介護費用12兆2208億円はなぜ過去最大に?増え続ける理由と財源の仕組み

2025年度の介護費用は総額12兆2208億円で、過去最大になりました。厚生労働省が2026年9月30日に発表し、共同通信が伝えています。前年度から2827億円(2.4%)増えています。

この数字を見て、私は最初「高齢者が増えているのだから当たり前」と思いました。ところが厚労省の年報を開くと、65歳以上の人数そのものは、直近の確定値では減っていました。費用が増えた理由は、人数だけでは説明できません。

  • 2025年度の介護費用は12兆2208億円で、集計を始めた01年度の2.8倍になった
  • 2024年度は65歳以上が5万人減ったのに、費用は3.2%増えた
  • 費用の半分は税金、半分は40歳以上が払う保険料でまかなわれる
  • 保険料は制度開始時の月2,911円から、第9期は6,225円になった
目次

2025年度の介護費用は12兆2208億円、前年度から2827億円増えた

共同通信の記事によると、介護費用は、介護保険からの給付と利用者負担を合わせた金額です。介護保険制度は2000年度に始まり、費用の集計は01年度からで、そこと比べて2.8倍になりました。増えた主な要因として、記事は高齢化に伴う利用者の増加を挙げています。

1日あたりに直すと、12兆2208億円を365日で割って約335億円です。毎日、約335億円が介護に使われている計算です。……毎日です。

介護サービス分が11兆8806億円、介護予防分が3402億円

内訳は、要介護認定を受けた人が使う介護サービス分が11兆8806億円、状態が軽い人が使う介護予防サービス分が3402億円です。利用者数は、介護サービスが0.8%増の577万9500人、介護予防サービスが4.4%増の136万1200人でした。

伸び率は、介護予防サービスの人数のほうが大きい点が目を引きます。ただ、金額でみると全体の約97%(11兆8806億円÷12兆2208億円)は介護サービス分で、費用の大半を占めるのはこちらです。

前年度の数字とは、そのまま比べられません

共同通信の「2827億円増」から前年度を逆算すると、12兆2208億円−2827億円=11兆9381億円になります。一方、厚労省の2024年度の年報では、保険給付の費用額は12兆952億円です。差は12兆952億円−11兆9381億円=1571億円あります。

暫定値と確定値で、集計の時点や範囲が違うのかもしれません。2025年度分の原典の表を私は確かめられていないので、この記事では2025年度の増減は共同通信の数字をそのまま紹介し、年ごとの比較には2024年度の年報を使います。

費用が増える理由は、高齢者の人数だけでは説明できない

介護費用の増加は高齢化だけで説明できるのか(横断歩道で信号を待つ高齢の夫婦)
Photo by Joey Huang on Unsplash

厚労省の令和6年度(2024年度)の年報で、費用の増え方を分けてみます。保険給付の費用額は、前年度の11兆7186億円から12兆952億円へ、3766億円(3.2%)増えました。

ところが、65歳以上の第1号被保険者は、2024年3月末の3589万人から2025年3月末の3584万人へ、5万人(0.1%)減っています。高齢者の人数が減っても、費用は増えたことになります。私が最初に思った「高齢者が増えているから」は、この年に限れば外れていました。

増えたのは「認定を受けた人」と「サービスを使う人」

同じ年報で、要介護(要支援)認定者は708万人から721万人へ12万人(1.8%)増えました。第1号被保険者に占める認定者の割合は、19.4%から19.7%へ0.3ポイント上がっています。サービス受給者は月平均で609万人から620万人へ、12万人(1.9%)増でした。

認定率19.7%は、約5人に1人(1÷5=20%)に近い水準です。65歳以上の人数が横ばいでも、その中で認定を受ける人の割合が上がれば、費用は増えます。認定の仕組みは介護認定の全手順で詳しく書いています。

人数の増加は、費用増の6割ほど

費用の3.2%増のうち、人数の増加がどれだけかを、受給者数で割って確かめます。費用額を受給者数と12か月で割ると、1人あたりの費用は、2023年度が約16万円、2024年度が約16.3万円です。

項目 2023年度 2024年度 増減
保険給付の費用額 11兆7186億円 12兆952億円 3.2%増
サービス受給者(月平均) 609万人 620万人 1.9%増
認定者(各年3月末) 708万人 721万人 1.8%増
65歳以上の人数(各年3月末) 3589万人 3584万人 0.1%減
1人あたり費用(月・筆者計算) 約16.0万円 約16.3万円 1.4%増
出典:厚生労働省「令和6年度 介護保険事業状況報告(年報)のポイント」。1人あたり費用は、費用額÷受給者数÷12で筆者が計算した目安です。

受給者の増加が1.9%、1人あたり費用の増加が1.4%で、1.019×1.014≒1.033と、費用の3.2%増にほぼ一致します。人数の増加がおよそ6割、1人あたりの増加が4割という見方です。

1人あたりの費用がなぜ上がったのかは、年報には書かれていません。介護報酬の改定や、要介護度の重い人が増えたことなどが考えられますが、原典で確かめられていないので、ここでは断定しません。

お住まいの市町村の介護保険料を、確認したことはありますか?

  1. 確認したことがある
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金額は知らないが仕組みは知っている:54%
確認したことはない:31%
まだ40歳未満で関係ない:15%
確認したことがある:0%

介護費用は誰が払っているのか|公費と保険料が半分ずつ

介護費用のうち、利用者が自己負担するのは原則1割です。所得が高い人は2割か3割を負担します。残りの9割(8割・7割)が介護保険からの給付で、この給付分の財源が、公費と保険料で半分ずつです。

介護保険の給付費の財源(第9期・令和6〜8年度)

公費(税金)50%

国25%
都道府県12.5%
市町村12.5%

保険料50%

65歳以上(第1号)23%
40〜64歳(第2号)27%

施設等給付は、国20%・都道府県17.5%。出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」

給付費に当てはめると、金額はこうなる

2024年度の介護保険特別会計の決算では、保険給付費は111,969億円でした。これに上の割合をあてはめます。

財源 割合 給付費111,969億円にあてはめた額
公費(国・都道府県・市町村) 50% 約5兆6000億円
国(原則) 25% 約2兆8000億円
第1号保険料(65歳以上) 23% 約2兆5800億円
第2号保険料(40〜64歳) 27% 約3兆0200億円
筆者の計算:111,969億円×割合。施設等給付の国20%・都道府県17.5%や、国の調整交付金の扱いで、実際の配分は市町村ごとに異なります。

同じ決算で、国庫支出金は28,218億円、保険料(第1号被保険者から徴収した分)は25,971億円でした。給付費の25%は111,969億円×0.25≒27,992億円、23%は111,969億円×0.23≒25,753億円で、決算の実額と数%の差におさまっています。割合の表は、現実の金額とおおむね合っています。

65歳以上と40〜64歳の割合は、人口比で決まる

第1号と第2号の割合は、3年ごとの計画期間で、それぞれの被保険者の人口比率をもとに設定されます。資料に載る被保険者数は、第1号が3585万人、第2号が4188万人です。人数は第2号のほうが多いのに、負担は23%と27%でほぼ並んでいます。

40歳以上の人は、介護保険料をどう払っているか

40歳以上の人が払う介護保険料の使い道(公園のベンチで過ごす高齢の男性)
Photo by Bruna Santos on Unsplash

保険料の払い方は、年齢で違います。65歳以上は市町村が徴収し、原則として年金から天引きされます。40〜64歳は、加入している医療保険者が、医療保険の保険料と一括して徴収します。給与明細の全体像は社会保険料とは何かで整理しています。

65歳以上の保険料は、3年ごとに市町村が決める

65歳以上が払う保険料は、全国平均の月額(加重平均)で、第1期(2000〜2002年度)が2,911円、第9期(2024〜2026年度)が6,225円です。6,225円÷2,911円=約2.1倍になりました。第8期から第9期への上がり方は3.5%で、第4期から第5期の19.5%や、第5期から第6期の10.9%より小さくなっています。

保険料は、市町村が3年ごとの介護保険事業計画で、その期間に見込まれる給付費をもとに決めます。資料の年表では、第9期は2024〜2026年度で、そのあとに第10期の事業計画が続きます。

40歳まで9年ある私が、いま資料を読んで思ったこと

私は31歳で、介護保険料を払い始めるのは40歳になってからです。長岡の両親はまだ元気ですが、いつかは自分の家のこととして、この制度を使う日が来ると思っています。そのとき、費用の1割だけで足りるのか、居住費や食費はどうなるのかは、制度の資料を読むまで考えたことがありませんでした。

費用が増えると、何が起きるのか|負担の増え方と注意点

費用の増加は、保険料と公費の両方に響く

給付費の増加分は、公費と保険料で半分ずつ負担します。費用が増えれば、国・都道府県・市町村の支出も、40歳以上の保険料も、増える方向に動きます。保険料が第1期の約2.1倍になったのは、その積み重ねの結果です。

利用者負担は1割だけではない

利用者負担は原則1割ですが、「合計所得金額160万円以上」かつ「年金収入+その他合計所得金額280万円以上(単身世帯)」なら2割です。「合計所得金額220万円以上」かつ「年金収入+その他合計所得金額340万円以上(単身世帯)」なら3割になります。夫婦世帯の基準は金額が違います。

施設に入ると、居住費と食費は別にかかる

施設サービスを使うときは、介護サービスの1割(2割・3割)負担のほかに、居住費・食費・日常生活費が利用者の負担です。厚労省の資料でも、これらは給付の対象外として別に示されています。介護費用には含まれない出費がある、と考えておいたほうが安全です。

この制度の弱点は、負担する人が減っていく側にあること

費用が増える一方で、65歳以上の人数は2024年度に0.1%減りました。今後、40歳以上を支える現役世代が減ると、同じ費用でも1人あたりの負担は重くなります。将来の人数の見通しは、この記事で確かめていません。

備えとして確かめておきたい3つのこと

費用の大きさそのものは、個人の手では変えられません。読者が自分の状況に引き寄せて確かめられるのは、次の3つです。

自分の市町村の介護保険料を確認する

65歳以上の保険料は市町村ごとに決まります。全国平均の6,225円は、あくまで平均です。住んでいる市町村のホームページで、第9期(2024〜2026年度)の基準額を見ておくと、自分と家族の負担の目安がつかめます。

40歳以上なら、給与明細で介護保険料の欄を見る

40〜64歳の保険料は、医療保険の保険料と一括して徴収されます。給与明細に「介護保険料」の欄があれば、第2号被保険者として払っています。65歳になると、年金から天引きされる第1号の保険料に切り替わります。

親の介護を考える家族は、認定の申請先を知っておく

サービスを使うには、市町村への要介護認定の申請が最初の一歩です。仕組みの全体は介護保険とは何かにまとめています。

運営する側、つまり市町村や介護事業者にとっては、費用の増加は保険料の設定と、サービスの提供体制の両方に関わる問題です。厚労省は、2040年に向けたサービス提供体制のあり方を検討会で議論しており、制度の見直しは今後も続きます。

介護費用についてよくある誤解

介護費用は全部、税金や保険料から出ているのですか

全部ではありません。「介護費用」は、介護保険の給付に利用者負担を加えた金額です。2024年度の年報では、費用額12兆952億円に対し、利用者負担を除いた給付費は11兆1826億円で、差は12兆952億円−11兆1826億円=9126億円でした。給付費には高額介護サービス費なども含まれるため、この差がそのまま利用者の自己負担の総額とは限りません。

高齢者が増えるから、介護費用が増えるのですか

人数の増加だけでは説明できません。2024年度は65歳以上が5万人減ったのに、認定者は12万人、受給者は12万人増え、費用額は3.2%増えました。認定を受ける人の割合の上昇や、1人あたり費用の増加も関わっています。

40歳以上が払う保険料は、自分の親のために使われますか

自分の親だけのためではありません。保険料は、全国の介護給付の財源に使われる、社会全体で支え合う仕組みです。第2号被保険者の保険料は、保険料全体の27%分を占めています。

まとめ:介護費用12兆2208億円から読み取れること

2025年度の介護費用は12兆2208億円で、前年度から2827億円増え、過去最大になりました。厚労省の2024年度の年報では、65歳以上が5万人減る中でも、認定者と受給者が増え、費用額は3.2%伸びています。

費用を支えるのは、給付費の50%の公費と、50%の保険料です。保険料は、65歳以上が23%、40〜64歳が27%で、65歳以上の全国平均は第1期の2,911円から第9期の6,225円へ、約2.1倍(6,225÷2,911)になりました。費用が増えるほど、この負担は重なります。

判断の材料は、自分の市町村の保険料、利用者負担の割合(1〜3割)、施設で別にかかる居住費と食費の3つです。この記事の内容は2026年10月時点のものです。2025年度の数字は暫定の発表にもとづくため、最新の情報は厚生労働省の公表資料で確認してください。

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2026年10月2日 〜 2026年11月1日
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参考文献・出典

📖 この記事について

この記事は、介護保険の費用と財源の仕組みを公的資料から整理した情報提供です。個々の保険料や利用料、介護サービスの利用可否を判断するものではありません。具体的な金額や手続きは、お住まいの市町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターに確認してください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。