新築でベランダを作らない家が3割に増えたのはなぜ?乾燥機の普及で変わる間取りの仕組み

新築でベランダ(バルコニー)を「作らない」家が3割にのぼる、という報道が朝日新聞に出ました。洗濯物は外に干すもの、と思っていた人ほど、ベランダのない家が3割という数字には驚くはずです。私も見出しを読んで、最初は「洗濯物の干し場がない家を、そんなに選ぶだろうか」と思いました。

この記事では、報道のもとになった住環境研究所の調査と、内閣府の乾燥機の普及率、建築のルール、雨漏りの統計を原典で確かめて、新築のベランダがなぜ減っているのかを整理します。数字は2026年9月時点で確認できたものです。

  • ベランダを採用しない新築は、2018年度の10.8%から2022年度の30.6%へ増えた
  • 増えた背景に、乾燥機の普及と共働きの増加がある
  • バルコニーは雨漏りの弱点になりやすい場所として、公的な機関も注意を促している
  • 「3割」は積水化学工業の住宅の数字で、日本の新築全体の数字ではない

新築の3割がベランダなし。その数字の出どころ

報道の数字は、積水化学工業の研究機関である住環境研究所が、セキスイハイムの間取り約20万件を調べた結果です。2018年度から2022年度に着工した2階建て・単世帯の住宅が対象で、バルコニーを採用しない住宅の割合は、2018年度の10.8%から2022年度には30.6%になりました。

30.6÷10.8で約2.8倍です。差は30.6−10.8で19.8ポイントで、100棟あたりに直すと、ベランダのない家が約11棟から約31棟に増えた計算になります。

「3割」が指している範囲

見出しの温度と、数字の中身には少し差があります。この30.6%は、同社が手がけた2階建て住宅の間取りデータです。日本の新築住宅すべてを数えた統計ではありません。3割という数字を「日本の新築の3割」と読むと、言い過ぎになります。

それでも、5年で約2.8倍という変化の速さは無視できません。ひとつの住宅メーカーの中で、これだけ間取りの標準が動いたことになります。

若い世代ほど「作らない」を選ぶ

年代別に見ると、30歳未満では37.9%がバルコニーなしを選んでいます。全体の30.6%より高く、若い世代ほど「なくていい」と考えていることが分かります。

洗濯物が外に出なくなった理由

ベランダの主な役目は、洗濯物を干すことでした。その役目のほうが先に薄れています。

乾燥機を持つ世帯は半数を超えた

内閣府の消費動向調査(2026年3月末)によると、衣類乾燥機の普及率は二人以上の世帯で56.5%です。前年の54.8%から1.7ポイント上がりました。内訳では、洗濯機一体型が38.8%から40.8%へ増えています。

朝日新聞は、単身世帯を含む全世帯では49.9%、30代では約7割が乾燥機を持っていると伝えています。調査の範囲が違うので、56.5%と49.9%は食い違いではなく、数える世帯の違いです。

バルコニーがあっても干さない

住環境研究所の別の調査では、バルコニーのある家に住む30歳未満のうち、実際にバルコニーに洗濯物を干すと答えた人は47.5%にとどまりました。半数以上が、あるのに干していないことになります。

理由の一つが共働きです。SUUMOジャーナルが引用した千趣会の調査では、共働き世帯の72.1%が室内干しをしています。挙げられた理由は、ゲリラ豪雨や花粉の影響を受けたくないことと、時短でした。夜に洗って、朝までに乾かしておきたい人にとって、日中の日差しは使えません。

私の家は乾燥機なしです

私の部屋は賃貸で、洗濯は縦型、乾燥機はなく、部屋干しと除湿機で乾かしています。この記事を書くまで、乾燥機がないのは少数派だと思っていました。数字を見ると、二人以上の世帯では56.5%が持っていて、持たない側は4割強です。多数派と少数派の境目は、思ったより近いところにあります。

洗濯物は主にどこで乾かしていますか?

  1. ベランダ・バルコニーの物干し
  2. 室内干し(除湿機などを併用)
  3. 乾燥機(洗濯乾燥機・浴室乾燥機など)
  4. コインランドリー

📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・14票)

ベランダ・バルコニーの物干し:50%
コインランドリー:21%
室内干し(除湿機などを併用):14%
乾燥機(洗濯乾燥機・浴室乾燥機など):14%

ベランダは建築のルールでどう扱われるのか

ベランダ・バルコニーの手すりと床。建築のルールではどう扱われるのか
Photo by Josh Lemmon on Unsplash

ベランダを作ると、家の広さの計算はどう変わるのでしょうか。建築基準法の面積の扱いは、床面積と建築面積で別々に決まっています。

床面積には入らないことが多い

神奈川県の建築基準法取扱基準(2011年版)によれば、外気に十分開放されたバルコニーは屋外とみなされ、原則として床面積に算入しません。外気に有効に開放されている部分の高さが1.1メートル以上で、かつ天井の高さの2分の1以上あれば、幅2メートルまでの部分が床面積に入りません。2メートルを超える部分は、物置などの屋内的な使い方が想定されるので算入されます。

面積の扱いは、自治体ごとの取扱基準で細部が違うことがあります。実際に建てるときは、設計者か建築確認の窓口で確認してください。

面積を増やすためにベランダをやめるわけではない

ここで、私は勘違いをしていました。ベランダをなくせば、そのぶん家の床面積が増えて得をするのだと思っていたのです。ところが、開放されたバルコニーはそもそも床面積に入らないので、なくしても延べ床面積の数字は増えません。容積率や建ぺい率の仕組みは、建ぺい率と容積率の仕組みの記事で図解しています。ベランダをやめる理由は面積の得ではなく、次に書く維持と暮らし方の側にあるようです。

バルコニーが雨漏りの弱点になりやすい理由

ベランダなしの新築を選ぶ理由には、見た目の好みと、掃除や維持の手間もあります。朝日新聞では、埼玉県の工務店の代表が「最近手がける新築でほぼベランダはない」と話し、外装デザインへのこだわりから勧めていないと述べています。

防水の立ち上がりとサッシの取り合い

住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住宅相談統計年報(2024年版)は、住宅瑕疵担保責任保険の事故データ約15,000件から、木造戸建住宅の雨漏り事故を分析しています。2023年度の分析テーマの一つがバルコニーで、床面、立ち上がり、手すり壁、排水口が対象です。

同資料は、防水層の立ち上がり高さの目安として、サッシの下で120ミリ以上、その他の部分で250ミリ以上が望ましいとしています。防水層とサッシがぶつかる部分は、部材の接続箇所で雨がかかりやすく、立ち上がりが低いと雨水が建物に入りやすくなります。

排水口の詰まりと、広さの影響

排水口が落ち葉などで詰まると、雨水が長く溜まって建物内に入る可能性が高くなる、と同資料は説明しています。1つのバルコニーには原則として排水口を複数つけ、1か所だけの場合は溢れた水を逃がすオーバーフロー管をつけることが、設計時の工夫として挙げられています。面積が大きいバルコニー(20平方メートル程度が目安)は、下地の動きの影響を受けやすくなるので、影響を受けにくい工法を相談するよう書かれています。

バルコニーを作らなければ、こうした防水の取り合いそのものが減ります。ただし、これは雨漏りが起きる確率をゼロにするという意味ではありません。屋根や外壁にも弱点はあります。

ベランダの代わりに増えているもの

バルコニーのない、木の外装の新築住宅の正面
Photo by POOJAN THANEKAR on Unsplash

ベランダをなくした家は、洗濯物をどこに干すのでしょうか。住環境研究所の調査では、バルコニーのない住宅の68.3%(2022年度)が、ランドリールームか、洗面・脱衣室の物干しスペースを設けていました。

洗う場所と干す場所を近づける

洗濯機のある洗面室の近くに干す場所と収納を置くと、洗って、干して、しまう動きが一つの部屋で済みます。夜に洗濯する共働き世帯にとっては、階段を上って外に出る必要がなくなります。

乾燥の方式で、電気代と時間が変わる

乾かす手段は複数あります。ヒートポンプ式の洗濯乾燥機がなぜ電気代を抑えられるかは、ヒートポンプ式洗濯乾燥機の仕組みの記事で解説しています。ガスで一気に乾かす方式はガス衣類乾燥機の仕組みに、浴室に洗濯物を吊るして乾かす方式は浴室乾燥機の仕組みにまとめています。

意外だったのは浴室乾燥機を含む項目の減少

内閣府の表では、洗濯機一体型が38.8%から40.8%に増える一方で、浴室乾燥機を含む「その他」は27.8%から26.3%へ1.5ポイント減っています。乾燥機が増えたといっても、浴室に付ける乾燥機が増えているわけではなく、洗濯機そのものに乾燥を任せる形が伸びているようです。ただし、この表は単年の比較で、減少の理由までは資料に書かれていません。

ベランダなしのデメリットと注意点

ここまで、ベランダなしに向く条件を並べてきました。困る場面も書いておきます。

日光で乾かしたい人は、いまも多数派

朝日新聞によれば、「洗濯物は日光で乾かしたい」と答えた人は74.3%で、10年前より約10ポイント減っています。減ったとはいえ、4人に3人はまだ日光を望んでいます。乾燥機の普及と、日光への希望は、同じ人の中に両方あるのだと思います。

乾燥機が壊れたとき、代わりがあるか

洗濯物の干し場を乾燥機だけに頼る設計だと、故障や買い替えの間、乾かす手段がなくなります。私は部屋干しと除湿機の組み合わせなので、乾燥機がなくても困りません。逆にいえば、干せる場所のない家では、代わりの手段を先に決めておく必要があります。除湿機の仕組みは除湿器と加湿器の仕組みの違いの記事にあります。

布団や大きなものを干す場所

洗濯物以外にも、布団や靴を外に出す場所としてバルコニーを使っている家庭があります。この用途の割合を調べた公的な資料は、今回は見つけられませんでした。数字がないので、ここは各家庭が自分の使い方を確認する項目として挙げるにとどめます。

ベランダを作るか迷ったときの判断基準

作る、作らないの答えは、家の条件で変わります。次の表は、ここまでの数字から考えた目安です。

暮らし方 考え方の目安
夜に洗濯して室内で乾かす バルコニーの出番が少ない。洗面室や脱衣室に干す場所と乾燥機を置く案が向く
日光で乾かしたい・布団を干す バルコニーを残す理由になる。防水の立ち上がりと排水口の数を確認する
維持の手間を減らしたい 防水の取り合いが減るので、ベランダなしが向く。屋根と外壁の点検は別に必要
乾燥機の故障が不安 室内干しの場所と除湿機を、乾燥機とは別に確保しておく
※上の表は、この記事で確かめた数字から編集部が整理した目安です。最終的な設計は設計者・施工会社に確認してください。

この表で迷ったときは、「洗濯物を外に干す日が週に何日あるか」を数えてみてください。1週間分の洗濯を思い出して、外に干した日と、乾燥機か室内で済ませた日を分けるだけで、自分の家にバルコニーが要るかが見えてきます。

ベランダに関するよくある誤解

誤解1:ベランダがない家は、洗濯物を干せない

干せます。バルコニーのない住宅の68.3%は、ランドリールームか洗面・脱衣室に物干しスペースを設けています。干す場所が外から中に移っただけです。

誤解2:ベランダをなくすと床面積が増える

開放されたバルコニーは原則として床面積に入らないので、なくしても延べ床面積は増えません。ベランダの有無で変わるのは、防水と外壁の取り合い、維持の手間、暮らし方です。

誤解3:新築の3割がベランダなし、は日本全体の数字

30.6%はセキスイハイムの2階建て住宅の間取りデータで、日本の新築全体を数えた数字ではありません。傾向を示す材料として読むのが正確です。

まとめ:新築のベランダが減った理由と選び方

新築でベランダを作らない家は、住環境研究所の調査で2018年度の10.8%から2022年度の30.6%へ増えました。背景には、乾燥機を持つ世帯が二人以上の世帯で56.5%になったことと、共働きで夜に洗濯して室内で干す暮らしが広がったことがあります。バルコニーのある家でも、30歳未満の47.5%しか実際には干していません。

建築のルールから見ると、ベランダをなくしても床面積が増えるわけではありません。一方で、バルコニーは防水の立ち上がりや排水口といった雨漏りの弱点を抱えています。作るか迷ったときは、洗濯物を外に干す日が週に何日あるかを数え、日光で乾かしたいのか、乾燥機と室内干しで足りるのかを決めることが判断の出発点になります。日光を望む人がまだ74.3%いることも、あわせて思い出してください。

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  1. 知っていた
  2. なんとなく知っていた
  3. 初めて知った
  4. 誤解していた

📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・12票)

誤解していた:42%
なんとなく知っていた:33%
知っていた:25%
初めて知った:0%

📊 「新築でベランダを作らない家が3割に増えたのはなぜ?乾燥機の普及で変わる間取りの仕組み」はこんな人に読まれています

2026年9月30日 〜 2026年10月30日
スマホ
19%
PC
81%
関東
66%
関西
25%
その他
6%
中部
3%
新規 94%リピート 3%
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📈 ピーク時間帯:11時

参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は、住まいの間取りや建築のルールの“仕組み”を知っていただくための読み物です。実際の設計・契約・費用の判断は、設計者や施工会社、自治体の窓口に確認してください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。