カーネル・サンダース、鉄拳に参戦せず──なぜコラボは実現しなかったのか?

人気対戦格闘ゲーム『鉄拳』シリーズのプロデューサーである原田勝弘氏が、かねてより夢見ていたコラボ──「カーネル・サンダースを鉄拳のキャラクターとして登場させる」──が、ケンタッキーフライドチキン(KFC)本社によって却下されていたことが明らかになった。
これはゲームメディアTheGamerのインタビューで語られたもので、原田氏は「日本のKFC本社に直接頼みに行ったが、良い顔をされなかった」と発言。さらに、鉄拳のゲームデザイナーであるマイケル・マーレイ氏も「その後、カーネル・サンダースは別のゲームに登場したが、鉄拳には許可が下りなかった」と補足している。
一見すると、”ファーストフードチェーンのキャラクターが格闘ゲームに登場するのは難しい” という単純な理由に思えるが、実際にはゲーム業界のライセンス交渉やブランディング戦略が絡み合う複雑な問題が潜んでいる。この記事では、鉄拳シリーズのゲストキャラクターの傾向と、なぜカーネル・サンダースの参戦が実現しなかったのかを考察する。
鉄拳シリーズのゲストキャラクターとその傾向
鉄拳シリーズは、これまでにも数多くのゲストキャラクターを迎え入れてきた。以下は、過去の作品に登場した代表的なゲストキャラの一部だ。
キャラクター | 出典元 |
---|---|
豪鬼 | ストリートファイター |
ギース・ハワード | 餓狼伝説 |
ノクティス・ルシス・チェラム | FINAL FANTASY XV |
ネガン | ウォーキング・デッド |
これらのキャラクターを見ると、鉄拳のゲスト枠には一定のルールがあることが分かる。
1. “戦う” ことが前提のキャラクター

まず、鉄拳に登場するゲストキャラクターはすべて”戦闘スキルを持っている”という共通点がある。ストリートファイターや餓狼伝説のキャラクターはもちろん、ノクティスも魔法剣士、ネガンも武器を駆使するキャラクターとして成立している。
一方で、カーネル・サンダースはあくまで”ファーストフードの象徴的存在”であり、ゲーム業界において戦闘キャラとしての認識が薄い。そのため、KFC側がブランドイメージを考慮して難色を示した可能性は高い。
2. 他のゲーム作品との相性

過去のゲストキャラの選定を見ると、基本的には “ゲーム” または “アクション要素のあるメディア” からのキャラクターが多い。カーネル・サンダースは、KFCが独自にリリースした恋愛シミュレーションゲーム『I Love You, Colonel Sanders!』に登場しており、ゲーム界にまったく縁がないわけではない。しかし、戦闘ゲームのキャラとして登場するのは異例であり、その点でKFC側の判断が分かれた可能性がある。
カーネル・サンダース不参戦の理由──ブランド戦略の視点から
1. KFCが懸念した “企業イメージ”

KFCはカーネル・サンダースを “親しみやすい、ユーモラスなキャラクター” としてブランディングしている。特にアメリカでは、過去にカーネル・サンダースをコミカルな広告キャラクターとして利用し、様々な俳優が彼を演じるなど、”エンタメ寄り” のイメージが強い。
しかし、格闘ゲームに登場することで、暴力的なコンテンツとの結びつきが生じる可能性がある。これを避けるためにKFC側が拒否したと考えられる。
2. 他のゲームへの出演はOKだった理由

一方で、カーネル・サンダースは前述の恋愛シミュレーションゲームに登場している。これは”戦い”ではなく、KFCのブランディングを強化するためのコンテンツだった。つまり、KFCはゲームコラボを完全に拒否しているわけではなく、”どのような形で自社キャラクターを使うか” に厳格な基準を持っている ということだ。
今後の鉄拳にコラボの可能性はあるのか?

今回の件は「鉄拳×KFC」のコラボが実現しなかった事例だが、今後の展開が完全に閉ざされたわけではない。
過去には、ストリートファイターシリーズがファストフードチェーンとのコラボを実現したケースもあり、KFCがブランド戦略を変える、あるいはカーネル・サンダースのキャラクターとしての方向性が変われば、再びコラボの可能性が浮上するかもしれない。
一方で、ファストフード業界と格闘ゲームの関係は依然として微妙なラインにある。今後の鉄拳シリーズの展開によって、どのようなキャラクターがゲストとして登場するかが注目されるだろう。
結論

「カーネル・サンダースが鉄拳に登場する」という原田氏の夢は、企業のブランド戦略という壁によって実現しなかった。しかし、この事例はゲーム業界におけるコラボの難しさを象徴するものでもある。
ゲームに登場するキャラクターは、単に “人気がある” だけではなく、ブランドの意向や市場戦略 とも深く関係している。今後のゲーム業界のコラボ動向にも、引き続き注目したいところだ。
引用元情報
- 鉄拳公式サイト: TEKKEN OFFICIAL
- 原田勝弘氏のX(旧Twitter): @Harada_TEKKEN
- EventHubs: “Angry Bird Colonel Tekken Harada”
- TheGamer: “KFC Shot Down Colonel Sanders As A Tekken Fighter, Says Harada”
- Kotaku: “KFC Won’t Let Colonel Sanders Appear In Tekken”
- GIGAZINE: “無料でケンタッキーの象徴であるカーネルおじさんと恋できる恋愛シミュレーションゲーム”