生命保険料控除が2026年・2027年だけ2万円増える理由|23歳未満の扶養がある世帯の仕組みを解説

生命保険に入っている人なら、年末調整の書類で「生命保険料控除」という欄を毎年目にしているはずです。この控除の上限が、2026年分と2027年分の所得税だけ、一部の世帯で4万円から6万円に増えます。対象になるのは、23歳未満の扶養親族がいる人だけです。

結論を先に言うと、控除額が2万円増えるからといって、税金がそのまま2万円安くなるわけではありません。安くなるのは、その2万円に自分の所得税率をかけた分だけです。元IT広報の私は、恥ずかしながら「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」という3つの区分と、「新制度」「旧制度」という区分を、この記事を書くまで正確に説明できませんでした。仕組みを整理していきます。

生命保険料控除の上限が、2026年と2027年だけ6万円になります

生命保険料控除の上限が、2026年と2027年だけ6万円になります
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財務省が公表した令和7年度税制改正の大綱によると、23歳未満の扶養親族を有する居住者は、令和8年分(2026年分)の所得税において、新生命保険料に係る一般生命保険料控除の適用限度額が、現行の4万円から6万円に引き上げられます。ここでいう「新生命保険料」とは、2012年1月1日以降に契約した生命保険の保険料のことです。2011年12月31日以前からの契約(旧制度)しかない人は、今回の見直しの対象になりません。

年末調整の手続きそのものは変わりません。源泉徴収で先に払いすぎている税金を、年末に精算する仕組みは年末調整の仕組みのとおりで、生命保険料控除はその精算の中で使う控除の1つです。今回変わるのは、その控除の枠の大きさだけです。

なぜ2026年と2027年の2年間だけなのか

この特例は、もともと令和7年度税制改正の大綱(2024年12月に決定)で、令和8年分の所得税に限って設けられたものでした。1年限りの時限措置だったところ、令和8年度税制改正の大綱(2025年12月26日に閣議決定)で、適用期限が1年延長され、令和9年分(2027年分)まで使えることになっています。財務省の大綱原文には「年齢23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例の適用期限を1年延長する」と明記されています。

期限が区切られているのは、この特例が「子育て支援に関する政策税制」という枠組みで設けられているためです。同じ大綱の中で、児童手当の支給対象拡大や高校無償化の所得制限撤廃と並んで、子育て世帯向けの税制として扱われています。恒久的な制度に組み込むかどうかは、今後の税制改正で改めて議論される見込みです。生命保険の仕組みそのもの(保険料が決まる仕組みや保障の考え方)は、この特例とは別の話として変わっていません。

年末調整の保険料控除申告書、金額まで毎回きちんと確認していますか?

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新生命保険料の年間支払額ごとの控除額

実際の控除額は、年間に支払った新生命保険料の金額によって、次の式で決まります。財務省の税制改正大綱に載っている、2026・2027年分の特例の計算式です。

年間の新生命保険料 控除される金額
30,000円以下 支払った保険料の全額
30,000円超60,000円以下 保険料×1/2+15,000円
60,000円超120,000円以下 保険料×1/4+30,000円
120,000円超 一律60,000円
出典:財務省「令和7年度税制改正の大綱」

上限に近づくと増える金額の伸びは緩やかになります

表を見ると分かるとおり、年間保険料が30,000円を超えたあたりから、控除額の増え方は緩やかになっていきます。120,000円を超えた分は、いくら多く払っても控除額は一律60,000円で頭打ちです。保険料をたくさん払うほど得になる仕組みではありません。

現行の4万円の式と比べると区切りが引き上げられています

現行(上限4万円)の一般生命保険料控除は、20,000円以下は全額、20,000円超40,000円以下は保険料×1/2+10,000円、40,000円超80,000円以下は保険料×1/4+20,000円、80,000円超は一律40,000円という式です。今回の特例では、区切りの金額が20,000円→30,000円、40,000円→60,000円、80,000円→120,000円、上限額が40,000円→60,000円へと、それぞれ引き上げられています。

自分で計算してみると、区切りの金額も上限額も、どれも現行の1.5倍になっていました(30,000÷20,000=1.5、60,000÷40,000=1.5、120,000÷80,000=1.5、60,000÷40,000=1.5)。

控除が2万円増えると、税金はいくら安くなるのか

6万円という数字を見て、私は最初、控除が2万円増えるのだから税金も2万円くらい安くなるのだろうと思っていました。ところが所得控除は、税額そのものを減らすのではなく、課税される所得を減らす仕組みです。実際に安くなるのは、増えた2万円に自分の所得税率をかけた分だけです。

国税庁の「所得税の速算表」によれば、所得税の税率は課税される所得金額に応じて5%から45%までの7段階に分かれています。仮に控除額の上限まで使い切っている人が、この特例で控除を2万円増やせたとすると、安くなる所得税額は次のようになります。

試算:控除差額20,000円×所得税率で計算した目安(復興特別所得税は含みません)
所得税率 計算式 安くなる所得税
5% 20,000円×5% 1,000円
20% 20,000円×20% 4,000円
33% 20,000円×33% 6,600円

計算してみると、拍子抜けするほど小さい金額でした。控除の上限まで使い切っていない人は、増える控除額もこれより小さくなります。「上限が6万円になる」という見出しだけを見ると大きな変化に感じますが、家計への影響としては年に数千円程度、というのが実際のところです。

住民税の生命保険料控除は変わりません

もう一つ見落とされがちな点があります。今回の特例は所得税だけが対象で、個人住民税の生命保険料控除は変わりません。マネックス証券の解説記事でも、この上乗せ措置は「所得税のみ」の見直しだと明記されています。住民税の一般生命保険料控除は、これまでどおり上限2.8万円のままです。

控除の種類 所得税(2026・2027年分) 住民税
一般生命保険料 4万円→6万円 2.8万円(変更なし)
介護医療保険料 4万円(変更なし) 2.8万円(変更なし)
個人年金保険料 4万円(変更なし) 2.8万円(変更なし)
合計の上限 12万円(変更なし) 7万円(変更なし)
出典:オリックス生命保険、ライフィの解説をもとに作成

一般生命保険料の上限が6万円に増えても、介護医療保険料と個人年金保険料を含めた所得税の合計上限は12万円のまま変わりません。3つの保険料をそれぞれ上限まで使っている人にとっては、一般分が増えた分だけ他の枠を圧迫することもある、という点は覚えておいた方がよさそうです。

対象になるのは誰か

対象になるのは誰か
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財務省の大綱の文言は「年齢23歳未満の扶養親族を有する居住者」です。自分の子どもに限らず、23歳未満で自分が扶養している親族であれば対象になります。年齢は12月31日時点で判定されます。

扶養控除の年齢区分とは基準が違います

扶養控除の仕組みでは、控除額が変わる年齢の区切りは16歳や19歳ですが、今回の生命保険料控除の特例は「23歳未満」というひとつの基準しかありません。扶養控除の年齢区分と生命保険料控除の年齢区分は、目的も基準も別のものとして覚えておく必要があります。

共働きなら扶養に入れている側で判定します

夫婦共働きで、どちらかの税法上の扶養に子どもを入れている場合、生命保険料控除の特例が使えるのは、その子どもを扶養に入れている側です。扶養控除の申告先を変えると、この特例が使えるかどうかも一緒に変わることになります。

年末調整・確定申告での手続き方法

年末調整・確定申告での手続き方法
Photo by Towfiqu barbhuiya on Unsplash

国税庁は2026年6月、この特例に対応した新しい様式を公表しました。「生命保険料控除」欄に、23歳未満の扶養親族を有する場合の特例に対応した記載欄が追加されています。会社員は、この新しい保険料控除申告書に記入して提出することになります。

控除証明書の「一般」の金額をまず確認します

私も正直なところ、家計簿アプリを入れていても固定費しかまともに見ていない側の人間なので、控除証明書の見方は毎年少しあやふやでした。まず確認すべきは、保険会社から届く控除証明書に書かれている「一般の生命保険料」の年間払込額です。介護医療保険料や個人年金保険料の欄は今回の特例と関係がないので、混同しないようにする必要があります。

確定申告なら国税庁の作成コーナーが自動計算します

会社員以外で確定申告をする人は、国税庁の確定申告書等作成コーナーに控除証明書の金額を入力すれば、23歳未満の扶養親族の有無を選ぶだけで、控除額は自動的に計算されます。手計算で表の式に当てはめる必要はありません。

見落としやすい注意点

いくつか誤解しやすい点、注意しておきたい点を整理します。

  • 対象になるのは「新制度」(2012年1月1日以降契約)の一般生命保険料だけで、2011年12月31日以前からの「旧制度」の契約しかない人は対象外です。
  • 介護医療保険料と個人年金保険料には、今回の引き上げは適用されません。それぞれ従来どおり上限4万円のままです。
  • 所得税の合計適用限度額は12万円のまま変わらないため、他の保険料控除を上限まで使っている人は、一般分の増加ぶんがそのまま丸ごと効くとは限りません。
  • 住民税の生命保険料控除は変わらないため、所得税だけが対象という点を忘れると、思ったより効果が小さく感じることがあります。
  • そもそも所得税をほとんど払っていない人(パート収入が少ない人など)は、控除の枠が増えても差し引く税額自体が少ないため、恩恵はわずかです。

自分が対象になるか、判断のしかた

ここまでの内容を、自分に当てはまるかどうかで整理すると次のようになります。

23歳未満の扶養親族がいて新生命保険料を払っている人

2012年以降に契約した生命保険に加入していて、23歳未満の子どもや親族を税法上扶養している人は、2026年分・2027年分の年末調整または確定申告で、この特例の対象になります。年間の新生命保険料が30,000円を超えていれば、現行より控除額が増えます。

独身の人・旧制度の契約しかない人は対象外です

23歳未満の扶養親族がいない人、生命保険に入っていない人、あるいは2011年以前からの旧制度の契約しかない人には、この特例は関係がありません。年末調整の書類上の扱いも、これまでと変わりません。

よくある誤解

この特例をめぐって、誤解されやすい点を3つ確認しておきます。

誤解1:控除額が2万円増える=税金も2万円安くなる。実際に安くなるのは、増えた2万円に自分の所得税率(5〜45%)をかけた分だけです。所得税率20%の人なら4,000円程度が目安になります。

誤解2:生命保険に入っていれば誰でも上限が6万円になる。対象は23歳未満の扶養親族がいて、2012年以降契約の新生命保険料を払っている人に限られます。独身の人や旧制度の契約しかない人には適用されません。

誤解3:住民税の控除額も6万円になる。今回の見直しは所得税だけが対象で、住民税の一般生命保険料控除(上限2.8万円、合計7万円)は変わりません。

まとめ — 「上限拡大」の中身は条件つきの小さな上乗せ

生命保険料控除の6万円特例は、2026年分と2027年分の所得税に限って、23歳未満の扶養親族がいる世帯の一般生命保険料控除を2万円分だけ広げる措置です。対象になるかどうかは、扶養親族の年齢と、生命保険が新制度の契約かどうかで決まります。

私自身、税制改正大綱の見出しだけを見ていたときは「上限が大きく引き上げられる改正」という印象を持っていました。実際に条文と計算式まで追ってみると、家計への影響は年に数千円程度で、住民税にはそもそも及ばないという、地味だけれど正確に知っておく価値のある制度でした。年末調整の書類が届いたら、まずは控除証明書の「一般」の金額と、扶養している子どもの年齢を確認するところから始めてみてください。

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2026年9月28日 〜 2026年10月28日
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参考文献・出典

この記事について 本記事は、お金の仕組みを知る面白さをお届けし、お金や経済への興味を広げていただくための読み物です(2026年9月時点の税制改正大綱の内容にもとづきます)。特定の金融商品をすすめるものではありません。実際の控除の申告や契約の判断はご自身の状況に応じて、必要であれば税理士など専門家にご相談ください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。