なぜ平均給与487万円は実感より高く感じるのか|国税庁の統計で分かる平均値と中央値のズレ

国税庁が公表した令和7年分の民間給与実態統計調査で、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は487万円でした。ニュースの見出しにこの数字が出ると、「自分はそんなにもらっていない」と感じる人が少なくありません。その感覚は読み違いではありません。同じ調査の分布から計算すると、働く人のちょうど真ん中は、487万円より約67万円低い位置にあります。

私も最初は、487万円を「普通の会社員の年収」だと受け取っていました。見出しは平均の数字だけを大きく見せます。分布まで読むと、平均は「真ん中」を意味していないことが分かります。この記事は、2026年9月時点で国税庁のサイトに載っている令和7年分の調査をもとに、487万円が誰の何を平均した数字なのかを整理します。

この記事のポイント

  • 平均給与487万円は、民間の事業所で1年を通じて働いた5,163万人の額面の平均
  • 最も人数が多いのは300万円超400万円以下の層で、平均はその少し右にある
  • 分布から推定した中央値は約420万円で、平均以下の人は約6割
  • 男女・雇用形態・業種による差が、平均の中身を大きく動かしている

平均給与487万円は誰の何を平均した数字か

調査の対象は、令和7年12月31日現在、民間の事業所(源泉徴収義務者)に勤めている給与所得者です。国家公務員や地方公務員など官公庁等の職員は入っていません。パート・アルバイトや役員は含まれます。

487万円の平均に入っている人・入っていない人

民間の事業所で働く給与所得者
6,080万人
→
1年を通じて勤務した人
5,163万人
→
その人たちの平均給与
487万円

12月31日現在の給与所得者数は6,080万人でした。ところが487万円の計算に使われたのは、令和7年の1月から12月まで引き続き勤務し、給与を受け取った月数が12か月の人、つまり5,163万人だけです。差の917万人(6,080万−5,163万)は、年の途中で入社した人など「1年未満勤続者」にあたり、この平均には入っていません。917万人という数字には、私も少し驚きました。

額面であり、手取りではない

調査でいう「給与」は、その年1年間の支給総額です。給料・手当と賞与の合計で、給与所得控除前の収入金額。通勤手当など非課税の分は含みません。税金や社会保険料が引かれる前の金額なので、銀行口座に入る額とは別物です。手取りとの関係は、手取りと額面の違いの記事で計算方法を確認できます。

平均給与は「合計÷人数」でしかない

調査の用語説明では、平均給与は給与支給総額を給与所得者数で割ったものと定義されています。全員の給与を足して人数で割るだけなので、誰がどのくらいの位置にいるかは、この1つの数字からは分かりません。平均が高いのか低いのかは、分布を見て初めて判断できます。

給与の分布を見ると平均の位置が分かる

給与の分布を見ると平均の位置が分かる
Photo by Cory Schadt on Unsplash

令和7年分の1年を通じて勤務した給与所得者5,163万人を、年間の給与額ごとに並べると、最も多いのは300万円超400万円以下で799万人(構成比15.5%)でした。次いで400万円超500万円以下が792万人(同15.3%)です。平均の487万円は、この2つの山のうち右側の階級の中にあります。

年間の給与額(額面) 給与所得者数(千人) 構成比(%)
100万円以下 3,703 7.2
100万円超200万円以下 5,825 11.3
200万円超300万円以下 6,746 13.1
300万円超400万円以下 7,987 15.5
400万円超500万円以下 7,918 15.3
500万円超600万円以下 6,145 11.9
600万円超700万円以下 4,035 7.8
700万円超800万円以下 2,777 5.4
800万円超900万円以下 1,834 3.6
900万円超1,000万円以下 1,266 2.5
1,000万円超1,500万円以下 2,422 4.7
1,500万円超2,000万円以下 610 1.2
2,000万円超2,500万円以下 167 0.3
2,500万円超 196 0.4
合計 51,631 100.0
※出典:国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」(1年を通じて勤務した給与所得者・男女計)

給与額ごとの人数の割合(令和7年分・男女計)

100万円以下
7.2%
100万円超200万円以下
11.3%
200万円超300万円以下
13.1%
300万円超400万円以下
15.5%
400万円超500万円以下
15.3%
500万円超600万円以下
11.9%
600万円超700万円以下
7.8%
700万円超800万円以下
5.4%
800万円超900万円以下
3.6%
900万円超1,000万円以下
2.5%
1,000万円超1,500万円以下
4.7%
1,500万円超2,000万円以下
1.2%
2,000万円超2,500万円以下
0.3%
2,500万円超
0.4%

棒の長さは構成比に比例しています。山の頂上は300万円台で、右に向かってゆっくり細くなります。

男性と女性では山の位置が違う

男女を分けると山の位置がずれます。男性は400万円超500万円以下が最も多く487万人(構成比16.6%)、次いで500万円超600万円以下の427万人(同14.6%)でした。女性は200万円超300万円以下が417万人(同18.7%)で最も多く、次いで100万円超200万円以下の413万人(同18.5%)です。

男性の最多階級の人数が「487万人」で、平均給与の「487万円」と偶然同じ数字になっています。単位が人か円かを取り違えないよう、原典では表の見出しまで確認しました。

中央値は約420万円と推定できる

中央値は、全員を給与の低い順に並べたときの真ん中の人の額です。私が読んだ調査の概要ページと報告書PDFには中央値の記載がなかったので、階級別分布から推定しました。

計算はこうです。合計51,631千人の半分は25,815.5千人。100万円以下から300万円超400万円以下までの累計は24,261千人(47.0%)なので、あと1,554.5千人ぶん進めば過半数に届きます。次の400万円超500万円以下の階級は7,918千人。階級の中で人が均等に並んでいると仮定すると、400万円+(1,554.5÷7,918)×100万円≒約420万円です。平均487万円との差は約67万円になります。

平均以下の人は約6割

同じ方法で、487万円以下の人の割合も出せます。400万円以下の累計24,261千人に、400万円超500万円以下の階級の87%分((487−400)÷100×7,918≒6,889千人)を足すと31,150千人。51,631千人に対して約60.3%、つまり約6割です。

約6割です。487万円を「真ん中」だと思い込んでいた私の直感は、ここで外れました。ただし階級の中の並び方は仮定なので、あくまで目安の数字です。

年間の給与額(額面) その額以下の人の割合
300万円以下 31.5%
400万円以下 47.0%
500万円以下 62.3%
600万円以下 74.2%
700万円以下 82.0%
800万円以下 87.4%
1,000万円以下 93.4%
※上の分布表の構成比を上から足した累積です(人数の累計÷51,631千人で計算)

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なぜ平均は中央値より高く出るのか

理由は、給与の分布が右に長く裾を引いているからです。給与は0円を下回りませんが、上には限りがありません。少数の高い給与が、全員の合計を押し上げます。

実際、年間給与が1,000万円を超える人は、1,000万円超1,500万円以下の2,422千人、1,500万円超2,000万円以下の610千人、2,000万円超2,500万円以下の167千人、2,500万円超の196千人を合わせて3,395千人。51,631千人に対して6.6%です。

極端な例で、平均が引き上げられる仕組みを見る

実際の統計ではなく、仕組みを見るための仮の例です。10人のうち9人が年収400万円、1人が1,500万円だとします。平均は(9×400+1,500)÷10=510万円ですが、真ん中の人は400万円です。1人の高い額が、平均だけを110万円も引き上げています。実際の分布ではここまで極端ではないものの、方向は同じです。

中央値にも弱点がある

中央値が万能というわけでもありません。高い給与がさらに上がっても、順番の真ん中は動かないので、中央値には現れません。賃上げが上のほうに偏っているのか、全体に行き渡っているのかは、平均・中央値・分布を並べて見て初めて分かります。私は大学のゼミが社会調査法で、平均だけを報告すると必ず「分布は?」と聞かれる習慣が身につきました。統計を読むときの癖は、そこから変わっていません。

男女と雇用形態で平均は大きく違う

男女別の平均給与は、男性597万円、女性342万円で、差は255万円(597−342)です。雇用形態別では、正社員(正職員)が559万円、正社員以外(パート・アルバイトなど)が210万円で、約2.7倍(559÷210)の開きがあります。

正社員だけで見ても男性623万円、女性444万円。正社員以外では男性270万円、女性179万円です。平均年齢は47.3歳(男性47.5歳、女性47.1歳)で、平均勤続年数は12.5年(男性14.1年、女性10.4年)でした。男女差の原因が、雇用形態の内訳や勤続年数、職種のどれにどのくらいあるのかは、この調査だけでは分かりません。断定できるのは「平均が大きく違う」という事実までです。

正社員以外の210万円は時給ではない

210万円は1年間の支給総額の平均です。働く時間の長さが違えば額も変わるため、時給の高低とは別の話になります。雇用形態ごとの待遇の違いは正社員とパートの違いで整理しています。

業種別では最大で約3倍の差がある

業種別では最大で約3倍の差がある
Photo by Patrick Tomasso on Unsplash

業種別の平均給与で最も高いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」の854万円、次いで「金融業,保険業」の726万円です。最も低いのは「宿泊業,飲食サービス業」の276万円でした。最高と最低の差は約3.1倍(854÷276)になります。

分布でも差は明らかです。電気・ガス・熱供給・水道業では800万円超の人が47.2%を占め、宿泊業,飲食サービス業では100万円以下の人が27.9%で最も多くなっています。全体で800万円超の人は12.6%(6,495千人÷51,631千人)なので、電気・ガス・熱供給・水道業がいかに右寄りかが分かります。

業種の平均は年齢や雇用形態にも左右される

宿泊業,飲食サービス業は、パート・アルバイトの比率が高い業種です。業種の違いが、そのまま「1人あたりの稼ぐ力の違い」を示しているとは限りません。雇用形態や年齢の構成が混ざった平均であることを、頭に置いて読む必要があります。

487万円と自分の年収を比べる前の注意点

年齢が上がるほど平均は上がる

男性では60歳未満まで、年齢が高くなるにつれて平均給与も高くなり、55〜59歳の階層で734万円と最も高くなります。女性は年齢による差があまり大きくありません。487万円は平均年齢47.3歳の集団の数字なので、20代・30代の人が下回っていても不思議ではありません。

抽出した調査であり、推計値である

この調査は全数調査ではありません。母集団の事業所3,461,171か所のうち、27,420か所を標本として抽出し、そこに勤める給与所得者を抽出して集計した推計です。従事員1〜9人の事業所は400分の1の抽出率で、規模が大きいほど抽出率が上がります。結果には誤差が含まれます。

公務員や個人事業主は入っていない

対象は民間の事業所の給与所得者だけです。公務員は入りません。給与ではなく事業所得で暮らす個人事業主も対象外です。「日本人の平均年収」と言い換えてしまうと、範囲が広がりすぎます。

自分の年収がどこにいるかを判断する方法

487万円を目安にするより、分布の中の自分の位置を確認するほうが実用的です。手順は3つです。

1つ目は、自分の1年間の額面を出すことです。給与と賞与の合計(非課税の通勤手当は除く)で、調査の「給与」と同じ数え方になります。2つ目は、先ほどの累積の表で位置を確認します。たとえば額面が450万円なら、表の400万円以下47.0%と500万円以下62.3%の間、つまり下から数えて半分より少し上です。3つ目は、同じ性別、同じ業種、近い年齢の平均と比べます。全体の平均より、比べる相手が近いほど意味のある数字になります。

賃金を決める側の人にも同じことが言えます。採用や賃上げの水準を平均だけで決めると、実際の従業員の感覚とずれます。分布と中央値を併せて見るほうが、実態に近くなります。

前年からの変化はどう読むか

前年の令和6年分の平均給与は478万円でした。令和7年分は487万円で、1.9%増、額にして91千円の増加です。この増加は額面の話なので、物価の上がり方と比べる必要があります。物価の影響を除いた賃金の見方は、実質賃金と名目賃金の違いの記事にまとめています。最新の数字は、国税庁の公表ページで確認してください。

よくある誤解

Q1. 平均給与487万円は、普通の会社員の年収ですか?

いいえ、そうとは限りません。487万円は民間の事業所で1年を通じて働いた5,163万人の額面の平均で、パート・アルバイトや役員も含みます。分布から推定した中央値は約420万円で、平均以下の人は約6割になります。

Q2. 平均より低いと、収入が低いほうなのですか?

平均以下の人は約6割いるので、平均より低いことは珍しくありません。年齢、性別、業種、雇用形態で平均が大きく異なるため、自分に近い条件の平均と比べる必要があります。

Q3. 国税庁の平均給与には、公務員や個人事業主も入っていますか?

入っていません。調査の対象は、民間の事業所(源泉徴収義務者)に勤める給与所得者です。国家公務員や地方公務員など官公庁等の職員は含まれません。

まとめ:平均給与487万円の読み方

487万円は、民間の事業所で1年を通じて働いた5,163万人の額面の平均です。年の途中で入社した人や公務員は入っていません。

分布を見ると、最も多いのは300万円超400万円以下の層です。階級内の並びを均等と仮定して私が推定した中央値は約420万円、平均以下の人は約6割でした。平均が高めに出るのは、少数の高い給与が合計を押し上げるためです。

男女、雇用形態、業種で平均は大きく違います。自分の年収と比べるなら、平均そのものより、近い条件の人たちの分布の中でどの位置にいるかを見るほうが判断に役立ちます。

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参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は、お金の“仕組み”を知る面白さをお届けし、お金や経済への興味を広げていただくための読み物です。特定の金融商品をすすめるものではありません。実際の投資・契約はご自身の判断で、必要に応じて専門家にご相談ください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。