衆院議員定数はどう決まる?比例31減と修正サンラグ式で議席が動く仕組み

2026年10月22日、自民党が衆院選挙制度をめぐる政党間協議で、比例代表の定数を31減らす案を示しました。あわせて、比例の議席配分を現行のドント式から「修正サンラグ式」に改める案も出ています(共同通信の配信記事)。29日付で自民・維新・国民の3党が合意したと伝える見出しも出ましたが、私はその本文までは確認できていません。この記事では、確認できた範囲で、衆院議員定数の決まり方と、配分方式が変わると議席がどう動くのかを整理します。法案の中身や賛否の最新状況は、2026年10月時点の報道を基にしており、今後変わる可能性があります。

私は最初、この話を「議席が31減る話」だと受け取っていました。ところが調べるうちに、減らす数と同じくらい、減ったあとの各ブロックの定数と、割り算のやり方が結果を左右することが分かりました。

  • 衆院の定数は公職選挙法で465人。小選挙区289人、比例代表176人で、比例は11ブロックに分かれている
  • 自民案は比例だけを31減らす案。小選挙区は変わらないので、総定数は434人、比例は145人になる計算
  • ドント式・サンラグ式・修正サンラグ式の違いは、各党の得票を割る「最初の数」と「その後の数」だけ
  • 修正サンラグ式は1議席目の壁が高くなる。定数の少ないブロックほど壁も高くなる
目次

衆院の定数は465人で、小選挙区と比例代表に分かれている

定数は憲法ではなく、法律で決まる

憲法43条は、両議院は全国民を代表する選挙された議員で組織するとしたうえで、議員の定数は「法律でこれを定める」と書いています。衆議院の定数を決めているのは、公職選挙法の4条1項です。「衆議院議員の定数は、四百六十五人とし、そのうち、二百八十九人を小選挙区選出議員、百七十六人を比例代表選出議員とする」という条文です。

定数を変えるには、この条文を改める法律が国会を通らなければなりません。比例を31減らす案も、法案として提出され、可決されて初めて定数が変わります。政党間の合意は、その前の段階です。選挙制度全体の流れは、日本の選挙の仕組みを図解した記事にまとめています。

比例代表は11のブロックに割り振られている

比例代表の176人は、全国一括ではなく、11のブロックごとに配分されます。ブロックごとの人数は公職選挙法の別表第2に書かれていて、私が算用数字に直した表が次のとおりです。

ブロック 定数 ブロック 定数
北海道 8人 東海 21人
東北 12人 近畿 28人
北関東 19人 中国 10人
南関東 23人 四国 6人
東京都 19人 九州 20人
北陸信越 10人 合計 176人
※公職選挙法別表第2の議員数を算用数字に直して並べました。合計は私が足して176人になることを確かめています。

近畿の28人と四国の6人では、4倍以上の開きがあります。私の実家がある長岡市は新潟県で、北陸信越ブロックの10人に入ります。ブロックの定数がこれだけ違うことが、あとで見る「配分方式の効き方」の違いにつながります。

自民が示した比例31減案は、何をどれだけ変えるのか

自民が示した比例31減案は、何をどれだけ変えるのか
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31という数字は、人口の減少率から出ている

報道によると、31という数字は、2015年の国勢調査人口と2030年の推計人口を比べた減少率6.7%を、現行の総定数465に当てはめて出したものです。465の6.7%は約31です。総定数を基に計算しながら、削るのは比例だけという組み立てです。人口の数え方そのものは、国勢調査の仕組みの記事で説明しています。

465×0.067=31.155で、約31です。

削っても小選挙区は動かず、比例の人数が大きく減る

案は比例の定数だけを31減らすものなので、小選挙区の289人は変わりません。私が計算した結果は次のとおりです。

  • 総定数:465-31=434人
  • 比例:176-31=145人。削減幅は31÷176で約17.6%
  • 小選挙区が総定数に占める割合:289÷465で約62.2%から、289÷434で約66.6%へ

総定数の削減率は6.7%でも、比例だけで見ると約17.6%です。見出しの「31減」から受ける印象と、比例の中で起きる変化の大きさには、2.6倍ほどの差があります。小選挙区が占める割合が上がる点も、数字を並べて初めて気づきました。

法案が国会に出てから成立するまで

共同通信によると、自民党の村井英樹国対委員長は、31減案に基づく関連法案を今国会に提出し、成立させたい考えをNHKの番組で示しました。「多くの皆さんの合意をいただいて」と述べており、この時点では合意の途中だったことになります。法案が国会に出てから成立するまでの一般的な流れは、閣議決定から法案成立までの流れを説明した記事で確認できます。

衆院の比例代表の議席配分がドント式であることを、これまでに知っていましたか?

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ドント式、サンラグ式、修正サンラグ式は「割る数」だけが違う

3つとも、得票を順に割って商の大きい順に議席を配る

社会学者で日本大学教授の西田亮介氏の解説によると、3方式はいずれも、各党の得票を「割る数」で順に割り、商の大きい順に1議席ずつ配ります。割る数は次のとおりです。

  • ドント式:1、2、3…
  • サンラグ式:1、3、5…
  • 修正サンラグ式:1.4、3、5…

ドント式は割る数の増え方が1ずつなので、大きな政党の2議席目、3議席目の商がなかなか小さくなりません。サンラグ式は2ずつ増えるので、大きな政党の商は速く小さくなり、議席が小さな政党に回りやすくなります。修正サンラグ式は、最初の割る数だけを1.4にします。2議席目以降はサンラグ式と同じです。

同じ票でも、方式で議席が変わる

仕組みを確かめるために、数字を作って計算してみました。実在の選挙ではなく、定数6のブロックに4つの政党が立候補し、得票が100万票だったと仮定します。

政党(得票) ドント式 サンラグ式 修正サンラグ式
A党(46万票) 3議席 3議席 3議席
B党(27万票) 2議席 1議席 2議席
C党(17万票) 1議席 1議席 1議席
D党(10万票) 0議席 1議席 0議席
※仮定の数字を使い、私が3方式で計算した結果です。

サンラグ式の商(万票)は、A党が46、15.3、9.2、B党が27、9.0、C党が17、D党が10です。大きい順に6つ取ると、46、27、17、15.3、10、9.2で、B党の2つ目(9.0)は入りません。ドント式では、D党の10が、A党の4つ目(46÷4=11.5)に届きません。修正サンラグ式では、D党の最初の商が10÷1.4=7.1に下がり、B党の2つ目(9.0)にも届きません。

同じ票、同じ定数で、D党が議席を得るのはサンラグ式だけです。この例では、修正サンラグ式の結果はドント式と同じでした。

修正サンラグ式の「1.4」は、最初の1議席の壁になる

修正サンラグ式の「1.4」は、最初の1議席の壁になる
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割る数1.4は、1議席目の境目を0.7に置くこと

西田氏の解説では、サンラグ式は得票を割った商を四捨五入するのと同じ考え方で、議席ゼロから1議席に上がる境目が0.5議席分です。修正サンラグ式は、この境目を0.7に引き上げます。割る数1.4は、境目を0.7に置くことと同じだという説明です。スウェーデンが2018年の選挙から採用している1.2なら、境目は0.6になります。

先ほどの例のD党は、得票率10%で定数6なので、6×0.10=0.6議席分の票を得ていました。0.5を超えているのでサンラグ式なら1議席、0.7に届かないので修正サンラグ式なら0議席です。

壁の高さはブロックの定数で変わる

1議席分の票は、おおまかに総得票を定数で割った大きさです。そこで、境目に達する得票率の目安を、定数ごとに計算しました。

ブロックの定数 境目0.5(サンラグ式) 境目0.7(修正サンラグ式)
6人 約8.3% 約11.7%
10人 約5.0% 約7.0%
20人 約2.5% 約3.5%
28人 約1.8% 約2.5%
※0.5÷定数、0.7÷定数で計算した目安です。他党の得票の分布で実際の境目は動きます。

西田氏も、定数6のブロックなら境目0.5で約8%、0.7で約12%が必要になると目安を示しています。私の計算と合っています。同じ修正サンラグ式でも、定数28の近畿なら約2.5%で足りるのに、定数6の四国では約11.7%が要ります。1.4という数字が、全国一律の「壁」ではないことが分かります。

定数を減らすと、ブロックごとの壁はさらに高くなる

比例31減と修正サンラグ式はセットで検討されている

今回の案は、31減と修正サンラグ式がセットです。西田氏は、定数が小さいブロックほど1議席分の票が大きくなり、壁が高くなると指摘しています。ブロックごとの削減数は、私が確認できた範囲では示されていません。そこで、全ブロックが同じ割合で減ると仮定して計算してみました。

比例は176人から145人へ、145÷176で約0.82倍になります。四国は6人が約4.9人(約5人)、近畿は28人が約23人です。境目0.7に必要な得票率は、四国で0.7÷5=約14%、近畿で0.7÷23=約3.0%です。

四国の壁は、現行定数での約11.7%から、約14%に上がる計算です。仮定の上の話ですが、削減と配分方式の変更は、別々の話として切り離せないことが分かります。

評価は割れている

配分方式を「中小政党に有利」と報じる記事は多くあります。西田氏は、実際には中規模の政党と小規模の政党で扱いが分かれ、野党内の分断を促しかねない提案だと指摘しています。一方で、小政党の乱立を防いだほうがよいという声も政界には根強いと、同じ解説に書かれています。

どちらが正しいかを決める材料は、この記事にはありません。ただ、「有利か不利か」の一言で報じられたときに、どの規模の政党の、どの定数のブロックの話なのかを確認する癖はつけられます。

報道を読むときに確かめたい4つの点

数字を見たときの確認項目

  1. 「31減」は総定数465のうちの数か、比例176のうちの数かを見る
  2. 小選挙区が減るのか、比例だけが減るのかを見る
  3. ブロックごとの削減数が示されているかを見る。ここが分からないと、壁の高さは分からない
  4. 配分方式の変更の説明が、定数の少ないブロックの話か、全国の話かを見る

私は、見出しの数字を見るとまず「本当にそんなに大きい話なのか」と確かめたくなる性格です。今回は、総定数で見ると6.7%、比例で見ると約17.6%と、同じ31でも見え方が変わりました。

法案が出てから確認するもの

実際に法案が出たら、条文や概要でブロックごとの定数がどう書かれているかを見るのが確実です。公職選挙法の別表第2が改められ、ブロックごとの人数が算用数字で並ぶはずです。そこで初めて、四国のような小さなブロックの壁の高さが計算できます。

注意点:この記事で分からないこと

確認できていない点

  • 10月29日の3党合意の本文と、合意の中身は確認していません
  • ブロックごとの削減数は、確認できた範囲では示されていません。上の四国・近畿の数字は仮定の計算です
  • 修正サンラグ式を何ブロックで、どの割る数で使うかは、法案の条文を見るまで確定しません
  • 各党の議席がどう変わるかは、得票次第で変わるため、この記事では試算していません

仮定の計算を現実の予測と混ぜない

表に出した定数6の例や、全ブロックが同じ割合で減るという仮定は、仕組みを確かめるための私の計算です。特定の政党や選挙の結果を予測するものではありません。

よくある誤解

比例31減は小選挙区も減る話なのか

いいえ。報道されている自民案は、比例代表の定数だけを31減らす案です。小選挙区の289人は変わらない前提なので、総定数は434人になります。

修正サンラグ式なら、小さな政党は必ず議席を取りやすくなるのか

必ずではありません。ドント式と比べて、サンラグ式は小政党に議席が回りやすい方式です。修正サンラグ式は、最初の割る数を1.4にして、議席ゼロから1議席への壁を上げています。私の計算例でも、D党は修正サンラグ式で議席を得られず、ドント式と同じ結果でした。

定数は国会が自由に決められるのか

憲法43条は定数を法律で定めるとしているので、国会が法律で決めます。ただし、法律を改めるには法案の可決が必要で、政党間の合意だけでは定数は変わりません。

まとめ:衆院定数と配分方式を同時に見る

衆院の定数は公職選挙法で465人、小選挙区289人と比例代表176人です。自民案は、比例だけを31減らし、配分方式をドント式から修正サンラグ式に変えるもので、法案が成立しない限り現行のままです。

3つの方式は割る数が違うだけで、同じ票でも議席が変わります。修正サンラグ式の1.4は最初の1議席の壁を上げ、その壁はブロックの定数が小さいほど高くなります。定数を減らす話と配分方式の話は、セットで見る必要があります。

報道を読むときは、31が総定数と比例のどちらに対する数か、ブロックごとの削減数が出ているかを確かめてください。法案が出たら、別表第2のブロックごとの人数を見れば、自分の住む地域の壁の高さを計算できます。最新の状況は、各社の報道と衆議院の公式発表で確認してください。

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📚 参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は、社会の制度や法律の“仕組み”を知る面白さをお届けし、世の中のルールに興味を持っていただくための読み物です。個別の法的判断を示すものではなく、法案や制度の最新の状況は、衆議院・総務省の公式発表や各社の報道でご確認ください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。