宿泊税はなぜ自治体ごとに金額が違うのか|京都市1万円・東京都3%・大阪府の税額を比べる

宿泊税は全国どこでも同じ額の税金だと、私は思っていました。調べてみると逆でした。同じ1泊2万円の宿でも、1人あたり京都市では1,000円、北海道では200円です。差が出る理由は、宿泊税が国の法律で一律に決まる税金ではなく、自治体が条例でつくる税金だからです。この記事は2026年10月時点の、各自治体と総務省の公表資料にもとづいています。

この記事のポイント

  • 宿泊税は自治体が条例で新設する法定外目的税で、総務大臣の同意を得て始まる
  • 1人1泊2万円なら、京都市は1,000円、大阪府は500円、北海道は200円
  • 東京都は令和9年4月1日から、宿泊料金の3%を課す定率制に変わる
  • 払うのは宿泊者で、宿泊施設が宿泊料金と合わせて集めて自治体に納める
目次

宿泊税は国の税金ではなく、自治体が条例でつくる税金です

結論から言うと、宿泊税の額が自治体ごとに違うのは、税額も免税点も使い道も、それぞれの自治体が条例で決めているからです。総務省の資料には「地方団体は、地方税法で定められている税目(法定税)以外に、地方団体の条例により税目を新設でき、これを法定外税という」とあります。宿泊税はこの法定外税の一種で、使い道を限る法定外目的税にあたります。

条例は、法律の範囲内で自治体が定めるルールです。条例と法律の違いは別の記事で整理しているので、ここでは「自治体が自分で決められるルール」と考えれば足ります。

法定外目的税とは何か

法定外目的税は、取ったお金の使い道をあらかじめ決めておく税金です。宿泊税の場合、使い道は観光です。東京都の変更を同意した総務省の資料には、税収の使途が「国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に要する費用」と書かれています。北海道の宿泊税のページも、「観光の振興を図る施策に要する費用に充てるため」と説明しています。

総務大臣の同意は何を見ているのか

自治体が好きに決められるわけではなく、新設と変更には総務大臣の同意が要ります。総務省の資料では、次のどれかに当たる場合を除き、大臣は同意しなければならないとされています。

  • 国税や他の地方税と課税標準が同じで、住民の負担が著しく過重になる
  • 地方団体間の物の流通に重大な障害を与える
  • 上の2つのほか、国の経済施策に照らして適当でない

裏返すと、この3つに当たらなければ、国は同意する決まりです。税額が自治体ごとにばらばらになるのは、制度の想定の範囲内です。

東京都の例で、流れを日付つきで見てみます。

東京都の宿泊税が変わるまで(総務省・東京都の発表)

令和8年3月27日
都議会が条例案を可決
→
4月7日
総務大臣へ協議
→
6月30日
総務大臣が同意
→
令和9年4月1日
条例を施行(予定)

可決から施行まで、1年以上かかっています。宿泊施設の側にも準備の時間が必要だからで、これは後の章で触れます。観光庁によると、2026年1月13日時点で宿泊税を導入していた自治体は19、総務省の同意を得ていた自治体は39です。宿泊税は、これからも増えそうな税金です。

1泊2万円で比べると、京都市は北海道の5倍の宿泊税がかかります

まず、4つの自治体の税額表を並べます。宿泊料金は、1人1泊あたりです。

4つの自治体の税額表

自治体 税額(1人1泊) 課税されない宿泊
京都市(2026年3月1日から) 6,000円未満200円/6,000円以上20,000円未満400円/20,000円以上50,000円未満1,000円/50,000円以上100,000円未満4,000円/100,000円以上10,000円 表に免税点の記載なし
大阪府 5,000円以上15,000円未満200円/15,000円以上20,000円未満400円/20,000円以上500円 5,000円未満
北海道(令和8年4月から) 2万円未満100円/2万円以上5万円未満200円/5万円以上500円 学校等の修学旅行など
東京都(現行) 10,000円以上15,000円未満100円/15,000円以上200円 10,000円未満
出典:京都観光Navi(京都市観光協会)、大阪府、北海道、東京都の各公式ページ。2026年10月時点。

区切りの数も、金額の刻み方も、自治体ごとに違います。大阪府は令和7年8月31日までの宿泊分で、7,000円未満が非課税、7,000円以上15,000円未満が100円、15,000円以上20,000円未満が200円、20,000円以上が300円でした。区切りも金額も、変わった後とは別物です。

同じ2万円の宿でも、税額はこれだけ違う

1人1泊20,000円の宿に泊まるとして、各自治体の表に当てはめます。

自治体 税額 宿泊料金に占める割合
京都市 1,000円 5.0%(1,000÷20,000)
大阪府 500円 2.5%(500÷20,000)
北海道 200円 1.0%(200÷20,000)
東京都(現行) 200円 1.0%(200÷20,000)
東京都(令和9年4月から) 600円 3.0%(20,000×3%=600)
上の税額は各自治体の表に1人1泊20,000円を当てはめた結果。割合と東京都の新制度の額は編集部の計算です。

計算してみて、手が止まりました。京都市が1,000円、北海道が200円。1,000÷200で5倍です。……同じ宿、同じ1泊で、5倍です。割合で見ても、北海道の1.0%に対して京都市は5.0%になります。

旅行で宿に泊まるのは、年に何回くらいですか?

  1. ほぼ毎月
  2. 年に3〜4回
  3. 年に1〜2回
  4. ほとんど泊まらない

📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・10票)

年に3〜4回:30%
ほとんど泊まらない:30%
ほぼ毎月:20%
年に1〜2回:20%

京都市は2026年3月から最大1万円に。かかるのは10万円以上の宿です

京都市は2026年3月から最大1万円に。かかるのは10万円以上の宿です
Photo by Andre Benz on Unsplash

「京都、宿泊税が最大1万円に」という見出しは目を引きます。ただ、1万円がかかるのは1人1泊が100,000円以上の場合です。京都観光Naviの案内では、改正前は50,000円以上の宿が1,000円で、100,000円以上でも同じ1,000円でした。

改正前後で、どの価格帯がどれだけ変わったか

宿泊料金(1人1泊) 改正前 2026年3月1日から
6,000円未満 200円 200円
6,000円以上20,000円未満 200円 400円
20,000円以上50,000円未満 500円 1,000円
50,000円以上100,000円未満 1,000円 4,000円
100,000円以上 1,000円 10,000円
出典:京都観光Navi「京都市宿泊税改正のお知らせ」(2026年2月27日)

安い宿の税額はほとんど動かず、高い宿ほど大きく動く設計です。100,000円以上の宿は10,000÷1,000で10倍になりました。

「最大1万円」は、実際の負担では何パーセントか

税額を宿泊料金で割ると、見え方が変わります。

  • 20,000円の宿は1,000円で5.0%(1,000÷20,000)
  • 50,000円の宿は4,000円で8.0%(4,000÷50,000)
  • 100,000円の宿は10,000円で10.0%(10,000÷100,000)

見出しの熱と、数字を見た私の温度には差があります。最大1万円という金額は大きく見えますが、かかる宿は限られています。割合が10%に届くのは100,000円ちょうどの宿で、宿が高くなるほど割合は下がっていきます。

境界の1円で、税額が6,000円変わる

段階制の特徴は、区切りをまたぐと税額が跳ねることです。京都市で、1人1泊99,999円の宿は4,000円、100,000円の宿は10,000円です。10,000−4,000で6,000円の差が、料金1円の違いで生まれます。実際の宿泊料金は区切りぴったりにはなりにくいので、あまり気にする場面はないでしょう。それでも、段階制が持つ性質として知っておく価値があります。

東京都は令和9年4月から、宿泊料金の3%の定率制に変わります

東京都は2002年10月1日から宿泊税を課してきました。現行は、宿泊料金が10,000円以上15,000円未満で100円、15,000円以上で200円の定額制です。これが令和9年(2027年)4月1日の宿泊分から、宿泊料金の3%に変わります。

現行と新制度の比較

項目 現行制度 令和9年4月1日から
税率 10,000円以上15,000円未満100円/15,000円以上200円 宿泊料金の3%
課税されない宿泊 1人1泊10,000円未満 1人1泊13,000円未満
対象の施設 旅館・ホテル 旅館・ホテル・簡易宿所・民泊(特区民泊・新法民泊)
出典:東京都「宿泊税の制度変更について」(令和8年6月30日)、総務省(同日)

なぜ定額をやめて定率にするのか

東京都が令和7年11月に公表した見直し素案は、定率にする理由を3つ挙げています。「税負担能力に対する公平性、宿泊料金の設定に対する中立性、税率の簡素な制度」です。定額制だと、14,999円の宿は100円、15,000円の宿は200円で、1円の差で税額が倍になることがあります。3%なら、宿泊料金に比例するので境界がありません。

定率にも弱点があります。観光庁の資料を紹介したトラベルボイスの記事によると、日本交通公社の研究員は、定額制が多い理由を、定率制は徴収額が毎回変わり、事業者にとって事務が煩雑になるためと説明しています。倶知安町は2019年に日本で初めて2%の定率の宿泊税を導入し、同記事は4月1日から3%に変わる予定だと伝えています。

13,000円未満が免税、民泊も対象に

免税点は、10,000円から13,000円に上がります。東京都は理由を、宿泊料金が上がって課税対象が広がったことへの対応だと説明しています。現行制度では10,000円以上12,999円までの宿も100円がかかっていますが、令和9年4月からは12,999円の宿は0円、13,000円の宿は13,000×3%で390円です。

増えるのは税額だけではなく、対象も広がります。簡易宿所や民泊も課税対象に加わり、東京都は平年度の収入見込みを約190億円としています。

宿泊税を払うのは宿泊者で、集めるのは宿泊施設です

宿泊税を払うのは宿泊者で、集めるのは宿泊施設です
Photo by Neon Wang on Unsplash

大阪府の案内には、宿泊税は「宿泊料金と合わせて宿泊施設へお支払いください」とあります。大阪府が宿泊者から直接取るのではなく、宿泊施設が宿泊料金と合わせて集め、府に申告して納める方法です。この方法を特別徴収と呼び、集める宿泊施設の側を特別徴収義務者と呼びます。給与から天引きされる住民税と同じ考え方で、特別徴収と普通徴収の違いは別の記事で説明しています。

民泊の運営者も、集める側になる

宿泊施設を運営する側に立つと、事情は変わります。東京都は令和9年4月から民泊や簡易宿所の事業者にも徴収を義務づけ、特別徴収義務者の事前登録を令和8年7月1日から受け付けています。申請はeLTAX(地方税ポータルシステム)の電子申請か、郵送です。

集める手間は、誰が負担するのか

集めて納める手間は、宿泊施設が負います。北海道では、納期内に納めた税額に3.5%(令和13年度まで。その後は2.5%)をかけた額が、毎年10月下旬に交付金として施設に支払われます。集める側への手数料に近い仕組みです。

東京都の見込みを見ると、自治体側の費用は小さく見えます。収入見込みが平年度で約190億円、徴税費用が約1.5億円です。1.5÷190で約0.8%になります。ただしこの見込みは自治体が使う費用で、各施設が宿泊システムを直したり、案内を貼ったりする費用は含まれていません。

家族4人で3泊すると、宿泊税はいくらになるのか

仕組みが分かったところで、旅行の予算に引き直します。1人1泊15,000円の宿に、4人で3泊するとします。延べ宿泊は4人×3泊で12人泊です。

自治体 1人1泊 12人泊の合計
京都市 400円 4,800円(400×12)
大阪府 400円 4,800円(400×12)
北海道 100円 1,200円(100×12)
東京都(現行) 200円 2,400円(200×12)
東京都(令和9年4月から) 450円(15,000×3%) 5,400円(450×12)
全員が課税される前提の単純計算です。子どもの扱いは各自治体の案内でご確認ください。

同じ旅行でも、北海道と東京都の令和9年4月以降では、5,400−1,200で4,200円の差が出ます。宿泊料金が数万円になる旅行では、小さくない額です。

税がかからない宿泊もある

大阪府は、5,000円未満の宿泊、外国大使等の任務遂行にともなう宿泊、修学旅行生とその引率者等の宿泊を課税しません。北海道も、学校等が主催する修学旅行などの行事を課税免除とし、宿泊施設に「修学旅行等であることの証明書」を提出する手順を示しています。団体旅行の幹事なら、免除の対象になるかを先に確かめておくと、旅費の見積もりが変わります。

予約の前に確かめておきたいこと

私の旅行は、長岡への帰省が中心です。実家に泊まるので、宿泊税を払う機会はほとんどありません。そのぶん、この税金を自分の財布の問題として考えたことがありませんでした。けれども、旅行の予算を組む人にとっては、泊数と人数をかけるだけで見積もれる金額です。目的地の自治体の公式ページで、料金帯ごとの税額と免税の条件を確かめ、泊数と人数をかけておけば十分です。

宿泊税の注意点とデメリット

数年前の情報は当てにならない

宿泊税は、短い間隔で見直されています。大阪府は令和7年8月31日の前後で税額が違い、京都市は2026年3月、北海道は令和8年4月に始まり、東京都は令和9年4月に変わります。東京都の条例には、施行後5年ごとに見直す規定もあります。昔の旅行記やまとめ記事に書かれた税額は、そのまま使えないと考えたほうが安全です。

自治体ごとに違うので、比べにくい

区切りも金額も免税点も違うため、旅行先を比べるたびに表を読み直すことになります。定額制と定率制が混ざっていることも、分かりにくさを増やしています。

集める側の負担は、見えにくい

特別徴収の仕組みでは、宿泊施設が税の計算、徴収、申告、納入を担います。北海道の交付金は、その手間への手当てにあたります。小規模な宿や民泊の運営者にとっては、登録や申告の作業が新たな負担になります。東京都は民泊も含めて税務調査を行う方針を示しており、手続きの正確さも問われます。

宿泊税のよくある誤解

宿泊税は外国人観光客だけが払う税金ですか

いいえ。納税義務者は、課税対象の宿泊施設に宿泊する人で、国籍を問いません。大阪府は「宿泊施設に宿泊する方」、東京都は「宿泊者」と定めています。外国人旅行者向けの消費税の免税制度とは別の話で、こちらは外国人が日本で消費税なしに買える仕組みで説明しています。

宿泊税は全国どこでも同じ金額ですか

いいえ。宿泊税は自治体が条例で決めるため、導入していない地域もあれば、金額も違います。観光庁によると、2026年1月13日時点の導入自治体は19です。目的地ごとに確認が必要です。

宿泊税は宿泊施設の収入になりますか

いいえ。宿泊施設は宿泊者から預かって自治体に納める立場で、税そのものは収入になりません。北海道の交付金は、期限内に納めた施設へ手数料の形で交付される別の仕組みです。

旅行先の宿泊税を判断する手順

旅行の予算に宿泊税を入れるときは、次の順で確認します。

確認すること 見る場所
目的地の自治体が宿泊税を導入しているか 自治体の公式ページ(税務・観光の案内)
1人1泊の宿泊料金が、どの区切りに入るか 税額表。2026年10月時点でも改定が続いています
免税の条件に当てはまるか 修学旅行、免税点未満など
人数と泊数をかけた合計 税額×人数×泊数

民泊や小さな宿を運営する側は、自治体の特別徴収義務者の登録が先です。東京都のように、制度が変わる前に事前登録が始まるケースもあります。

まとめ:宿泊税は自治体ごとに違う税金なので、行き先の表を見る

宿泊税は、国の法律で一律に決まる税金ではありません。自治体が条例で新設し、総務大臣の同意を得て始まる法定外目的税です。税額の違いは、この仕組みから生まれています。

1人1泊20,000円の宿で、京都市は1,000円、大阪府は500円、北海道は200円です。京都市の最大1万円がかかるのは100,000円以上の宿に限られます。東京都は令和9年4月から、13,000円未満を免税にして、それ以上は宿泊料金の3%を課します。

払うのは宿泊者で、集めるのは宿泊施設です。旅行の前には、目的地の自治体の最新の税額表を確認し、人数と泊数をかけておけば、予算のずれは防げます。

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📊 「宿泊税はなぜ自治体ごとに金額が違うのか|京都市1万円・東京都3%・大阪府の税額を比べる」はこんな人に読まれています

2026年10月8日 〜 2026年11月7日
PC
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その他
100%
新規 100%リピート 0%
061218
📈 ピーク時間帯:12時

📚 参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は、社会の制度や法律の“仕組み”を知る面白さをお届けし、世の中のルールに興味を持っていただくための読み物です。個別の法的判断を示すものではなく、制度は改正されることもあります。具体的なケースは専門家や公的機関にご確認ください。2026年10月時点の公表資料にもとづいています。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。