大谷翔平選手が、ナ・リーグのMVP最終候補3人に入りました。受賞すれば4年連続5度目です。ただ、MVPが何をどう数えて決まるのかを、数字で説明できる人は多くありません。
この記事では、MVPを決める全米野球記者協会(BBWAA)の投票規定を原典で確かめ、2025年の実際の票表で足し算をして、満票の420点がどこから来る数字なのかを確かめます。日本のプロ野球(NPB)の投票方式との違いも並べます。数字は2026年11月時点の公表資料によります。
この記事のポイント
- MVPは各都市の記者2人、ナ・リーグなら30人が10位まで順位をつけて決まる
- 1位は14点、2位は9点、3位以下は1点ずつ減って10位が1点
- 満票の420点は、30人全員が1位に選んだ場合の14点×30人
- 日本のNPBは3位までで、1位5点・2位3点・3位1点と仕組みが違う
MVPは記者30人が10位まで順位をつけ、点数の合計で決まります
結論から書きます。MLBのMVPは、全米野球記者協会(BBWAA)の記者が、各リーグ10位まで順位をつけて投票します。1位に14点、2位に9点、3位に8点と続き、10位が1点です。全員分の点数を足して、合計がいちばん大きい選手が受賞します。
最終候補の発表と、投票が終わった時期は別です
最終候補が発表されたので、これから記者が投票するのだと私は思っていました。BBWAAの投票規定には、投票はポストシーズンが始まる前に提出すると書かれています。MLB公式の2025年の結果記事も、同じ内容です。記者の側の投票は、シーズンが終わった時点でほぼ済んでいて、いまは発表を待っている段階です。
今年の最終候補は、11月2日(日本時間3日)に発表されました。受賞者の発表は12日(日本時間13日)と、中日新聞が伝えています。
どの成績が対象になるか
BBWAAの規定では、見るのはレギュラーシーズンの成績だけです。ポストシーズンでの活躍は、順位づけの材料にしません。投手と指名打者も、MVPの対象に含まれます。野手と同じ土俵で、投手が1位に選ばれることもあるということです。
2026年の最終候補は大谷翔平・クローアームストロング・トゥラングの3人
ナ・リーグの最終候補は、ドジャースの大谷翔平選手、カブスのピート・クローアームストロング選手、ブルワーズのブライス・トゥラング選手です。Full-Countによると、大谷選手は2021年から6年連続で最終候補に入りました。アルバート・プホルス、マイク・トラウト、バリー・ボンズの5年連続を上回り、MLB史上最長です。
「4年連続」の見出しの温度と、今季の数字の温度
見出しには「4年連続5度目」という大きな言葉が並びます。私は、見出しの熱をそのまま受け取る前に、まず今季と昨年の成績を並べてみました。
| 項目 | 2025年(満票で受賞) | 2026年(最終候補) |
|---|---|---|
| 打率 | .282 | .275 |
| 本塁打 | 55本 | 30本 |
| 打点 | 102 | 81 |
| 投手成績 | 14試合で1勝1敗、防御率2.87 | 14試合で8勝2敗、防御率1.79 |
| 出典:nippon.com(2025年)、Full-Count(2026年)。2026年の打撃成績は139試合分 | ||
打者としての本塁打と打点は昨年より減り、投手としての防御率は昨年より良くなっています。中盤以降は左ひざと右腕の故障があり、野手に専念したとFull-Countは伝えています。二刀流の中身が昨年と違うことは確かで、満票が続くかどうかは、記者がこの組み合わせをどう順位づけたかで決まります。
対抗はカブスのクローアームストロング選手
中日新聞は、クローアームストロング選手が40本塁打・40盗塁を達成し、本命視されていると伝えています。投票は終わっているので、ここで予想を書いても結果は変わりません。私は発表を待つ側で、この記事では当たり外れではなく、点数がどう積み上がるのかを見ていきます。
MVPの投票で、順位に点数をつけて足す方式を知っていましたか?
- 詳しく知っていた
- なんとなく知っていた
- 10位まで投票するとは知らなかった
- 点数制だとは知らなかった
📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・6票)
投票するのは各都市の記者2人。ナ・リーグは30人です
誰が投票するのか
BBWAAの投票FAQによると、投票者は各賞30人で、MLBの各都市から記者が2人ずつ出ます。ナ・リーグの都市の記者はナ・リーグの賞に、ア・リーグの都市の記者はア・リーグの賞に投票します。投票者は、地元のBBWAA支部の会長が推薦し、BBWAAの全国の書記・会計担当が承認します。
30人という人数は、現在のナ・リーグの15球団×2人=30人と数えると合います。後で触れる2003年の投票用紙は32通で、当時のナ・リーグは16球団だったので、16球団×2人=32人と合います。球団数は私が数えたもので、BBWAAのFAQに書かれた数字ではありません。
日本の選挙で、得票が議席に直される仕組みはドント方式などの議席配分としてまとめています。MVPの投票は、票を議席に換算するのではなく、順位に点数をつけて足す方式です。同じ「投票」でも、数え方がまったく違います。
10位まで全部埋める決まり
MVPの投票用紙は10位までで、規定には「10位まですべて埋めなければならない」とあります。1つの順位を2人の選手で分けることも認められていません。サイ・ヤング賞は5位まで、新人王と最優秀監督は3位までと、賞によって枠の数が違います。
10位まで書かせる設計は、1位の選手以外にも点が入ることを意味します。2025年の票表では、ナ・リーグで表に載った23人の選手に点が入りました(私が行を数えました)。
点数は1位14点、2位9点、3位8点、そして10位が1点
BBWAAのFAQが定める点数は次の表のとおりです。
| 順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 点数 | 14 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
| 出典:BBWAA 投票FAQ、MLB公式の投票結果ページ | ||||||||||
1位だけ段差が大きい
表を見ると、2位から10位までは1点刻みなのに、1位と2位の間だけ5点も開いています。14-9=5点で、1位票を1枚多く集めると、2位票を1枚多く集めた場合より5点多くなります。14÷9で、1位は2位の約1.6倍の点です。MVPの投票が「誰を1位に置くか」の争いになりやすいのは、この段差のためです。
票に決まった計算をかけて結果を出す方式は、議席の配分にもあります。衆院の定数の記事では修正サンラグ式を扱いました。ただ、MVPの14点という数字に決まった理由は、BBWAAのFAQでは確認できませんでした。
2025年の票表で足し算を確かめる
規定どおりに点数を足して、MLB公式が公表した2025年の票表と合うかを確かめます。
| 選手 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 合計点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 大谷翔平(ナ) | 30 | — | — | — | — | 420 |
| シュワーバー(ナ) | — | 23 | 5 | 1 | 1 | 260 |
| ソト(ナ) | — | 4 | 15 | 9 | 2 | 231 |
| ジャッジ(ア) | 17 | 13 | — | — | — | 355 |
| ローリー(ア) | 13 | 17 | — | — | — | 335 |
| 出典:MLB公式「2025 MLB MVP Award voting results」。1位〜5位の列は、その順位に置いた記者の数。ローリーはカル・ローリー選手 | ||||||
ナ・リーグ2位のシュワーバー選手は260点
23票×9点=207点、5票×8点=40点、1票×7点=7点、1票×6点=6点を足すと、207+40+7+6=260点で、公表値と一致します。1位票が1枚もなくても、2位に多くの記者が置けば、2位の座は固まります。
3位のソト選手も同じ計算で4×9+15×8+9×7+2×6=36+120+63+12=231点です。点数の差は260-231=29点で、2位と3位の順位は、2位票を何人が入れたかの差でした。
ア・リーグは少数の入れ替えで結果が決まった
ア・リーグの1位争いは、1位に置いた記者がジャッジ選手17、ローリー選手13でした。表のとおり、2人とも全員の記者が1位か2位のどちらかに置いています。ジャッジ選手は17×14+13×9=238+117=355点、ローリー選手は13×14+17×9=182+153=335点で、差は20点です。20点は、1位票の差4票×5点とぴったり重なります。
たった4人の記者が1位を入れ替えると結果が変わっていました。投票者の数は30で、わずかな票の移動が結果を左右する大きさです。
満票の420点は何を意味するのか
満票は、30人全員が1位に選んだ場合の14点×30人=420点です。2025年の大谷選手は、ナ・リーグの1位票をすべて集め、420点でした。中日新聞は、大谷選手の受賞はこれまで2021年、2023年、2024年、2025年のいずれも満票だったと伝えています。
420。30人全員が1位でした。全員です。……この数字を表で見ながら、私は計算し直して、14に30を掛けるだけだと確かめました。
420点は人数が変わると別の数字になる
満票の点数は固定ではありません。BBWAAの2003年の記事によると、当時の投票用紙は32通でした。満票なら14点×32人=448点で、現在の420点より28点高くなります。満票の点数は、投票者の人数で決まります。
1位を取っていても満票とは限らない
2003年のバリー・ボンズ選手は、32通の用紙のうち28通で1位に置かれ、2位が2通、3位が2通で、合計426点でした。2位のアルバート・プホルス選手は303点です。BBWAAはこの年、ボンズ選手を3年連続で受賞した史上初の選手と記しています。
圧倒的な成績でも、32通の中に別の順位をつける記者が出ることがあります。満票が「めったにないこと」として語られるのは、この人数の中で全員の判断がそろう必要があるためです。
日本のNPBは3位まで、1位5点・2位3点・3位1点
日本のプロ野球のMVPは、投票の枠も点数も違います。NPB公式の2024年の投票結果ページには、「規定により各1票にそれぞれ1位5点、2位3点、3位1点を与える」と書かれています。
| 項目 | MLB(BBWAA) | NPB(2024年) |
|---|---|---|
| 順位をつける枠 | 10位まで | 3位まで |
| 1位の点数 | 14点 | 5点 |
| 投票者の数 | 各リーグ30人 | セ302票・パ259票 |
| 出典:BBWAA 投票FAQ、NPB公式 2024年 最優秀選手 投票結果 | ||
菅野智之選手は1,357点、満点の約9割
2024年のセ・リーグは、菅野智之選手が1位票253、2位票29、3位票5で合計1,357点でした。253×5+29×3+5×1=1,265+87+5=1,357点で、302票全員が1位だった場合の302×5=1,510点の約89.9%にあたります。2位の岡本和真選手は571点でした。パ・リーグでは近藤健介選手が1位票158で989点、2位の山川穂高選手が694点です。
NPBの投票総数はセ・リーグ302、パ・リーグ259です。302÷30=約10倍で、MLBの10倍近くあります。人数が多いと、記者の個人差が結果に与える影響は小さくなります。一方で、枠が3位までなので、4位以下の選手の評価は点数に出ません。私は野球をラジオ中継で聴いていますが、表彰の投票の中身は、今回調べるまで数字で見たことがありませんでした。
4年連続5度目という数字の数え方
大谷選手のMVPは、2021年、2023年、2024年、2025年です。2022年はジャッジ選手が受賞し、大谷選手は2位でした。Numberによると、ジャッジ選手は1位票28、410点で、大谷選手は1位票2、280点です。28×14+2×9=392+18=410点、2×14+28×9=28+252=280点と、規定どおりの足し算で合います。受賞すれば5度目ですが、「4年連続」は2023年から2026年の4シーズンを数えたものです。
ボンズ選手の記録との距離
nippon.comによると、ボンズ選手は2001〜04年に4年連続で受賞し、通算の受賞は7回です。大谷選手は昨年の受賞で通算4回となり、ボンズ選手に次ぐ単独2位でした。3年連続の受賞は、ボンズ選手以来2人目だったと同じ記事が書いています。今回受賞すれば、4年連続でボンズ選手の連続受賞に並びます。
最終候補の6年連続という記録は、すでに5年連続のプホルス、トラウト、ボンズの各選手を上回っています。最終候補に入る記録と、受賞の連続は別の数字で、混ぜて読むと誤解します。
12日の結果の読み方と見る数字
発表されたら、受賞者の名前だけで終わらせず、次の2つを見ると、記者の判断が読めます。
1位票の数と、点数の合計を見比べる
1位票が多いのに点数が伸びない選手がいれば、2位以下の票が少ないということです。1位票は少なくても、2位に多くの票が集まれば、2025年のシュワーバー選手のように、上位に残ります。1位票1枚は2位票より5点高いので、点差を5で割ると、1位票に直したときの大まかな差が出ます。
2位以下の1位票が何票あるかを見る
3人の最終候補が競る年は、30人全員が同じ選手を1位にするとは限りません。1位票が何票に割れたのかが、その年の評価の割れ方です。結果の記事では、受賞者の点数だけでなく、2位以下の1位票の数も確認してください。
この仕組みの弱点と、数字を読むときの注意点
点数の合計は、ごまかしのきかない数字ですが、注意点が3つあります。
人数が30人と少ない
ア・リーグ2025年の例では、4人の入れ替わりで結果が変わっていました。30人の票は、記者の判断が数字に出やすい反面、少数の判断で順位が動きます。
何を基準に順位をつけるかは、記者に任されている
BBWAAのFAQで確認できたのは、点数の配分、投票者の選び方、10位まで埋める決まり、レギュラーシーズンの成績を見ることまでです。私が開いた範囲では、打撃と投球をどう比べるかの計算式は書かれていませんでした。二刀流の大谷選手を、打者、投手、その合計のどこで評価するかは、記者の判断です。
点数は「評価の強さ」ではなく「順位の足し算」
420点と260点の差は、成績の差を比例して表した数字ではありません。順位に決まった点を与えて足した結果です。点数の差が大きいほど、多くの記者が上位に置いたことは言えますが、成績が何倍違うかは言えません。
よくある誤解
最終候補の発表の後で、記者が投票するのですか?
いいえ。BBWAAは、投票はポストシーズンが始まる前に提出するとしています。最終候補の発表と受賞者の発表は、すでに集まった投票を公表する段階の違いです。
投手は野手と比べるとMVPをとれませんか?
BBWAAのFAQは、投手と指名打者も、MVPの対象に含まれると書いています。サイ・ヤング賞という別の賞もありますが、MVPの投票用紙にも投手の名前を書けます。
満票は成績が完璧だったという証明ですか?
満票は、投票した全員が同じ選手を1位にしたということだけを示します。2003年のボンズ選手のように、圧倒的でも満票でなかった年があります。満票でなかったことは、成績が劣っていたことを意味しません。
まとめ:MVPは順位に点をつけて足す方式です
MLBのMVPは、各都市の記者2人、ナ・リーグなら全部で30が投票用紙の数で、10位まで順位をつけ、1位14点から10位1点までを足して決まります。満票の420点は、14点に投票用紙の数を掛けた数字で、32通だった2003年の人数なら、14×32=448点です。
日本のNPBは3位までで、1位5点・2位3点・3位1点です。MLBのほうが記者が少なく、順位の枠が広い設計です。大谷選手の4年連続5度目は、2023年から2026年を数えた数字で、ボンズ選手の2001〜04年の連続に並びます。
受賞の発表を見るときは、受賞者の名前に加えて、1位票の数と点数の合計を見てください。1位票1枚と2位票1枚の差は5点で、この差が、30人の中での記者の判断の割れ方を示しています。
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📚 参考文献・出典
- ・BBWAA「Voting FAQ」(投票者30人・各都市2人・10位まで・点数・投票時期) https://bbwaa.com/voting-faq/
- ・MLB公式「2025 MLB MVP Award voting results」(2025年の票表) https://www.mlb.com/news/2025-mlb-mvp-award-voting-results
- ・Full-Count「大谷翔平、MVPの最終候補入り MLB史上最長6年連続…受賞なら4年連続5度目」 https://full-count.jp/2026/11/03/post2040041/
- ・中日新聞「大谷翔平、MVP最終候補に 選出なら4年連続5度目」 https://www.chunichi.co.jp/article/1334135
- ・nippon.com「大谷翔平選手、ナ・リーグMVPに選出」(ボンズの記録・2025年の成績) https://www.nippon.com/ja/japan-data/h02613/
- ・MLB公式(日本語)「2025 MLB MVP Award voting results」(点数の配分・各都市2名) https://www.mlb.com/ja/news/2025-mlb-mvp-award-voting-results
- ・Number「オオタニかジャッジか、僕はどちらかを選べない」(BBWAA記者30人・2022年の投票結果) https://number.bunshun.jp/articles/-/855413
- ・BBWAA 2003年ナ・リーグMVP ボンズの受賞記事(32通・426点) https://bbwaa.com/03-nl-mvp/
- ・NPB公式「2024年 最優秀選手 投票結果」 https://npb.jp/award/2024/voting_mvp.html










































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