ギンナンの強い臭いは、殻の中の実から出ているのではありません。食べる部分を包む、果肉のような外側の皮から出ています。成分は酪酸とエナント酸で、臭うのは実がなる雌の木だけです。この記事では、日本中毒情報センターの資料、城西大学の解説、日本気象協会tenki.jp、ウェザーニュースの調査をもとに、臭いの出どころ、雌木だけが臭う理由、そして臭いの理由がまだ分かっていないことを整理します。踏んだときの洗い方と、食べるときの注意も書きます。2026年11月時点の内容です。
- 臭いの出どころは、種子を包む外種皮という部分です
- ギンナンがなるのは雌の木だけで、実が熟す11月ごろに臭いが強まります
- なぜ臭いのかは、資料でもはっきりしていません
- 臭いの元は酸性なので、重曹で洗います。外種皮に触れるとかぶれることもあります
臭いの出どころは、殻の中ではなく外側の皮です
私はずっと、ギンナンは殻の中の実が傷んで臭うのだと思っていました。資料を読むと、その理解は順番が逆でした。
食べる部分は種子で、臭いは外種皮から出ます
tenki.jpの解説によると、ギンナンはイチョウの種子です。白くて固い殻や、それを包む果肉のようなやわらかい部分も、全部が1つの種子を構成しています。強烈な臭いを出しているのは、このうち果肉のような外側の皮です。城西大学の白瀧義明氏の解説も、種子が熟したあとに外種皮が軟化して悪臭を発する、と書いています。
日本中毒情報センターの資料では、食用にするのは、熟した種子の外種皮を取り除き、加熱して固い殻の中にある部分です。
成分は酪酸とエナント酸です
tenki.jpは、臭いの成分をおもに酪酸とエナント酸の2つとしています。酪酸は蒸れた足のような臭い、エナント酸は腐った油のような臭いだと説明されています。同じ記事は、2012年に反捕鯨団体が調査捕鯨船に投げつけた異臭の瓶の中身も酪酸だったと書いています。人の活動を妨げるほど強い臭いを出せる物質が、秋の道ばたで踏みつぶされていることになります。
2つの成分がどんな割合で含まれるのかは、確かめた資料に書かれていませんでした。この記事では、成分名だけを書いています。
臭うのは雌の木だけで、実が熟す11月ごろです
街路樹のイチョウが全部臭うわけではありません。臭いは、実がなる木にしか出ません。黄色く色づく仕組みは紅葉の3色の色素を扱った記事で書いていますが、実の有無は色とは別の話です。
イチョウには雄の木と雌の木があります
城西大学の解説によると、イチョウは雌雄異株の落葉高木で、樹高は20〜30mになります。ギンナンがなるのは雌の木に限られます。ウェザーニュースもtenki.jpも、実を付けない雄の木だけを植えている街路樹があることを紹介しています。
受粉から種子が熟すまでは、半年以上かかります
同じ解説によると、イチョウは4〜5月に開花する風媒花で、1km程度離れていても受粉できるとされています。受粉した花粉は、雌花の胚珠の先にある花粉室に数か月とどまります。その間に胚珠は直径約2cmに育ち、花粉の中では精子が作られます。9〜10月ごろに精子が放出され、泳いで卵に到達して受精が完了します。種子に熟すのは11月ごろです。
受粉する4〜5月から種子が熟す11月までは、4月からなら7か月、5月からなら6か月です。この記事では、およそ6〜7か月と計算しています。
ここで臭いが強まるのは、種子が熟して外種皮が軟化したあとです。実がなった年の秋の終わりに臭いが目立つのは、この時期の流れと合っています。イチョウの精子を世界で初めてプレパラートで確認したのは、1896年の平瀬作五郎でした。種子植物でありながら、受精は精子で行うという点は、臭いの話とは別に興味深いところです。
ギンナンの臭いを、道ばたで実際に嗅いだことはありますか?
- 毎年必ず嗅ぐ
- 何度か嗅いだことがある
- ほとんど嗅いだことがない
- 臭いを避けて歩いている
なぜ臭いのかは、資料でもはっきりしていません
臭いの成分は分かっていますが、イチョウがなぜそんな臭いを出すのかは別の問題です。ここは確かめた資料の間でも、断定を避けています。
有力とされる説は、動物に食べられないためです
ウェザーニュースは、ギンナンの臭いが強烈な理由は実ははっきり解明されていないと書き、現在のところ動物に食べられないためという説が一番有力なようだ、としています。身を守るための臭いと考えれば、確かに筋は通ります。
全部食べ尽くされないようにするための臭いだ、という見方もあります
tenki.jpは、もう1つの見方を紹介しています。もし良い香りだったら、サルが集団で来て根こそぎ食べ、種はその辺に捨てられて広がらなかったかもしれない、という説です。少数ですが、臭いにひるまずに食べる動物もいるようで、胃の中からたくさんのギンナンが見つかったタヌキの例が紹介されています。ただし、タヌキがギンナンを好んで食べているのか、何でも食べるだけなのかは、不明と書かれています。
私の判断では、動物を追い払う仕組みなのか、食べる動物を選んで運ばせる仕組みなのかは、確かめた資料からは決められません。植物の種子が運ばれる方法は種類ごとに違い、たとえばススキの種子散布の記事でも、その一例を扱っています。イチョウについては、運び手の動物を特定した研究の資料を、今回は確認できませんでした。
今年の臭いはどこまで広がっているのか
ギンナンの臭いが気になる時期と地域は、調査でも確かめられています。ただし、手元にある最新の調査は2024年のものです。
2024年10月の調査では、関東南部で臭った人が4割を超えました
ウェザーニュースは、2024年10月23日にアプリ内で「臭かった」「絶賛臭い中」「まだ臭ってない」「周りにない」の4択で調査し、12,419件の回答を得ました。「周りにない」を除いて集計すると、関東南部や東北北部では、「臭った」と「絶賛臭い中」の合計が40%を上回りました。東海から西は、この時点ではこれから臭いが漂う季節に入る、と書かれています。北海道、青森、沖縄などは、そもそも周りにないという回答が多くなっていました。
この調査から分かるのは、臭いの時期が地域で少しずつずれることです。2026年の今年の状況は、同じ調査を確かめられていないため、書いていません。
ギンナンの相談が増えるのも、10〜12月です
日本中毒情報センターに寄せられたギンナンの相談は、2013〜2022年の10年間で281件でした。月別では、10月が57件(20%)、11月が74件(26%)、12月が58件(21%)で、旬の時期に集中しています。
10月57件+11月74件+12月58件=189件です。189÷281=0.67なので、相談の約67%が3か月に集まっています。
踏んでしまったときの洗い方と、素手で拾わない理由
臭いの原因が分かると、対処も説明できます。
臭いの元は酸性なので、重曹で洗います
tenki.jpは、腐臭のもとは酸性なので、重曹をふりかけるか、重曹水にしばらく漬けるとよいと紹介しています。臭いを定着させないために、早めに洗い落とすことも勧めています。重曹の性質そのものは、ベーキングパウダーと重曹の違いの記事で書いています。
外種皮に触れると、かぶれることがあります
城西大学の解説によると、外種皮に触れると皮膚炎を起こすことがあり、原因物質はギンコール酸とビロボールです。化学構造はウルシに含まれるウルシオール類に似ているとされています。tenki.jpも、拾うときは素手ではなくビニール手袋などをつけるよう書いています。
食べるときは、量と年齢に注意が必要です
臭いの話から外れますが、ギンナンは食べ方にも注意が必要です。
有毒成分は加熱しても消えません
日本中毒情報センターの資料によると、有毒成分は4′-O-メチルピリドキシンで、その解明は1980年代に入ってからでした。ビタミンB6と構造が似ていて、ビタミンB6の働きを邪魔します。その結果、神経の異常な興奮、つまりけいれんが起こると考えられています。この成分は熱に強く、煮ても焼いても毒性はなくなりません。
相談の7割近くは5歳以下で、1〜2歳が中心です
281件のうち、5歳以下が193件で、全体の69%を占めました。内訳は、1歳代が87件(31%)、2歳代が67件(24%)です。20歳以上の大人も71件(25%)ありました。5歳以下の193件のうち、相談した時点で症状があったのは35件(18%)で、嘔吐が8件、けいれんが6件でした。
1歳代87件+2歳代67件=154件です。154÷281=0.55なので、相談の約55%が1〜2歳です。
同センターは、「何個までなら大丈夫」とは一概に言えないとしています。6〜7個食べてけいれんが出た5歳以下の例を把握している一方、茶わん蒸しに入っている程度の量で症状が出た例は把握していないそうです。小さな子どもには食べさせないほうがよい、というのが資料の結論です。大人でも、栄養が偏ってビタミンB6が不足していると中毒を起こすことがあるとされています。
tenki.jpは、41歳の女性が60粒食べて4時間後に嘔吐や下痢、めまいなどを起こした症例を挙げています。「年齢の数まで」という言い伝えもありますが、長寿なら食べ放題というわけではない、とも書いています。
ギンナンの臭いと毒に関するよくある誤解
臭い実は腐っているから食べられない、のでしょうか
臭いは熟した外種皮から出ます。食べる部分は、その外種皮を取り除いた殻の中の種子で、外側が臭うことと、中が食べられるかどうかは別の話です。
雄の木も雌の木も、同じように臭いますか
ギンナンがなるのは雌の木だけです。臭いの出どころは種子の外種皮なので、実がなる雌の木で目立ちます。実を付けない雄の木だけを植えている街路樹もあります。
加熱すれば、毒はなくなりますか
なくなりません。4′-O-メチルピリドキシンは熱に安定で、加熱調理しても毒性は消えません。食べる量で調整するしかありません。
年齢の数まで食べても大丈夫ですか
目安として言われることはありますが、日本中毒情報センターは何個までなら大丈夫とは言えないとしています。ビタミンB6の不足状態によって、同じ数でも症状の出方が変わるためです。
まとめ:ギンナンの臭いは外種皮から、毒は殻の中の実にあります
臭いの出どころは、殻の中の実ではなく外側の外種皮で、成分は酪酸とエナント酸です。臭うのはギンナンがなる雌の木だけで、種子が熟す11月ごろに強まります。なぜ臭うのかは、動物に食べられないための臭いという説が有力とされていますが、はっきりとは分かっていません。
臭いと毒は別の話です。臭いは外種皮から、毒の成分は食べる部分の種子に含まれ、加熱しても消えません。踏んだら重曹で早めに洗い、拾うときは手袋を使います。食べるときは、小さな子どもには与えず、大人も一度に多く食べないようにしてください。
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- 誤解していた
📚 参考文献・出典
- ・日本中毒情報センター「ギンナンの食べ過ぎに注意しましょう」(2023年9月29日更新) https://www.j-poison-ic.jp/wordpress/wp-content/uploads/ginkgo20230929-2.pdf
- ・白瀧義明(城西大学薬学部)「野山の花 身近な山野草の食効・薬効 イチョウ」New Food Industry 61(12) 2019 https://libir.josai.ac.jp/il/user_contents/02/G0000284repository/pdf/JOS-05470277-61(12)-946.pdf
- ・日本気象協会 tenki.jp「ぎんなんが臭い!ちょっと謎なその理由とは?」(2020年11月17日) https://tenki.jp/suppl/usagida/2020/11/17/30068.html
- ・ウェザーニュース「銀杏(ぎんなん)のニオイ拡大中 東京などは4割超え」(2024年10月24日) https://weathernews.jp/news/202410/240155/
この記事について 本記事は、からだや医療の“仕組み”を知る面白さをお届けし、健康への関心を深めていただくための読み物です。診断・治療を目的としたものではないので、実際の症状や治療の判断は医師など専門家にご相談ください。ギンナンを食べて体調に異変があるときは、医療機関や日本中毒情報センターなどの相談窓口をご利用ください。










































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