10月に30℃を超えても熱中症が起きる理由|暑熱順化が抜ける仕組みを解説

2026年10月1日は、太平洋側を中心に30℃を超える所が出ると、ウェザーマップが伝えました。10月の30℃と聞いて、私は「真夏よりずっと涼しいのだから、体も楽だろう」と考えかけました。

厚生労働省の熱中症マニュアルを読むと、その考え方は半分しか合っていません。夏のあいだに身についた「暑さへの慣れ」は、暑い環境から離れると4日後から失われ始めると書かれています。気温の数字だけでは、体にかかる負担は決まりません。

  • 熱中症は気温だけでなく、湿度と、体が暑さに慣れているかで起きやすさが変わる
  • 暑さへの慣れ(暑熱順化)は、暑さから離れると4日後から失われ始める
  • 消防庁の統計では、9月の搬送人員が年々増えている
  • 10月の暑い日は、その日の暑さ指数と直前1週間の暑さで判断する
目次

10月の30℃は、真夏の30℃とは体の条件が違います

10月の30℃超えは真夏と何が違うのか(木々の間から日が差す秋の道)
Photo by Umair Ali Asad on Unsplash

気象庁の用語では、日最高気温が30度以上の日を真夏日と呼びます。10月1日の報道では、関東の内陸や東海、西日本にその30℃を超える所があると伝えられました。「10月としては気温が高い」という言い方もされています。

数字だけを見れば、7月の30℃と同じです。違うのは、そこへ入っていく体の側です。夏のあいだ毎日暑さにさらされた体と、涼しい日が続いたあとの体では、熱の逃がし方が違います。

熱中症の目安は気温ではなく暑さ指数

環境省の熱中症予防情報サイトは、気温ではなく暑さ指数(WBGT)を使います。暑さ指数は、湿度、日射や輻射など周辺の熱環境、気温の3つを取り入れた指標です。単位の℃は付けず、気温と区別しています。

暑さ指数(WBGT) 区分 環境省の注意事項
31以上 危険 高齢者は安静でも発生する危険。外出はなるべく避ける
28以上31未満 厳重警戒 外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する
25以上28未満 警戒 運動や激しい作業では定期的に十分な休息を取る
※環境省 熱中症予防情報サイト「暑さ指数(WBGT)とは」の日常生活に関する指針から抜粋

同じサイトは、暑さ指数が28を超えると熱中症患者が著しく増えると説明しています。気温が30℃でも、湿度が低く日陰なら暑さ指数は低く出ます。逆に湿度が高ければ、気温がそれほど高くなくても数字は上がります。

気温21℃でも死亡災害が起きた例がある

厚生労働省のマニュアルは、屋外作業で熱中症が起きたときの気象条件を調べた結果を載せています。気温が30℃を超えると発生件数が急増する一方、30℃より低くても相対湿度が高いと発生しています。気温21℃で湿度95%という環境で、死亡災害が起きた例もあります。

「30℃を超えなければ大丈夫」という線引きは、湿度の高い日には当てはまりません。10月でも、台風の接近で湿った空気が入る日は注意が要ります。

体は熱を、血流と汗で逃がしています

暑熱順化を理解するために、まず体が熱を逃がす流れを見ます。体温調節の全体像は冷え性はなぜ起きるのかでも書きましたが、ここでは暑さに対する側を整理します。

内臓の温度は約37℃で保たれている

厚生労働省のマニュアルによると、人間は恒温動物で、内臓の温度はほぼ37℃に維持されています。体温調節の中枢は脳の視床下部にあり、体温が42℃にまで上がらないように調節します。

この中枢は、食事や運動による熱の産生と、伝導、対流、輻射、蒸発による熱の放散のつり合いを、意識しなくても保とうとします。

体温が上がりそうになると、まず血流、次に汗

体温が上がりそうになると、最初に心拍数が上がり、体内の血液が皮膚の表面に多く流れます。血流が内部の熱を運び、体表から伝導、対流、輻射で熱が逃げやすくなります。

それでも体温の上昇が続くと、汗腺から発汗が始まり、熱の放散量が一気に増えます。暑さによって汗が促されるエクリン腺は、日本人では体表面に約230万個あると考えられています。

汗は蒸発して初めて体温を下げる

マニュアルには、汗100mLをすべて皮膚の表面で蒸発させられれば、体重70kgの人の体温は約1.0℃下がると書かれています。私は汗をかけば涼しくなると思っていましたが、体温を下げるのは汗が出ることではなく、蒸発することでした。

湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、したたり落ちた汗は体温低下に働きません。汗だけが大量に出て、体は冷えない状態が続きます。10月の湿った暑さが危ないのは、このためです。

10月に気温が高い日、熱中症への備えを意識しますか?

  1. 毎年意識している
  2. 真夏ほどではないが気にする
  3. あまり意識していない
  4. 10月は考えたことがない

📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・9票)

毎年意識している:33%
真夏ほどではないが気にする:33%
あまり意識していない:33%
10月は考えたことがない:0%

暑さに慣れた体では、汗のかき方が変わっています

暑さに慣れた体では汗のかき方が変わる(秋の公園で体を動かす人たち)
Photo by Gabin Vallet on Unsplash

人間は暑さに多少慣れることができます。これを順化といいます。

汗が出るまでの時間が早くなる

厚生労働省のマニュアルによると、順化すると発汗までの時間が早くなります。特に前胸部と前額部の汗がすぐに出るようになり、心臓と脳の温度上昇を食い止める働きがあるそうです。

気温が上がり始めたときにすぐ汗をかける人は、後から急に大量の汗をかく必要がなく、体温の異常な上昇を抑えやすいと書かれています。

汗から塩分が逃げにくくなる

暑さにさらされていない人は、1日に15〜20gもの食塩を汗で失うことがあります。順化すると、これが1日3〜5g程度に抑えられます。

3÷15=0.2、5÷20=0.25ですから、失う塩分は順化していない状態のおよそ5分の1から4分の1です。同じ汗の量でも、順化した体は塩分を守れる計算になります。

マニュアルは、暑さに慣れると体温を一定に保つ働きが向上し、水分とナトリウムを失いにくくなると説明しています。夏にこの仕組みが整うので、真夏の暑さに慣れた人は同じ暑さで倒れにくくなります。

順化は、暑さが途切れると4日後から抜け始めます

夏にできた順化は、そのまま秋まで持ち越せるわけではありません。マニュアルは、暑い環境へのばく露が中断すると順化は失われると書いています。

作るのに7日以上、失い始めるのは4日後から

職場の熱中症対策として、マニュアルは順化の例を挙げています。順化していない状態から、7日以上かけて熱にさらす時間を次第に長くする方法です。

失う側の数字もあります。熱へのばく露が中断すると、4日後には順化の顕著な喪失が始まり、3〜4週間後には完全に失われます。身につけるには1週間以上かかり、抜け始めるのは4日後からです。

「前の週に毎日暑さにさらされていない人」は慣れていない扱い

同じマニュアルの基準値表の注には、熱に順化していない人とは「作業する前の週に毎日熱にばく露されていなかった人」とあります。慣れているかどうかの境目は、直前の1週間にあります。

ここからは私の見立てです。9月下旬に涼しい日が続いたあと、10月の初めに30℃を超える日が来れば、体は「前の週に暑さにさらされていない」状態に近いと考えられます。マニュアルは職場の作業者を対象にしていますが、体の仕組みは同じです。

私は新潟の長岡の出身で暑さに弱い側の人間なので、真夏を過ぎた体が簡単に元へ戻ると知って、少し意外でした。夏を越えたから秋の残暑は平気、とは言えないようです。

慣れていない人の基準値は、慣れている人より厳しくなっています

厚生労働省のマニュアルには、作業の強さごとのWBGT基準値が、順化している人と順化していない人に分けて載っています。この基準値は、既往症がない健康な成年男性を基準に、それ以下ならほとんどの人が熱中症を発症する危険のないレベルとして設定されています。

強い作業ほど、順化の差が大きくなる

身体作業強度 順化している人 順化していない人 差
安静 33 32 1
低代謝率(軽い手作業・立位の作業など) 30 29 1
中程度代謝率(草むしり・速歩など) 28 26 2
高代謝率(シャベル作業・重い荷物など) 25 22 3
極高代謝率(走る・階段を登るなど) 23 18 5
※厚生労働省「職場における熱中症予防対策マニュアル」表2のWBGT基準値(℃)。高代謝率と極高代謝率は気流を感じないときの値。差は表の値から筆者が計算(例:23-18=5)

安静にしているだけなら、差は1℃です。ところが走ったり階段を登ったりする強さでは、順化していない人の基準値は18まで下がり、順化している人との差が5になります。基準値が低いほど、少しの暑さで危険域に入るということです。

10月に外で運動をする人や、屋外の作業をする人は、この差が大きい側に入ります。ジョギングやゴルフの日に気温が高くなったときは、真夏より体の備えが少ない可能性があります。

風があると基準値は上がる

同じ表で、気流を感じるときの基準値は、感じないときより高くなっています。たとえば順化していない人の極高代謝率は、気流を感じないときの18に対し、感じるときは20です。風が汗の蒸発を助け、熱が逃げやすくなるためと考えられます。

室内で風を作る方法は扇風機はどうやって風を起こしているのかで仕組みを整理しています。

作業の初日と2日目に、死亡が集中していました

順化の有無が命に関わることを示す数字が、マニュアルの表7にあります。平成24〜28年の5年間に、職場で熱中症により亡くなった人は104人でした。このうち、高温多湿の作業場所で作業を始めてから熱中症が起きるまでの日数が、表にまとめられています。

初日と2日目に集中している

作業日数 死亡者数(人)
初日 17
2日目 22
3日目 7
4日目 3
5日目 2
6日目 4
7日目 1
8日目 1
9日目 2
10日目以降 45
※厚生労働省「職場における熱中症予防対策マニュアル」表7(平成24〜28年の合計。計104人)

初日の17人と2日目の22人を足すと39人です。39÷104=0.375で、約37.5%になります。7日目までを全部足すと17+22+7+3+2+4+1=56人で、56÷104≒0.54、約54%です。マニュアル本文も、全体の5割が7日以内に発生していると書いています。

体が暑さに慣れていない最初の数日に、死亡が集中しています。順化は、危険な暑さの中で体を守るための準備だということが、この表から読み取れます。

ただし、この表は高温多湿の作業場所で働く人の数字です。10月の散歩や買い物と同じ条件ではありません。仕組みは同じでも、リスクの大きさを同じに扱うのは正確ではないでしょう。

消防庁の統計では、9月の搬送が4倍に増えました

一般の生活で何が起きているかは、消防庁の救急搬送の統計で見られます。令和7年(2025年)の5月から9月の熱中症による救急搬送人員は、累計で100,510人でした。調査を開始した平成20年以降で最も多く、高齢者が57.1%を占めています。

9月の搬送人員は5年で増えている

年 9月の救急搬送人員(人)
令和3年(2021年) 2,355
令和4年(2022年) 4,931
令和5年(2023年) 9,193
令和6年(2024年) 11,503
令和7年(2025年) 9,766
※消防庁「令和7年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」資料5-2

9,766÷2,355≒4.1ですから、2021年から2025年で約4倍です。消防庁は、令和7年について、夏の日本の平均気温が最も高くなり、非常に厳しい暑さが長期間続いたと説明しています。9月は過去2番目の搬送人員でした。

この表が示すのは、9月に熱中症で運ばれる人が増えているという事実です。暑熱順化が抜けたことが原因だと、消防庁が述べているわけではありません。気温そのものが高い年だったことも大きいでしょう。

10月の人数はこの統計では分からない

消防庁の調査期間は5月から9月です。10月の搬送人員は、この資料には含まれていません。10月に何人が倒れているかを、私は原典で確かめられませんでした。数字がない部分は、推測で補わないでおきます。

熱中症のサインと、最初の対応

日本救急医学会の熱中症分類は、厚生労働省のマニュアルに載っています。軽症のⅠ度は、めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、こむら返りなどで、意識障害はありません。通常は現場で対応でき、冷所での安静、体表の冷却、水分とナトリウムの補給が基本とされています。

Ⅱ度は、頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下といった症状で、医療機関での診療が必要です。Ⅲ度は中枢神経症状などを伴い、入院加療が必要になります。

マニュアルは、Ⅱ度の症状が出たとき、またⅠ度に改善が見られないときは、すぐ病院へ搬送すると示しています。分類には「暑熱環境にいる、あるいはいた後の体調不良はすべて熱中症の可能性がある」という付記もあります。この記事は仕組みの解説であり、症状の判断や治療の代わりにはなりません。具合が悪いときは医療機関や救急に相談してください。

10月の暑い日の判断の目安

ここまでの内容を、10月の暑い日にどう使うかに落とします。決める材料は3つです。

1. その日の暑さ指数を、環境省のサイトで見る

気温だけでなく湿度と日射を含めた暑さ指数を、環境省の熱中症予防情報サイトで確かめます。25以上なら警戒、28以上なら厳重警戒の区分です。

2. 直前の1週間、暑さにさらされていたかを思い出す

涼しい日が続いていたなら、体は慣れていない側に近いと考えます。運動や屋外の作業は、いつもより強度を下げ、休憩を早めに取るのが目安です。

3. 室内でも湿度を下げる

湿度が高いと汗が蒸発しにくいので、室内ではエアコンの除湿や送風で湿度を下げます。除湿の方式の違いはエアコンのドライと冷房はどう違うのかで比べています。

10月の暑さ対策で注意したいこと

順化していても、危険がなくなるわけではない

順化した体でも、暑さ指数が高ければ熱中症は起きます。表の基準値は順化している人でも、安静の33から極高代謝率の23までで、そこを超えれば注意が必要です。慣れているから大丈夫、とはなりません。

基準値は健康な成年男性が基準

基準値表は、既往症がない健康な成年男性が基準です。高齢者や持病のある人、子どもは、この数字より早く負担がかかる場合があります。環境省の指針でも、暑さ指数が31以上のときは、高齢者は安静状態でも発生する危険性が大きいと書かれています。

10月は「暑さに備える季節」とは思われにくい

春から夏にかけては、梅雨明けや猛暑のニュースで暑さへの警戒が高まります。10月は涼しくなる前提で過ごしているので、突然の30℃は不意打ちになりやすいのではないでしょうか。これは数字で確かめられたことではなく、私の考えです。

熱中症についてよくある誤解

気温が30℃を超えなければ、熱中症にはなりませんか

なりません、とは言えません。厚生労働省のマニュアルによると、気温が30℃より低くても、相対湿度が高いと熱中症が発生しています。気温21℃で湿度95%のとき、死亡災害が起きた例もあります。

夏に暑さに慣れたら、秋にも慣れが残っていますか

一部は残ると考えられますが、保証はありません。暑い環境へのばく露が中断すると、4日後には順化の顕著な喪失が始まり、3〜4週間後には完全に失われるとマニュアルは書いています。

汗をたくさんかけば体温は下がりますか

汗が蒸発して初めて体温が下がります。汗100mLをすべて蒸発させられれば、体重70kgの人の体温が約1.0℃下がると、マニュアルに記されています。湿度が高いと汗が蒸発しにくく、したたり落ちた汗は体温低下に働きません。

まとめ:10月の30℃超えを、暑熱順化から読む

体は、血流と汗で熱を逃がして内臓を約37℃に保っています。夏に暑さに慣れると、汗が早く出て、失う塩分も減ります。この慣れは、暑さが途切れると4日後から失われ始め、3〜4週間で完全に失われます。

だから、涼しい日が続いたあとの10月の30℃は、数字が同じでも夏とは違う負担になりえます。判断の材料は、その日の暑さ指数と直前1週間の暑さ、湿度です。消防庁の統計では9月の搬送が増えていますが、10月の人数は資料にありません。

この記事の内容は2026年10月時点のものです。気象や暑さ指数は日々変わります。最新の情報は気象庁と環境省の熱中症予防情報サイトで確認してください。

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参考文献・出典

📖 この記事について

この記事は、熱中症と体温調節の仕組みを公的資料から整理した情報提供です。診断や治療、個々の体調への助言を目的としたものではありません。体調が悪いときや持病のある方は、医療機関に相談してください。意識がおかしい、水分を自分でとれないなどの場合は、救急車を呼んでください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。