「原神」運営元がFTCと和解、31億円の制裁金と未成年ガチャ規制─射幸性で未成年を煽る構造は合法か?🎰

未成年への課金誘導が規制対象に──ゲーム業界の「暗黙の常識」が
崩れた日

世界中で人気を集めるアクションRPG『原神』が、米連邦取引委員会(FTC)からの調査によって、課金ガチャの不当表示および13歳未満の個人情報収集違反により約31億円(2000万ドル)の制裁金支払いを命じられた。

未成年への課金誘導が規制対象に──ゲーム業界の「暗黙の常識」が
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特に注目されたのは、未成年プレイヤーが対象の「ガチャ(loot box)」への導入方法が、射幸性をあおり、不透明な課金構造で支出を誘導するシステムになっていたこと。このケースは、単に「表示の問題」や「保護者の同意の有無」といった法的論点に留まらず、ゲームデザインの倫理性そのものに斬り込む判例として、今後の業界全体に波紋を広げる可能性が高い。


原神のガチャ構造:誰が見ても“わかりにくい”課金フロー

原神のガチャ構造:誰が見ても“わかりにくい”課金フロー
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表面的には「基本プレイ無料」と謳われている『原神』だが、実際にレアなキャラクターや武器を入手するには、いわゆる「祈願」=ガチャを何度も回す必要がある。

ただし、ここに用いられるのは単一の通貨ではない。ユーザーはまず、有償通貨「結晶凝結」で「原石」を購入し、次にその原石を「出会いの縁」「紡がれた運命」といったチケットに交換してようやくガチャが引ける。

この三層構造の通貨設計は、価格の実感を曖昧にするための意図的な“ワンクッション”と捉えられており、実際にFTCもこの構造を「金銭価値の不透明化による心理的ハードルの低下」と明確に非難している。


射幸性の正体:なぜ人は「あと10回」で出る気がするのか

射幸性の正体:なぜ人は「あと10回」で出る気がするのか
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さらに根深い問題は、“当たるかもしれない”という期待値に人間が極めて弱いという点だ。

ガチャには「天井システム」と呼ばれるものが存在するが、90回目でようやく確定する場合でも、それまでに必要な原石数は約14,400個──有償換算でおよそ2万〜3万円に達する。

しかし、これがユーザーに「確定までの投資」として冷静に受け止められることは少なく、むしろ「今のうちに出るかもしれない」「天井直前だし、ここまで来たら…」といった”サンクコスト効果“と“インターミッテント報酬”の心理に強く支配される。

これは一部の心理学者が「電子ギャンブルマシンのデザインと酷似している」と警鐘を鳴らす領域であり、今回のFTCによる判断は、その科学的根拠に基づいた極めて妥当な介入といえる。


「今しか手に入らない」──期間限定という名の圧力

「今しか手に入らない」──期間限定という名の圧力
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原神のガチャはさらに複雑で、排出されるキャラ・武器が期間限定に設定されている。
この期間を過ぎると、同じキャラは“二度と手に入らない”可能性もある。

この設計は、プレイヤーに強烈なFOMO(Fear Of Missing Out=取り残される恐怖)を与える。
特にSNSやYouTubeで「神引き」や「●●当てるまで回す」などの動画が流行している今、未成年ユーザーは社会的トレンドや仲間内の評価という形で同調圧力型の課金を強いられている側面がある。

こうした現象は、日本の「パチンコ依存」と非常に類似しており、無自覚に金銭感覚を失わせる結果を招いていると指摘されている。


FTCが突きつけた6つの義務──“設計そのもの”の見直しを迫られる

今回のFTCの和解内容は、単に「表示を変えろ」というものではない。ゲーム構造の根幹に関わる以下のような6項目が義務化された:

  1. 16歳未満の課金には、保護者の明確な同意が必須
  2. 仮想通貨でのみ課金を行う仕組みを禁止(=リアルマネー価格の明確化)
  3. 排出率、価格、ガチャ内容の虚偽表示を禁止
  4. 通貨構造と確率の透明性を確保し、ゲーム内に表示
  5. 13歳未満のユーザーの個人情報は削除、以後収集禁止
  6. COPPA(児童オンラインプライバシー保護法)の完全遵守

これらの措置は、単なる米国内での規制にとどまらず、世界的な“ゲームデザインの基準変更”を促す契機となる。


“エンタメ”の皮をかぶった心理的な搾取構造

“エンタメ”の皮をかぶった心理的な搾取構造
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かつて「課金は任意」とされていたスマホゲームは、今やゲーム構造そのものが課金前提の設計に変質している。

とくに若年層をターゲットとしたゲームにおいて、金銭感覚の形成途上にあるユーザーをいかにして支出させるかという“アルゴリズム的搾取”が蔓延している。

これを「エンタメだから許される」と放置すれば、やがて問題は依存症や家族の破産といったレベルにまで発展する。今回のFTCの対応は、そうした流れに対する初めての本格的な歯止めである。


結論:今、ゲームは“射幸性”のあり方を見直す時にきている

結論:今、ゲームは“射幸性”のあり方を見直す時にきている
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今回の原神事件は、単なる企業処罰ではない。
それは「現代のゲームはどこまでプレイヤーの心理を設計してよいのか?」という、極めて本質的な問いを突きつけている。

プレイヤーはただ遊んでいるだけだ。しかし、画面の裏では心理学と経済設計が高度に組み合わされた“収益エンジン”が回っている

そのことに我々が無自覚なままで良いのだろうか。

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