時雨(しぐれ)は、晴れや曇りをはさみながら、雨や雪が断続的に降る状態を指す気象庁の予報用語です。日本海の海面で暖められてできた雲が、次々に通ることで起きます。11月に入ると、日本海側の天気はこの形になる日が増えます。
新潟県長岡市出身の私は、11月に傘を持たずに家を出て、行きは晴れていたのに帰りは濡れる、という経験を何度もしました。ただ、なぜ降ったり止んだりするのかと聞かれて、仕組みを説明できるかというと自信がありませんでした。この記事では、気象庁の予報用語と気象衛星センターの解説、新潟と東京の平年値をもとに、時雨が降ったり止んだりする理由を確かめます。内容は2026年11月時点のものです。
- 気象庁の定義では、時雨は寒気が日本海の海面で暖められてできた対流雲が次々に通る状態
- 雲は十数km~数十km間隔の筋になって並ぶため、雨と晴れ間が入れ替わる
- 新潟市の11月の降水量は平年203.5mmで、東京の96.3mmの約2.1倍
- 関東で使われる「時雨」は、日本海側とは意味が違う
時雨は日本海の海面で暖められた雲が次々に通るときの雨
気象庁の予報用語では、雪も含めた断続的な降水をいう
気象庁の予報用語集(降水に関する用語)は、しぐれを次のように説明しています。「大陸からの寒気が日本海や東シナ海の海面で暖められて発生した対流雲が次々に通るために晴れや曇りが繰り返し、断続的に雨や雪の降る状態」。「通り雨」として用いられる場合もあるとも書かれています。
私は時雨を、細かい雨がぱらつく天気だと思っていました。定義を読んで意外だったのは、雨だけでなく雪も含まれていること、そして雲の種類が対流雲だと決まっていることです。弱い雨がしとしと降り続く天気は、この定義の時雨には当たりません。
「時々雨」「一時雨」とは別の言葉
天気予報には「晴れ時々雨」「くもり一時雨」という言い方もあります。気象庁の子ども向け解説では、「ときどき」は予報の対象時間のうち2分の1未満の時間で雨が降ったり止んだりすること、「一時」は4分の1未満の時間で続けて雨が降ることだと説明されています。
時雨は、この時間の割合で決まる言葉ではありません。雲のでき方と通り方を表す言葉なので、日本海側の予報で「くもり時々雨」と出ている日の中身が、時雨にあたることがあります。
秋に続く長雨とも、仕組みが違います。東京都心で34日連続雨になったのはなぜかの記事では、秋雨前線と台風が雨を続けさせた仕組みを書きました。時雨は前線ではなく、寒気が海面で暖められてできる雲が原因です。
乾いた寒気が日本海を渡ると雲ができる
11月の日本海南部の海面水温は平年17.4℃
雲の材料は、日本海そのものです。気象庁の海洋の健康診断表には、日本海南部の11月の海面水温の平年値(1991~2020年の平均)が17.4℃と載っています。2022年11月は18.6℃で、平年より1.2℃高く、1982年以降の11月として最も高い値でした。
一方、新潟市の11月の平均気温は平年10.5℃で、日最低気温は6.9℃です。海面水温17.4℃から新潟市の平均気温10.5℃を引くと6.9℃で、海面のほうが約7℃暖かい計算です。海上の空気と陸の観測点を並べただけの目安で、実際の寒気の温度は日によって違います。それでも、冷たい空気が暖かい海面の上を吹き渡る図は、この数字から想像できます。
海面から熱と水蒸気をもらい、対流雲になる
気象衛星センターの解説書は、冬の日本海に広がる雲について、気温と海面水温の差が大きいときに筋状の雲が発生すると述べています。大陸から来た空気は乾いていますが、暖かい海面の上を進むあいだに熱と水蒸気を受け取ります。下から暖められた空気は軽くなって上昇し、上空で冷やされて雲になります。これが気象庁のいう対流雲です。
ウェザーニュースの解説も、日本海で発生した雨雲が北西の季節風に流されて次々と通過するため、雨が降ったり止んだりすると説明しています。気象庁の定義と同じ流れです。
11月の外出で、折りたたみ傘を持ち歩いていますか?
- 毎日持っている
- 予報が曇りや雨の日だけ持つ
- 持たずに出かけて濡れることが多い
- あまり気にしていない
雲が筋のように並ぶから、雨と晴れ間が入れ替わる
筋状雲は十数km~数十km間隔で平行に並ぶ
気象衛星センターの解説書では、衛星画像でCu(積雲)やCg(雄大積雲)でできた雲の列が平行に並ぶパターンを「筋状雲」と呼んでいます。寒気が大陸から日本海へ流れ込み、気温と海面水温の差が大きいと、十数km~数十km間隔で平行に並ぶ筋状雲ができると書かれています。
雲の列と列のあいだには、雲のない帯があります。雲の帯が通るあいだは雨や雪になり、帯と帯のすき間が通るあいだは晴れ間が出ます。時雨で降ったり止んだりするのは、この雲の並び方が地上の天気に表れているためだと読めます。ただし、筋の向きは下層の風とほぼ平行です。個々の雲がどの順番で観測点の上を通るかは、風の向きと雲の発達によって変わり、この解説書だけでは数分単位の周期までは決まりません。
山雪型と里雪型で、降る場所が変わる
同じ解説書は、筋状雲による降水は日本列島の地形の影響で、主に山沿いで多くなると述べています。これを「山雪型」と呼びます。一方、日本海に雲のバンドや雲の渦ができると、その上陸地点付近の海岸や平野部でも降水量が多くなり、「里雪型」になる場合があります。
気象庁の予報用語でも、山雪は山地に比較的多く降る雪、里雪は山地に加えて平野部でも多く降る雪と説明されています。どちらの言葉も、北陸を中心に使われているそうです。
新潟では11月に降水量が東京の約2.1倍になる
10月から12月の降水量と日照時間を並べる
気象庁の平年値(1991~2020年)で、新潟市と東京の10月から12月を比べました。
| 月 | 新潟 降水量(mm) | 東京 降水量(mm) | 新潟 日照時間(時間) | 東京 日照時間(時間) |
|---|---|---|---|---|
| 10月 | 157.7 | 234.8 | 138.2 | 129.4 |
| 11月 | 203.5 | 96.3 | 91.5 | 149.8 |
| 12月 | 225.9 | 57.9 | 62.9 | 174.4 |
| ※気象庁の月ごとの平年値(統計期間1991~2020年)。新潟は新潟市、東京は東京都心の観測点。 | ||||
11月の降水量は、新潟203.5mmを東京96.3mmで割ると約2.1倍です。日照時間は、新潟91.5時間が東京149.8時間の約61%にとどまります。12月になると差は広がり、降水量は225.9÷57.9で約3.9倍、日照時間は62.9÷174.4で約36%です。
10月は東京のほうが多く、11月に入れ替わる
表で面白いのは、10月の並びです。10月は東京が234.8mmで、新潟の157.7mmより多くなっています。東京の降水量は、この月がまだ多い側にあります。
新潟の降水量は10月の157.7mmから11月の203.5mmへ約1.3倍に増え、東京は234.8mmから96.3mmへ約0.41倍に減ります。東京が減る月に、新潟が増える。この入れ替わりが11月です。冬型の気圧配置が現れて、日本海側に時雨の日が増えると、数字でもその変化が見えます。
関東で使う「時雨」は、日本海側とは意味が違う
気象庁は「関東地方では後者の意味で用いられる」と書いている
気象庁の予報用語集には、しぐれの備考として、主に晩秋から初冬にかけて北陸から山陰地方や九州の西岸などで使われること、関東地方では後者の意味で用いられることが書かれています。後者とは、定義の最後にある「通り雨」としての使い方です。
東京の中央線沿線に住む私が「時雨」と聞いて思い浮かべるのは、季節の変わり目に急にぱらつく雨です。長岡の実家で見ていた、雲の切れ目から日が差しては雨になる天気とは別物でした。同じ言葉を、出身地と住んでいる場所で違う意味で受け取っていたことになります。
冬の季語としての時雨
ウェザーニュースは、時雨を晩秋から初冬にかけて断続的に降る雨で、冬の季語にもなっていると紹介しています。11月に入ってからの天気を指す言葉として使われてきた、ということです。
11月の傘と洗濯は何を見て判断するか
日本海側の予報は「時々」「一時」の文字を見る
日本海側に出かける日や、日本海側に住んでいる場合は、予報の「時々雨」「一時雨」を見て傘を決められます。先ほどの気象庁の説明にある通り、「時々」は予報の対象時間の2分の1未満、「一時」は4分の1未満の時間に雨が降るという意味です。ゼロではないので、折りたたみ傘をかばんに入れておく判断は筋が通ります。
天気予報の作り方そのものは、天気予報の仕組みの解説記事にまとめています。
洗濯は日照時間の少なさを前提にする
平年値の日照時間を1日あたりにすると、新潟の11月は91.5時間÷30日で約3.1時間、東京は149.8時間÷30日で約5.0時間です。差は1日あたり約1.9時間です。外干しの洗濯物が乾く時間が短くなるうえ、時雨で雨に濡れる可能性もあります。
私は乾燥機のない縦型洗濯機で、部屋干しと除湿機を使っています。東京でも部屋干しにしているので、日照時間が東京の約6割になる日本海側の11月は、外干しより部屋干しを基本にしたほうが合っていると、数字を見て感じました。
時雨が雪や雷に変わる日の注意点
11月の新潟は雪の日が平均2.7日、雷の日が4.9日ある
時雨は、寒気が強まれば雨でなく雪になります。気象庁の平年値で、新潟市の11月の雪日数は2.7日、雷日数は4.9日です。東京は雪日数が0.0日、雷日数が0.4日でした。12月の新潟は雪日数が19.5日、雷日数が6.1日になります。
雷は夏のものという印象がありますが、新潟市では11月に雷の日が4.9日、12月に6.1日あります。時雨の日は、雨と晴れ間だけでなく、雪や雷の可能性も頭に入れておく必要があります。警報や注意報は、気象庁の発表で確認してください。
12月に雪の日が増える新潟の道路
新潟市の雪日数は、11月の2.7日から12月は19.5日へ増えます。道路の雪を地下水の熱で溶かす消雪パイプの仕組みは、消雪パイプの解説記事で書きました。
時雨のよくある誤解
時雨は、弱い雨が長く降り続く天気ですか
いいえ。気象庁の定義は、晴れや曇りが繰り返され、断続的に雨や雪が降る状態です。降り続く雨ではなく、降ったり止んだりが繰り返される天気を指します。
時雨は日本海側だけの天気ですか
定義の中心は日本海側ですが、関東では通り雨の意味で使われます。気象庁の備考にも、関東地方では後者の意味で用いられると書かれています。
時雨は雨だけで、雪にはならないのですか
雪にもなります。気象庁の定義には「断続的に雨や雪の降る状態」とあり、雪も時雨に含まれます。
まとめ:時雨は海面の熱でできた雲の並び方が表れた天気
時雨は、大陸から来た寒気が日本海の海面で暖められ、対流雲になって次々に通ることで起きる天気です。雲は十数km~数十kmの間隔で筋のように並ぶので、雨や雪の帯とすき間の晴れ間が入れ替わります。
新潟市の11月の降水量は平年203.5mmで、東京の約2.1倍です。日照時間は東京の約61%しかありません。日本海側で11月に出かけるときは、予報の「時々」「一時」を見て折りたたみ傘を持ち、洗濯は部屋干しを前提に考えるのが合っています。
雨だけでなく雪や雷になる日もあるため、天気が荒れる予報の日は、最新の情報を気象庁の予報で確かめてください。
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📚 参考文献・出典
- ・気象庁「予報用語 降水に関する用語(しぐれ・山雪・里雪)」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kousui.html
- ・気象庁 こどもページ「どうして天気予報では「ときどき」をつけるの?」 https://www.jma.go.jp/jma/kids/kids/faq/a5_12.html
- ・気象衛星センター「第6章 寒気場内の現象(筋状雲・山雪型と里雪型)」 https://www.data.jma.go.jp/mscweb/ja/prod/pdf/book/2-chapter6.pdf
- ・気象庁 海洋の健康診断表「日本海南部の海面水温が11月として過去最高」(令和4年12月2日発表) https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/shindan/rinji/2022/01/rinji_hisst_202212.html
- ・気象庁「月ごとの平年値 新潟」(1991~2020年) https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=54&block_no=47604&year=&month=&day=&view=
- ・気象庁「月ごとの平年値 東京」(1991~2020年) https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=44&block_no=47662&year=&month=&day=&view=
- ・ウェザーニュース「立冬に合わせて冬型の気圧配置 本州の日本海側は時雨」 https://weathernews.jp/news/202411/070095/










































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