高校無償化で私立の授業料は45万7200円までになる理由|所得制限なしの就学支援金の仕組み

高校の授業料が無償になったと聞いて、私は最初、私立に通ってもお金がかからなくなったのだと受け取っていました。文部科学省の資料を開くと、国が出すのは授業料の上限額で、私立は年45万7200円までです。入学金や通学費、修学旅行費は、この金額に入っていません。

この記事は、2026年10月時点で文部科学省が公表している令和8年度(2026年度)の資料をもとに、高等学校等就学支援金の新制度の金額、お金の流れ、授業料以外に残る負担を整理したものです。志望校を選ぶ高校生と保護者が、入学前に何を確認すればよいかまで書きました。

  • 新制度では世帯の年収に関わらず、公立は年11万8800円、私立は年45万7200円が上限
  • お金は家庭ではなく、学校が代わりに受け取って授業料に充てる
  • 支給の対象は授業料だけで、入学金や通学費などは自己負担のまま
  • 授業料以外の費用には、低所得世帯向けの高校生等奨学給付金がある
目次

高校無償化は授業料の上限額を学校へ支給する制度です

いわゆる高校無償化の中身は、高等学校等就学支援金という制度の拡充です。文部科学省の資料では、高校生等の授業料に充てるための支援金を、年収に関わらず高校等に通う日本人等の生徒を対象に支給する、と書かれています。令和7年10月29日と令和7年12月18日の三党合意に基づき、令和8年度から新制度になりました。

授業料が支援されるまでのお金の流れ

家庭が
学校に申請する
→
実施主体の
都道府県が支給する
→
学校が
代理受領する
→
授業料に
充てる

公立は年11万8800円、私立は年45万7200円が上限

新制度の支給上限額は、公立高校が11万8800円、私立高校が45万7200円です。国立高校は実質無償と資料に書かれています。私立でも通信制課程に通う場合の上限は33万7200円です。

世帯の年収による線引きがなくなった

新制度は所得制限がありません。文部科学省のリーフレットにも「所得制限が撤廃され、多くの方が授業料の支援を受けることができるようになりました」と書かれています。「多くの方」とあるのは、日本国籍などの要件があるためで、この点は後半で触れます。

2026年度の新制度は旧制度と何が違うのか

旧制度は、世帯の年収によって私立高校の上限額が変わる仕組みでした。文部科学省の資料に残っている旧制度の例では、私立高校で年収590万円未満の世帯は39万6000円、年収910万円以上の世帯は11万8800円です。新制度ではこの差がなくなり、私立は一律45万7200円になりました。

世帯の年収 旧制度の私立高校の上限額 新制度の私立高校の上限額
590万円未満 39万6000円 45万7200円
910万円以上 11万8800円 45万7200円
※出典:文部科学省「高等学校等就学支援金」令和8年度予算の資料。旧制度は新制度の対象外となる在校生向けの経過措置の例

年収910万円以上の世帯でも対象になる

旧制度の例を見ると、年収910万円以上の私立高校の上限額は、公立高校と同じ11万8800円でした。新制度ではその世帯も45万7200円までが対象です。私立に通う家庭にとっては、世帯の年収によって上限額が変わる場面がなくなったことが、いちばん大きな変更点です。

通信制や定時制の上限額は別に決まっている

通信制や定時制には、全日制と別の上限額の表があります。私立の通信制は月2万8100円で、年額にすると33万7200円です。通信制の仕組みは、通信制高校の仕組みでも取り上げています。

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上限額はどう決まっているのか

45万7200円という中途半端な数字が、どこから来たのかが気になって調べました。資料には「私立高校の平均授業料を勘案した水準」と書かれています。公立の11万8800円は、公立高校の授業料の額です。

月額にすると公立9900円・私立3万8100円

資料の支給限度額の表には、全日制の定額授業料の場合、公立は月9900円、私立は月3万8100円と書かれています。支給期間は資料の表で「36 月」と書かれていて、3年間分です。

区分 月額の上限 12か月分(計算) 資料の年額
公立(全日制) 9900円 9900×12=118800円 11万8800円
私立(全日制) 3万8100円 38100×12=457200円 45万7200円

月額に12をかけると、資料の年額とぴったり一致します。上限額は年額で決まっているのではなく、月額の積み上げです。

私立の上限は公立の何倍に当たるのか

45万7200円を11万8800円で割ると、約3.85倍です。私立の上限は、公立の上限の4倍近くに設定されていることになります。

ここで私は、上限額を「私立の授業料の相場」だと思い込んでいました。資料が示しているのは、あくまで平均を勘案した水準です。平均より高い授業料の学校では、差額が家庭の負担になります。

お金は家庭を通らず学校が受け取る

就学支援金は、家庭の口座に振り込まれるわけではありません。資料には「設置者が代理受領」と書かれています。学校の設置者が家庭に代わって受け取り、授業料にあてる形です。授業料が上限の範囲内であれば、家庭は授業料を払わずに済みます。

申請しないと支給は始まらない

文部科学省のリーフレットには、「申請手続きが必要です。支援を希望される方は、学校からの案内に従って、申請手続きを行ってください」とあります。所得制限がなくなっても、自動では始まりません。入学後に学校から届く案内を見落とさないことが大切です。

国が4分の3、都道府県が4分の1を負担する

費用の負担は、公立・私立の高校等では国が4分の3、都道府県が4分の1です。これまでは全額が国の負担(10/10)でした。資料には、国と地方の役割分担を踏まえて、都道府県の負担を新しく入れたと書かれています。国立高校は国が全額(10/10)を負担します。

私立高校で上限の45万7200円が支給されるとして、4分の3は34万2900円、4分の1は11万4300円です(457200×3/4と457200×1/4で計算)。

授業料以外の費用は無償化の対象外です

授業料以外の費用は無償化の対象外
Photo by Kyle Gregory Devaras on Unsplash

対象になるのは授業料だけです。入学金、施設整備費、教材費、通学費、修学旅行費は、制度の対象に入っていません。私立高校で授業料以外にどれだけの費用がかかっているのか、文部科学省の令和5年度子供の学習費調査で確かめました。

私立高校の学校教育費の内訳

令和5年度の調査では、私立高校(全日制)の学校教育費は1年間で83万2650円でした。そのうち授業料は27万9170円で、構成比は33.5%です。

費目 公立高校(全日制) 私立高校(全日制)
入学金等 18,027円 80,290円
授業料 45,272円 279,170円
修学旅行費等 36,500円 62,778円
学校納付金等 35,630円 127,346円
図書・学用品・実習材料費等 62,284円 73,312円
教科外活動費 49,499円 63,440円
通学関係費 97,634円 136,790円
その他 6,677円 9,524円
学校教育費の合計 351,523円 832,650円
※出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(1年間・子供1人当たり)

私立高校の授業料以外の学校教育費は、832650−279170=553480円です。授業料の約2倍、年に55万円ほどが、無償化の対象外の費用として残っています。

公立と比べると何が違うのか

公立高校の授業料以外は、351523−45272=306251円です。公立でも授業料以外に年30万円ほどかかっていて、私立との差は約25万円(553480−306251=247229円)です。

調査の授業料の欄は保護者が実際に支出した額で、就学支援金を差し引いた後の額かどうかは、公表資料から読み取れませんでした。そのため、この調査の授業料と45万7200円の上限額は、直接比べていません。比べられるのは、授業料以外の費用がかなり残るという点までです。

授業料以外の費用を支える高校生等奨学給付金

授業料以外の費用には、別の制度があります。高校生等奨学給付金は、教科書費や教材費など授業料以外の教育費を支援する、返還不要の給付金です。授業料を支援する就学支援金とは別々に申し込む必要があります。

令和8年度から対象世帯が広がった

対象は、生活保護世帯と住民税非課税世帯に加えて、令和8年度から年収270万円以上380万円未満の世帯、年収380万円以上490万円未満の世帯が加わりました。この年収は、両親のどちらか一方が働き、高校生1人(16歳以上)と中学生1人の4人世帯の目安です。家計が急変して対象になる場合も、給付を受けられます。

世帯(全日制等) 国公立 私立
住民税非課税世帯(年収270万円未満) 14万3700円 15万2000円
年収270〜380万円の世帯 4万7900円 5万670円
年収380〜490万円の世帯 3万5930円 3万8000円
※出典:文部科学省「高校生等奨学給付金」リーフレット(令和8年度の年額)

給付額で足りる部分と足りない部分

私立の非課税世帯に給付される15万2000円は、先ほどの授業料以外の費用55万3480円の約27%です(152000÷553480で計算。費用は全世帯の平均なので、目安です)。

授業料の自己負担がなくなっても、授業料以外の費用が残る事実は変わりません。入学前の見積もりでは、授業料以外の項目を別に数えておく必要があります。

国の予算規模と、3年間で支給される上限額

国の予算規模と3年間で支給される上限額
Photo by Aaron Lefler on Unsplash

令和8年度の予算額は5824億円で、前年度は4074億円でした。

差し引きは1750億円の増加で、5824÷4074により、前年度の約1.43倍です。

この数字を見て、私は桁を数え直しました。予算額が1年で1750億円増えています。

資料の内訳では、就学支援金の交付金が5800億円、事務費の交付金が24億円です。

3年間で支給される上限額

全日制の支給期間は、資料の表で「36 月」と書かれています。

私立なら38100×36=137万1600円、公立なら9900×36=35万6400円が、3年間の上限の合計です。上限いっぱいの授業料の学校に3年間通った場合の最大額で、実際の支給額は学校の授業料で決まります。

無償化の注意点:自己負担が残る場面

制度の名前は無償化でも、家庭の負担がなくならない場面があります。確認しておきたいのは次の3つです。

授業料が上限を超える私立高校

支給されるのは上限額までです。学校の授業料が年45万7200円を超える場合、超えた分は家庭が払います。上限は平均を勘案した水準なので、平均より授業料が高い学校では差額が出ます。

対象にならない生徒がいる

新制度の対象者は、日本国内に住所があり、日本国籍の人、特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、将来永住する意思があると認められた定住者、家族滞在の一部の人のいずれかに当たる生徒です。リーフレットには「一部対象外となる場合もあります」とあります。新制度の対象外になる新入生(留学生を除く)には予算補助、在校生には経過措置が用意されています。

制度は3年以内に検証される

新しい制度については、法施行後3年以内の期間に十分な検証を行い、必要な見直しを実施する、と資料に書かれています。上限額や対象が将来変わる可能性があるので、入学の時点で最新の資料を確認してください。

志望校を選ぶときの費用の判断基準

ここまでの内容を、志望校を決める場面に当てはめます。判断の軸は、学校の授業料が上限額に収まるかどうかと、授業料以外の費用がいくらかかるかの2つです。

確認する項目 見る場所 判断のしかた
年間の授業料 募集要項・学費表 上限(私立は年45万7200円)と比べる
入学金・施設設備費 募集要項・学費表 制度の対象外なので全額を見込む
教材費・制服・通学費 学校説明会・学校案内 奨学給付金の対象になるか確認する
国籍・在留資格の要件 文部科学省の資料 対象になるか、学校か都道府県に確認する

学校の学費表で見る項目

学費表では、授業料の行だけを見ないようにします。入学金や施設整備費のように、授業料とは別の名目の費用が並んでいます。こうした費用は、就学支援金では支払えません。

迷ったときの相談先

就学支援金や奨学給付金の細かい条件は、お住まいの都道府県または学校に問い合わせるよう、文部科学省の資料に書かれています。高校卒業後の大学の学費を考える場合は、国公立大学と私立大学の違いや、奨学金返済の仕組みも参考になります。

高校無償化のよくある誤解

私立でも学費がすべてゼロになりますか

なりません。支給されるのは授業料の上限額までで、私立は年45万7200円です。入学金や通学費、修学旅行費は対象外です。

手続きをしなくても自動で支給されますか

自動では支給されません。文部科学省のリーフレットには、申請手続きが必要で、学校からの案内に従って手続きをするよう書かれています。

年収が高い世帯は対象外のままですか

新制度では所得制限がありません。年収に関わらず、日本国籍などの要件を満たす生徒が対象です。

まとめ:高校無償化の仕組みと確認すること

高校無償化は、授業料の上限額を、都道府県を通じて学校が代理受領する制度です。令和8年度の新制度では所得制限がなくなり、上限は公立が年11万8800円、私立が年45万7200円になりました。月額は公立9900円、私立3万8100円で、3年間分が支給されます。

家庭の負担が残るのは、授業料が上限を超える部分と、入学金、通学費などの授業料以外の費用です。令和5年度の調査では、私立高校の学校教育費は年83万2650円で、授業料は3分の1でした。授業料以外の費用には、令和8年度から対象が広がった高校生等奨学給付金があります。

志望校を決める前に、学費表で授業料と授業料以外の費用を分けて数え、就学支援金の申請の案内に従ってください。金額や対象は今後見直される可能性があるため、最新の情報は文部科学省と学校、都道府県の窓口で確認してください。

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📚 参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は、制度の仕組みを知るための一般的な解説です。支給の可否や金額は、世帯の状況、学校、都道府県によって変わります。重要な判断は、文部科学省や在籍(志望)する学校、都道府県の窓口で確認してください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。