降水量0.0mmでも雨の日?東京都心の9月全日降水(史上初)を雨量計の仕組みから読む

2026年9月30日、東京都心は9月の全ての日で降水を観測しました。観測史上初めてです。ウェザーニュースの集計では、9月30日朝9時の時点で月の降水量が692.5mmに達し、1958年の過去最多を更新しています。

この「全日降水」という見出しを見て、私は30日間ずっと傘が要る日が続いたのだと思い込んでいました。9月29日には8月27日から続く連続降水が34日になり、2019年6月27日から7月29日までの33日を超えて統計開始以来最長になっています。気象庁の日別データを並べ直すまで、その思い込みは崩れませんでした。

雨が続いた理由は東京都心で34日連続雨になったのはなぜ?で整理しました。この記事で扱うのは、その連続記録が何を数えた数字なのかと、雨量計が雨をどう測っているかです。

結論を先に書くと、この記録の「降水」には降水量0.0mmの日も含まれます。東京の9月1日から29日のうち、0.0mmの日は8日ありました。

  • 連続降水の「降水あり」は0.0mmの日も数える
  • 東京の9月1〜29日で0.0mmの日は8日、1mm以上の日は
  • 雨量計は0.5mmずつ数える測器で、ます1回分は約
  • 日数と雨量と日照時間は、それぞれ別の数字

連続降水の「降水あり」には0.0mmの日も含まれる

連続降水の「降水あり」には0.0mmの日も含まれる(窓ガラスを流れる雨粒と都市の景色)
Photo by Jesse Collins on Unsplash

気象庁の「過去の気象データ検索」には、降水量の記録方法を説明した補足のページがあります。最小単位に満たない降水があったとき、気象台等でもアメダスでも「0.0mm」と記録します。降水がなかったときは、気象台等は「-」、アメダスは「0.0mm」と表示します。同じ0.0でも、観測所の種類によって意味が違います。

ウェザーニュースも、連続降水の日数には降水量として観測されないようなごく弱い雨でも数えられると説明しています。見出しの数字が何を数えているのかは、この決まりで説明がつきます。東京の日別データで確かめました。

9月1〜29日を降水量の大きさで3つに分ける

気象庁が公開している東京の日別値のうち、9月1日から29日までを、私が3つの区分に数え直しました。30日の欄は、私が開いた時点では空欄でした。

日降水量の区分 日数 該当する日(9月)
1mm以上  4〜12日、15〜17日、19〜、23日、26日、28日、29日
0.5mm 2日 24日、27日
0.0mm 8日 1日、2日、3日、13日、、18日、、25日
※気象庁「日ごとの値 東京 2026年9月」を筆者が区分して数えた結果(19+2+8=29日)

0.5mm以下の日は、1mm以上の日はです。0.0mmの日が8日。34日連続の34という数字のなかに、こういう日が混ざっています。

天気概況に雨が出てこない日にも0.0mmが入っている

9月の天気概況は、昼が「晴一時曇」、夜が「曇一時晴」で、雨の文字はありません。それでも降水量の欄は0.0mmです。9月は昼が「晴後一時曇」、夜が「曇時々雨」で、日照時間は8.7時間ありました。9月の日照時間でいちばん長い日ですが、降水量は0.0mmで、「降水あり」の日として数えられています。9月の全ての日で降水を観測したという記録が成り立つには、この日も降水ありでなければならないからです。

晴れ間がいちばん長かった日が「雨の日」に入っている。見出しの熱に対して、私の温度はここで少し下がりました。記録が間違っているわけではありません。数えているものが、傘の要る日ではなかったということです。

雨量計は0.5mmずつ数えている

気象庁は転倒ます型雨量計という測器で降水量を測っています。直径20cmの円形の受水口で降水をとらえ、ろうとのような形の受水口から中央の転倒ますに貯めます。0.5mm相当の降水量に達すると、その重さでますが倒れます。ますは左右についていて、降ってきた雨を漏らさず受けられる作りです。倒れた回数で降水量を出す仕組みで、1時間に10ミリの雨なら、左右のますが交互に20回倒れます。

ます1回分の水は約

受水口は半径10cmの円なので、面積は3.14×10×10≒314cm²です。0.5mmは0.05cmですから、314×0.05≒15.7cm³で、ます1回分は約になります。大さじ1杯(15mL)より、ほんの少し多い量です。1時間に10mmの雨なら、314×1=314cm³、つまり約314mLが受水口に入り、×20回でも同じ約314mLになります。

数字にすると、雨量計はかなり細かく数えています。それでも「0.5mm」という区切りより弱い雨は、ますを倒すところまでいきません。

最小単位は1968年と2008年に変わった

気象台等の降水量の最小単位は、1967年12月31日までが0.1mmで、1968年1月1日から0.5mmです。アメダスは2008年3月25日までが1mmで、2008年3月26日から0.5mmになりました。

2019年の33日連続と2026年の34日連続は、どちらも1968年以降の観測なので、最小単位の違いは比較に影響しません。もっと古い年代の記録と並べるときは、この単位の変更を頭に置く必要があります。

0.5mmに満たない雨をどう「あり」と判定するのか

気象庁のページで確認できたのは、記録の決まり(最小単位に満たなければ0.0mmと書く、気象台等は降水がなければ「-」と書く)までです。ますが倒れない弱い雨を降水ありと判定する測り方は、私が開いた資料には書かれていませんでした。推測で書くのはやめておきます。

観測データが予報にどうつながるかは、天気予報の仕組みの記事で書いています。

この9月、洗濯物はどう乾かしていましたか?

  1. 部屋干しと除湿機・乾燥機が中心
  2. コインランドリーを使った
  3. 晴れ間を待って外に干した
  4. 洗濯の回数を減らした

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晴れ間を待って外に干した:21%
コインランドリーを使った:14%
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34日連続を日別に割ると、雨の量は2日に偏っていた

との2日で

東京の9月の降水量は103.5mm、は156.0mmでした。最大1時間降水量はが23.0mm、が33.0mmです。

との合計は103.5+156.0=です。9月1日から29日までの日降水量を全て足すと675.0mmで、259.5÷675.0=0.384、つまり2日で約を占めます。ウェザーニュースの692.5mm(30日朝9時時点)から675.0mmを引くと17.5mmで、この分が30日の朝9時までに加わった量です。

34日連続という数字からは、この偏りは見えません。日数の記録は雨が降った回数を、雨量の記録は降った水の総量を見ています。

1mm以上の日だけ数えると、連続は最長9日

気象庁の長期変化の解説には、雨の多さを「日降水量1mm以上の日数」で表す例があります(香川県の解説ページ)。この基準で東京の9月を数え直してみました。

1mm以上の日が続いたのは、4日から12日までの9日間(12−4+1=9)が最長です。13日が0.0mmで途切れ、その後は15〜17日の3日、19〜の3日、28〜29日の2日と続きます。29日間のうち1mm以上の日はでした。

「34日連続」と「最長9日連続」。どちらかが間違いなのではありません。前者は雨が一度でもあったか、後者は私の目安でいえば雨具が要りそうな量が出たかを見ています。間違っていたのは天気ではなく、私の「雨の日」の定義でした。

ここでの数え直しは9月分だけです。34日連続の前半にあたる8月27日から31日は、日別の値を確認していません。

秋雨前線と台風が重なると、日数も雨量も増える

気象庁の解説によると、秋の降水量が多くなる要因は、夏から秋への移行期に日本付近へ現れて長雨をもたらす秋雨前線と、台風です。関東甲信地方への台風の接近数(各県の気象官署から300km以内に入った台風の数)は、9月前後で多くなります。秋雨前線の活発化に台風が関係することもあります。

2005年9月4日には、台風第14号から流れ込む暖かく湿った空気の影響で、東京都や埼玉県の一部に1時間100ミリを超える猛烈な雨が降り、7千棟を超える浸水被害が出ました。

今回について、日本気象協会のtenki.jpは、秋雨前線が本州付近に停滞する日が多く、相次ぐ台風の影響も加わったと説明しています。東京都心の8月30日から9月28日までの30日間の降水量は629.5mmで、平年の275%でした。

275%は平年の2.75倍です。前線が日本付近に居座ると長雨になる、という基本は梅雨前線の仕組みの記事でも書いています。日数は前線が居座るほど増え、雨量は台風のように湿った空気が流れ込む日に跳ねる。これは表を作りながら私が整理した見方で、気象庁の説明を言い換えたものではありません。

日照時間は平年の3分の1、洗濯物には別の数字が効く

日照時間は平年の3分の1、洗濯物には別の数字が効く(空一面を覆う厚い灰色の雲)
Photo by Paul Zoetemeijer on Unsplash

ウェザーニュースによると、東京都心の9月の日照時間は、30日朝9時の時点で45.8時間でした。平年の3分の1で、1988年の39.2時間に次ぐ観測史上2番目の少なさです。1日の日照時間が5時間を超えた日は3日だけでした。

気象庁の日別表でも、5時間を超えたのは9月(8.7時間)、(7.6時間)、24日(8.2時間)の3日で、報道の数字と一致します。

日別の日照時間を9月1日から29日まで足すと45.8時間で、1日平均は45.8÷29≒1.6時間です。日照が0.0時間だった日はありました。

24日は降水量が0.5mmで「降水あり」の日ですが、日照は8.2時間あり、9月では2番目に長い日でした。降水ありと日照の少なさは、同じ方向に動くとは限りません。

私の部屋には乾燥機がなく、洗濯は部屋干しと除湿機です。9月は除湿機の水タンクを何度も空にしました。洗濯物が乾くかどうかの手がかりは、降水の有無より日照時間のほうが近いと感じます。9月は「降水あり」でも8.7時間の日照がありました。

連続降水の記録を読むときの注意点

30日の数字は朝9時時点のもの

692.5mmも45.8時間も、ウェザーニュースが9月30日朝9時の時点で示した値です。その日の残りの時間を含めた月の確定値は、気象庁の公表を待つ必要があります。

アメダスの0.0mmは「降水なし」も含む

先ほどの気象庁の表では、アメダスは降水がなかった場合も0.0mmと表示します。アメダスの表示だけを見て「0.0mmの日を数えて連続降水を出す」ことはできません。降水ありとなしを区別して記録しているのは、気象台等の観測です。

古い記録との比較には限界がある

気象庁の補足には、1885年以前の気象台等は記録方法が統一されておらず、この期間は「日降水量0.0mm以上の日数」を統計していない、という注意書きがあります(一部の観測所は例外)。連続降水の記録を古い年代までさかのぼって比べる場合は、この限界があります。東京がどの扱いになるかは、私は確認していません。

天気の数字は、知りたいことに合わせて選ぶ

ニュースの見出しの数字は、記録として何を数えたかで決まります。自分の生活で使うなら、知りたいことに合う数字を選ぶほうが役に立ちます。

知りたいこと 見る数字 東京の9月の例
雨が一度でもあった日の数(記録) 降水あり(0.0mm含む)の日数 9月は全30日
雨具が要りそうか 日降水量1mm以上・時間降水量 1〜29日で
洗濯物や晴れ間 日照時間 5時間超は3日だけ
大雨への備え 最大1時間降水量と気象庁の防災情報 は33.0mm
※東京の日別値(気象庁)とウェザーニュースの報道をもとに筆者が整理。備えの判断は最新の気象庁の情報で確認してください

天気アプリで「降水」と表示される日でも、それが0.0mmなのか100mmなのかで意味が大きく違います。数字の単位まで見る習慣をつけると、見出しに振り回されにくくなります。

よくある誤解

34日連続は、34日ずっと雨具が必要だったということですか

違います。連続降水の日数には、降水量0.0mmの日も含まれます。東京の9月1〜29日では、0.0mmの日が8日、0.5mmの日が2日ありました。1mm以上の日はです。

0.0mmは観測ミスや故障ですか

違います。気象庁は、最小単位に満たない降水があったときに0.0mmと記録する決まりにしています。気象台等では、降水がなかったときは「-」と書くので、0.0mmは降水があった印です。

降水の日数が記録的なら、雨量も記録的ですか

別の数字です。今回は9月全日降水(日数)も、月降水量692.5mm(1958年を更新)も記録になりました。ただ、東京の9月との2日だけで、29日までの合計の約を占めています。日数が同じでも、雨量は大きく変わりえます。

まとめ:東京都心の9月全日降水は、何を数えた記録か

東京都心の9月全日降水は、降水量0.0mmの日も含めて「降水あり」を数えた記録です。東京の9月1〜29日を日別に見ると、0.0mmの日が8日、1mm以上の日がで、1mm以上の連続は最長9日でした。34日連続という数字と、雨具が要る日の連続は別のものです。

雨量計は、0.5mm相当の水(約)がたまるたびにますが倒れる仕組みです。0.5mmに満たない雨の判定方法は、今回確認できた資料には書かれていませんでした。

日数、雨量、日照時間は、それぞれ別の数字です。記録の見出しを見たときは、何を数えたのかを先に確かめてみてください。この記事は2026年9月時点(9月30日朝までの報道と気象庁のデータ)の情報をもとにしています。9月分の確定値は、気象庁の公表で確認してください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。