📰 「盗みはダメ」と訴えたキャンペーンが“盗作フォント”を使用していた。逆説すぎる皮肉が話題に

あなたは車を盗まない」という強烈なフレーズ、覚えていますか?

2000年代初頭、DVDの再生前に強制的に流れていた“海賊版撲滅キャンペーン”の象徴として記憶している方も多いでしょう。
だが今、そのキャンペーンに信じがたい指摘が飛び出しました。

「そのフォント、海賊版では?」

盗みはダメと主張しておきながら、使っていた文字が“盗作フォント”だったという信じがたい事実。
この皮肉が、SNSを中心に再び「You Wouldn’t Steal a Car」をネットミームの頂点に押し上げようとしています。


🕵️ そもそも「You Wouldn’t Steal a Car」とは?

そもそも「You Wouldn’t Steal a Car」とは?
※画像はイメージです

「You Wouldn’t Steal a Car(あなたは車を盗まない)」は、2004年から2007年にかけて展開された国際的な反海賊キャンペーン動画の冒頭文句です。イギリスの著作権盗難防止連盟とアメリカ映画協会(MPAA)が、シンガポール知的財産局などと連携して制作しました。

この動画では、以下のようなメッセージが強調されます:

  • YOU WOULDN’T STEAL A CAR(あなたは車を盗まない)
  • YOU WOULDN’T STEAL A HANDBAG(あなたはカバンを盗まない)
  • DOWNLOADING PIRATED FILMS IS STEALING(海賊版をダウンロードするのは窃盗と同じ)

映像のテンションは終始ダークで、BGMは犯罪映画を思わせる不穏なトーン。
要するに「映画をタダで見るなんて、車を盗むのと同じレベルの犯罪だぞ」と刷り込もうとする、非常に直線的で押しつけがましいプロパガンダだったわけです。

だがこの動画、当時から過剰演出とメッセージ性の強さが仇となり、逆に「ネタ化」してしまったのです。


💀 実は“盗まれた”のは車じゃなくてフォントだった?

実は“盗まれた”のは車じゃなくてフォントだった?
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皮肉なことに、2025年4月、Fonts In Useの調査によって、動画内で使われていた印象的なフォントが「FF Confidential」の違法クローン「Xband Rough」である可能性が浮上。

この調査をさらに裏付けたのが、BlueskyユーザーのRib氏でした。

彼はキャンペーンのアーカイブPDFを発掘し、無料フォント解析ツール「FontForge」を用いてフォントを分析。その結果、動画や資料に使われていたフォントが正規ライセンスではなく、“海賊フォント”であるXband Roughであることを突き止めたのです。

しかも、このFF Confidentialをデザインしたのは、Pythonの生みの親グイド・ヴァンロッサム氏の実兄であるタイポグラファー、ジャスト・ヴァン・ロッサム氏
兄弟そろって知的財産に深く関わっているという事実が、逆説のスパイスを効かせます。

ヴァン・ロッサム氏はこの件に「自分のフォントが“盗まれた”とは思ってなかった。皮肉な話だ」とコメント。

つまり“盗みはいけない”と怒っていた側が、盗作フォントを使っていたかもしれないという、完全に逆転した構図が明るみに出たのです。


🧠 なぜXband Roughが使われたのか?

なぜXband Roughが使われたのか?
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ここで少し技術的な背景を補足します。

FF Confidentialは商用ライセンスが必要なフォントです。一方、Xband Roughはその形状を模したフリーフォントに近い存在であり、配布元や権利関係が曖昧です。

イギリスではフォントデザインに著作権が適用されますが、アメリカではフォントそのものに著作権が認められていないため、クローンフォントの存在がグレーゾーンになりがちです。

そのため、制作側が「予算節約」「誤認」などの理由で正規フォントではなくコピー版を使用していた可能性があります。
つまり、「違法ではないかもしれないが、“倫理的にアウト”」という最も微妙なゾーンに触れているのです。


😂 パロディ、炎上、そして再評価

パロディ、炎上、そして再評価
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そもそもこのキャンペーン動画は、公開当初からミーム化していました。

  • 「You wouldn’t download a car」→「もし3Dプリンターでダウンロードできたら絶対するよ」
  • 映画『The IT Crowd』で完全パロディ化
  • 「You wouldn’t steal a meme」としてX(旧Twitter)で逆用投稿がバズる
  • RedbubbleやThreadlessで「You wouldn’t steal a cat」といったTシャツが販売される

現在でも検索すると、「You wouldn’t steal a car」のパロディTシャツやGIFが大量に出てきます。
つまりこのキャンペーンは、自らが掲げた道徳の旗を、ネット民に振り回されて終わった典型例でもあるのです。


📉 キャンペーンの実効性は?

キャンペーンの実効性は?
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行動経済学の研究や欧米の世論調査によれば、「違法ダウンロードを止める」というキャンペーンの効果は限定的だったどころか、むしろ反感を買って“逆効果”だった可能性があるとされています。

調査によると、

  • 消費者は「強制されるほど反発する」傾向にある
  • 道徳ではなく利便性が行動を左右する
  • NetflixやSpotifyのような正規配信サービスの登場によってようやく違法ダウンロードは減った

ということがわかっています。


🎬 結論:フォント1つで揺らぐ「正義」の顔

 結論:フォント1つで揺らぐ「正義」の顔
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この事件が示すのは、メッセージの強さや正しさではなく、その背後にある構造の矛盾や、表現手段の一貫性のなさが時にすべてをひっくり返すということ。

「違法ダウンロードは犯罪だ」と叫んでいたキャンペーンが、実は“海賊フォント”を使っていたという逆説。
これは現代のコンテンツ社会において、誰が本当の“正義”を語るべきかを私たちに問いかけているのかもしれません。

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