ギターの2弦と3弦の間だけ長3度になる理由|標準チューニングの並びを半音の数で読む

ギターの標準チューニングは、6弦から順にE・A・D・G・B・Eです。隣り合う弦は5半音ずつ離れていますが、3弦のGと2弦のBの間だけは4半音で、音楽の用語では長3度と呼びます。ほかの隣り合う弦は完全4度です。この不ぞろいは、運指のしやすさと、ギターの前の世代の楽器から受け継いだ並びの両方で説明されています。

私はずっと、ギターの弦は全部同じ間隔で並んでいるのだと思っていました。調べるまで、2弦と3弦の間だけ違うことを意識したことがありませんでした。軽音サークルにいた友人に「3弦だけ押さえる場所が違うのはなぜ?」と聞くと、「そういうものだから」と返ってきました。確かにそのとおりなのですが、ここではその「そういうもの」の中身を、数字で見ていきます。2026年10月時点で確認できた資料に基づいています。

  • 6本の弦は、5半音・5半音・5半音・4半音・5半音の順に並ぶ
  • 6弦の低いEから1弦の高いEまで、ちょうど24半音(2オクターブ)
  • 5半音の間隔は、4本の指で4つのフレットを受け持つ運指と相性がよい
  • 長3度が混ざることで、同じコードの形が2弦と3弦の間でずれる

結論:6本の弦は5半音ずつ、2弦と3弦の間だけ4半音

標準チューニングの各弦の高さは、Wikipediaでは6弦のE(82.41Hz)、5弦のA(110Hz)、4弦のD(146.83Hz)、3弦のG(196Hz)、2弦のB(246.94Hz)、1弦のE(329.63Hz)と定義されています。音名の並びを半音の数に直すと、次の表になります。

弦 音名 周波数 下の弦との間隔
6弦 E2 82.41Hz —
5弦 A2 110Hz 5半音(完全4度)
4弦 D3 146.83Hz 5半音(完全4度)
3弦 G3 196Hz 5半音(完全4度)
2弦 B3 246.94Hz 4半音(長3度)
1弦 E4 329.63Hz 5半音(完全4度)
※周波数はWikipedia「Guitar tunings」による。半音の数は音名から数えた値

半音の数は、音名を1つずつ数えたものです。EからAまでが5つ、AからDが5つ、DからGが5つ、GからBが4つ、BからEが5つです。合計は24半音(5+5+5+4+5で計算)で、ちょうど2オクターブになります。

1か所だけ間隔が違うのは確かですが、全体の幅はきれいに2オクターブで収まっています。ここだけ1半音ぶん縮めた結果、帳尻が合っているとも読めます。

周波数で見ると、間隔の違いはどう表れるか

半音の数では4と5の違いですが、周波数の比で見ると、この差ははっきり数字に出ます。平均律では、隣り合う半音の周波数の比は2の12乗根(約1.0595)で一定です。5半音ぶん上がると約1.335倍(2の12分の5乗で計算)、4半音ぶんなら約1.260倍(2の12分の4乗で計算)になります。

この比を、先ほどの周波数で確かめました。5弦のA(110Hz)と6弦のE(82.41Hz)の比は約1.335(110÷82.41で計算)です。2弦のB(246.94Hz)と3弦のG(196Hz)の比は約1.260(246.94÷196で計算)で、理論値と小数第3位まで一致します。表の周波数が平均律で決まっていることが、この計算から分かります。

平均律が周波数の比をどう決めているのか、純正律とどこが違うのかは、平均律と純正律の違いを周波数の数字で読む記事で整理しています。この記事での半音の数え方は、平均律のものです。

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5半音で並べるのは、4本の指で4つのフレットを受け持つため

弦が張られたギターのヘッドとペグ。6本の弦をそれぞれ決まった音に合わせる
Photo by Isak Photography on Unsplash

隣り合う弦を5半音にしておくと、運指が単純になります。Wikipediaは、5半音の間隔にすることで、押さえる左手の4本の指が最初の4つのフレットをそれぞれ受け持ち、半音階を弾けると説明しています。人さし指が1フレット、小指が4フレットという分担です。これが成り立つのは、手をいちばん手前の位置に置いたときに限られます。

弦と弦が5半音離れていれば、開放弦から4フレットまでで5つの音が並び、5フレットで隣の弦の開放弦と同じ高さになります(0〜4フレットで5つ、と数えて計算)。弦をまたいでも、音の並びが途切れません。

4半音の弦があると、指の数と音の数が合わなくなる

間隔が4半音の弦の組では、4フレットで隣の開放弦と同じ音になります。5フレットまで押さえに行くと、隣の弦の1フレットと音が重なります。この重なりが、同じ形を別の弦に持っていくとずれる原因です。くわしくは、後の見出しで表にします。

2弦と3弦だけ4半音なのは、前の世代の楽器の並びを受け継いだから

では、なぜ全部を5半音にしなかったのか。Wikipediaは、低い側から4度を重ね、長3度を1つ挟み、また4度で終わる並びを、ギターは前身の楽器であるヴィオルから受け継いだと書いています。

この並びが昔の楽器と近いことは、ヴィウエラの解説からも読み取れます。ヴィウエラは、同時代のルネサンス・リュートと同じ調弦で、4度と1つの長3度を組み合わせた並びでした。間隔の順に書くと、4度、4度、長3度、4度、4度です。現代のギターは4度、4度、4度、長3度、4度なので、長3度の位置が1つ違うだけです。

Wikipediaによれば、現代のギターの3弦を半音下げると、ヴィウエラやリュートと同じ間隔の並びになります。3弦のGを半音下げるとF♯になり、その下の4弦のDとは4半音、上の2弦のBとは5半音になります。長3度の位置が、下の側に移るわけです。

誰かが理由を決めて設計したわけではない

ここは、調べていて少し驚いたところです。長3度を挟む理由が「コードを弾きやすくするため」と説明されるのをよく見かけますが、私が確認できた資料には、そう決めた人や時期を示した記述は見つかりませんでした。確かなのは、前の世代から受け継がれた並びで、運指とコードの組み立てに今も影響しているという2点までです。

同じコードの形が、2弦と3弦の間でずれる

ギターのネックを押さえる左手。コードの形は弦の間隔が変わる場所でずれる
Photo by Caio Silva on Unsplash

長3度が混ざる影響を、パワーコードの形で確かめます。パワーコードは、根音とその5度上の音を鳴らす2音の形です。5度は7半音の間隔です。隣り合う弦が5半音なら、5度の音は隣の弦の2フレット上にあたります(7−5で計算)。

弦の組 弦の間隔 下の弦の3フレットを根音にしたとき、5度の音のフレット
6弦と5弦 5半音 5フレット(3+7−5で計算)
5弦と4弦 5半音 5フレット(同じ式)
4弦と3弦 5半音 5フレット(同じ式)
3弦と2弦 4半音 6フレット(3+7−4で計算)
2弦と1弦 5半音 5フレット(3+7−5で計算)
※フレットの位置は、半音の数から計算した値

6弦と5弦、5弦と4弦、4弦と3弦の3組では、同じ形のままフレットの位置が変わりません。ところが3弦に根音を置くと、2弦の5度は6フレットと、1つ遠くなります。同じ形のまま2弦に動かして5フレットを押さえると、鳴るのは5度より半音低い音です(3弦の3フレットはB♭で、2弦の5フレットはEなので、5度のFには届きません)。

形を覚えるだけで済む場所と、2弦と3弦の間でだけ1フレットずらす場所があるわけです。Wikipediaも、この不ぞろいな長3度のせいで、ギター弾きは同じコードに複数の押さえ方を覚えなければならないと書いています。

確かめ方:3弦の4フレットと2弦の開放弦

ギターが手元にあれば、すぐ試せます。3弦の4フレットを押さえて鳴らし、2弦の開放弦と同じ高さになるかを聞き比べてください。チューナーを使うなら、3弦の4フレットがB、2弦の開放弦もBと表示されるはずです。ほかの隣り合う弦では、5フレットが隣の開放弦と同じ音になります。

全部の弦を同じ間隔にしたチューニングもある

不ぞろいが不便なら、全部を揃えればよいという発想もあります。Wikipediaには、2種類の例が載っています。

名前 弦の音名(6弦から) 隣り合う弦の間隔 6弦から1弦までの幅
標準チューニング E2・A2・D3・G3・B3・E4 4度が4回、長3度が1回 24半音
全部4度 E2・A2・D3・G3・C4・F4 すべて完全4度 25半音(5×5で計算)
全部長3度 E2・G♯2・C3・E3・G♯3・C4 すべて長3度 20半音(4×5で計算)
※音名はWikipedia「Guitar tunings」。半音の幅は音名から数えた値

全部4度にすると、変わるのは上の2本だけ

全部を完全4度にするチューニングは、標準チューニングの下の4本をそのまま使い、長3度を4度に変えます。2弦のBをCに、1弦のEをFに変えるだけです。Wikipediaによると、ジャズ奏者のスタンリー・ジョーダンは、このチューニングを指板を単純にして論理的にするものだと述べています。

代わりに、標準チューニングで覚えてきたコードの形は、1弦と2弦をからめる形では使えなくなります。

全部長3度にすると、3本ごとに同じ音が繰り返される

全部を長3度にする並びは、3本の弦ごとにオクターブが繰り返されます。Wikipediaは、1オクターブ分の音がすべて連続する4つのフレットの中に収まるので、手を大きく広げずに済むと説明しています。また、長調と短調のコードを、連続する2つのフレットの上の2〜3本の指で押さえられるとも書いています。

反対に、6本の弦では標準チューニングより音の範囲が狭くなります。6弦から1弦までの幅は、標準の24半音に対して20半音です。標準の範囲を弾くには、7本の弦が必要になるとされています。

長3度が混ざる並びのデメリット

ここまで見ると、標準チューニングは不ぞろいで損をしているように見えます。実際、コードの押さえ方を弦の組ごとに覚える手間は、標準チューニングの弱点です。Wikipediaによれば、ギターのチューニングは数百種類あり、標準チューニングはそのうちの1つにすぎません。

それでも標準が使われ続けている理由として、私が言えるのは推測までです。コードの本や楽譜、動画といった教材の多くが標準チューニングを前提にしているからではないか、と考えています。ただ、この点を数字で裏づけた資料は見つけられませんでした。

弦をまたぐ形がずれる弱点は、慣れるまでは不便に感じる部分でしょう。ギターの弦やフレットが音を作る仕組みそのものは、ギターの仕組みを解説した記事にまとめています。

ギターのチューニングをめぐるよくある誤解

誤解1:全部の弦は同じ間隔で並んでいる

私もこう思い込んでいました。実際は、2弦と3弦の間だけ4半音で、ほかは5半音です。

誤解2:長3度は、響きをよくするために入れた

響きを理由に挙げる説明を見かけますが、私が確認した資料では、受け継いだ並びであることと運指の説明しか裏づけられませんでした。理由が1つに決まっているとは言えません。

誤解3:標準チューニングが唯一の正解

標準チューニングは最も広く使われていますが、全部4度や全部長3度のように、間隔を揃えた並びも実際に使われています。向き不向きがあるだけで、どれが正しいという話ではありません。

自分に合うチューニングを選ぶための判断の目安

状況 向いている並び 理由
市販のコード表や楽譜をそのまま使いたい 標準チューニング 標準チューニング向けの教材が多いと考えられるため
弦をまたぐ形をそのまま動かしたい 全部4度、または全部長3度 弦の間隔が揃っていて、形がずれにくい
広い音域を6本で弾きたい 標準チューニング、または全部4度 全部長3度は6本だと音域が狭くなる

初めてギターを手にする人は、標準チューニングで始めるのが現実的です。まず標準で慣れ、2弦と3弦の間のずれを体で覚えたうえで、別の並びに興味が出たら試す、という順番になります。

まとめ:ギターの不ぞろいな弦の並びが生まれた理由

標準チューニングE・A・D・G・B・Eは、5半音の間隔を基本にして、2弦と3弦の間だけ4半音の長3度が入る並びです。6弦から1弦までは24半音で、ちょうど2オクターブです。

5半音の間隔は、4本の指で4つのフレットを受け持つ運指と相性がよく、長3度は前の世代の楽器から受け継いだ並びです。長3度が混ざるせいで、同じコードの形は2弦と3弦の間でずれます。その代わり、全部の弦を揃えたチューニングでは、音域や教材の面で別の不便が出ます。

覚えておくことは3つです。2弦と3弦の間だけが4半音であること。その影響でコードの形が1フレットずれること。理由は1つに決まらず、運指と受け継いだ並びの両方が関わっていること。2026年10月時点で私が確認できたのは、ここまででした。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。