ドトールはなぜ安いのに増益なのか|中間決算の営業利益38.1%増を卸売とフランチャイズで読む

ニュースの見出しには「ドトール なぜ安いのに過去最高益」とありました。ブレンドコーヒー(S)は2026年7月23日から300円で、値上げをしたとはいえ、500円玉でおつりが来る価格です。そんな店で利益がこれほど伸びるのはなぜか、というのが読者の疑問だと思います。

運営会社のドトール・日レスホールディングスの決算短信と決算説明資料、有価証券報告書を開いて、数字で確かめました。2026年10月時点で公開されている資料だけを使います。先に書いておくと、「過去最高益」という言葉そのものは、私が開いた資料のどれにも見つかりませんでした。確かめられたのは増益の中身です。

  • 2026年3〜8月期の営業利益は73億8,400万円で、前年同期より38.1%増えた
  • 利益は7月23日の値上げより前の3〜5月期にすでに35.2%増えていた
  • 売上の35.7%は店の外、つまり卸売で、グループ国内2,046店舗のうち900店舗はフランチャイズ
  • 粗利率は下がったが、売上が増えても販管費が増えにくかったため、営業利益率は上がった
目次

ドトールの中間決算は、営業利益が38.1%増だった

売上は7.5%増、営業利益は38.1%増

2026年3月から8月までの中間決算(2027年2月期の上期)で、連結の売上高は857億3,600万円、前年同期より7.5%増えました。営業利益は73億8,400万円で38.1%増、会社が4月に出していた中間期の予想を28.6%上回っています。経常利益は75億3,400万円(37.0%増)、中間純利益は52億1,900万円(32.7%増)です。

売上の伸びは7.5%でも、営業利益は38.1%伸びました。営業利益率は73.84÷857.36=約8.6%で、前年同期の6.7%から1.9ポイント上がっています。

会社が出していた予想との差

4月に公表された決算短信には、第2四半期(中間)累計の営業利益予想として5,740百万円が載っています。実績の73億8,400万円は、7,384÷5,740=約1.286倍で、報道の「28.6%上回った」と一致します。通期の営業利益予想110億4,300万円は据え置かれ、中間時点の進捗率は7,384÷11,043=約66.9%です。

「過去最高益」は確かめられなかった

見出しの熱と、資料を開いた私の温度に少し差がありました。直近の通期(2026年2月期)の営業利益は10,150百万円で、前の期の9,597百万円より5.8%増えています。ただし中間期が過去最高かどうかを示す記述は、決算短信、決算説明資料、有価証券報告書のどこにもありませんでした。この記事では「大きく増益だった」という確かめられた範囲で書きます。

利益は値上げの前から伸びていた

値上げは7月23日、3〜5月期はその前

私は最初、値上げで儲かったのだと思っていました。ところが日付を並べると順序が合いません。ドトールコーヒーが価格を改定したのは2026年7月23日です。3〜5月の第1四半期は、まるごと値上げの前にあたります。

第1四半期の連結決算では、売上高が42,528百万円(8.2%増)、営業利益が3,770百万円で35.2%増でした。中間期の38.1%増のうち、大半はすでに第1四半期の時点で出ています。

連結(3〜5月・百万円) 前年 今期 売上比の変化
売上高 39,315 42,528 8.2%増
粗利益 23,376(59.5%) 25,091(59.0%) 0.5ポイント低下
販売費及び一般管理費 20,588(52.4%) 21,321(50.1%) 2.3ポイント低下
営業利益 2,787(7.1%) 3,770(8.9%) 1.8ポイント上昇
※出典:ドトール・日レスホールディングス「2027年2月期 第1四半期 決算補足説明資料」連結業績

7月の値上げが入ったのは、中間期の一部だけ

中間期は6〜8月の第2四半期を含みます。値上げ後の7月23日から8月31日までは40日÷92日(6〜8月)=約43%にあたります。決算短信は、価格改定の前後1カ月で客数に大きな変化は見られなかったと説明しています。値上げの効果はこれから数字に出てくる部分が大きく、中間期の38.1%増の主因とは言えません。

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粗利率は下がったのに、営業利益率は上がった

売上が増えても、固定的な費用は同じ速さでは増えない

表のとおり、粗利益は25,091−23,376=1,715百万円増え、販売費及び一般管理費は21,321−20,588=733百万円しか増えていません。差し引きの営業利益の増加は983百万円で、資料の数字と、端数処理を除いて一致します。

粗利率は0.5ポイント下がっていて、売上比の販管費が2.3ポイント下がった分が、営業利益率を2.3−0.5=1.8ポイント押し上げました。人件費だけで見ても、売上比は23.6%から22.5%に下がっています。店の家賃や人件費は、客や売上が1割近く増えても、同じ割合では増えません。売上が伸びる局面では、利益の伸びのほうが大きくなります。

反対の動きをした例がサイゼリヤ

同じ外食でも、逆に動いた会社があります。サイゼリヤの値上げと原価率の記事で書いたとおり、サイゼリヤは客数が増えても、原価率が上がって営業利益率が下がりました。ドトールの第1四半期は、資料が「コーヒーをはじめとした原価は低下」と書いていて、原価の側の事情が違っていました。

既存店の売上と客数

3〜5月の既存店は、ドトールの売上が前年の104.2%、客数が102.2%でした。新店を含む全店では、売上が104.9%、客数が102.4%です。全店の売上の伸びを客数の伸びで割ると104.9÷102.4=約1.024で、1人あたりの売上(客単価)が約2.4%上がった計算になります。高単価の商品を出したことが理由だと、資料は書いています。

売上の35.7%は店の外で売っている

コーヒー豆の焙煎:焙煎機の中で焙煎したコーヒー豆をスコップでかき混ぜる様子
Photo by Tim Mossholder on Unsplash

ドトールは焙煎と卸売の会社として始まった

有価証券報告書の沿革によると、ドトールコーヒーは1962年4月に、コーヒーの焙煎加工と卸売を目的に設立されました。現在もコーヒー豆の仕入れと焙煎、直営店での販売、フランチャイズ店への卸売りとロイヤリティ、コンビニなどへのコーヒー製品の販売が事業の内容です。豆を焙煎して売る仕組みは、コーヒー焙煎の仕組みの記事にまとめています。

連結売上の内訳を開く

3〜5月の連結売上42,528百万円を、決算説明資料は次のように分けています。

区分(百万円) 前年 今期 売上比
直営店 25,687 26,694 62.8%
卸売り(合計) 12,989 15,172 35.7%
 うちFC向卸売 5,015 5,213 12.3%
 うち一般卸売 7,973 9,959 23.4%
加盟金・ロイヤリティなど 638 661 1.6%
※出典:ドトール・日レスホールディングス「2027年2月期 第1四半期 決算補足説明資料」売上高の概要(連結)

伸びが大きいのは一般卸売です。9,959÷7,973=約1.249倍で、前年より約25%増えました。資料は、ドリップコーヒーやインスタントコーヒーなどのドライ飲料が、量販店、通信販売、ドラッグストアで大きく伸びたと書いています。売上は中間期でも同じ傾向で、報道によると一般卸売上(FC向けを除く)は198億7,900万円で22.7%増でした。

卸売が増えると粗利率は下がる

資料は、粗利率が下がった理由を「卸売売上構成比が大きく高まったこと」と書いています。店で1杯ずつ売るより、卸売のほうが売上に対する粗利の割合は低いということです。それでも営業利益が伸びたのは、卸売は店舗の人件費や家賃を同じようには必要としないからだと、前の章の販管費の数字から読めます。この点は、資料に直接の説明はなく、私の読みです。

フランチャイズ店の売上は、ドトールの売上に入らない

フランチャイズ店の売上は本部に入らない:エスプレッソマシンとグラインダーが並ぶカフェのカウンター
Photo by Nick Cozier on Unsplash

ドトールコーヒーショップの多くはフランチャイズ

2026年5月末の店舗数は、ドトールコーヒーショップが1,074店で、うちフランチャイズ(FC)が805店です。805÷1,074=約75%がFCになります。エクセルシオール カフェは129店です。この2つを合わせた1,203店が、7月23日の価格改定の対象でした。国内全体では2,046店舗で、FCは900店舗、900÷2,046=約44%です。

本部に入るのは、卸売とロイヤリティ

前の章の売上の表に、FC店の店頭売上はありません。載っているのは、FC店に豆や商品を売った「FC向卸売」と、加盟金・ロイヤリティなどの収入です。FC店の客が支払ったコーヒー代は加盟店の売上で、ドトール本部の連結売上には入りません。

これは、売上の数字だけを見ると店数のわりに小さく見える一方、店を増やすときの人件費や家賃を本部が全部は負担しない、という作りだと、私は読みました。有価証券報告書の加盟契約の項目には、加盟店が商標やノウハウを使えること、本部がインストラクターを派遣することなどが書かれています。FC店の利益率など、資料にない数字は書けませんでした。フランチャイズ全般の仕組みは、フランチャイズの仕組みの記事で整理しています。

価格を上げると、FC店にも波及する

7月23日の価格改定は、全国のドトールコーヒーショップとエクセルシオール カフェ、計1,203店で一斉に行われました。ブレンドコーヒー(S)は280円から300円、カフェ・ラテ(S)は380円から400円、ミラノサンドAは490円から520円です。エクセルシオール カフェのクラムチャウダーは310円から420円と、110円上がりました。

商品 改定前(税込) 改定後(税込) 上げ幅
ブレンドコーヒー(S) 280円 300円 20÷280=約7.1%
カフェ・ラテ(S) 380円 400円 20÷380=約5.3%
ミラノサンドA 490円 520円 30÷490=約6.1%
マイルドブレンド(豆) 1,090円 1,110円 20÷1,090=約1.8%
※出典:ドトール・日レスホールディングス「2027年2月期 第1四半期 決算補足説明資料」価格改定の概要(ドトールコーヒーショップ)

改定の理由として、会社は「昨今の中東情勢の不安定化による原材料価格の高騰、物流および調達コストや人件費の上昇」を挙げています。同じ資料の3〜5月期の説明には「コーヒーをはじめとした原価は低下」とあり、過去の実績と今後の見通しで、書かれている方向が違います。この食い違いの内訳は、資料からは分かりません。

利益が伸びる構造のデメリットと注意点

卸売が増えるほど、粗利率は下がる

売上に占める卸売の割合が大きくなると、粗利率は下がります。第1四半期は販管費率の低下がそれを上回りましたが、いつもそうなるとは限りません。人件費や物流費が売上より速く増える年は、同じ仕組みで利益率が下がります。

通期予想は据え置かれた

中間で通期予想の66.9%まで進んだのに、通期の営業利益予想110億4,300万円は据え置きでした。下期に利益が積み上がらない前提なのか、慎重に見ているだけなのか、決算短信からは判断できません。

値上げの影響は、まだ一部しか出ていない

先に書いたとおり、値上げの前後で客数に大きな変化はなかったという説明は、価格改定から1カ月ほどの範囲です。冬の下期を含めた客数への影響は、次の決算で確かめる必要があります。

決算の見出しを、自分で確かめる3つの手順と判断のしかた

決算短信の1ページ目で、増減率を見る

上場企業は、決算を発表すると同時に、決算短信を公開します。1ページ目に、売上高、営業利益、経常利益、純利益の前年比がまとまっています。ニュースの見出しの「38.1%増」は、ここで確かめられます。

補足説明資料で、増えた理由の欄を読む

ドトール・日レスホールディングスは、決算短信とは別に「決算補足説明資料」を出しています。今回の第1四半期の資料は、売上の内訳、既存店の客数、卸売の動きを図と表で示していました。見出しに出ない「なぜ」は、こちらに書かれています。

見出しの言葉が資料にあるかを探す

私が今回「過去最高益」を確かめられなかったように、見出しの言葉と資料の言葉は一致するとは限りません。資料にない表現は、報道側の整理の可能性があります。投資の判断が絡むときは、決算短信と有価証券報告書の原文を確認してください。

ドトールの決算でよくある誤解

値上げしたから利益が増えたのですか

中間期の増益の大半は、7月23日の値上げより前の3〜5月期に出ています。値上げの効果は、その後の数字で確かめることになります。

卸売が増えると、利益率も上がりますか

資料は、卸売の構成比が高まったことで粗利率が低下したと書いています。営業利益率が上がったのは、販管費の比率が下がったからです。

フランチャイズ店の売上は、ドトールの売上ですか

FC店の店頭売上は、ドトール本部の連結売上に入りません。本部の売上になるのは、FC店に売った豆や商品(卸売)と、加盟金やロイヤリティです。

まとめ:ドトールの増益は、売上と販管費の差で読む

ドトールの中間決算は、売上が7.5%増、営業利益が38.1%増でした。値上げが7月23日だったことを考えると、増益の大半は値上げ前の売上増と、販管費の増え方が小さかったことで説明できます。

売上の35.7%は卸売で、国内2,046店舗のうち900店舗はFCです。店で売る会社というより、豆を焙煎して店と小売に届ける会社として利益が出ていると、数字は示しています。値上げの効果、客数、通期予想の据え置きは、次の決算で確かめる点です。私も自宅ではハンドドリップで豆を淹れる側ですが、1杯300円の背景にこれだけ数字があるとは、調べるまで思っていませんでした。

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📚 参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は、企業の決算の“仕組み”を知る面白さをお届けするための読み物で、株式の売買を勧めるものではありません。数字は2026年10月時点の公開資料によるもので、最新の内容は同社のIR情報や東京証券取引所の開示でご確認ください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。