中国発“泊まるeスポーツ”が熱い!文化と宿泊が融合する空間革命🎮


「ただ泊まるだけ」じゃ物足りない

「ただ泊まるだけ」じゃ物足りない
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中国で急増中のeスポーツホテル。
その数は2024年時点で2万1000軒以上、市場規模は4160億円超とも言われる。

だがこの急成長の背景には、「宿泊」という行為そのものが根本的に変化しているという、より深い社会的な文脈がある。

ビジネス出張でも観光でもない。
Z世代は、“泊まる=ゲームをしに行く”という文化を生み出しているのだ。


「ホテルこそが、理想の遊び場」──Z世代の声

中国・深センのeスポーツホテル「锦囊电竞泛娱酒店(ジンナンeスポーツパンエンターテインメントホテル)」を訪れた、20代会社員のZhu Hao氏はこう語る。

「ホテルこそが、理想の遊び場」──Z世代の声
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「1人でゲームをしてもつまらない。
親の干渉もないし、自由に仲間と遊べるホテルは最高だ」

このホテルには5つの2段ベッドが並ぶ“シェアルーム型ゲーミング寮”があり、
24時間サポート対応、最新スペックのPCとゲーム機が完備されている。
ゲーミングチェアに埋もれながら夜通し「League of Legends」や「PUBG」をプレイする
そんな“ゲーム漬けの合宿”こそが、今の若者にとっての“理想の宿泊”なのだ。


ネットカフェとホテルの“ハイブリッド文化”

ネットカフェとホテルの“ハイブリッド文化”
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この種のホテルの特徴は、ゲーミングルームだけではない。
内部は漫画・カラオケ・ボードゲーム・映画観賞エリア・スナック売店・マッサージチェアまで取り揃えられ、まるで“宿泊可能なアミューズメントパーク”だ。

かつて中国では、「網吧(Wǎngbā)」と呼ばれるインターネットカフェが若者文化の中心だったが、
時代が進むにつれ「快適な環境」「仲間との共有体験」「滞在型の自由空間」が求められるようになった。
eスポーツホテルは、その進化系とも言える存在だ。

Zhang Zijun氏が運営するeスポーツホテルでは、週末の稼働率はほぼ100%、平均でも92%
ある利用者グループは、1泊の予定で入ったはずが最終的に8泊も延長し、大量の食べ物とともに“引きこもり生活”を楽しんだという。


「寝そべり族」という名の“反競争主義”

「寝そべり族」という名の“反競争主義”
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こうしたホテルに集う若者たちは、“寝そべり族(躺平族)”と呼ばれている。
これは、現代中国の過酷な学歴競争や労働環境に抗い、「ほどほどでいい」「頑張らない」「自分の好きなことを優先する」という価値観を持つ層のことだ。

彼らは、社会的な成功やステータスよりも、「今をどう楽しむか」を重視する。
eスポーツホテルはまさにそのニーズを叶える場であり、
誰にも干渉されず、好きな仲間と、好きなゲームに集中できる空間」は何よりの贅沢とされている。


なぜホテルでゲーム? ゲーマー文化の構造変化

なぜホテルでゲーム? ゲーマー文化の構造変化
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アメリカやヨーロッパでは「ゲーマー=自宅で個人プレイ」が主流だが、
アジア圏、特に中国では「共有プレイ」が好まれる。

eスポーツアナリストのアレクサンダー・チャンプリン氏はこのように指摘する:

「マシンにお金をかけるより、共有リソースで友人とプレイする方がコスパが良い。
リアルで顔を突き合わせる方が、戦略や連携も取りやすい」

この言葉は、“ゲームは1人でやるもの”という固定観念の崩壊を意味する。


国家ぐるみの“矛盾する支援”

国家ぐるみの“矛盾する支援”
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中国では、未成年者のゲーム時間制限や規制が強まる一方で、
国家政策としてeスポーツ支援も行われている。

深セン市では、eスポーツ産業育成のための補助金制度があり、
少なくとも8つのプロチームが活動拠点を構えている
「eスポーツ都市」としてのブランド確立も始まっており、
eスポーツホテルは、その受け皿となる重要インフラでもある。

さらに、2024年に発売されたRPG『黒神話:悟空』がわずか数日で1000万本を売り上げたことが象徴するように、
中国産ゲームが世界をリードし始めており、それに伴いゲーミングハードや宿泊施設の需要も連動して拡大している。


結論:「泊まる」から「遊ぶ」へと進化する空間価値

結論:「泊まる」から「遊ぶ」へと進化する空間価値
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eスポーツホテルは、単なる“泊まれるゲーム部屋”ではない。
それは、Z世代の文化的欲望が具現化された空間だ。

競争に疲れ、自由を求め、好きなことに没頭する。
その選択肢として“ホテルに泊まって遊ぶ”というライフスタイルは、今後さらに広がっていく。

この波が、東京・ソウル・クアラルンプール・シンガポールといった都市圏にも波及していくのは、もはや時間の問題だ。

「ホテルは眠るための場所」──そんな時代は、もう終わったのかもしれない。

引用元情報:


Bloomberg
Wikipedia – 寝そべり族
黒神話:悟空 公式サイト