ネットスーパーはどうやって注文した商品を家まで届けているのか|店舗出荷とダークストアの仕組み

ネットスーパーで頼んだ商品は、どこから、どうやって家まで届いているのでしょうか。実は届け方は1つではありません。今ある店舗の売場からスタッフが商品を集めて届ける「店舗出荷型」と、注文専用の物流拠点(ダークストア)から届ける「センター出荷型」という、まったく違う2つの仕組みが並んで存在しています。この記事では、イオンの「Green Beans」とOniGOという対照的な2社の実例をもとに、注文から配達までの流れと、なぜ日本では今も店舗出荷型が主流なのかを整理します。2026年9月時点の情報です。

目次

ネットスーパーは「店舗出荷型」と「センター出荷型」という別の仕組みで動いている

ネットスーパーはどれも似たような裏側だと思われがちですが、配送の起点になる場所がまったく違います。大きく分けると、既存のスーパーの店舗を配送拠点として使う「店舗出荷型」と、一般の客が立ち入らない注文専用の物流拠点、いわゆる「ダークストア」を構える「センター出荷型」の2種類です。日本ではこれまで店舗出荷型が主流で、センター出荷型は後から広がってきた仕組みになります。

方式 配送拠点 初期投資 品揃えの上限 代表例
店舗出荷型 既存の実店舗 小さい(既存店を流用) 店舗の在庫まで イトーヨーカドー、多くの地域スーパー
センター出荷型 注文専用の物流拠点(ダークストア) 大きい(専用施設が必要) 店舗より広く持てる イオンネクスト「Green Beans」

店舗出荷型は今ある店舗を配送拠点にする

店舗出荷型は、ネットで受けた注文を近くの店舗に回し、その店舗のスタッフが売場から商品をピッキングして梱包し、配送に回す仕組みです。日本のネットスーパーの多くは、この方式からスタートしています。すでにある店舗・在庫・レジの仕組みをそのまま使えるため、新しく大きな施設を建てる必要がありません。

センター出荷型(ダークストア)は注文専用の物流拠点を持つ

センター出荷型は、一般客の来店を前提としない専用の物流拠点から出荷します。店舗のレイアウトを接客用に整える必要がないため、棚の配置や動線を出荷効率だけを考えて設計できるのが特徴です。イオンネクストの「Green Beans」は、この方式を採用している代表例です。

なぜ日本では店舗出荷型が今も主流なのか

効率だけを考えれば、出荷専用に設計されたセンター出荷型のほうが有利に見えます。それでも日本のネットスーパーで店舗出荷型がなくならないのには理由があります。

ダークストアは出店のたびに大きな投資が要る

センター出荷型は、注文専用の物流施設を新しく建てるか借りるところから始まります。イオンネクストの「Green Beans」を支える誉田CFC(千葉市)は、敷地面積が7万2634.04平方メートル、延べ面積は5万1584.20平方メートルという大型施設です。これだけの規模の拠点を1つ作るのに、既存店舗を転用するよりはるかに大きな投資が必要になるのは想像がつきます。

店舗出荷型ならスモールスタートできる

一方で店舗出荷型は、すでにある店舗にネット注文の窓口を足すだけで始められます。新規出店ほどのリスクを取らずに対応エリアを広げられるため、多くのチェーンがまずこの方式で参入してきました。非効率に見える部分はあります。それでも、専用施設への投資判断がまだできない段階の事業者にとっては、この鈍さが結果的にリスクを抑える仕組みになっています。

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注文してから商品が届くまでの流れ

方式によって拠点は違いますが、注文が届いてから商品が家に着くまでの大まかな流れは共通しています。

ネットスーパーの配送の流れ

①注文データが拠点へ届く
→
②担当者・ロボットがピッキング
→
③梱包・仕分け
→
④配送エリアごとに配達

注文データはまず物流拠点に送られる

利用者がアプリやサイトで注文すると、そのデータは担当する店舗か物流センターに送られます。センター出荷型では、このデータが自動で棚や担当ロボットの割り当てにまで直結している場合があります。

担当者やロボットが商品を集める

データを受け取った拠点では、担当者やロボットが商品を集めます。ここでの集め方が店舗出荷型とセンター出荷型で大きく違う部分で、詳しい仕組みは後の章で扱います。ラストワンマイルの仕分け方は、
翌日には届く宅配便の仕分けシステム
とも共通する考え方です。宅配便がハブとなる拠点に荷物を集約してから配送エリアごとに仕分けるのと同じように、ネットスーパーも拠点で注文をまとめてから配送ルートに振り分けています。

配送エリアごとに仕分けて配達する

梱包が終わった商品は、配送エリアごとにまとめられ、車両や自転車で配達されます。1時間単位で配送枠を指定できるサービスが増えているのは、この仕分けと配車の精度が上がってきたことの表れでもあります。

イオンのGreen Beansはロボットで何を自動化しているのか

自動搬送ロボットが棚を運ぶ物流センターの内部
Photo by Hyundai Motor Group on Unsplash

センター出荷型のイメージをつかむには、イオンネクストが運営する「Green Beans」の誉田CFC(千葉市)が分かりやすい例です。2023年7月10日に本格稼働したこの拠点は、英オカド社の技術をもとに、最大5万品目を取り扱えるよう設計されています。

誉田CFCは1日20万点をピッキングできる

イオンネクストは2025年6月30日、誉田CFCに新しいロボットを導入したと発表しました。棚から商品を直接取り出す「オングリッドロボットピック」を新たに30台設置し、1日あたり約20万点の商品ピッキングが可能になったとしています。

1世帯の注文がおよそ20点だと仮定すると、20万点÷20点=1万世帯分の注文を1日でさばける計算になります(1世帯あたりの点数は仮の目安で、実際の平均とは異なります)。

正直なところ、この数字を見て最初に思ったのは「1つの拠点でそこまでさばけるものなのか」ということでした。ピッキングの対象商品数も、約3,000品目から始めて2025年度中には約10,000品目まで増やす計画だと発表されており、拡大のペースも決して小さくありません。

ロボットが担うのは作業の3割

ただし、すべてが自動化されているわけではありません。発表によれば、今回の導入で人手による作業の約30%を自動化ロボットが担うことになります。配送直前の注文ボックスを台車に積み込む「オートフレームロード」は最大20kgのボックスを自動で積載できますが、2kg以上の商品や壊れやすい商品はロボットのピッキング対象外とされています。重い荷物を運ぶ力仕事と、繊細な商品を扱う判断は、今のところ分業になっているということです。

OniGOは「10分で届く」から始まり、なぜ今は40〜70分になったのか

保冷バッグを背負い自転車で配達するスタッフ
Photo by Alain ROUILLER on Unsplash

日本初のダークストア専業スタートアップと言われたOniGOの歴史をたどると、「速さ」の意味が変わってきたことが分かります。

2021年、半径1kmを10分でまわる専業モデルで始まった

OniGOは2021年8月25日、東京都目黒区に1号店を開業しました。店舗から半径約1km圏内を対象に、注文から10分以内に自転車で届けるというモデルで、年内に25店舗の出店を目指すとしていました。送料は当時300円でした。元IT企業の広報だった私は、こういう「業界初」「10分で届く」という華々しい数字を見ると、まず本当にその条件で成り立つのか確かめたくなる癖があります。

2024年、イトーヨーカドーと組んで配送の仕組みを変えた

OniGOとイトーヨーカ堂は2024年11月27日付で資本業務提携に基本合意し、2025年2月からイトーヨーカドー83店舗、ヨーク10店舗を使った新サービスを始めました。品揃えは9,000品目まで拡充されましたが、配送時間は通常70分、追加220円の即配オプションでも40分と、専業ダークストア時代の「10分」からは大きく変わっています。現在の公式サイトの案内でも、通常配送は最短70分、即配オプションで最短40分とされ、送料は6,000円未満が490円、6,000円以上12,000円未満が330円、12,000円以上は無料となっています。専用のダークストアだけで拡大するより、すでにある店舗網と組んだほうが対応エリアを早く広げられる。「10分」を看板にしていた会社が、結局は店舗出荷型に近いモデルへ寄っていったというのは、調べていて意外でした。

生鮮食品は配送中の温度をどう管理しているのか

ネットスーパーでは肉や魚、冷凍食品まで注文できますが、配送中に温度が崩れては意味がありません。ここで使われているのが、常温・冷蔵・冷凍を分けて運ぶ「三温度帯物流」という考え方です。

常温・冷蔵・冷凍を分けて運ぶ理由

常温の乾物と、冷蔵のパック肉と、冷凍のアイスを同じ箱に入れてしまうと、どれかの品質が犠牲になります。専用のセンターや配送車両では、温度帯ごとに保冷剤や断熱材の使い方を変え、それぞれの適温を保ったまま仕分けています。

保冷ボックスと配送時間の両方で鮮度を守る

配送時間が短いほど、保冷剤に頼らずに済む時間が長くなります。逆に配送に数時間かかる地域ほど、保冷ボックスの性能や、配送ルートの組み方が品質を左右します。OniGOが配送時間を重視してきたのも、単に便利さのためだけでなく、生鮮食品の品質を保つ時間の余裕をつくるためという側面があります。

ネットスーパーのデメリットと注意点

便利さばかりが強調されがちですが、注意しておきたい点もあります。

実物を見て選べない

野菜の鮮度や肉の脂の入り方を自分の目で見て選べないのは、店舗出荷型でもセンター出荷型でも共通する弱点です。写真や産地表示だけを頼りに判断することになります。

配送枠がすぐ埋まる時間帯がある

夕方や週末など、注文が集中する時間帯は配送枠が早く埋まります。1時間単位で枠を選べるサービスが増えているとはいえ、直前に注文すると希望の時間に届かないこともあります。

自分に合うネットスーパーの選び方

店舗出荷型とセンター出荷型、どちらが向いているかは生活スタイルによって変わります。

急ぎなら対応エリアと配送時間を先に確認する

「今日中に、できるだけ早く」を重視するなら、まず自分の郵便番号がどのサービスの対応エリアに入っているかを調べるのが実用的です。センター出荷型は対応エリアが限定されがちなので、誉田CFCのように段階的にエリアを広げている拠点だと、住んでいる場所によって使える時期が違います。

私は車を持たず、買い物はクロスバイクの前カゴに載る量が上限です。まとめ買いをしたい日に送料無料のラインを狙ってネットスーパーを使うという発想は、車がない生活にはむしろ合っていると感じます。

まとめ買いなら送料と品揃えの上限を見る

OniGOの現在の送料は、6,000円未満が490円、6,000円以上12,000円未満が330円、12,000円以上は無料です。

当初の送料300円と比べると、(490-300)÷300×100≒63%の値上げにあたります。品揃えと配送体制を拡充した分、基本料金も上がったと見ることができます。

スーパー側がどこまで自動化に投資しているかは、レジという別の場所にも表れています。会計を自動化する
セルフレジの仕組み
も、人手を減らして生産性を上げるという点ではネットスーパーの物流自動化と同じ方向を向いています。店頭のレジと裏側の物流、どちらから自動化を進めるかは、チェーンごとの判断が分かれるところです。

よくある誤解

ネットスーパーはどれも専用のダークストアから届くという誤解

実際には、日本のネットスーパーは今も店舗出荷型が多く、専用の物流拠点(ダークストア)を持つセンター出荷型はまだ一部です。両方の方式が並行して存在しています。

「10分で届く」が今のネットスーパーの標準という誤解

2021年当時のOniGOのような「10分」配達は、半径1km程度に限定した専業モデルだからこそ成立していました。対応エリアを広げた現在のOniGOは通常70分、即配でも40分が目安で、多くのネットスーパーは当日〜翌日配送が主流です。

対応エリアはどこでも同じという誤解

センター出荷型は特に、拠点からの距離によって対応エリアが区切られています。誉田CFCも稼働当初は一部の区・市に限られ、東京23区全域を目標に段階的に広げてきた経緯があります。住んでいる場所によって、使えるサービスも配送時間も変わります。

まとめ:ネットスーパーは1つの仕組みではない

ネットスーパーと一口に言っても、既存店舗を使う店舗出荷型と、専用拠点を構えるセンター出荷型では、初期投資も品揃えの上限も配送の仕組みもまったく違います。イオンの誉田CFCはロボットで1日20万点をさばく規模まで拡大している一方、日本初のダークストア専業とされたOniGOでさえ、今は既存スーパーと組む方向に寄っています。どちらが優れているというより、事業者がどこまで専用施設に投資できるか、その判断の違いが今の配送の形に表れていると考えると分かりやすいと思います。使う側としては、急ぎなら対応エリアと配送時間を、まとめ買いなら送料のラインを、それぞれ自分の生活パターンに照らして選ぶのが現実的です。

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2026年9月29日 〜 2026年10月29日
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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。