スーパーの野菜売り場で、ハクサイが1個1000円を超えているのを見て、足が止まった人は多いと思います。私も、鍋の季節が始まるところだったので、思わず値札を二度見しました。
ニュースでは「長雨と日照不足で葉物野菜が高騰」と繰り返されています。ただ、雨が降ったから値段が上がるというだけでは、なぜハクサイが1個1000円を超えるほど動くのかまでは分かりません。この記事では、農林水産省の見通しや農畜産業振興機構の解説、報道で確かめた範囲で、天気が値札に届くまでの道筋を順に整理します。2026年10月時点の情報です。
- ハクサイが高いのは、長雨と日照不足で産地の出荷数量が平年を下回る見込みだから
- 農林水産省は、10月のハクサイの価格は平年(直近5か年平均)を上回る見込みと公表している
- 野菜は貯蔵性が低く、足りない分を在庫で埋めにくいので、値段が動きやすい
- 種まきが遅れた分は収穫も遅れるため、天気が戻ってもすぐには安くならない
- 見通しが平年並みや平年より低い野菜に目を向けると、買い方の選択肢が増える
ハクサイが1個1000円を超えた理由は、畑で足りなくなったから
店頭で起きていること
KSBニュースによると、東京の青果店では10月7日、ハクサイが4分の1サイズで258円でした。1個に直すと1000円を超える価格帯で、先週から1個あたり100円以上上がっているといいます。店主は「仕入れに行っても本当に市場に物がない、入荷が」と話しています。
この258円を4倍すると、258円×4=1,032円になります。同じ報道では、レタスが1玉270円、セール品の小ぶりなキャベツが213円でした。岡山市のスーパーでは、ハクサイが4分の1玉で377円で、377円×4=1,508円、1玉では1500円近くになる計算です。群馬県産のキャベツは1玉539円で、例年の2〜3倍ほどだと伝えられています。
理由の出発点は、天気ではなく出荷量
私は最初、雨続きで野菜が傷んで値上がりするのだろう、くらいに考えていました。農林水産省の資料を読むと、もう少し手前に仕組みがありました。長雨と日照不足で生育が遅れ、出荷できる量が平年より少なくなる。値段が動くのはそのあとです。
この雨の続き方そのものは、東京都心で34日連続雨になった秋雨前線と台風の仕組みの記事で整理しています。ここでは、その雨が畑から店頭の値札に届くまでの道筋に絞ります。
農林水産省の見通しで見る、10月のハクサイ
公表された見通しの中身
農林水産省は、2026年9月30日に「野菜の生育状況及び価格見通し(令和8年10月)」を公表しました。東京都中央卸売市場に出荷される野菜について、主産地や卸売会社から聞き取った結果で、平成23年から続けられている取り組みです。
この資料では、10月はハクサイとレタスなどの価格が平年を上回って推移する一方、ばれいしょとたまねぎの価格は平年を下回る見込みとされています。ハクサイについては、主産地の長野県産が9月の長雨と日照不足で生育不良や歩留まりの低下がみられ、10月の出荷数量は平年を下回り、価格は平年を上回る見込みと書かれています。
長野県産に集中している
同じ資料に、令和7年10月の東京都中央卸売市場への入荷シェアが載っています。ハクサイは長野が87%、茨城が7%でした。つまり10月の東京のハクサイは、ほぼ長野県産に頼っています。1つの産地が不調になると、ほかの産地で簡単には穴埋めできません。
「歩留まり」と「平年」の意味
歩留まりとは、育った野菜のうち、実際に出荷できる状態のものの割合のことです。畑に作物があっても、傷みや生育不良で出荷基準に届かないものが増えると、市場に並ぶ量は減ります。
「平年」は、この資料では直近5か年の平均を指します。平年を上回るという表現は、ここ5年の平均的な値段より高いという意味で、過去最高という意味ではありません。
最近、野菜の値段が高くて買う量や種類を変えましたか?
- 大きく変えた
- 少し変えた
- 変えていない
- あまり買わない
産地のリレーが遅れると、売り場に空白ができる
長野から茨城への切り替わり
野菜は、季節に合わせて主役の産地が入れ替わります。ウェザーニュースの10月の野菜予報で、八百屋の秋葉社長は、ハクサイは長野県産から次の茨城県産への切り替わりが遅れて流通量が減り、そこに秋の需要の高まりが重なって値上がり幅が大きくなる、と話しています。
農林水産省の資料でも、レタスは長野県産中心から茨城県産中心へ切り替わる時期ですが、長野県産・群馬県産が9月の長雨と日照不足で生育不良、茨城県産も日照不足で生育の遅れがみられるとされています。リレーの走者がそろってつまずいている形です。
水没した畑と、後ろ倒しになった作付け
同じ予報では、8月からの日照不足と9月の雨で生育が遅れ、水没した畑もあったと説明されています。キャベツも、今のメインの群馬県産が早く終わり、次の銚子や三浦の遅れで10月後半に上がるだろうとの見方でした。
千葉県松戸市の農園では、10月6日にホウレンソウの種を1カ月以上遅れでまいたと報じられています。畑が乾くのをずっと待っていた、とのことです。
少し減っただけで、なぜ値段は大きく動くのか
野菜は貯蔵がきかない
農畜産業振興機構(alic)は、野菜の価格が変動しやすい理由を、生育や収穫量が天候に左右されやすく、ほとんどの野菜は貯蔵性が低いためと説明しています。好天が続くと一時期に消費量を上回る出荷があって価格が大幅に下がり、逆に長雨や台風で出荷できず品薄になると価格が高騰する、という両方向の説明です。
お米のように倉庫に積んでおけるなら、足りない年に在庫を回せます。生鮮野菜は日持ちしないので、その調整がききません。足りない分は、そのまま値段に出ます。
鍋の季節で、食べたい量は増える
ハクサイは、これから鍋シーズンに向けて需要が増える野菜です。供給が減る時期に需要が増えると、値上がり幅は大きくなります。ウェザーニュースの予報でも、秋の需要の高まりが値上がりを後押しすると指摘されています。
私は自宅で土鍋を使うので、鍋の具材として真っ先に頭に浮かぶのがハクサイです。みんなが同じ時期に同じものを買いたくなる、というのは値段の面ではなかなか厳しい性質だと思います。
卸売市場での値決め
農林水産省の資料によると、国産青果物の約8割は卸売市場を経由します。市場では、出荷者から買い手への取引のうち、相対取引が92.7%、セリ・入札が7.3%です(2021年度、重量ベース)。セリや入札は買い手どうしが競って値段を決める方式で、相対取引は売り手と買い手が個別に値段と数量を決める方式です。
どちらの方式でも、入荷が少ない日は買い手が集めにくくなり、仕入れ値は上がりやすくなります。その仕入れ値の上昇が、店頭の1個1000円という表示に反映されていきます。
天気が戻っても、すぐには安くならない
種まきから収穫までに約3か月かかる
農畜産業振興機構は、野菜の生育期間は種まきから収穫まで約3か月程度だと説明しています。9月に植え付けが遅れた分は、収穫が11月以降にずれ込みます。雨が止んで青空が戻っても、畑の遅れは時間でしか取り戻せません。
見通しは「10月後半」までやや高め
農林水産省の見通しでは、キャベツやだいこんは、10月前半は平年並みでも、10月後半の出荷数量は平年を下回り、価格はやや平年を上回る見込みです。ほうれんそうやブロッコリーも、出荷数量は平年を下回り、価格はやや平年を上回るとされています。
ウェザーニュースの予報では、サツマイモとサトイモは雨で収穫できなかったため流通量が少なく、天気が回復しても、掘ってみないと状態が分からないと説明されています。先を読みにくい品目もあります。
デメリット・注意点:高いのは、買う側だけの問題ではない
豊作安と不作高のくり返し
農畜産業振興機構は、野菜農家がコスト割れするような安値になると、次の作付けに必要なお金がなくなって作付面積を減らしたり、他の作物に転換したりしてしまうと説明しています。その結果、豊作で価格が下がり、作付けが減り、翌年は品薄で価格が上がる、という流れが生まれます。
この動きは、お米の値段でも似た形で起きています。コメの値段はなぜ下がり続けるのかの記事でも、コスト割れと作付けの関係を扱っています。
価格が下がりすぎたときの補てん
農畜産業振興機構は、野菜生産出荷安定法に基づいて、卸売市場価格が一定の価格(保証基準額)を下回った場合に、生産者へ補てん金を交付しています。値段が下がりすぎたときのための仕組みです。
高値だと農家の収入も増える、とは限らない
値段が上がっても、出荷できる量が減っていれば、農家の収入が増えるとは限りません。歩留まりが落ちた畑では、手間をかけて育てた量のうち、売れる分が少なくなります。値段だけを見て、産地が潤っていると決めつけないほうがよさそうです。
今日からの買い方:判断のものさし
農林水産省の見通しで、値段の見通しを見分ける
農林水産省の資料では、10月の価格が平年並みとされる品目が複数あります。にんじんは主産地の生育が概ね順調で、出荷数量・価格は平年並みの見込みです。ねぎも同じく平年並みで、ばれいしょとたまねぎは平年を下回る見込みとされています。
鍋の具材を決めるとき、ハクサイが1個1000円を超えていれば、にんじんやねぎ、たまねぎのように見通しが落ち着いている野菜を増やす、という選び方ができます。見通しは毎月末に公表されるので、買い物の前に確認できます。
店頭の値段は「1個」に直して比べる
4分の1カットで258円と書いてあっても、1個にすると約4倍です。逆に、カット品は使い切れる量を買えるので、余らせて捨てるよりは割安になる場合もあります。1個に直した値段と、実際に使う量の両方で考えると、納得して選べます。
どんな人はどう考えるか
毎日の食材を買う家庭なら、見通しが高めの野菜は、買う量を減らすか、見通しが平年並みの野菜に切り替えるのが現実的です。飲食店や給食など、まとまった量を仕入れる側なら、同じ野菜が続けて高いことを前提に、メニューで使う野菜の組み合わせを見直すことになります。
よくある誤解
高いのは、お店が上乗せしているからでは?
報道に出た青果店の店主は、市場に物がなく入荷が少ないと話しています。値上がりの出発点は、産地の出荷数量の減少です。店ごとの値付けの違いはありますが、全体の水準を動かしているのは入荷量です。
雨が止めば、すぐに安くなる?
安くなりません。生育期間が約3か月かかるうえ、種まきが1カ月以上遅れた畑もあります。農林水産省も、キャベツなどは10月後半にかけて、価格がやや平年を上回る見込みとしています。
値上がりしているのはハクサイだけ?
違います。農林水産省の見通しでは、レタス、キャベツ、ほうれんそう、ブロッコリー、だいこんなど、複数の葉物・根菜で10月の出荷数量が平年を下回るとされています。店主は報道の中で、8〜9割の野菜が全面的に高くなっていると話しています。
まとめ:ハクサイが1個1000円を超える仕組みを、値札の前で思い出す
ハクサイが1個1000円を超えるのは、9月の長雨と日照不足で産地の生育が遅れ、歩留まりが落ちて、出荷数量が平年を下回るからです。野菜は貯蔵がきかず、鍋の需要も重なるので、足りない分がそのまま値段に表れます。
天気が戻っても、種まきから収穫まで約3か月かかるため、すぐには元に戻りません。農林水産省は10月後半にかけても、キャベツなどが平年よりやや高めと見ています。
買い物の前に、農林水産省の月末の見通しで、平年並みや下回る品目を確かめておくと、同じ予算でも選び方が変わります。私も今年は、ハクサイの代わりに別の具材を増やした鍋にしようかと考えています。最新の価格や見通しは、農林水産省や各自治体の公表で確認してください。
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- 誤解していた
📚 参考文献・出典
- ・農林水産省「野菜の生育状況及び価格見通し(令和8年10月)について」(令和8年9月30日) https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/engei/260930.html
- ・農林水産省「野菜をめぐる情勢」(卸売市場経由率・取引方法の割合) https://www.maff.go.jp/j/shokusan/kikaku/kakaku_keisei/attach/pdf/imdex-98.pdf
- ・農畜産業振興機構「野菜の価格とalic業務の役割」 https://alic.go.jp/koho/mng01_000219.html
- ・農畜産業振興機構「野菜の価格はどうして他の食べ物に比べて変動しやすいのですか」 https://alic.go.jp/koho/kikaku03_001260.html
- ・KSBニュース「野菜の高騰が続く…ハクサイは1個1000円超え」(2026年10月) https://news.ksb.co.jp/ann/article/16947947
- ・KSBニュース「キャベツ1玉539円など 岡山・香川で野菜が高騰」(2026年10月5日) https://news.ksb.co.jp/article/16940207
- ・ウェザーニュース「日照不足、雨続きが野菜に影響!? 10月の野菜予報」 https://weathernews.jp/news/202609/290281/
📖 この記事について 本記事は、食べ物や暮らしの“仕組み”を知る面白さをお届けするための読み物です。個別の健康・栄養・家計に関する判断を示すものではありません。2026年10月時点の公表資料にもとづいており、価格や出荷の見通しは日々変わります。最新の情報は農林水産省などの公表でご確認ください。










































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