説明書がわかりにくい理由

ボードゲームを楽しむ際、最初のハードルとなるのが「説明書の理解」です。特に複雑なゲームほど、そのルールブックがわかりにくいと感じることが多いのではないでしょうか?これは、情報の提示方法や記述スタイル、さらにはプレイヤーの学習方法とのミスマッチが原因と考えられます。
本記事では、ボードゲームの説明書が難解とされる理由を分析し、具体的な事例や専門家の意見を交えて、その改善策を探ります。また、成功している説明書の事例にも触れ、今後のボードゲームのルール説明がどう進化すべきかについて考察します。
悪い説明書の主要な問題点

- 情報が分散している:重要なルールが親切に順序立てて説明されておらず、複数のページに分散しているため、読者がどこまで読んだか把握しにくい。
- 専門用語が多い:初心者には慣れない言葉が多く、一度に大量の情報を処理する必要がある。
- 視覚的補助が足りない:文章のみで解説され、図解やイラストが不足しているため、具体的なプレイシーンをイメージしにくい。
- 情報の優先順位が曖昧:プレイヤーが最初に知るべきルールが後回しにされ、理解に必要な前提知識が整理されていない。
- プレイ中の参照のしづらさ:説明書の索引や整理の仕方が悪く、ゲーム中に確認しようとしても目的の情報を見つけにくい。
詳しい事例:『オン・マーズ』の説明書

宇宙開発をテーマにしたボードゲーム『オン・マーズ』の説明書は、その問題点を如実に示しています。
- ルールの不統一性:「エグゼクティブアクション」に関する情報が、8ページ、10ページ、14~17ページ、そして18ページと、説明書のさまざまな場所に散在しています。そのため、プレイヤーは複数の異なる情報を記憶しながら読み進める必要があります。
- 誤解を招く用語の使い方:「エグゼクティブアクション」は「デポ」に記載されているものを指しますが、説明書の途中では「設計図カード」に記載されているように読み取れる記述があります。この混乱が、プレイヤーの誤解を招く一因となっています。
- プレイヤーの負担が大きい:最も重要なルールの説明が断片化されているため、一度に大量の情報を処理する必要があり、理解のハードルが上がっています。
他のボードゲームに見られる説明書の課題
『キーフラワー』のルール説明の問題点

『キーフラワー』は独自のワーカープレイスメントシステムを採用していますが、その説明書は以下のような問題を抱えています。
- ゲームの根本的な違いが最初に説明されていない:
- 通常のワーカープレイスメントゲームでは、青のプレイヤーは青のワーカーを使用します。
- しかし『キーフラワー』では、プレイヤーがランダムな色のワーカーを使用し、一度配置したワーカーは自分のものではなくなります。
- これらのルールが明確に整理されておらず、従来のワーカープレイスメントの常識と混同しやすい。
- 特殊ルールの説明のタイミングが遅い:
- 他プレイヤーのワーカーを利用できる仕組みが、説明書の後半に記載されているため、ゲームの理解が進む前に混乱しやすい。
成功している説明書の事例

一方で、わかりやすい説明書を持つボードゲームも存在します。その共通点として、以下の点が挙げられます。
- 視覚的要素の活用:文章だけでなく、図解やイラストを多用し、プレイヤーが直感的に理解できるよう工夫されている。
- 短文でわかりやすく:専門用語を極力避け、初心者にも分かりやすい言葉で説明されている。
- 段階的な説明の導入:すべてのルールを一度に説明するのではなく、プレイヤーの進行に合わせてルールを少しずつ導入する。
- ゲームプレイ中の参照性を考慮:索引やハイライトを用い、ゲームプレイ中に重要な情報を素早く見つけられるようになっている。
例:『ルート』の説明書の成功点

- ファクションごとのガイドを個別に提供:
- 『ルート』では、各勢力(ファクション)ごとに異なるルールを持つため、1つの説明書ではなく、各勢力に対して個別のガイドを提供。
- これにより、プレイヤーは自分が担当するファクションのルールに集中できる。
- 視覚的な整理が秀逸:
- 図やアイコンを活用し、ルールの流れを視覚的に整理。
- これにより、テキストだけでは理解しづらい情報も直感的に把握しやすい。