プロ野球のFA(フリーエージェント)で、年俸の高い選手が他球団に移ると、元の球団は補償を受け取れます。ところが、補償のない移籍もあります。それがCランクです。2026年11月時点で、中日の上林誠知選手は国内FA権を取得した一人で、Cランクとみられています。この記事では、ランクが何で決まり、補償の中身がどう違い、なぜCランクの選手は獲得しやすいのかを、選手会の資料とNPBの公示、報道で確かめて整理します。
- ランクは、旧所属球団の日本人選手の年俸順位で決まります
- 1位から3位がA、4位から10位がB、11位以下がCです
- Cランクは金銭補償も人的補償もなく、獲得する球団の負担が小さくなります
- 補償をなくすよう、選手会は求めています
FAのCランクは、旧所属球団への補償がありません
先に私の思い込みを書いておきます。FAで移るときは、どの選手でも元の球団に何かを払うものだと思っていました。実際にはランクで決まり、一番下のCランクには補償がありません。
NPBの公示では、国内FA権を持つ選手は36名です
NPBが公示した2026年度のフリーエージェント有資格選手は、10月19日の公示で、国内FA権を保有する選手が36名、海外FA権を保有する選手が69名です。今季取得した人は、国内が22名、海外が17名と載っています。上林誠知選手の名前は、中日の欄に国内FA権の保有選手として並んでいます。
上林誠知選手はCランクとみられています
Sportivaの野球解説者の対談では、中日の上林誠知選手がFA権を取得し、Cランクとみられていると話されています。「みられている」とあるとおり、これは正式な発表ではなく、解説者の見立てです。ランクは中日の日本人選手の年俸順位で決まります。上林選手の年俸額は、私が確かめた資料には載っていませんでした。そのため、この記事では年俸の金額は書きません。
ランクは、旧所属球団の日本人選手の年俸順位で決まります
ランクをつけるのは、選手の実績やFA市場の人気ではなく、年俸の順位です。
1位から3位がA、4位から10位がB、11位以下がC
選手会がまとめた資料では、年俸Aランクが1位から3位、年俸Bランクが4位から10位、年俸Cランクが11位以下です。年俸の順位は、FA宣言をした選手が元いた球団の中で数えます。年俸の決まり方そのものは、プロ野球の年俸の仕組みの記事で書いています。
外国人選手は順位に数えません
同じ資料に、年俸ランクは旧所属球団における日本人選手のみの順番だと注記があります。SPAIAの記事は、これを年俸表で示しています。ソフトバンクの表では、オスナ選手とモイネロ選手の外国人2人を、順位とは別にかっこで書いています。順位に数えた日本人選手の中では、甲斐拓也選手が2億1000万円で6位で、Bランクとみられました。
報道に出るランクは、推定です
SPAIAの記事は、FA宣言をした年のシーズンの年俸ランキングで順位を数えています。ただし、記事は金額をいずれも推定だと断っています。報道に出るランクは、記者や解説者が推定の年俸から並べたものです。
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補償の額は、ランクとFAの回数で変わります
補償は、FA選手を獲得した球団が、旧所属球団に払うものです。選手会の資料では、初回のFAか、2回目以降の反復FAかでも額が違います。
金銭補償と人的補償の一覧
| FAの回数・補償の形 | Aランク(1〜3位) | Bランク(4〜10位) | Cランク(11位以下) |
|---|---|---|---|
| 初回FA・人的補償なし | 年俸の80% | 年俸の60% | なし |
| 初回FA・人的補償あり | 選手1人+年俸の50% | 選手1人+年俸の40% | なし |
| 反復FA・人的補償なし | 年俸の40% | 年俸の30% | なし |
| 反復FA・人的補償あり | 選手1人+年俸の25% | 選手1人+年俸の20% | なし |
| ※日本プロ野球選手会の資料と、SPAIAの解説(Cランクは金銭・人的補償ともになし)をもとに作成。「選手1人」は、獲得球団のプロテクト外から旧所属球団が選ぶ選手です。最新の規定はNPBの公表資料で確認してください。 | |||
Cランクの列は、選手会の資料では「なし」と書かれ、SPAIAも「金銭・人的補償ともになし」としています。
年俸1億円の選手で比べると
年俸が1億円の日本人選手が初回FAで移るとして、式は「年俸×割合」です。人的補償をなしにすると、Aランクは1億×0.8=8,000万円、Bランクは1億×0.6=6,000万円で、Cランクは0円です。人的補償をありにすると、Aランクは選手1人と1億×0.5=5,000万円、Bランクは選手1人と1億×0.4=4,000万円になります。同じ年俸でも、順位が11位以下かどうかで、獲得する球団が旧所属球団に払う額は0円まで変わります。
SPAIAの記事にある実例も載せておきます。2024年に阪神の大山悠輔選手がAランクとみられたときは、旧年俸2億8000万円の80%にあたる2億2400万円が、獲得した球団から阪神に支払われる計算でした。甲斐拓也選手のBランクで人的補償を選ぶ場合は、プロテクト外の選手1人と、旧年俸2億1000万円の40%にあたる8400万円でした。
人的補償は、プロテクト外の選手から1人です
人的補償は、獲得した球団が守りたい選手をリストに載せ、それ以外から旧所属球団が1人選ぶ仕組みです。SPAIAの記事によると、プロテクトできるのは28人までです。外国人選手と、直近のドラフトで獲得した新人選手は、獲得の対象になりません。新人の指名ルールは野球のドラフト会議の仕組みの記事にまとめています。
Cランクはなぜ争奪戦になりやすいのか
補償がない選手は、獲得する球団にとって、年俸以外の費用がかかりません。
獲得する球団の負担が、年俸だけになります
SPAIAの記事は、Cランクの選手がFA宣言した場合、複数の球団による争奪戦になることもしばしばある、と書いています。金銭補償も人的補償もないため、獲得を目指す球団にとっては身銭を切らずに済むからです。
補償がなくても、移籍が成功するとは限りません
ベースボールチャンネルは、Cランクで移った選手6人を振り返る記事を載せています。その1人目の井納翔一投手は、DeNAで通算50勝を挙げた右腕で、補償不要のCランクで巨人に移りました。2年契約でしたが、移籍後は計12試合で1勝にとどまり、契約が終わると現役を引退したと書かれています。補償がないので獲得しやすいことと、移籍後に活躍することは別の話です。
補償が緩和されたのは、2008年の改正です
SPAIAの記事によると、FA制度は1993年に始まり、年俸によるランク分けが入ったのは2008年の改正です。このとき、Cランクの選手は補償なしで獲得できるようになり、補償は大きく緩和されました。それまでは金銭補償が高額で、制度ができてから10年のうちに人的補償で選手が移った例は3例だけだったと書かれています。人的補償が選ばれることが増えたのは、2003年の改正のころからです。
補償について、選手会が求めていること
補償は、選手が移籍しにくくなる原因になるのではないか。選手会は、そう考えています。
選手会は、補償制度の撤廃を求めています
選手会の資料は、補償が移籍を妨げる要因になり得るため、補償制度の撤廃を求めていると書いています。球団がなぜ補償を求めるのか、その理由を球団側が示した資料は、私が確かめた範囲では見つけられませんでした。そのため、ここでは選手会の主張だけを書きます。
FAの権利を取るまでの期間も、選手会は短くするよう求めています
同じ資料では、FA権の取得期間は、高校出身の選手が国内8シーズン、大学・社会人出身の選手が国内7シーズンで、海外FAは9シーズンです。反復FAは4シーズンです。1軍登録が145日以上のシーズンを1シーズンと数えます。選手会は、移籍を活発にするためにFAの期間を短くするよう求めています。
FAのニュースを読むときの確認点
ここまでの内容を、明日からニュースを見るときの手順にします。上林誠知選手のようにFA権を取得した選手の報道が出たら、次の順に確かめます。
1つ目は、所属球団の年俸順位です
日本人選手の年俸順位が11位以下なら、Cランクとみられます。報道で「Cランク」とあれば、獲得球団は旧所属球団に補償を払わない前提で話が進みます。
2つ目は、初回のFAか反復FAかです
AランクとBランクでは、反復FAのほうが補償の割合が低くなっています。初回かどうかで、獲得球団の負担が変わります。
3つ目は、公示と宣言の日程です
報道によると、FA宣言をする選手は、日本シリーズが終了した翌日から土日・祝日を除く7日間以内に、権利を行使するか表明します。権利を取得した選手の全員が宣言するわけではなく、SPAIAの記事によると、2024年にFA宣言した選手は計9人でした。
FAのランクを見るときのデメリットと注意点
報道のランクは、推定値です
年俸は球団が公表しない金額もあり、報道では推定の額が使われます。SPAIAの記事も、金額はいずれも推定だと断っています。ランクが一つずれると、補償の額も変わります。
この記事の数字は、資料の時点が違います
金銭補償の割合は、選手会が選手向けに作った資料から取っています。この資料は、ファイル名に2022年版と付いているものです。SPAIAの記事は、補償のルールは2023年現在も適用されていると書いています。2026年11月時点の規定は、NPBの公表資料で確かめてください。
人的補償の中身は、ランクだけでは決まりません
誰が人的補償で動くかは、獲得した球団がどの選手をプロテクトするかで決まります。ランクが分かっても、誰が動くかは宣言後の発表を待つことになります。
よくある誤解
FAで移ると、どの選手でも補償が発生しますか
いいえ。Cランクの選手は、金銭補償も人的補償もありません。補償があるのは、年俸順位が1位から10位のAランクとBランクの選手です。
ランクは、選手の実績で決まりますか
いいえ。ランクは、旧所属球団の日本人選手の年俸の順位で決まります。成績の良し悪しや人気は、ランクの決め方に入っていません。
戦力外になった選手にも、補償がありますか
FAとは別の仕組みです。戦力外通告のあとは、自由契約として公示され、人的補償なしでどの球団とも交渉できます。くわしくは戦力外通告の仕組みの記事に書いています。
外国人選手の年俸も、順位に入りますか
入りません。選手会の資料に、日本人選手のみの順番だと書かれています。
まとめ:FAのCランクは年俸11位以下で、補償なしです
FAのランクは、旧所属球団の日本人選手の年俸順位で決まり、1位から3位がA、4位から10位がB、11位以下がCです。AとBには、年俸に割合を掛けた金銭補償と、プロテクト外から選ぶ人的補償があり、Cランクにはどちらもありません。補償がないので、獲得する球団は年俸だけを考えればよく、Cランクの選手は複数の球団に求められることがあります。
上林誠知選手のように、Cランクとみられる選手のニュースを見るときは、年俸順位、初回か反復か、宣言の日程の3つを確かめると、記事の背景が読めます。ランクは推定で、最新の規定はNPBの公表資料にあります。
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📚 参考文献・出典
- ・日本プロ野球選手会「プロ野球選手のみなさんへ」(FA制度の概要・FA補償金等) https://jpbpa.net/wp-content/uploads/jpbpa-pdf/toallplayers2022ver.pdf
- ・NPB「フリーエージェント有資格選手 2026年度公示」 https://npb.jp/announcement/2026/fa_qualified.html
- ・SPAIA「【プロ野球】FA選手のランクとは? 補償内容がランクで変わる?」 https://spaia.jp/column/baseball/npb/2592
- ・ベースボールチャンネル「“補償なし”はお買い得…?プロ野球、CランクでFA移籍した選手6人」 https://www.baseballchannel.jp/npb/138482
- ・Sportiva「FA権を取得した選手たちの移籍・残留をどう見る?」(高木豊氏へのインタビュー) https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/baseball/npb/2026/10/09/_fa/?page=2
- ・Baseball King「FA宣言の期間(日本シリーズ終了翌日から土日・祝日を除く7日間)」 https://baseballking.jp/ns/678934/










































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