なり、その間に9月16日の党役員人事と17日の内閣改造がありました。数字の違いを調査方法のクセだけで説明するのは早計で、実際に世論が動いた可能性も残ります。

標本誤差はサンプル数の平方根に反比例するため、誤差を半分程度にするには、標本をおよそ4倍の約7,776人(1944人×4)に増やす必要があります。総務省統計局の例でも、誤差を0.02(2%)まで縮めるには2,470人以上の標本が必要だと示されています。

聞き方が変わるだけで、支持率は数ポイント動く

会社ごとに数字が違う理由は、調査方法や時期だけではありません。もう1つ大きいのが、質問の「聞き方」です。

「わからない」をどう扱うかで数字が変わる

日経新聞の世論調査は、内閣を支持するか尋ねた際に「支持しない」「わからない」と答えた人に対して、重ねて「お気持ちに近いのはどちらですか」と尋ね、その答えを支持・不支持に振り分ける「重ね聞き」という手法を使っています。2026年6月の調査では、最初の質問で「いえない・わからない」と答えた17%の回答者のうち、重ね聞きによって51%が「支持」、20%が「不支持」と答えたことが報告されています。最初の質問だけを見た場合と、重ね聞きまで含めた場合とで、支持率の数字が変わってくるということです。

2017年にもあった、聞き方による差

これは今回に限った話ではありません。2017年7月の調査では、当時の安倍内閣の支持率が、日本経済新聞は39%だったのに対し、朝日新聞は33%、毎日新聞や時事通信はさらに低い20%台にとどまったと報じられています。この差について、日経新聞は「聞き方」の違いを要因として挙げています。

支持率が上がった、下がったというニュースを見るとき、相関関係と因果関係の違いを思い出すようにしています。支持率の変化と特定の出来事(今回で言えば内閣改造)を、簡単に「原因と結果」として結びつけるのは、実は早計なことが多いのです。調査方法や聞き方の違いだけで数ポイント動くことを知っていると、ニュースの数字を少し落ち着いて読めるようになります。

デメリット・注意点:どの調査方法にも弱点がある

ここまで見てきたdサーベイのような方法にも、弱点があります。

  • 母集団の偏り:dサーベイの対象はドコモのdポイント会員です。スマートフォンを持たない人や、dポイントに登録していない人は、最初から母集団に含まれません。
  • 年齢層の偏りやすさ:スマホ調査は相対的に高齢層の回答が集まりにくく、電話の個別面接調査は逆に在宅率の高い高齢層に厚くなりやすいという傾向が、それぞれ指摘されています。
  • 回答率の低下:電話調査は近年、見知らぬ番号への警戒から回答率が下がる傾向にあり、実際に依頼に応じてくれる人の性質(政治に関心が高い、時間に余裕があるなど)に偏る可能性があります。
  • コストと速報性のトレードオフ:個別面接方式は精度が期待できる一方、時間と人手がかかります。逆にネット調査は速く安く実施できますが、対象者リストの性質に結果が左右されます。

「この調査方法が一番正確」と単純に言い切れないのが実情です。どの方法にも一長一短があり、複数の調査を見比べることで、初めて全体像が見えてきます。

世論調査を読むときに確かめる3つのポイント

ここまでの仕組みを踏まえると、ニュースで支持率の数字を見るときに、確かめておきたいポイントが3つ見えてきます。

1. 調査方法と有効回答数を見る

記事の下の方や注釈に、電話・面接・インターネットといった調査方法と、有効回答数が書かれていることがほとんどです。有効回答数が少ないほど、誤差の範囲は大きくなります。

2. 前回からの変化が誤差の範囲を超えているか見る

今回の計算のように、誤差はおおよそ±2〜3ポイントです。前回から数ポイント動いたというニュースを見たときは、その変化が誤差の範囲を明らかに超えているか、範囲内に収まりそうかを考えると、数字の意味が変わって見えます。

3. 世論調査と選挙結果は別物だと意識する

選挙の仕組みを調べたときにも感じたのですが、世論調査はあくまで「今の意見の推定値」であり、実際の議席は選挙区ごとの投票と議席配分の方式で決まります。支持率が高いからといって選挙で圧勝するとは限らず、逆に支持率が低くても議席を維持することもあります。世論調査は次の選挙を予言するものではなく、今の空気を測るものだと考えると、使い方を間違えにくくなります。

次にニュースで新しい支持率が発表されたら、記事の下のほうにある「調査の方法」の一文を探してみてください。電話なのかスマホなのか、有効回答数が何人なのか。それだけで、数字の見え方が変わってきます。

よくある誤解

Q. 回答者が2,000人程度では、日本全体の意見とは言えないのでは?

統計学的には、無作為に選ばれている限り言えます。標本誤差はサンプル数の平方根に反比例するため、母集団が8000万人でも1億人でも、無作為に選ばれた1000〜2000人程度の回答があれば、誤差はおよそ±2〜3ポイントの範囲に収まります。母集団の大きさより、標本の人数と、無作為に選ばれているかどうかが精度を左右します。

Q. 内閣支持率が会社によって数字が違うのは、どこかの調査がおかしいのでは?

そうとは限りません。調査方法(電話・面接・スマホ)、調査時期、質問文の「聞き方」が違えば、数ポイントの差が出るのは自然なことです。今回の毎日新聞と時事通信の差(0.9ポイント)は、それぞれの標本誤差の範囲内に収まっています。

Q. 支持率が上がった=内閣改造への評価が上がった、ということですか?

一直線には結びつきません。毎日新聞の調査では支持率が45%まで戻る一方で、裏金議員の起用を「問題だ」と答えた人は61%に上っています。支持率の上下と、個別の人事評価は必ずしも同じ方向には動かず、複数の要因が同時に働いていると考えるほうが自然です。

まとめ:内閣支持率45%という数字の中身

今回、毎日新聞と時事通信という2つの調査を手がかりに、内閣支持率という数字がどうやって作られているのかを確かめました。世論調査は、母集団から無作為に選んだ一部の人(標本)に聞き、その回答から全体を推定する標本調査です。標本の人数が同じなら、母集団が8000万人でも1億人でも、理論上の精度はそれほど変わりません。

ただし、どんな標本調査にも標本誤差があり、今回のケースではおよそ±2〜3ポイントでした。毎日新聞の45%と時事通信の44.1%という差は、この誤差の範囲にほぼ収まっています。加えて、質問の「聞き方」や調査時期の違いも、数ポイントの差を生む要因になります。

支持率の数字そのものより、調査方法・有効回答数・誤差の目安・前回からの変化幅を合わせて見ることで、ニュースの数字を少し落ち着いて読めるようになると思います。次に支持率のニュースを目にしたときは、数字の隣にある小さな注釈にも、少しだけ目を向けてみてください。

この記事で扱った数字は2026年9月時点のものです。内閣支持率は毎月のように新しい調査が発表されるため、最新の数字は各報道機関の最新記事でご確認ください。

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  2. なんとなく知っていた
  3. 初めて知った
  4. 誤解していた

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なんとなく知っていた:54%
知っていた:23%
初めて知った:15%
誤解していた:8%

📚 参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は、社会の制度や法律の”仕組み”を知る面白さをお届けし、世の中のルールに興味を持っていただくための読み物です。個別の法的判断を示すものではなく、制度は改正されることもあります。具体的なケースは専門家や公的機関にご確認ください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。