メダカはなぜ冬になると水底でじっとするのか|水温8℃・日長10時間の実験からわかる冬のしくみ

秋が深まると、水槽や睡蓮鉢のメダカが急に動かなくなります。友人がベランダで飼っていて、11月に「最近ぜんぜん泳がないけれど、大丈夫かな」と聞かれたのが、この記事を調べたきっかけです。メダカが冬に水底でじっとするのは、水温と日の長さが下がることで、体の働きや行動が切り替わるためです。名古屋大学の研究グループの総説、日本の各地のメダカを比べた2023年の論文、小学校の観察記録、宮城県総合教育センターの飼育資料をもとに、何がどう変わるのかを整理します。確かめられなかったことも分けて書きます。2026年11月時点の内容です。

  • 冬を再現した実験では、メダカは水槽の底でじっとし、光や婚姻色にも反応しなくなりました
  • 水温を下げる観察では、10℃で底に集まって動かなくなりました
  • 産卵は、日の長さと水温の両方がそろわないと始まりません
  • 餌をやめる水温や、凍結を避ける水深は、確かめた資料に書かれていませんでした
目次

冬のメダカは、水槽の底でじっとします

私は、冬に動かなくなるのは寒さで体が固まるだけだと思っていました。資料を読むと、動きだけでなく、目の働きや仲間への関心まで季節で切り替わっていました。

研究者は、冬と夏の環境を水槽で再現しました

名古屋大学の中山友哉氏と吉村崇氏は、低温科学81号(2023年)の総説で、メダカを使った冬への適応の研究をまとめています。メダカは北は青森、南は沖縄まで日本の広い範囲に生息していて、季節に応じた変化がはっきり出るため、研究に向いているそうです。

実験では、冬を模した条件として10時間点灯、14時間消灯、水温8℃で飼育しました。夏を模した条件は14時間点灯、10時間消灯、水温26℃です。

2つの条件の差は、点灯時間が14−10=4時間、水温が26−8=18℃です。

夏のメダカは動き回り、冬のメダカは底にいました

観察の結果、夏の条件のメダカは水槽全体を活発に動き回りました。冬の条件のメダカは、水槽の底でじっとしていました。屋外で見たときの行動の違いも、同じだったと書かれています。

総説は、冬は日が短く水温も低いため子どもや稚魚が育つのに向かず、メダカは秋に繁殖をやめ、冬には食べ物をほとんど取らず、川底にとどまって活動量を下げると説明しています。食べ物を探す必要が減る季節に、動きを減らしてエネルギーを使わないようにする、という流れです。

水温が下がると、動きはどう変わるのか

睡蓮の葉が浮かぶ屋外の池を泳ぐ魚。水温が下がると魚の動きが変わる(写真はコイ)
Photo by Anne Laure P on Unsplash

熊本県立教育センターが公開している、玉名市立梅林小学校4年生の研究に、水温を段階的に下げた観察があります。身近な形で、同じ傾向を確かめられます。

氷で水温を下げて、5匹の様子を見た記録です

水槽にメダカを5匹入れ、氷で水温を下げながら泳ぎ方を観察しています。29℃では活発に泳ぎ、ヒレの動きも小刻みでした。15℃では動きがゆっくりになり、氷と反対の方向に集まりました。10℃では底の方でじっとして、体が斜めになって泳ぎ、ヒレの動きも少なくなっています。

この児童は、冬は小川の底などで冬眠しているのかなと感想を書いています。名古屋大学の総説は、冬眠を冬への適応の一つとして紹介したうえで、冬眠をしない動物でも、秋から冬にかけて体の働きや行動が変わると書いています。メダカを冬眠と呼ぶかどうかは、確かめた資料に書かれていませんでした。同じように冬の寒さへ対応する動物の例は、ハムスターの疑似冬眠の記事で扱っています。

動きが止まる水温は、1つの数字に決められません

8℃の飼育実験と、10℃の観察記録は、どちらも底でじっとする結果でした。富山県教育委員会の小学校5年生向け資料「メダカの飼育と管理」には、卵の育つ速さの目安として、水温10℃で活動停止という記載もあります。ただし、成魚が餌を食べなくなる水温を示した資料は、今回は見つかりませんでした。品種や飼っている地域でも違う可能性があるため、ここでは目安の幅として書きます。

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冬のメダカは、光や色への反応も弱まります

動かなくなるのは、体が冷えたからだけではありません。総説では、目の働きも季節で変わることが確かめられています。

光を避ける行動が、冬には出なくなりました

多くの魚は、横から強い光を当てられると、反対側へ逃げるように泳ぎます。夏の条件のメダカにはこの行動が見られましたが、冬の条件のメダカは反応しませんでした。総説は、冬のメダカは光に対する感受性が下がっていると解釈しています。

婚姻色を見せても、冬のオスは近づきません

メダカは春から夏にかけて、体のオレンジ色や赤色が濃くなる婚姻色を示します。研究グループは、コンピュータで作ったメスのメダカを画面に映し、体の色を変えてオスの反応を調べました。白黒のメダカには、冬も夏もあまり近づきません。婚姻色のメダカには、夏のオスが強く引き寄せられ、冬のオスは引き寄せられませんでした。

目で色を感じる遺伝子の働きが、冬には落ちています

人の目には、青、緑、赤を感じる物質が1つずつあります。メダカの目には、紫、青、緑、赤を感じる物質が2つずつ、合計8つあると総説は説明しています。この色を感じる物質の遺伝子は、冬には働きが大きく下がり、夏の条件に移すと急に上がりました。引き金は水温の上昇でした。

総説は、冬は食べ物を探す必要も、婚姻色で相手を見分ける必要もないので、遺伝子の働きを抑えるのは理にかなっていると書いています。タンパク質を作るエネルギーも節約できる、という説明です。

冬のメダカは、不安が強く仲間に近づきません

同じ研究グループは、行動の面でも夏と冬を比べています。論文は「うつ様行動」という言葉を使っていますが、これは行動で測った指標で、メダカの気持ちを測ったものではありません。

慣れない水槽では、底にいる時間が長くなりました

見慣れない水槽に入れた魚は、しばらく底で身を潜めます。この時間が長いほど不安が強いと解釈されます。冬の条件のメダカは、夏の条件より底にいる時間が長くなりました。明るい区画と暗い区画を用意した水槽でも、冬のメダカは暗い区画にいる時間が長くなりました。

仲間のいる区画で過ごす時間が短くなりました

透明な仕切りで3つに分けた水槽の中央に1匹を入れ、片側にだけ別の個体を入れる実験もしています。夏のメダカは他の個体の近くで過ごしましたが、冬のメダカは過ごす時間が短くなりました。「メダカの学校」と呼ばれるほど群れる魚が、冬には群れへの関心を下げることになります。

脳の中でも、物質と遺伝子の働きが入れ替わっていました

脳の成分を調べると、68個の物質が夏と冬で変化していました。遺伝子の働きを調べた結果では、3,000個以上が夏と冬の間で変わっています。1日のリズムを作る時計遺伝子の働きも、冬は周期がはっきりしなくなっていました。

総説は、外の環境が厳しいときは動き回らずにじっとして過ごすほうが良いので、この行動は冬を乗り切るための適応だと考えています。冬にメダカが静かなのは、不調ではなく、季節に合わせた切り替えです。

産卵が止まるのは、日の長さと水温を見ているからです

冬の水槽で卵が見つからないのも、同じ切り替えの一部です。日本各地のメダカを比べた2023年の論文が、何を手がかりにしているかを調べています。

卵巣が発達するには、一定以上の日の長さが必要です

日本の研究グループは、Zoological Letters誌(2023年)の論文で、日本各地のメダカのメスを使い、10時間から14時間まで5通りの点灯時間で3週間飼育して、卵巣の発達を調べました。北日本の集団は、24時間のうち14時間の光がないと卵巣が発達しませんでした。南日本の集団は、それより短い光でも発達しています。宮崎と沖縄の宜野座の集団は、さらに短い日の条件でも産卵できました。

季節の日の長さの変わり方は、日の入りの時刻を扱った記事でも確かめられます。

水温にも、集団ごとの下限があります

水温については、14℃、16℃、18℃、20℃の4通りで4週間飼育しました。メダカの生息地の最北の集団である東通の集団は、卵巣が発達するのに必要な水温が18℃を超えていました。宮崎と宜野座の集団は14℃を下回っていました。この違いは遺伝によるものだと、論文は結論づけています。

論文は、低緯度の集団ほど日の長さや水温の変化に反応しにくい、とまとめています。北の集団は、十分に長い日と十分に暖かい水がそろわないと産卵を始めない仕組みになっています。

※この実験は、メスの卵巣の発達を調べたものです。オスや、成魚が餌を食べる水温を調べたものではありません。

ヒーターと照明で夏を作ると、産卵は続くのか

明るく照らされた室内の水槽で泳ぐ小さな魚。照明の時間は産卵の条件の一つになる
Photo by Hưng Phạm on Unsplash

宮城県総合教育センターの飼育資料には、水温を25℃程度にして照明を1日12時間点灯させれば、数日で産卵が始まると書かれています。冬の水槽を暖かくして明るくすれば、夏と同じ条件を作れるという意味になります。

卵の育つ速さは、水温で大きく変わります

富山県教育委員会の資料は、水温が23℃以上になる6月ごろから産卵が始まり、水温20℃以上あれば卵の発生は進む、としています。水温とふ化までの日数の目安は次のとおりです。

水温 ふ化までの日数の目安
10℃ 活動停止
19℃ 19〜20日間
24℃ 10〜11日間
28〜30℃ 8〜9日間
※富山県教育委員会「メダカの飼育と管理」の目安。10℃の行は卵の発生についての記載です。

5℃の差で、ふ化までの日数はほぼ倍になります

19℃と24℃の日数の中間値は、19℃が19.5日、24℃が10.5日です。19.5÷10.5≒1.86なので、水温が5℃低いと、ふ化までに約1.9倍の日数がかかります。

冬の屋外で産卵が止まるのは、親が産まないだけでなく、産んでも卵が育つ速さが落ちるためでもあります。ここは、資料の数字から私が計算した目安です。

屋外で飼っている人が、11月に確認できること

ここからは、確かめた資料に書かれていた範囲で、水槽の管理に使える点をまとめます。

餌は、水温と食べ残しを見ながら減らします

日本各地のメダカを比べた論文の屋外実験では、水槽のメダカへの餌やりを、年末以降は止めています。これは実験の運用で、家庭の飼育の基準ではありません。富山県の資料は、餌やりは午前中に、食べ残さない程度に与えるとしています。冬に動きが減って食べ残しが増えるなら、量を減らす判断は、この記述と矛盾しません。

別の水槽に移すときは、水温を合わせます

宮城県の資料は、メダカは水温にも敏感なので、別の水槽から入れるときは、徐々に水温に慣れさせるとしています。富山県の資料も、半日ほど同じ部屋に置いてから移す方法を紹介しています。冬は水温の差が大きくなりやすいため、水換えのときも同じ考え方が使えます。

水流を作らず、外へ逃がさないようにします

宮城県の資料は、メダカは水流によるストレスに非常に弱く、空気ポンプは使わないとしています。また、富山県の資料は、野生型のメダカは絶滅危惧2類に指定されていると説明しています。ペットショップで買った個体を安易に放流すると、地域の遺伝的な多様性を乱すことにつながるため、放流は元の水源に戻すのが原則だと書いています。

冬のメダカについて、確かめられなかったこと

今回の調査で、答えが見つからなかった点を、先にまとめておきます。

餌をやめる水温と、凍結を避ける水深は不明です

成魚が餌を食べなくなる水温、水面が凍ったときに耐えられる限界、睡蓮鉢の水深の目安は、確かめた資料に書かれていませんでした。10℃前後で底に集まるという観察はありますが、それが安全な水温の下限だという意味ではありません。屋外で冬を越す場合は、飼育書や販売店など、ほかの情報も合わせて確認してください。

実験の8℃は、屋外の水温そのものではありません

総説の冬の条件は、水温8℃で、点灯時間も決めた装置の中のものです。実際の水鉢の水温は、地域や置き場所で変わります。この記事の数字は、冬の変化が起きることの確認として読み、飼育の基準にはしないでください。

冬の水槽をどうするか、判断の目安

資料から言えることを、水槽の置き方ごとに整理します。どちらが正しいかを決める資料はなく、何を優先するかで選ぶことになります。

置き方 資料から言えること 確かめられなかったこと
屋外にそのまま置く 水温と日の長さが下がり、メダカは底でじっとして産卵も止まります 凍結する水温や水深の目安
室内で暖めて明るくする 25℃程度と1日12時間の点灯で、数日で産卵が始まった例があります 1年を通して続けたときの体への影響

冬に静かなメダカを見て迷うときは、水温と、食べ残しがあるかどうかの2つを確かめてください。水温が下がっているなら、動かない理由の説明はつきます。

冬のメダカに関するよくある誤解

水底でじっとしているのは、死にかけているのでしょうか

研究では、冬を再現した水槽のメダカが底でじっとしていました。熊本県の小学生の観察記録も、水温が下がると底に集まって動かなくなると書いています。ただし、水温が高いのに動かない場合は、別の原因を考える必要があります。

冬は産卵しないのは、寒くて弱っているからですか

日の長さと水温の両方が、産卵を始める条件になっています。論文は、北日本の集団は14時間の光がないと卵巣が発達しないと報告しています。弱っているからではなく、仕組みとして止まります。

どの地域のメダカでも、同じ条件で産卵を始めますか

同じではありません。必要な日の長さは、北日本の集団が14時間で、南日本の集団はそれより短く、宮崎と宜野座の集団は短い日でも産卵しました。水温の下限も、東通は18℃超、宮崎と宜野座は14℃未満と違います。

冬のメダカが群れないのは、仲が悪くなったからですか

実験では、冬のメダカは仲間のいる区画で過ごす時間が短くなりました。論文はこれを、冬の環境を乗り切るための行動の変化と考えています。春に水温と日の長さが戻ると、また変わると考えられます。

まとめ:冬のメダカの静けさは、季節への切り替えです

冬のメダカが水底でじっとするのは、水温と日の長さが下がることで、行動、目の働き、仲間への関心、産卵が切り替わるためです。8℃と10時間点灯の実験でも、10℃までの観察でも、底にとどまる結果が出ています。

産卵は、日の長さと水温の両方がそろわないと始まりません。必要な長さと水温の下限は、北のメダカと南のメダカで違います。一方で、餌をやめる水温や凍結を避ける水深は、今回の資料では分かりませんでした。迷ったときは、水温と食べ残しを確かめ、屋外で冬を越す場合は飼育書など別の情報も合わせて確認してください。

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📚 参考文献・出典

この記事について 本記事は、メダカの冬の変化を調べた研究や飼育資料を整理した読み物です。飼っているメダカの具合が悪いときや、冬越しの水温・水深を確かめたいときは、販売店や飼育書、獣医師など専門家の情報も合わせてご確認ください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。