MetaのVR/AR部門「Reality Labs」レイオフで見えたVR業界の厳しい現実:現場に動揺広がる

Meta(旧Facebook)は、VR/ARの未来を切り拓くべく大規模投資を続けてきたReality Labsにて、Oculus Studiosの一部スタジオで数十名規模のレイオフを実施しました。これは2025年初頭に発表された全社的な5%規模の人員削減計画に続くものであり、Metaの戦略転換の象徴ともいえます。


Reality LabsとOculus Studiosの現状

Reality LabsとOculus Studiosの現状
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Reality LabsはMetaのVR/AR部門として、ハードウェア・ソフトウェア両面で革新的な技術開発を進めています。中でもOculus Studiosは、Metaの代表的なVRヘッドセットQuestシリーズ向けのコンテンツ開発を担う重要な役割を果たしてきました。ここには「Beat Saber」を生み出したBeat Gamesや、人気フィットネスアプリ「Supernatural」を開発するWithinなど、業界内でも高評価を受けるスタジオが集結しています。

今回のレイオフは、そうしたOculus Studiosの複数チームに及びました。Meta広報担当のトレイシー・クレイトン氏は、「組織の構造と役割の見直しが行われ、チームサイズに影響を及ぼしている」と説明。これらの変更は、「将来的な複合現実体験の効率的な開発を目指すため」と位置付けています。


従業員の声:期待と不安が交錯する現場

従業員の声:期待と不安が交錯する現場
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現場の従業員からは、動揺と不安が漏れ聞こえます。あるOculus Studiosの元開発スタッフは匿名でこう語りました。

「私たちは長期間、革新的なVR体験を作るために全力を注いできました。今回のレイオフはショックでしたが、業界の厳しい現実も感じています。優秀な仲間を失うのは非常に寂しいですし、残った私たちも大きなプレッシャーを感じています。」

Withinの「Supernatural」チームでも、人員削減の影響は大きく、今後のワークアウトの提供頻度が落ちることが公表されています。別のチームメンバーは、

「ユーザーが楽しみにしているアップデートが遅れるのは残念ですが、メンバー一人ひとりがこれまで以上に創造性を発揮し、質の高いコンテンツを届けられるよう努力していきたいと思います。」

という前向きな声も聞かれますが、一方で心理的な負担が増していることは否めません。


Metaの戦略的背景:なぜ今、レイオフなのか

Metaの戦略的背景:なぜ今、レイオフなのか
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Metaは過去数年、VR/AR分野に巨額の投資を続けてきましたが、近年は経済環境の変化や消費者の動向、競合環境の激化に直面しています。Questシリーズの成功にもかかわらず、利益率の低さや技術開発の遅延、ユーザー基盤拡大の課題は依然として存在しています。

こうした中で、Metaはコスト削減と開発効率の向上を図りつつ、「次世代の複合現実(MR)体験」を見据えた組織再編を進めているのです。Bloombergの報道によれば、レイオフされた従業員はMeta社内の他ポジションに応募できる機会が用意されているため、単なる解雇ではなく再配置の可能性も示唆されています。


ハードウェア部門にも影響、VR機器開発の将来は?

ハードウェア部門にも影響、VR機器開発の将来は?
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The Vergeの記事によると、Reality Labsのハードウェア開発に携わっていた一部従業員もレイオフ対象となった可能性があり、これはMetaのVR機器戦略にも変化が起きていることを示唆します。ただし、Meta側はこの点については詳細なコメントを控えています。

過去にはOculus Quest 2やQuest Proなど革新的な製品をリリースし、市場をリードしてきたReality Labsのハードウェアチームにとっては痛手となりますが、Metaは引き続き次世代機器の開発を進める意向です。


Oculus Studiosの主要スタジオと代表作

今回の人員整理に関わるOculus Studiosのスタジオ群と主な代表作は以下の通りです。

  • Beat Games:「Beat Saber」
  • Camoufraj:「Marvel’s Iron Man VR」「Batman: Arkham Shadow」
  • Within:「Supernatural」
  • Sanzaru Games:「Asgard’s Wrath 2」
  • BigBox VR:「Population: One」
  • Downpour Interactive:「Onward」
  • Armature Studio:「バイオハザード4(VR)」
  • Twisted Pixel:「Wilson’s Heart」

これらのスタジオは、MetaのVRコンテンツの屋台骨を支えてきました。今後の再編により、それぞれのプロジェクトやチーム体制に変化が及ぶことが予想されます。


今後の展望と利用者への影響

今後の展望と利用者への影響
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Metaは今回の組織変更を「長期的な成長戦略の一環」と位置付けていますが、現場の声や開発体制の変化は今後のVR/AR市場に少なからず影響を与えるでしょう。特に人気のVRフィットネスアプリ「Supernatural」の更新頻度低下は、ユーザー体験の面で直接的な影響が懸念されます。

一方で、Metaはこれまでの投資を無駄にせず、複合現実の未来を切り拓くための基盤作りを急いでいることも確かです。新たな技術革新やコンテンツがどのように形になるのか、VR/AR業界全体の動向にも注目です。


まとめ

まとめ
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MetaのReality Labsは、先端技術の開発に挑み続ける一方で、経済環境や市場動向に対応するために組織のスリム化を進めています。Oculus Studiosのレイオフは開発チームにとって大きな試練であり、従業員の間には不安もありますが、同時に新たな成長への期待も残されています。

VR/AR市場の競争が激化するなか、Metaの戦略変更は成功するのか、そしてユーザー体験はどう変わるのか、今後の展開に注目が集まっています。

  1. Meta is laying off employees in Reality Labs
    https://www.theverge.com/meta/655835/meta-layoffs-reality-labs-vr-supernatural
  2. Meta Lays Off Over 100 Employees Across Reality Labs Unit
    https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-04-24/meta-lays-off-more-than-100-staff-across-reality-labs-unit
  3. Meta Laid Off Employees In Some Of Its Acquired Studios
    https://www.uploadvr.com/meta-laid-off-employees-in-some-acquired-studios-again/
  4. Supernatural公式ページ
    https://www.meta.com/jp/quest/supernatural/?srsltid=AfmBOorZ90kEbClUwL7ELdOU2GRano9yLpRs2KACJ8thIv_nhMT_CbYU