気づけばあなたのプレイリストも、AI製かもしれない

「この曲、どこかで聴いた気がする…でも誰の曲だっけ?」
そんな違和感を覚えたとき、あなたはすでにAI音楽の世界に足を踏み入れているかもしれません。
音楽ストリーミングサービス大手Deezerが明らかにした衝撃のデータによれば、
2025年4月現在、Deezerにアップロードされる新曲のうち18%以上が完全なAI生成によるもの。
数字に直すと、1日あたり2万曲以上。
2025年1月時点ではまだ1万曲程度だったことを考えると、わずか3カ月で2倍という異常なペースで増加しているのです。
これは、単なる一過性のブームではありません。
音楽という「人間の感性の結晶」だった世界が、アルゴリズムによって再定義されようとしている現実なのです。
毎日2万曲、リスナーをのみ込む「音楽の大洪水」

AIによって生み出される楽曲は、もはやBGMや効果音レベルにとどまりません。
歌詞も、メロディも、構成も、ゼロからAIが生み出す完全オリジナル曲が大量に登場しています。
この流れを加速させたのが、SunoやUdioといった、
「テキスト入力だけで誰でも楽曲生成できるサービス」です。
例えば、
- 「夜の高速道路を走る気分になるエレクトロポップ」
- 「失恋の余韻を感じるアコースティックバラード」
といった曖昧なイメージを入力するだけで、
わずか数分でプロ品質の音源が完成します。
これまで何十年も積み上げてきた「音楽制作の壁」を、
AIは一瞬で飛び越えてしまったのです。
当然、音楽ストリーミングサービス側にも危機感が広がっています。
Deezerは独自開発のAI検出ツールを使い、AI生成楽曲をリスナー向けレコメンドから除外する取り組みを開始しました。
オーレリアン・ヘロー最高イノベーション責任者はこう語ります。
「生成AIは音楽制作にポジティブな影響を与える可能性があるが、ファンの透明性を保ち、アーティストや作詞作曲家の権利を守るためには慎重な管理が必要だ」
AIの創造性と人間の感性、そのバランスを取る時代が始まったのです。
リスナー目線で考える、「AI音楽」という新たな音楽体験

「AIが作った曲なんて、心がこもってない」
そんな否定的な声も確かに存在します。
しかし、視点を変えれば
「これまで存在しなかった音楽体験」が開かれているとも言えます。
たとえばSunoでは、
ジャンルの枠を超えたハイブリッド音楽を生み出すことも可能です。
- ジャズ×テクノ×演歌ミックス
- ケルト音楽×ドリームポップ
- 架空のゲームサントラ風オーケストラ
こうした「人間なら絶対に思いつかない組み合わせ」を試せるのは、AIならではの魅力です。
リスナーは今後、
「どんな人が作ったか」ではなく、
「どんな新しい体験をくれるか」で曲を選ぶようになるかもしれません。
SpotifyやDeezerのプレイリストにも、
「100%AI生成曲だけで組まれたテーマリスト」が並ぶ未来が、すぐそこまで来ているのです。
音楽業界は試されている:「人間+AI」の共演時代へ

一方で、AI生成音楽をめぐる著作権問題も深刻化しつつあります。
実際、Sony Music Entertainment、Warner Records、Universal Music Groupといった大手レーベルは、
「SunoやUdioが著作権で保護された既存楽曲を学習に使った」として訴訟を提起しています。
この問題の本質は、「AIが創る音楽は誰のものか?」という問いに直結しています。
もし仮にAI楽曲が著作権違反と認定されれば、
リスナーが気軽に楽しんでいたプレイリストも、一夜にして消えてしまうリスクがあるわけです。
音楽業界全体は今、
「共存か?対立か?」という重大な岐路に立たされているのです。
そしてリスナーもまた、
「ただ受け身で音楽を聴く」のではなく、
どんな楽曲をどう楽しむかを能動的に選ぶ時代へと突入しようとしています。
まとめ:「誰が作ったか」より、「どんな感動をくれるか」

音楽が音楽であるために必要なのは、
「人間が作った」という事実ではありません。
私たちを震わせる旋律、心を打つメロディ、それこそが音楽の本質です。
人間が作ろうが、AIが作ろうが、
心が動いた瞬間、それは紛れもない「本物の音楽」になる。
これからの音楽リスナーには、
変化を楽しむ勇気と、好奇心を持つ感性が求められるでしょう。
新たな音楽の夜明けに、あなたはどう耳を澄ませますか?