気温4℃でも霜が降りるのはなぜ?放射冷却と霜柱の違いを仕組みから解説

霜は気温が0℃を下回った朝に降りるものだと、私は長いあいだ思っていました。天気予報の最低気温が4℃なら、霜とは関係のない朝だと考えていたのです。ところが福岡管区気象台の資料を読むと、気温が4℃くらいでも地面付近では0℃以下になって霜がおりる、と書かれていました。

この記事は、2026年10月時点で公開されている気象台の資料と、大学・学会の資料をもとに、霜と放射冷却の仕組みを整理したものです。気温計の数字と地面の温度がなぜずれるのか、霜と霜柱はどこが違うのか、家庭菜園で何を確認すればよいのかを順に書きます。

  • 霜は、空気中の水蒸気が地面や草、車などの表面で氷の結晶になったもの
  • 晴れて風が弱い夜は放射冷却が強まり、気温が3〜4℃でも霜がおりやすくなる
  • 霜柱は土の中の水が関わる別の現象で、成長の原因はまだ完全には説明されていない
  • 霜の見込みは、最低気温だけでなく、前夜の雲・風・場所で判断する
目次

霜は気温が0℃になる前に降り始めます

先に結論を書くと、霜がおりるかどうかを決めるのは、気温計の数字ではなく、物の表面の温度です。福岡管区気象台の「はれるんマガジン」(2020年11月26日号)は、霜を「空気中の水蒸気が車や草などの表面に氷の結晶となって付着する現象」と説明しています。氷の結晶がつくのは、あくまで物の表面が0℃以下になったときです。

気象台の資料にある「4℃でも霜」という説明

同じ資料には、一般に晴れて風が弱く、気温が3〜4℃まで下がると霜がおりやすくなる、と書かれています。さらに、天気予報などで使っている気温が4℃くらいでも、地面付近では0℃以下になって霜がおりることになる、とも説明しています。

ここで言う気温は、地面から離れた高さの空気の温度です。草の葉や地面、車の屋根は、そこよりずっと冷えている場合があります。気温が4℃で、地面付近が0℃以下。短い一文にすると当たり前のようですが、私はこの数字を見るまで、気温計の値が地面の温度とほぼ同じだと思い込んでいました。

気温の予報と霜の予想がずれる理由

ずれが出る理由は、夜の地面が空気から熱をもらって冷えるわけではなく、自分から熱を出して冷えるからです。この仕組みを放射冷却と呼びます。次の章から、何が起きているのかを順に追います。

放射冷却は、夜の地面が熱を空へ出して冷える現象です

霜におおわれた草の上の赤い落ち葉
Photo by Aaron Burden on Unsplash

放射冷却について、福岡管区気象台の資料は「物体が熱を出して(放射)冷える(冷却)こと」と説明しています。夜になって太陽からの熱をもらえなくなった地面や車、草などが冷えていき、その近くの空気も冷やされます。近くの空気が十分に冷えて0℃以下になると、水蒸気が細かい氷の結晶になって物の表面にくっつきます。これが霜です。

霜がおりるまでの流れ

日没後、太陽の熱が
届かなくなる
→
地面や草が熱を
空へ放射して冷える
→
表面が0℃以下になり
水蒸気が氷の結晶になる

地面が熱を出し続けるとはどういうことか

東北大学の近藤純正氏の資料によると、大気から下向きに来る長波放射と、地面から上向きに出る長波放射は、どちらも通常230〜500W/m2程度の大きさです。夜はこの二つの差し引きで、地面が熱を失うかどうかが決まります。同じ資料の計算例には、葉の上面で差し引き100W/m2を失う条件が使われています。

100W/m2は、1平方メートルあたり1秒に100ジュールの熱が出ていく速さです。1時間は3600秒なので、100×3600=360,000ジュール、つまり360キロジュールを1時間で空へ失う計算になります(近藤氏の計算条件を使った、この記事での換算です)。

この損失は、日が沈んでいるあいだ続きます。雲や風が熱を戻してくれなければ、朝までに表面の温度は大きく下がります。

雲は布団、風はかき混ぜ役

福岡管区気象台の資料は、上空に雲があると、布団をかけているときと同じように地面が冷えにくくなる、と説明しています。風が吹くと地面の近くで冷えた空気が周囲の空気と混じるため、冷え方が弱くなる、とも書いています。晴れて雲がなく、風が弱いという条件が揃うと、放射冷却の効果が十分に発揮されます。

マイナビ農業の記事も、放射冷却が特に強まるのは雲ひとつない星空のきれいな夜で、風がない日や湿度が低い日ほど強まる、と書いています。星がよく見える静かな夜は、翌朝の冷え込みの前ぶれでもあります。

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冷え込みが強まる条件は、雲・風・空気の乾き・場所です

放射冷却の強さは、その夜の条件で大きく変わります。ここまでに出てきた条件を表にまとめます。

条件 冷え込みが強まる側 弱まる側
雲 雲がない 雲がある(布団をかけた状態)
風 弱い、または無風 風が吹いて空気が混ざる
空気の乾き 乾燥している 湿っている
地形 盆地や谷底など、冷気がたまる場所 風通しのよい広い場所
※福岡管区気象台「はれるんマガジン」、近藤純正氏の資料、マイナビ農業の記事をもとに作成

秋の移動性高気圧が冷たく乾いた空気を運んでくる

福岡管区気象台の資料によると、秋は移動性高気圧と低気圧が交互に日本付近を通り、天気は周期的に変わります。秋の移動性高気圧はユーラシア大陸から冷たく乾いた空気を運んでくるので、清々しい天気になります。その一方で、夜間には気温が下がり、晩秋には霜がおりるようになります。高気圧の中心付近は、晴天と弱風の条件が満たされやすい場所です。

木枯らしを運ぶ冬型の気圧配置と違い、高気圧に覆われて風が弱い日に霜が出る、という点が印象に残りました。強い北風が吹く日は寒くても霜はつきにくく、風が止んだ静かな朝に真っ白になります。

盆地や谷底に冷たい空気がたまる

同じ資料は、盆地や谷底は冷気がたまりやすく、霜がおりやすい場所だとも書いています。近藤氏の資料では、盆地に風の弱い晴れた夜にできる安定した空気の層を「冷気湖」と呼び、冷気湖ができると下向きの長波放射が減って、盆地の底の放射冷却がより強くなる、と説明しています。

冷気湖の深さは、上空の風が弱いと盆地の深さと同じになり、風が少しあると浅くなり、強風だとできません。近藤氏が例に挙げた吾妻小富士の盆地では、最高峰の夜間の平均風速が2m/s未満の夜は冷気湖の深さが最大の70mに達し、5m/sを超える夜は冷気湖が生まれない、と計算されています。冷え込みの差を生むのは、気温の高低だけではなく、風の強さでもあります。

秋の冷え込みが強い朝には、葉の色が変わる仕組みも進みます。気温と紅葉の関係は、葉の緑が消えて赤が現れる紅葉の仕組みの記事で、色素の働きから説明しています。

草の葉や車の屋根は、地面よりさらに冷えやすいものです

草の葉に細かい氷の結晶がついた霜
Photo by ZeroQuattro Art on Unsplash

霜は、地面そのものより、草の葉や車のフロントガラス、家の屋根に目立ちます。福岡管区気象台の資料も、霜がつく例に車のフロントガラス、家の屋根、地面の草を挙げています。

地中からの熱が届かない葉は、冷え方が大きい

近藤氏の資料は、作物や樹木の葉の面には地中からの伝導熱がないので、夜間の冷却が大きくなる、と書いています。葉の周りの空気も、葉に冷やされます。

この冷えた空気の影響が及ぶ範囲では、地上の気温もより低くなります。「気温4℃で霜」は珍しい現象ではなく、葉や屋根の側から見れば自然な結果です。

日本一の低温も、晴れて乾いた雪の夜に生まれた

放射冷却がもっと極端に働くと、記録的な低温になります。近藤氏の資料には、1902年に北海道旭川で日本一の最低気温マイナス41℃、1945年に岩手県藪川で本州一の最低気温マイナス35℃を観測したのは、上空まで乾燥・寒冷な気団に覆われ、新雪が積もった晴天夜の放射冷却が大きい条件の日だった、とあります。

旭川(マイナス41℃)と藪川(マイナス35℃)の記録の差は、41−35=6℃です。

近藤氏は、地表層の熱容量と熱伝導度の積が小さいほど放射冷却は大きくなる、と整理しています。土が乾いているときや新雪のときは、晴れた夜に地面温度や地上気温が下がりやすいそうです。秋の霜と冬の極寒は、同じ仕組みで強さが違うだけだと読めます。

霜と霜柱は、できる場所も材料も別の現象です

霜と霜柱は、名前が似ているだけで、成り立ちが違います。私は新潟県の長岡で育ったので、冬の朝に霜柱を踏みながら歩いた記憶があります。当時は、霜が大きく育ったものが霜柱だと思っていました。

項目 霜 霜柱
水の出どころ 空気中の水蒸気 土の中の水分(水蒸気も関わる可能性がある)
できる場所 草、車、屋根、地面など表面 湿った土の地表面から立ち上がる
起点になる冷え込み 放射冷却で表面が0℃以下になる 地表が冷え、土の中の水が凍る
※福岡管区気象台の資料、東京大学の講義資料、日本地球惑星科学連合大会の発表要旨をもとに作成

霜柱には「根」がなく、未凍結の地表面から伸びる

日本地球惑星科学連合の大会で所沢高校地学部が発表した要旨では、一般に霜柱は毛細管現象で水を吸い上げ、その水が凍って成長するといわれている、と説明しています。畑の霜柱を裏返して撮影すると、湿った土が付いていて、根にあたるものはなく、凍っていない地表面から成長していることがわかりました。霜柱の頭には、凍った土の粒子が付いていたそうです。

東京大学の講義資料も、霜柱の上には土の粒が載っていること、2階建て・3階建ての霜柱があること、そして土の中の熱と水分の移動が重要であることを挙げています。霜が空気中の水蒸気から直接できるのに対して、霜柱は土の中の水の動きと切り離せません。

霜柱が伸びる原因は、まだ完全には説明されていません

おもしろいのは、ここから先です。所沢高校の実験では、湿った土の入った容器を冷凍庫で冷やして霜柱を再現しました。手前の半分を防水透湿シートで覆っても、覆った部分から霜柱が成長しました。このことから、霜柱への水分の供給は、水蒸気でも行われているようだと報告しています。

さらに、霜柱が伸びる瞬間の接写写真では、土の表面から飛びつくように成長していて、毛細管現象とは別の力が働いているようにも見えると書かれています。ただし、この現象は再現できておらず、原因はわかっていません。成長量も少なく不十分な点が多いので研究を続けたい、というのが発表の結びです。

身近な冬の景色なのに、教科書の説明だけでは足りない部分が残っています。この記事で「霜柱は毛細管現象でできる」と言い切らないのは、そのためです。

初霜の時期と、二十四節気の霜降

霜がいつ初めておりるかは、地域で大きく違います。福岡管区気象台の資料には、気象台の霜の観測は機械ではなく、職員が目で見て行っていると書かれています。2020年11月の資料は、前年の初霜を12月9日に観測したと伝えています。県内の山間部など、もっと寒い地域ではすでに霜が降りているはずで、気象台での観測がその地点の初霜の記録になる、とも説明しています。

観測が目視だと聞いて意外でした。霜は、地面の小さな草の上に薄くつくだけでも霜です。機械で測りにくいので、人の目で確かめる方法が残っているのでしょう。同じように人の目で行われてきた観測が機械の解析に切り替わった例を、旭岳の初冠雪が解析積雪深で決まるようになった理由の記事で書いています。

霜降は10月23日ごろ

暦には、霜が降り始める季節を表す二十四節気の「霜降」があります。神戸市の気象トピックスのページは、霜降を10月23日ごろと書いています。同じ年でも、暦の霜降と実際の初霜の日は一致しません。

福岡の前年の初霜(12月9日)は、霜降(10月23日ごろ)から数えて、10月の残り8日、11月の30日、12月の9日を足した47日後です。

暦では10月下旬でも、平地の初霜が降りるのは、地域によってその1か月以上あとになる場合があります。暦より、前夜の天気のほうが当てになります。

家庭菜園や農家は、霜にどう備えるのか

霜は、冷え込みの強い朝に野菜や果樹を傷めることがあります。福岡管区気象台の資料は、秋の早霜は春の晩霜とともに農作物に被害をもたらす、と書いています。

気象台が挙げる3つの霜害対策

資料に挙げられている霜害の予防は、次の3つです。

  • 火を焚いて煙霧をつくり、放射冷却を弱める
  • 防霜ファンで風を起こして、冷気が滞留するのを防ぐ
  • 散水して、農作物の温度が0℃より下がるのを防ぐ

三つとも、ここまでの仕組みの裏返しです。煙は雲の代わりに熱が逃げるのを抑え、ファンは風の代わりに空気をかき混ぜ、散水は水が凍るときに熱を出す性質を使います。散水の仕組みの説明は資料にはなく、私の補足です。

気象台が発表する霜注意報は、主に秋の早霜と春の晩霜に対する、農業関係者向けの注意報だと資料は説明しています。

家庭菜園では、不織布をかけた例があります

マイナビ農業の記事には、不織布を使った霜よけの例が出ています。3月下旬に植え付けた早い作型のズッキーニで、不織布を二重にかけたウネは氷点下3度の寒い朝に数日耐えました。何もかけていないほうは、一夜にして葉がダメージを受けて枯れた、と書かれています。

これは筆者の畑の1回の経験で、他の作物や地域で同じ結果になるとは限りません。それでも、覆いが「雲の代わり」として働くという考え方は、気象台の説明と合っています。星がきれいで風のない夜の翌朝は危険だ、という目安も、記事の中で示されています。

注意点:最低気温の数字だけでは、霜を見逃します

ここまでの内容から、霜の見込みを最低気温の予報だけで判断すると、見逃すことがあります。

気温の予報は「地面の温度」ではない

予報の最低気温は、地面から離れた高さの空気の温度です。草の葉や屋根は、それより冷えている場合があります。気象台の資料でも、3〜4℃で霜がおりやすくなる、と書かれています。0℃まで下がらなくても、条件が揃えば霜になります。

同じ町内でも場所で差が出る

盆地や谷底、風の通らない低い場所は、冷気がたまりやすくなります。広くて風通しのよい場所とは、同じ夜でも冷え方が違います。庭の中でも、低い場所と高い場所で霜の出方が違うことがあるのは、この理由です。

この記事の仕組みでは説明できないこと

この記事は、霜が出る一般的な条件を整理したものです。個々の夜に、どの地点でどれだけ冷えるかは、記事の内容だけでは分かりません。作物を守る必要がある場合は、お住まいの地域の気象台が出す霜注意報や気象情報を確認してください。

霜が降りそうな朝かどうかの判断のしかた

ここまでの条件を、夕方に確認できる形にしました。農業関係者でなくても、車の霜取りや洗濯物、ベランダの鉢植えの準備に使えます。

確認すること 霜が出やすい状態
夜の天気 晴れて雲がない(高気圧に覆われる)
風 弱い、またはほとんどない
最低気温の予報 3〜4℃前後まで下がる
場所 盆地、谷底、低くて風が通らない場所
空気 乾燥している
※福岡管区気象台、近藤純正氏、マイナビ農業の資料にある条件を整理したもので、霜を保証する基準ではありません

最初に見るのは、前夜の雲と風

五つのうち、前日の夕方にいちばん確かめやすいのは、夜の天気と風です。晴れて風が弱いと予報されている夜は、最低気温が4℃でも、鉢植えや屋外の苗には気をつけたほうがよいと私は考えています。ただし、どの程度の冷え込みで被害が出るかは作物によって違い、資料では確かめられていません。育てている作物ごとに、栽培の手引きや地域の営農情報を確認してください。

覆いをかける、場所を移すという選択

鉢植えなら、夜のあいだ軒下や室内に移すだけで、空が直接見えない状態にできます。畑では、不織布で覆う方法が先ほどの例のように試されています。上空の雲に近い役割を人工的に作る、という発想が共通しています。

よくある誤解

気温が0℃以下にならなければ、霜は降りませんか?

降ります。福岡管区気象台の資料によると、気温が4℃くらいでも、地面付近では0℃以下になって霜がおりることがあります。霜がつくかどうかは、物の表面の温度で決まります。

霜と霜柱は、同じものですか?

同じではありません。霜は空気中の水蒸気が表面で氷の結晶になったものです。霜柱は、湿った土の地表面から立ち上がり、土の中の水分や熱の動きが関わります。成長の仕組みには、まだ説明のついていない部分があります。

風があるほうが、霜はつきやすいのでしょうか?

逆です。風が吹くと、地面近くで冷えた空気が周りの空気と混ざり、冷え方が弱くなります。防霜ファンも、風を起こして冷気がたまらないようにする道具です。霜が出やすいのは、晴れて風の弱い夜です。

まとめ:霜は「気温」ではなく「夜の空」で考える

霜がおりるかどうかは、気温計の数字ではなく、地面や草、車の表面の温度で決まります。放射冷却で表面が0℃以下まで冷えると、水蒸気が氷の結晶になって霜になります。福岡管区気象台の資料は、気温が4℃くらいでも地面付近では0℃以下になって霜がおりる、と説明しています。

冷え込みが強まる条件は、雲がなく、風が弱く、空気が乾いていることです。盆地や谷底のように冷気がたまる場所では、さらに冷えます。霜柱は、霜とは別に土の中の水が関わる現象で、成長の原因は完全には説明されていません。

判断の材料は、前夜の雲と風、最低気温の予報、場所の三つです。作物を育てている場合は、地域の気象台が出す霜注意報や気象情報を確認してください。最新の観測や予報は、気象庁や地元の気象台の発表で確かめてください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。