2026年9月28日に始まったNHK連続テレビ小説『ブラッサム』の主題歌は、YOASOBIの「咲き誇れ」です。作曲のAyaseさんと、歌うikuraさんの2人が朝ドラの主題歌を担当することになり、放送前から大きな話題になりました。ところで、朝ドラの主題歌は誰が、どんな順番で作っているのでしょうか。
私はこれまで、主題歌はドラマの雰囲気に合う曲を選んで乗せるものだと思っていました。今回、制作の様子を語ったインタビューを読み比べて、順番がだいぶ違うことが分かりました。この記事は、朝ドラ主題歌の作り方を、YOASOBIの「小説を音楽にする」方法と合わせて整理したものです。
- 朝ドラ主題歌は、ドラマの材料を受け取ってから書き下ろすことが多い
- YOASOBIは、小説を先に読み込んでから曲を作るユニット
- 「咲き誇れ」は、小説の書き下ろしと現地取材の両方から生まれた
- 米津玄師さんの『虎に翼』の主題歌と並べると、共通する作り方が見える
朝ドラ主題歌は、材料を受け取ってから書き下ろされる
先に結論を書きます。今回の2つの事例(YOASOBI『ブラッサム』と米津玄師さん『虎に翼』)を見る限り、朝ドラの主題歌は、既存の曲から選ぶのではなく、ドラマの材料を受け取った作り手が新しく書く形でした。
米津さんはBillboard JAPANのインタビューで、制作統括の方と一度打ち合わせをして、そのあと台本と短い映像資料をもらって制作を始めた、と話しています。Ayaseさんは合同取材で、今回のお話をいただくまで、主人公のモデルである宇野千代さんのことを存じ上げていなかった、と話しました。どちらも、作品を知るところから曲づくりが始まっています。
ここが、私が勘違いしていた部分でした。曲が先にあってドラマが選ぶのではなく、ドラマの側が材料を渡して、作り手が読み込んで書く。映像に合わせた音楽の作り方は映画音楽の仕組みの記事でも扱っていますが、朝ドラの主題歌も同じ「映像とセットで作る音楽」の仲間です。
YOASOBIは小説を読み込んでから曲を作る
朝ドラ主題歌を理解するには、YOASOBIの曲の作り方を先に知っておくと分かりやすくなります。YOASOBIは、すべての曲が小説から生まれるユニットだからです。
きっかけは小説投稿サイトのスタッフからの提案
Billboard JAPANのインタビューで、Ayaseさんはユニットの始まりをこう説明しています。monogatary.com(モノガタリードットコム)という小説投稿サイトのスタッフから、「小説を音楽にするユニット」をやりたいという話を受けたのがきっかけでした。そこからチームで話し合い、Instagramで弾き語りの動画を見つけたikuraさんに声をかけたそうです。
デビュー曲「夜に駆ける」は2019年12月に発表されました。音楽ストリーミングの仕組みで聴かれる時代らしく、TikTokなどのSNSで注目を集め、2020年1月にはSpotifyの「バイラルトップ50(日本)」で1位になりました。ミュージック・ビデオの再生回数は、2020年6月19日の時点で累計2,500万回です。
小説を読み込み、初音ミクでデモを作って共有する
制作の流れも、Ayaseさん本人が話しています。まず小説をたっぷり読み込み、テンポ感やサウンドを決めます。次に初音ミクでデモを作ってikuraさんに送り、歌い方の解釈と摺り合わせます。レコーディングでもAyaseさんが提案することもあれば、ikuraさんの解釈がよくて採用することもあるそうです。
音を頭の中で鳴らしながら原作小説を読んでいる、という言い方も印象的でした。小説が先、曲があと。この順番は、朝ドラの主題歌でも変わっていません。
小説と同じ空気にせず、あえて反対に振ることもある
「夜に駆ける」の原作『タナトスの誘惑』は、暗い場面から始まります。Ayaseさんは、そのまま暗い曲にするとただ救われない曲になってしまうと考え、あえてキャッチーでポップな曲にしたと説明しています。長編小説が原作の「あの夢をなぞって」は、原作が全5章にプロローグとエピローグが付く長さだったため、曲は入りやすい青春の疾走感に振りました。
小説をそのまま音にするのではなく、聴く人が入口にしやすい形に組み替える。この編集の感覚が、YOASOBIらしさの中心にあるようです。
朝ドラの主題歌を、放送のたびに聴いていますか?
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- 曲だけ配信などで聴く
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「咲き誇れ」は現地取材と書き下ろし小説から生まれた
では『ブラッサム』の主題歌は、どうやって作られたのでしょうか。NHKの公式ページと、合同取材の記事から分かることを順に並べます。
朝ドラ側が用意した材料
NHKの番組ページによると、『ブラッサム』は作家・宇野千代さんをモデルにした葉野珠の物語です。脚本は櫻井剛さんと小松與志子さん、制作統括は村山峻平さんと櫻井壮一さん、音楽は fox capture plan、主題歌は「咲き誇れ」(YOASOBI)と記されています。放送は2026年9月28日の月曜から、NHK総合で月曜から土曜の午前8時から8時15分(土曜は1週間の振り返り)です。
主題歌のために書き下ろされた小説
YOASOBIの曲には原作の小説が付きます。今回は、綿矢りささんが書き下ろした「桜(はな)の命は不滅なり」が原作でした。公開日は放送初日と同じ9月28日で、朝7時に公開されています。綿矢さんはコメントで、宇野さんの年齢を重ねても尽きない生命力を桜の木になぞらえて書いた、と話しています。
ドラマは朝8時に始まります。小説の公開は放送の1時間前(8時−7時=1時間)なので、朝の早い読者は、先に小説を読んでから主題歌を聴けた計算です。
現地に行ってから、一気に書き上げた
Ayaseさんは合同取材で、宇野さんの書いた小説や自伝『生きて行く私』を読み、「これは同じ山口県民としても、楽曲を担当させていただく人間としても、ちゃんと先生の生きた場所に行かないと書ききれない」と思ったそうです。実際に山口県岩国市に足を運び、生家も見て、帰ってから一気に書き上げたと話しています。
ここは、小説を読み込む方法に、現地取材という一手間が加わっています。テレビを持っていない私は、放送の空気をリアルタイムでは味わえない側の人間ですが、この話を読むと、曲が岩国の空気をどこかに含んでいるのだろうと想像します。もちろん、聴いた印象を根拠にはできません。事実として言えるのは、現地に行ってから書いた、という本人の言葉までです。
米津玄師さん『虎に翼』の主題歌と並べて見る
もう1つの事例と並べると、朝ドラ主題歌の共通点と違いが見えてきます。米津玄師さんは『虎に翼』の主題歌「さよーならまたいつか!」を書き下ろしました。
「毎朝聴けるもの」という条件
米津さんはBillboard JAPANのインタビューで、朝ドラの主題歌は毎朝聴けるものでなければいけない感じがした、と話しています。良くも悪くもさらっと流れていくもので、肩肘張って聴くものではない、という感覚です。また、朝ドラの過去作がどんなテンションだったかを調べるところから入ったとも語っています。
作り手ごとに、材料の受け取り方が違う
米津さんは制作統括との打ち合わせ1回と、台本、短い映像資料が出発点でした。Ayaseさんは、書き下ろし小説、宇野さんの自伝、現地取材が出発点です。どちらも、作品の外から入ってくる作り手が、材料を自分の方法で読み込んでいます。
面白いのは、米津さんが「なぜ男性である自分に話が来たのか」を制作統括に直接たずねたと話している点です。主題歌は、依頼を受けた側も理由を確かめながら作っています。依頼が来たら黙って書く、という流れではないようです。
15分の朝ドラで主題歌が担う役割
朝ドラは1回15分と短い番組です。NHK総合の放送は月曜から土曜で、週に6回(月〜土)×15分=90分になります。土曜は1週間の振り返りなので、物語を進める回は月曜から金曜の5回です。
この短い枠の頭に、主題歌とタイトル映像が置かれます。物語を知らない人も、毎朝同じ曲を聴くうちに、その作品の空気を覚えていきます。米津さんの「毎日聴ける」という言葉は、この毎日繰り返される性質を指しているのだと私は読みました。
『ブラッサム』のタイトル映像について、ikuraさんは取材で、満開の桜の中で主人公が満面の笑みで踊っていて、幸せな気持ちになったと話しています。曲と映像がセットで、毎朝の入口になっているわけです。
主題歌づくりの難しさと、公開情報から分からないこと
ここまでの話は、うまくいった側面を中心に見てきました。ただし、この作り方には難しさもあります。
作品の外から入る作り手は、知らないところから始める
Ayaseさん自身が、今回のお話をいただくまで宇野千代さんを知らなかった、と話しています。知らない人物の人生を曲にするために、現地に足を運ぶ。それは、知らない部分を埋める手段の1つだったのだと思います。
語られていないことは、分からない
私が確かめられたのは、公式ページとインタビューで語られた範囲です。契約の条件、依頼から完成までの期間、曲を直したかどうかといった内部の事情は、公開されている資料からは分かりませんでした。分からないことを想像で補うのは避けます。
放送前後の評判は、制作の仕組みとは別の話
YOASOBIやAyaseさんの話題は、放送前後にネットでさまざまな声が出ています。ただ、それは曲の作り方とは別の話です。この記事は、公開されている制作の説明だけを材料にしています。曲に対する感じ方は人それぞれで、記事が良し悪しを決めるものではありません。
主題歌の聴き方:原作小説を先に読むか、あとに読むか
ここは実用の話です。YOASOBIの曲には原作の小説があります。曲を聴く前後どちらに読むか、という選び方があります。
| 順番 | 向いている人 | 得られるもの |
|---|---|---|
| 曲を先に聴く | まず耳で好みを確かめたい人 | 歌詞から物語を想像し、あとで小説と答え合わせできる |
| 小説を先に読む | Ayaseさんの「読み込む」順を追体験したい人 | 曲が原作の何を選び、何を削ったかが分かる |
| ※2026年9月時点の筆者の整理です | ||
私は、小説を先に読む順が好みです。ただし、これは好みの話で、正解ではありません。「夜に駆ける」のように、暗い小説をあえてポップな曲にした例もあるので、曲と小説の温度差を確かめる楽しみは、どちらの順でも味わえます。
『ブラッサム』の場合は、原作小説が主題歌と同じ日に公開されています。放送の前に小説を読んでから、8時の主題歌を聴く。そんな順番も試せる作りになっています。
よくある誤解
「主題歌は既存のヒット曲から選ばれる」は本当か
今回の2つの事例では、どちらも書き下ろしでした。米津さんは台本と映像資料、YOASOBIは書き下ろし小説と現地取材を材料にしています。すべての朝ドラが同じ方法とは限りませんが、少なくともこの2例は既存曲を選んだものではありません。
「YOASOBIの曲は、小説の要約を歌っている」は正しいか
Ayaseさんは「夜に駆ける」で、暗い原作をそのまま暗い曲にせず、あえてポップにしたと話しています。要約というより、聴く人が入りやすい形への組み替えです。
「作曲者は、ドラマの内容を最初から知っている」のか
Ayaseさんは、宇野千代さんのことを、今回のお話をいただくまで知らなかったと話しています。作曲者が最初から詳しいとは限らず、知るところから始めて、現地に行き、読んで、書いています。
まとめ:朝ドラ主題歌は「読み込んでから書く」音楽
朝ドラの主題歌は、既存の曲から選ばれるのではなく、材料を受け取った作り手が読み込んで新しく書く、という流れでした。YOASOBIは小説を読み込んでデモを作り、「咲き誇れ」では書き下ろし小説と岩国への現地取材が加わりました。米津玄師さんは、台本と映像資料から、毎朝聴ける曲を目指したと話しています。
次に朝ドラの主題歌を聴くときは、曲が何を材料にして生まれたのかを、少しだけ思い出してみてください。判断の材料としては、原作小説を読んでみるか、曲だけで楽しむか、どちらも自然な選び方です。本記事は2026年9月時点の公開情報をもとにしています。最新の放送予定や配信情報は、NHKの公式サイトでご確認ください。
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📊 「朝ドラ主題歌はどうやって作られる?YOASOBI「咲き誇れ」に見る小説から曲が生まれる仕組み」はこんな人に読まれています
参考文献・出典
- ・NHK「連続テレビ小説 ブラッサム(番組ページ)」 https://www.web.nhk/tv/an/blossom/pl/series-tep-R769G71XJ6
- ・PR TIMES(RBB TODAY掲載)「YOASOBI、連続テレビ小説『ブラッサム』主題歌「咲き誇れ」初オンエアと原作小説公開のお知らせ」 https://www.rbbtoday.com/release/prtimes2-today/20260925/1362605.html
- ・Billboard JAPAN「YOASOBIが語るユニット結成の経緯、音楽と小説を行き来する面白さ」 https://www.billboard-japan.com/special/detail/2948
- ・Billboard JAPAN「米津玄師、朝ドラ主題歌「さよーならまたいつか!」で大事にした“キレ”と“逃げ切り”」 https://www.billboard-japan.com/special/detail/4330
- ・WEBザテレビジョン「YOASOBI、“朝ドラ”『ブラッサム』主題歌に込めた美しい情熱(合同取材)」 https://thetv.jp/news/detail/1444074/










































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