マクドナルドのキャラクターが「ドナルド」から「ロナルド」に変わったと聞いて、私は最初、何かの権利問題か、炎上の後始末だろうと思っていました。日本マクドナルドの公式な説明は、もっと地味です。「海外の表記と揃えた」。それだけでした。
変更があったのは2026年10月1日です。この記事では、何が変わったのか、日本でなぜ別の名前だったのかについて確かめられた範囲、そして「ドナルド」と「ロナルド」のように同じものが違う書き方になる現象を、日本の国が出している外来語の表記の決まりから整理します。2026年10月時点の情報です。
- 日本マクドナルドは2026年10月1日、キャラクター名を海外と同じ「ロナルド」に揃えた
- 日本で「ドナルド」だった理由は、公式の資料では確認できなかった
- カタカナ表記には平成3年(1991年)の内閣告示があるが、語形を一つに決める決まりではない
- その告示は制定から35年がたち、2026年4月から見直しの議論が始まっている
ドナルドが「ロナルド」になった2026年10月1日
ファミ通の記事によると、日本マクドナルドは「マスコットキャラクターである『ドナルド』の名称を、海外の表記と揃えた『ロナルド』としている」と説明しています。理由として挙げられているのは、海外ではもともとロナルド・マクドナルド(Ronald McDonald)という名前だった、という一点だけです。炎上や権利の話は出てきません。
公式サイトの呼び方も一斉に変わった
変更は名前だけではありませんでした。子ども向けプログラムの「ハロードナルド!」は「ハローロナルド!」に変わり、サイト内の呼び名は「ロナルド」に統一されています(ファミ通)。キャラクター名は、一つ変えると周りの名前が全部ついてくるものなのだと、この件で気づきました。
病気の子どもと家族の滞在施設の名前も変わった
同じ日に、病気と向き合う子どもと家族のための滞在施設を運営する財団も名前を変えています。公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパンは、公益財団法人ロナルド・マクドナルド・ハウス・ジャパンになり、ブランド名も「ロナルド・マクドナルド・ハウス」になりました。電ファミニコゲーマーの記事では、第1号ハウスが開設25周年を迎える節目に、呼び名を海外の表記に揃えたと伝えています。
面白いのは、予告の出し方です。日本マクドナルドが2026年9月17日に出した、10月18日の「青いマックの日」(ハッピーセット1つにつき50円を寄付)のお知らせには、変更の予定が脚注に1行だけ入っていました。大きな発表ではなく、脚注で静かに予告されていたことになります。
ロナルド・マクドナルドは、もともと1963年に登場した名前
Business Insider Japanの記事は、このキャラクターが1963年に登場したと伝えています。2026年までで2026−1963=63年です。原名は登場したときからロナルドで、日本だけが別の書き方をしていたことになります(日本で「ドナルド」を使い始めた年は、私は確認できていません)。
日本では「ドナルド」と呼ばれていた
日本では長く「ドナルド・マクドナルド」でした。元の名前の頭の音が、ロからドに替わっただけです。「ロナルド・マクドナルド」も「ドナルド・マクドナルド」も11文字(中黒を含む)で、違うのは1文字目だけです。
ドナルドになった理由は、公式の説明を確認できていません
ここは調べて、はっきりしなかった部分です。ITmediaのブログには、日本で展開するときに「ロナルド・マクドナルドでは『ナルド』が重なってわかりにくいので、ドナルドにしたのだろう」という推測が書かれています。ただし、筆者自身が「おそらく」と断っている推測です。数えてみると、「ロナルド・マクドナルド」の中に「ナルド」は2回出てきます。重なって聞こえるという説明は、文字の上では確かに成り立ちます。
ウィキペディア日本語版には、日本進出のときに「ロナルドは発音しにくい」という意見を採用した、という趣旨の記述があります。ただ、これも私は日本マクドナルドの公式資料で裏づけを確認できていません。確かめられていない理由を、この記事では事実として書きません。確認できたのは、2026年10月1日に原名へ揃えたという事実までです。
マクドナルドのキャラクターを、これまで何と呼んでいましたか?
- ドナルド
- ロナルド
- どちらも使う
- 名前は意識していなかった
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カタカナ表記を決める国の決まりがある
日本語にひらがな・カタカナ・漢字が混在する経緯は、別の記事にまとめています。ここでは、外国の人名や言葉をカタカナで書くとき、日本には「外来語の表記」というよりどころがあります。内閣告示第2号として、平成3年(1991年)6月28日に当時の内閣総理大臣・海部俊樹の名前で出されたものです。対象は、法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活で現代の国語を書き表す場面とされています。
この告示は、語形を一つに決めていない
意外だったのは、決まりの中身です。留意事項には、語形にゆれのある言葉の例として「ハンカチ」と「ハンケチ」が挙げられ、同じく「グローブ」と「グラブ」も挙げられています。そのうえで、どちらかに決めようとはしていない、と書かれています。文化庁の資料で原文を確認しました。
「ドナルド」と「ロナルド」は、この告示が扱う種類の違いではありません。ロとドは別の音です。告示が扱うのは、同じ外国語の音を、日本語の仮名でどう写すかという問題です。ですから、ドナルドをロナルドに変えるかどうかは、国の決まりではなく、企業が決めることでした。
慣用が定まっているものは、慣用に従う
告示には、語形やその書き表し方について、慣用が定まっているものはそれによる、とあります。分野によって慣用が違う場合は、それぞれの慣用で差し支えないとも書かれています。国が表記を一つに揃える仕組みではなく、すでに定着した書き方を尊重する仕組みです。
バイオリンとヴァイオリンが並び立つ理由
同じ楽器に二つの書き方がある代表例が、バイオリンとヴァイオリンです。告示の用例集には、「バイオリン/ヴァイオリン」のように両方が並べて載っています。仮名の表も2種類あります。国語化の程度の高い語は第1表の仮名で書ける、ある程度外国語に近く書き表す必要がある語は第2表も使える、という二段構えです。
第2表にあるのは、原語の音を残すための仮名
第2表には「ヴァ」「ヴィ」「ヴ」「ヴェ」「ヴォ」などが並んでいます。ヴァイオリンのヴは、英語のVの音を残そうとした書き方です。一方で、告示は「一般的には『バ』『ビ』『ブ』『ベ』『ボ』と書くことができる」と注記しています。
実際には、ヴは固有名詞以外ではあまり使われていない
もう少し実態を見ます。テクニカルコミュニケーター協会の表記ガイドラインは、固有名詞を除き、V音に「ヴ」を当てるのは近年ほとんど見られないと整理しています。調べた辞書や用語集のすべてで、canvasやversionのような語はバ行で書かれていたそうです。キャラクターや企業の名前のような固有名詞は、企業が自分たちの書き方を選べる領域だと、私は理解しています。
制定から35年。表記の決まりの見直しが始まっている
この告示は、2026年で制定から35年です(2026−1991=35年)。文化審議会国語分科会の外来語小委員会は、令和8年4月30日に第1回の会議を開きました。委員は15名です。議事録には、外来語の語彙の入れ替わりが著しく、安定しているように見えるこの規範も見直しておくことが必要ではないか、という趣旨の発言があります。
同じ議事録には、外来語が今どのように書かれているかを様々な角度から調べ、実態の把握を伴って、分かりやすい規範の在り方を考えたい、とも書かれています。つまり国も、決まりを先に作って守らせる方向ではなく、世の中の書き方を調べるところから始めています。
名前の表記が変わると困ること
表記の変更には、地味な不便があります。ここは読者の立場で整理します。
検索では、新旧どちらの名前でも探される
「ドナルド」の名前で書かれた記事や資料は、これからも長く残ります。調べ物をするときは、新旧どちらの表記でも検索しないと、片方の資料だけを見て終わります。私もこの記事を書くとき、ドナルドとロナルドを両方入れて探しました。
古い資料と新しい資料が混ざる
財団の名前も、変更前の法人名で書かれた寄付の記録や報道が残ります。固有名詞の変更は、前後で別の組織のように見えることがあります。同じものを指しているかは、名前ではなく、設立の経緯や所在地などで確かめるのが確実です。
表記ゆれに出会ったら、どう判断するか
ロナルドのような名前の変更と、バイオリンのような書き方の違いでは、判断の仕方が違います。目安を表にします。
| 場面 | 判断の目安 |
|---|---|
| 企業・団体の名前 | その組織が現在使っている表記に合わせる |
| 一般の外来語 | 辞書や所属する媒体の慣用に合わせる |
| 昔の名前を引用するとき | 当時の表記のまま書き、必要なら現在の名前を添える |
| 検索するとき | 新旧の表記を両方入れる |
言葉の表記や発音がゆれるのは、珍しいことではありません。方言がなぜ生まれるのかを書いたときにも、同じ言葉が地域ごとに違う形で残る様子を調べました。表記のゆれも、言葉が使われていれば自然に生まれるものです。
ロナルドの件でよくある誤解
誤解1:国が決めたから名前が変わった
国の決まりではありません。外来語の表記の告示は、語形を一つに決めるものではないと、留意事項に書かれています。名前を変えたのは日本マクドナルドと関連する財団で、理由として公表されているのは「海外の表記と揃えた」です。
誤解2:ドナルドが間違った名前だった
間違いという言い方は、確認できた資料からは出てきません。ファミ通の記事は、変更の理由を海外表記との統一として伝えています。日本で使われていた名前を誤りと呼ぶ根拠は、私は見つけられませんでした。
誤解3:変更の理由は発音のしにくさだった
発音の話は、ドナルドになった昔の理由として語られることがありますが、今回の変更の理由ではありません。今回の公式の説明は、海外表記との統一です。昔の理由については、この記事で書いたとおり、公式の資料で確認できていません。
まとめ:ドナルドとロナルドから見える表記のルール
2026年10月1日、日本マクドナルドはキャラクター名を原名どおりの「ロナルド」に揃え、公式サイトと関連財団の名前もそれに合わせました。公式の説明は「海外の表記と揃えた」で、日本でドナルドだった理由は、公式の資料では確認できていません。
外来語の表記には平成3年の内閣告示がありますが、語形を一つに決めるものではなく、定着した慣用を尊重します。バイオリンとヴァイオリンが並ぶのも、その結果です。制定から35年がたち、2026年4月から見直しの議論も始まっています。
名前や書き方が変わった話題に出会ったら、まず誰がその表記を決めているのかを見ると、整理しやすくなります。企業の名前なら企業が、一般の外来語なら慣用が決めています。最新の表記は、各社・各機関の公式発表でご確認ください。
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📊 「マクドナルドの「ドナルド」が2026年10月1日に「ロナルド」へ|外来語の表記は誰が決めるのか」はこんな人に読まれています
📚 参考文献・出典
- ・文化庁(文化審議会国語分科会外来語小委員会)「外来語の表記(平成3年内閣告示第2号)」 https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/gairai/gairai_03/pdf/94419401_03.pdf
- ・文化庁「第1回 文化審議会国語分科会外来語小委員会・議事録」(令和8年4月30日) https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/gairai/gairai_01/pdf/94437101_01.pdf
- ・テクニカルコミュニケーター協会「外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第3版」(文化庁外来語小委員会の参考資料) https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/gairai/gairai_03/pdf/94419401_04.pdf
- ・ファミ通「ドナルド、今日からロナルドに。公式サイトも海外基準の名称に統一」 https://www.famitsu.com/article/202610/89715
- ・電ファミニコゲーマー「日本マクドナルド『ドナルド』の名前が『ロナルド』に変更」 https://news.denfaminicogamer.jp/news/2610012e
- ・日本マクドナルド株式会社 報道資料「青いマックの日」(2026年9月17日) https://digitalpr.jp/pdf.php?r=143794
- ・Business Insider Japan「マクドナルドの歴史」 https://www.businessinsider.jp/article/161856/
- ・ITmedia オルタナティブ・ブログ「IT’s my business」 https://blogs.itmedia.co.jp/mohno/2007/02/post_1117.html









































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