家鳴りとは何か|冬の夜にピシッと鳴る原因を木材の含水率と湿度から読む

冬の夜、静かな部屋で壁や天井から「ピシッ」「パキッ」と音がして、一瞬身構えたことはないでしょうか。この音は家鳴り(やなり)と呼ばれ、木造住宅を中心に聞こえます。白月ハルカです。私は長いあいだ、家鳴りを「寒くなって木が縮む音」だと思っていました。

北海道立総合研究機構・林産試験場、三重県林業研究所、気象庁、厚生労働省の資料を2026年10月時点で読み直すと、縮む原因として資料が挙げているのは寒さではなく、木材に含まれる水分の減少でした。この記事では、木材が縮み始める条件、冬の室内で水分がどこまで減るか、板が何ミリ縮むかを計算し、家鳴りとの向き合い方を整理します。

  • 木材の寸法が変わるのは、含水率がおおむね30%以下の範囲に限られる
  • 縮み方は方向で違い、繊維方向・半径方向・接線方向の比は0.5〜1:5:10とされる
  • 室温25℃・湿度30%の室内が長く続くと、木材の含水率は6%前後に近づく
  • 公的な資料が説明しているのは木材の収縮で、音が鳴る瞬間の仕組みは住宅情報サイトの説明に頼る部分が残る
目次

家鳴りの原因は、木材が乾いて縮むことだと考えられる

公的な資料が書いているのは「音」ではなく「木材の収縮」

林産試験場の「木材の含水率管理と製品品質について」は、木材の適切な乾燥が行われないことが原因で起こる住宅の不具合として、「ドア・引き戸の開閉困難」や「内装各部に生じる隙間」を挙げています。これらの症状の多くが木材の収縮や膨張によると考えられ、収縮や膨張の大きさは含水率(木材に含まれる水の割合)の変化量に影響される、という説明です。

この資料に、家鳴りという言葉は出てきません。家鳴りそのものを扱った公的な資料は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。収縮の部分は公的な資料、音になる部分は住宅情報サイトの説明と、情報の出どころを分けて読む必要があります。

音になる段階は、接合部のこすれと説明されている

住宅情報サイト「家づくり比較なび」は、木材が周囲の湿度に応じて水分を吸収・放出し、そのとき木材が伸縮して、柱や梁、壁などの接合部で摩擦が生じることを家鳴りの主な原因と説明しています。同サイトは「掲載内容にはプロモーションを含みます」と明記している媒体で、摩擦の大きさを測った数字は載っていません。

音の正体は「伸び縮みした部材が接合部でこすれる音」という説明で、測定で確かめられた話ではない。私はそう読みました。この記事でも、音になる段階は仮説として扱い、確認できた数字は木材が縮む量のほうに置きます。

木材が縮むのは、含水率が約30%を下回ってから

木材が縮むのは、含水率が約30%を下回ってから
Photo by Marcel Eberle on Unsplash

縮み始める目安は含水率30%

林産試験場の技術相談Q&Aによると、生材から乾燥させたとき、木材は含水率が繊維飽和点(約30%)より低くなると収縮が始まります。収縮や膨張は、細胞壁の中の水分子(結合水)が出入りすることで起こります。細胞の内側の空洞や細胞と細胞のすき間にある水(自由水)は、寸法の変化に関係しません。

切ったばかりの生木は、水が細胞の空洞に入っているだけで、乾いても細胞壁の水が減り始めるまでは縮みません。細胞壁の中の水が減り始めて、はじめて木は縮みます。含水率が30%を超えている間は寸法が変わらず、30%を下回ってからの動きが問題になります。

縮み方は方向によって大きく違う

木材は方向によって縮む割合が違います。繊維方向、半径方向、接線方向の収縮率の比は、一般に0.5〜1:5:10といわれています。繊維方向は木の幹が伸びる向き、半径方向は年輪を横切る向き、接線方向は年輪に沿う向きです。

接線方向の収縮率は繊維方向の10÷1=10倍から10÷0.5=20倍にあたります。板の長さはほとんど変わらず、幅だけが目に見えて縮みます。

この差があるため、同じ板でも長さ方向と幅方向で動く量はまるで違います。釘やビスで固定された部材は、互いに違う量だけ動こうとして引っ張り合います。ここまでは資料の内容から導ける話で、家鳴りの音がどの瞬間に出るのかは、先に書いたとおり確かめられていません。

冬の夜に家のどこかで「ピシッ」と音がした経験はありますか?

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冬に暖房した室内では、木材の含水率は6%前後まで下がる

冬に暖房した室内では、木材の含水率は6%前後まで下がる
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日本の木材が落ち着く含水率は、全国平均で約15%

三重県林業研究所の資料によると、木材の含水率は最終的に周囲の相対湿度に応じた一定の値に落ち着き、この値を平衡含水率と呼びます。自然の大気中に放置したときの平衡含水率は、全国平均で約15%と言われています。製材の日本農林規格(JAS)では、D15(未仕上げ材)、SD15(仕上げ材)といった、平均含水率15%以下の区分が設けられています。

同じ資料は、近年の木造住宅は高気密・高断熱化と冷暖房の普及により、住宅内の木材の平衡含水率がさらに低くなる傾向にあるとも書いています。つまり、15%まで乾かした木材でも、暖房の効いた気密性の高い室内ではさらに水分が抜ける方向に置かれます。

室温25℃・湿度30%が続くと、含水率は6%前後

林産試験場の資料は、隙間の多い昔の家に比べ、気密性が高く室温調節も簡単な最近の住宅では、特に冬の期間は今までより低い湿度になることが多いと説明しています。例として、室温25℃・湿度30%の室内環境が長く続くと、木材の含水率は6%前後に近づいていくとされています。

気乾状態の15%から6%まで下がると、含水率の変化量は15−6=9ポイントです。

東京の外の湿度と、暖房した室内の湿度は別の数字

外の空気はどのくらい乾いているのでしょうか。気象庁の平年値(1991〜2020年)で東京の月ごとの平均相対湿度を見ると、次のようになります。

月 平均気温 平均相対湿度(%)
12月 7.7℃ 56
1月 5.4℃ 51
2月 6.1℃ 52
7月 25.7℃ 76
8月 26.9℃ 74
※気象庁「平年値(年・月ごとの値)東京」の1991〜2020年の値。屋外の値で、室内の湿度ではありません。

1月の外気は平均で51(%表示)、夏の7月は76です。外が極端に乾いているわけではありません。ところが、この外気をそのまま暖房で温めると室内の相対湿度は大きく下がります。東京の1月の外気を室温20℃まで温めた場合の計算は、冬のドアノブの静電気と湿度の関係を調べた記事で示しました。

その計算では、水蒸気の量が変わらないと仮定して、相対湿度は約19%まで下がります。

実際の室内は、調理や洗濯物、人の呼気で水蒸気が加わるので、19%よりは高くなります。それでも、外の51より低くなる方向は変わりません。木材が置かれているのは外ではなく室内の空気の中なので、含水率を決めるのも室内の湿度です。

15%から6%まで乾くと、板は何ミリ縮むのか

幅90mmのミズナラの板は、約2.4mm縮む

林産試験場は、国産広葉樹の平均収縮率の表を公開しています。平均収縮率とは、含水率が1%変化したときの縮む割合です。ミズナラの値は、接線方向が0.30%、半径方向が0.16%、繊維方向が0.016%でした。

資料の例題は、含水率9%のときに幅90mmのミズナラの板目板が、含水率4%まで乾いたらどのくらい縮むかというものです。板目板は幅の向きが接線方向にあたるので、0.30%を使います。

例題は、90×0.30÷100×5=1.35mmと計算できます。含水率の変化量は9−4=5ポイントです。

同じ式で、気乾状態の15%から室内の6%まで9ポイント下がる場合を計算します。

90×0.30÷100×9=2.43mmで、幅90mmの板は約2.4mm縮みます。

ミズナラはフローリングなどに使う広葉樹の例です。柱や梁に使われるスギやヒノキといった針葉樹の値は、今回確認した資料にはないので、同じ縮み量になるとは言えません。あくまで、乾燥で板の幅がミリ単位で動く規模感をつかむための計算です。

長さ1mの材でも、繊維方向に約1.4mm縮む

繊維方向の平均収縮率0.016%で同じ9ポイント下がると、長さ1000mmの材は1000×0.016÷100×9=1.44mmです。

長さの変化は幅の約2.4mmよりずっと小さいものの、1mの材で1.4mm前後は動く計算になります。私は計算するまで、家がミリ単位で動いているとは考えていませんでした。冬になるたびに、柱も床板もわずかに縮んでいると思うと、夜の音の聞こえ方が少し変わります。

部材同士は釘や金物で固定されているので、縮みが一気にではなく、引っかかっては動く形で現れる可能性があります。これは推測で、資料で確かめた内容ではありません。

温度差で鳴るという説明は、どこまで確かめられたのか

温度による伸び縮みの数値は、今回の資料には載っていなかった

家鳴りを「夜に気温が下がって木が縮むから」と説明するページは多く、私もそう思っていました。ところが、林産試験場と三重県林業研究所の資料が収縮の原因として挙げているのは含水率の変化で、温度による寸法変化の数値は載っていませんでした。

温度の影響がないと言い切る根拠はありません。確かめられていない、というのが正確な書き方です。間違っていたのは木材の性質ではなく、原因を寒さだけに決めていた私の見方でした。

夜に聞こえやすい理由は、静けさかもしれない

家鳴りが夜の話題になりやすい理由は、公的な資料では確認できませんでした。日中は生活音にまぎれる小さな音が、夜は他の音が減って聞こえやすくなる。暖房を切ったあとに室内の条件が変わる。この2つは推測です。

鉄骨造や鉄筋コンクリート造でも、家鳴りは起こるとされています。「家づくり比較なび」は、鉄骨造では鉄骨が外気温の変化で伸縮して屋根や外壁から金属的な音が出ること、鉄筋コンクリート造では壁の内部から「コツ」といった音が聞こえることがあると紹介しています。木材の含水率だけでは、すべての音は説明できません。

新築の最初の冬に目立ちやすいのは、含水率に動く余地があるため

乾燥材でも、室内で6%前後まで動く余地がある

JASのD15は平均含水率15%以下の区分で、15%という値は日本の平衡含水率の全国平均にあたります。ここに、室内で6%前後まで下がる例を並べます。

15%以下の乾燥材でも、室内で6%前後になれば、9ポイント分は水分が抜ける余地があります。

三重県林業研究所の資料は、需要者の側から15%より低い含水率の木材が求められるようになってきていると書いています。林産試験場も、あらかじめ使用環境の温湿度に合わせた含水率まで乾燥しておく必要があると説明しています。入居後の冬に初めて暖房を入れたとき、木材が室内の湿度に合わせて動き出す、という流れは資料の内容と合っています。

含水率6%とは、どういう状態なのか

三重県林業研究所の資料によると、木材の含水率は、水分の重さを木質部分(水分を除いた重さ)で割った乾量基準で表します。通常の湿量基準とは違い、含水率が100%を超えることもあります。

乾量基準の6%は、木質100gあたり水分6gを含む状態です。

同じ木質100gに含まれる水分は、15%なら15gです。6÷15=0.4で、6%のときの水分は15%のときの4割、半分以下にあたります。数字の差が大きく見えるのは、基準が木質の重さだからで、木材全体の重さに対する割合ではないからです。

家鳴りを減らすために、家庭でできること

湿度計で、室内の相対湿度を確認する

まず確認したいのは、暖房した部屋の相対湿度です。建築物衛生法の建築物環境衛生管理基準では、事務所ビルなど多数が使う建築物の室内の相対湿度は、40%以上70%以下と決められています。住宅に求められる基準ではありませんが、範囲の目安としては参考になります。

加湿器の方式の違いは、除湿器と加湿器の仕組みを比べた記事にまとめています。方式によって電気代や手入れの手間が変わります。

音の記録を残しておく

気になる音は、鳴った時間帯、場所、そのときの室温と湿度をメモしておくと、建築会社に相談するときに伝えやすくなります。これは資料に書かれた手順ではなく、記事としての提案です。

「家づくり比較なび」は、「ドンッ」「バキッ」という大きく衝撃を伴う音や、同じ場所から継続的に鳴る音、床下や水回りの周辺から聞こえる音は、専門家による点検を検討するよう勧めています。

加湿の注意点と、見逃したくない異常のサイン

加湿しすぎると、結露やカビの原因になる

木材の乾燥を防ぐために湿度を上げ続けると、別の問題が出ます。建築物環境衛生管理基準の相対湿度が40%以上70%以下と、上限まで決められているのはそのためです。窓や壁の結露がカビにつながる条件は、秋にカビが増える条件を湿度・温度・栄養で整理した記事で解説しています。

音以外の症状が同時に出ていないか見る

林産試験場の資料が挙げた不具合は、「ドア・引き戸の開閉困難」と「内装各部に生じる隙間」です。音に加えてこうした症状が出ている場合は、木材の動きが大きい可能性があります。音だけで原因を判断せず、建築会社や工務店に相談してください。

家鳴りがあること自体が不具合の印なのかどうかは、公的な資料では確認できませんでした。「家づくり比較なび」は、新築で起こる家鳴りの多くは自然な現象としていますが、これは住宅情報サイトの見解です。

状況別に選ぶ家鳴りへの対応の判断表

状況 先にすること 根拠になる資料
暖房を入れた夜に、短い音がする 湿度計で相対湿度を測り、40%以上かを見る 厚生労働省の研修会資料
窓や壁に結露が出る 加湿を控え、70%を超えない範囲にする 建築物環境衛生管理基準
大きな音が同じ場所から繰り返す 時間・場所・室温を記録して専門家に点検を相談する 住宅情報サイト「家づくり比較なび」
ドアが開閉しにくい、内装に隙間が出た 建築会社・工務店に相談する 林産試験場の含水率管理の資料

家鳴りについてのよくある誤解

寒さで木が縮む音?

今回確認した林産試験場と三重県林業研究所の資料が、収縮の原因として挙げているのは含水率の変化です。温度による寸法変化の数値は載っておらず、寒さだけで説明するのは根拠が足りません。

家鳴りは欠陥の印?

音の有無だけで欠陥かどうかは判断できません。公的な資料で家鳴りと欠陥の関係を述べたものは確認できませんでした。住宅情報サイトは、大きな衝撃音や同じ場所で続く音は点検を検討するよう勧めています。

鉄骨や鉄筋コンクリートの家は鳴らない?

鳴らないとは言い切れません。「家づくり比較なび」は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造でも、鉄骨やコンクリート、配管の伸縮による音が出ることがあると紹介しています。

まとめ:家鳴りは木材の含水率の変化を目安に考える

家鳴りの原因として、公的な資料から確認できるのは、木材の収縮です。木材は含水率が約30%を下回ると縮み始め、方向によって縮み方が大きく違います。暖房した気密性の高い室内では、室温25℃・湿度30%が続くと含水率が6%前後まで下がる例が示されています。

ミズナラの幅90mmの板では、15%から6%まで下がると約2.4mm縮むと計算できます。

音になる瞬間の仕組みは、住宅情報サイトが説明する接合部の摩擦にとどまり、測定で確かめられた話ではありません。温度差の影響も、今回の資料では数値を確認できませんでした。

家庭でできることは、湿度計で室内の相対湿度を測ること、40%以上70%以下の範囲を目安にすること、鳴った時間や場所を記録することです。ドアの開閉が重い、内装に隙間が出たといった症状が音と同時に出る場合は、建築会社や工務店に相談してください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。