居酒屋の代金はどの時点で決まるのか?QR注文・お通し・席料の仕組み|200万円近い請求の報道から

米国のインフルエンサーが東京都内の居酒屋でライブ配信をしていたところ、頼んでいない料理や飲み物が次々に届き、請求は200万円近くになったと報じられました。白月ハルカです。この見出しを見て、私が最初に思ったのは「配信中のいたずらなら、払わなくていいのでは」ということでした。

ところが、居酒屋の代金がどの時点で決まるのかを調べ直すと、私が思っていたより分かれ目が多いことに気づきました。注文、お通し、席料はそれぞれ根拠が違います。この記事では、報道と民法の条文、弁護士の解説、飲食店経営者への調査を2026年10月時点で確かめ、確認できた範囲だけで整理します。このニュースの請求が正しかったかどうかは判断しません。

  • 報道によると、請求額は最終的に1万2000ドル(約189万円)以上になったと本人が述べている
  • 民法第五百二十二条では、契約は申込みと承諾で成立し、書面は要らない
  • お通しは「店に入った時点で注文したと考えられる」と弁護士は解説している
  • 2023年の調査で、お通し代を請求する店は38.2%、席料は28.7%だった
目次

居酒屋のQR注文で、何が起きたと報じられたのか

ライブ配信中に、頼んでいない料理が届いた

Yahoo!ニュースに掲載されたハフポスト日本版の記事によると、米国のインフルエンサーのレイシーさん(23歳、Twitchの登録者351万人)は、10月28日に東京都内の居酒屋で配信をしていました。店は、店内のいけすから自分で釣った魚を調理してもらう形式です。大きな鯛を釣り、塩焼きや刺身を楽しんでいた途中から、誰も注文していない飲み物や料理が届き始めました。

本人はカメラを指さし、視聴者がQRコードを読み取ったのかもしれないと話し、それ以上の注文を断ったと報じられています。店員が持ってきた長いレシートには、注文額がすでに50万円を超えていると書かれていました。

報道で分かっていること、分かっていないこと

同じ記事によると、追加のレシートが出され、最終的な合計は1万2000ドル(約189万円)以上になったと本人は述べています。本人は店に謝罪し、費用は自分が負担すると伝えたということです。調理された料理は、店員の家族と分けてほしいと頼んだとも書かれています。

一方で、記事の本文には、QRコードでどのように注文が成立したのかという仕組みは詳しく書かれていません。その後の支払いがどう扱われたかも、この記事で確かめた資料の範囲では分かりません。見出しの「200万円近く」と、本文の「約189万円」も数字が一致しないため、この記事では本文の数字を使います。

居酒屋の代金は、どの時点で決まるのか

契約は「申込み」と「承諾」で成立する

居酒屋で料理を頼み、店が出すことも、契約の一つと考えられます。民法第五百二十二条1項は、契約は「契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示」である申込みに対して、相手方が承諾をしたときに成立すると定めています。

居酒屋で言えば、客が「この料理をください」と言うのが申込み、店が「はい」と受けて出すのが承諾です。メニューを指さす、画面のボタンを押すといった動作も、意思を示す方法になると考えられます。

口頭やボタン操作でも、契約になる

同じ第五百二十二条の2項は、契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しないと定めています。居酒屋の注文に契約書は出てきませんが、契約が成り立たないわけではありません。書面を作る契約にかかる印紙税の仕組みは別の話で、注文の成立には書面が要らない、という点だけ押さえてください。

ただし、書面がない分、「誰が何を頼んだのか」を後から確かめにくくなります。紙の伝票や口頭の注文であれば店員の記憶と伝票、QR注文であれば注文の記録が手がかりになると私は考えます。今回の報道では、その記録がどうなっていたかまでは分かりません。

居酒屋のお通しを、普段はどうしていますか?

  1. そのまま受け取る
  2. 気になって金額を確認する
  3. 断ることがある
  4. お通しのない店を選ぶ

📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・8票)

気になって金額を確認する:50%
そのまま受け取る:25%
断ることがある:25%
お通しのない店を選ぶ:0%

お通しとは何か

お通しとは何か
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関東の「お通し」、関西の「突き出し」

BCNの記事によると、「お通し」は主に関東で使われる呼び方で、関西圏では「突き出し」がよく使われます。突き出しは、注文とは関係なく店側が最初に出す料理という意味合いがあると説明されています。ただし、これは調査の結果ではなく、記事の筆者による説明です。

注文していないのに出てくる料理

お通しの特徴は、客が注文していないのに席に出てくることです。QR注文の騒動と並べると、ここが分かりにくさの元だと私は感じました。注文した覚えがない料理が届いたとき、客が頼んだものなのか、店が最初から出す決まりのものなのかで、扱いが変わるからです。

お通し代は断れるのか|弁護士の解説

慣例なので、店に入った時点で注文したと考えられる

弁護士ドットコムニュースに2018年3月9日に掲載された、古川穣史弁護士の解説を読みました。お通しは飲食店で提供されることが慣例になっているため、店に入った時点で注文していると考えることができる、というのが解説の出発点です。

私は「頼んでいないのだから払う必要はない」と思い込んでいました。ところがこの解説では、慣例を前提に、入店した時点で注文があったと考えます。メニューを見て頼んだものが想像と違う料理だったときでも支払うのと同じ、という例えも添えられていました。

断るなら、食べる前に

同じ解説は、どんなお通しでも食べてしまった場合はお通し代を支払う必要があると考えられるとしています。気に入らないものであれば、その時点で拒否することは考えられる、とも書かれています。お通しの提供を拒否してもかまいませんが、そのことで入店を断られる可能性はあるとのことです。

高額なら、店に説明義務があると考えることもできる

数百円程度のお通し代は、慣習として説明されないことが多いと弁護士は述べています。一方で、あまりに高額な場合は、信義則から店に説明する義務があると考えることもできる、としています。信義則とは、相手の信頼に誠実に応じなければならないという原則です。この解説で取り上げられた例は、キャベツ1皿(6人分)で合計3000円というお通し代でした。

3000円÷6人で計算すると、1人あたり500円です。一般的な居酒屋のお通しを1人500円とする記事中の例と同じ額になるため、問題になったのは1人分の値段より「キャベツ1皿が6人分で3000円」という出し方だったと読めます。

飲食店は何を請求しているのか|2023年の経営者調査

飲食店は何を請求しているのか|2023年の経営者調査
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会計で請求される項目

客側の話だけでなく、店側の実態も確かめます。飲食店ドットコムを運営する株式会社シンクロ・フードは、2023年8月9日から16日に、会員の飲食店経営者に対するインターネット調査を行いました。回答は373名で、そのうちお通し代やサービス料が発生する業態は272名です。この272名に、会計時に請求している項目を複数回答で聞いた結果が次の表です。

会計で請求する項目 回答の割合
お通し代 38.2%
席料 28.7%
サービス料 15.1%
いずれも請求していない 29.4%
※株式会社シンクロ・フード「飲食店ドットコム」会員への調査(2023年8月)。回答は複数回答。

お通し代を請求する店は38.2%で、2018年の調査(50%)より下がっています。調査では、席料が2018年より6%増え、「いずれも請求していない」も2018年より6%増えたと報告されています。お通し代を請求する店の割合は下がり、席料と、何も請求しない店の割合が上がっています。

お通しの価格帯と、直近1年の変更

お通しを請求している店(回答104)に価格帯を聞くと、300〜399円が40.4%で最も多く、500〜599円が21.2%、400〜499円が14.4%でした。2018年の調査では300〜399円が48.3%だったため、最も多い価格帯は変わっていません。

直近1年のお通し代の変更では、値上げした店が20.2%、変更していないが値上げを検討中の店が16.3%、値下げした店が1.9%でした。変更せず予定もない店は61.5%です。

店が行っている工夫

同じ調査で、お通しの提供で行っている工夫を複数回答で聞いています。質にこだわっている店が64.4%、定期的にメニューを変更している店が42.3%、お通しの説明を目立つ場所に明記している店が25%でした。「お通しカット」に対応している店は22.1%、外国人客には提供していない店は16.3%です。

この数字から言えるのは、お通しの説明を目立つ場所に書く店は4店に1店という点です。入店時に自分から聞く、というのが弁護士の勧める対策でもありました。

席料・サービス料は、法律で決まっているのか

居酒屋には明文の規定がない

先ほどの弁護士の解説では、キャバクラなどは「風俗営業法」や「ぼったくり防止条例」で、支払う可能性のある料金を見やすく表示する義務があるとされています。しかし、それ以外の居酒屋などは、法律で明文の規定はされていないとしています。

席料・サービス料が高い場合の考え方

お通しと同じく、あまりに高額な場合には説明する義務があると考えることもできる、というのが解説の整理です。「あまりに高額」がいくらからなのかは、この解説にも書かれていません。基準が示されていないことは、私も読んでいて引っかかりました。

弁護士自身が経験した例として、店が「お通しに自信があり、値段が高いお通しを提供しています」と入店時に説明したケースも紹介されています。説明があれば、客は入店するかどうかを選べます。

客の側は、お通しをどう受け止めているのか

学生アンケートの数字

飲食店向け情報サイト「フーディストメディア」の記事は、立教大学の学生が行った500人へのアンケートを紹介しています。お通しの値段について66%が「高い」「やや高い」と答え、質については48%が「不満」「やや不満」と答えました。お通しを断ったことがある人は33%です。この記事には調査の実施時期が書かれていないため、傾向を見る参考にとどめます。

同じ記事には、代表的な居酒屋チェーンの約5割はお通しを断れて、5割は断れなかったという記述もあります。店によって対応が割れているので、「断れる店もある」と考えておくのが現実的です。

デメリットと注意点

断ることの不利益

お通しの提供を拒否してもかまいませんが、弁護士が指摘するように、入店を断られる可能性はあります。

金額だけで決めると見えなくなること

お通し代の金額だけを見ると、店が出す料理の中身が見えなくなります。調査では、お通しの質にこだわっている店が64.4%ありました。

4人で入店し、1人500円のお通しと1人300円の席料がかかる店なら、(500+300)×4=3200円が、料理を1品も頼まないうちに決まる計算です。数字はこの記事の例として置いたもので、実際の店の料金ではありません。

QRコードの写り込みという別の落とし穴

今回の報道では、視聴者がQRコードを読み取ったのかもしれないと本人が話しています。仕組みは確認できていませんが、私は、SNSや配信に注文用のQRコードや席の番号が映り込んでいないかを確かめてから載せるのが安全だと考えます。これは報道の確認事項ではなく、私の考えです。

よくある誤解

誤解:頼んでいないものは、一切払わなくてよい

お通しについては、弁護士の解説では、慣例を前提に店に入った時点で注文したと考えることができるとされています。ただし、注文した覚えのない大量の料理がすべて同じ扱いになるわけではありません。今回の報道のように、注文の経緯が分からないものは、記録を確かめる必要があります。

誤解:契約書がないから、支払いの義務はない

民法第五百二十二条2項のとおり、契約の成立に書面は要りません。口頭やボタン操作でも契約は成立します。

誤解:お通しはどこの店でも必ず出る

2023年の調査では、会計時にお通し代を請求していない店は多数あり、「いずれも請求していない」店が29.4%でした。お通しカットに対応する店も22.1%あります。

会計で困らないための確認ポイント

入店時に聞くこと

弁護士は、入店時にお通しがあるかどうか、その値段について聞いてみることを勧めています。席料やサービス料も、同じ場面で聞けます。メニューに料金表示がある店なら、そこを先に見ます。

注文の記録を残す

QR注文の店では、注文後に画面で内容を確かめ、会計の前にレシートと見比べます。税込の総額で書かれているかどうかは、総額表示の仕組みの記事もあわせて読んでください。

納得できないときの動き方

金額に納得できない場合は、その場で店に説明を求めるのが先です。最終的な判断は個別の事情で変わるので、トラブルが大きいときは、消費生活センターや弁護士に相談してください。

まとめ:居酒屋の代金が決まる仕組み

居酒屋の代金は、民法第五百二十二条のとおり、申込みと承諾で決まります。書面は要りません。お通しは、弁護士の解説によれば、慣例によって店に入った時点で注文したと考えられ、断るなら食べる前です。席料やサービス料は、居酒屋には法律上の明文の規定がなく、高額な場合は説明義務が考えられる、という整理でした。

店の側を見ると、2023年の調査でお通し代を請求する店は38.2%、席料は28.7%で、請求の仕方は店ごとに違います。最初に「お通しはありますか」と聞くだけで、会計の驚きはかなり減らせます。

私は、200万円近いという見出しの大きさに引っ張られて、最初は「払わなくていいのでは」と考えました。調べ終えて残ったのは、金額の大小よりも、注文の記録と事前の説明のほうが大切だという見方です。最新の情報や個別の事情は、店と専門家にご確認ください。

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  3. 初めて知った
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なんとなく知っていた:31%
初めて知った:15%
誤解していた:15%

📊 「居酒屋の代金はどの時点で決まるのか?QR注文・お通し・席料の仕組み|200万円近い請求の報道から」はこんな人に読まれています

2026年10月31日 〜 2026年11月30日
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📚 参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は報道と公開資料にもとづく一般的な解説で、個別の事案について法的な判断をするものではありません。具体的なトラブルは、消費生活センターや弁護士などの専門家へご相談ください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。