離党勧告と除名はどう違うのか|自民党の党員処分8段階と石破氏ら4人への説明要求

自民党執行部が、消費税減税関連法案の採決前に退席した石破茂前首相ら4人に、事実関係と理由の説明を求める文書を配りました。共同通信の報道によると、期限は11月9日で、執行部はその回答を踏まえて対応を検討するとみられています。ニュースでは「処分」「離党勧告」「除名」といった言葉が飛び交っていますが、私はこの2つをほとんど同じ意味だと思っていました。自民党が公開している党則と規律規約を読むと、2つははっきり別の処分でした。この記事では、2026年11月8日時点の報道と規約の条文をもとに、自民党の党員処分8段階の違いを整理します。4人が処分されるかどうかの予想は書きません。

  • 自民党の処分は8段階で、軽い順に遵守の勧告・戒告・役職停止・役職の辞任勧告・非公認・党員資格停止・離党勧告・除名です
  • 離党勧告は、離党届を出すかどうかを本人に迫る処分で、従わなければ除名になると報じられています
  • 説明を求める文書は、規約にある「説明を求める」手続きに近いもので、処分そのものではありません
  • 党の除名と、憲法58条にある議院の除名は別の制度です
目次

石破氏ら4人に出された説明要求は、処分なのか

11月6日の退席と、執行部の動き

共同通信によると、自民党執行部は、消費税減税関連法案が衆議院本会議で採決された6日、採決前に退席して賛成しなかった石破茂前首相ら4人に説明を求める文書を配りました。退席した他の3人は、小渕優子元選対委員長、古川禎久元法相、船田元・元経済企画庁長官です。石破氏は6日、記者団に「財源が明らかではなく、財政を毀損する。懸念を払拭できない」と語りました。小林鷹之政調会長は、4人の退席について「非常に遺憾だ」と述べています。

採決の場で何が起きたのか、退席が採決にどう扱われるのかは、採決前の退席と党議拘束の関係の記事で整理しています。この記事は、そのあとの党の処分の仕組みに絞ります。

報道で確認できるのは、ここまでです。党紀委員会が開かれたことや、処分の名前が決まったことは、私が確認した範囲では報じられていません。

説明を求めることと、処分することは別の手続き

規律規約の第14条には、党紀委員会または幹事長は、党員の行為が党紀違反に当たるおそれがあると認めるときは、説明を求め、または注意を促すことができると書かれています。処分を決める前に、事実を確かめるための手続きです。今回の文書がこの条文に基づくものかどうかは、報道には書かれていないため、確認できていません。ただ、「説明を求める」ことと「処分を決める」ことが条文の上で別になっている点は、ニュースを読むうえで知っておくと役に立ちます。

自民党の処分は8段階|軽い順に並べる

自民党の処分8段階を定める規約のように、条文が並ぶ法律文書に木製の印鑑が置かれた写真
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規約が定める8つの処分

自民党規律規約の第9条第2項は、党紀委員会が行う処分の種類を8つ並べています。条文の並びは軽いものから重いものへの順です。nippon.comも、最も軽いのが党則の遵守の勧告、最も重いのが除名と説明しています。

重さ 処分 幹事長が出せるか
軽い 党則の遵守の勧告 出せる
↓ 戒告 出せる
↓ 党の役職停止 出せる
↓ 国会及び政府の役職の辞任勧告 出せる
↓ 選挙における非公認 党紀委員会のみ
↓ 党員資格の停止 党紀委員会のみ
↓ 離党の勧告 党紀委員会のみ
重い 除名 党紀委員会のみ
※自由民主党規律規約 第9条第2項・第3項(党則・規律規約PDF)をもとに作成

幹事長が出せる処分は、軽い4つだけ

表の「戒告」は党の規約にある処分で、公務員の懲戒処分の戒告とは別の制度です。第9条第3項は、幹事長が行う処分を、遵守の勧告・戒告・党の役職停止・国会及び政府の役職の辞任勧告の4つとしています。非公認から上の4つは、党紀委員会が決めます。党則第92条第3項によると、幹事長が処分できるのは、党所属の国会議員が「党の規律をみだす行為」または「党議にそむく行為」をしたと認めた場合です。

党紀委員会は3分の2以上で決める

党紀委員会が処分を決めるときは、委員の3分の2以上が出席し、出席者の3分の2以上の賛成が要ります(規律規約第2条第3項)。通常の議事は過半数です。重い処分ほど、決め方も厳しく定められています。

ニュースで議員の処分名を見たとき、処分の段階の違いまで意識して読んでいますか?

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離党勧告と除名はどこが違うのか

離党勧告は「届けを出すかどうか」を本人に迫る処分

離党勧告は、離党するよう勧める処分です。党が一方的に党籍を消すのではなく、本人が離党届を出すかどうかを選ぶ形になります。2024年4月の裏金問題では、党紀委員会が世耕弘成氏と塩谷立氏の2人に離党勧告を出しました。野村総合研究所の木内登英氏のコラムによると、世耕氏は受け入れて離党届を出し、塩谷氏は強く反発しました。

従わなければ、除名になると報じられている

同じコラムは、離党勧告を受けた議員が、通達から10日以内に再審査を申し立てず、離党届も出さなかった場合には除名されると書いています。データ・マックスも、離党勧告は8段階の2番目に重く、従わなければ除名になると伝えています。つまり除名は、離党勧告に従わなかった場合の次の段階にもなります。ただし、この「従わなければ除名」という流れは、私が確認した範囲では報道の説明で、規律規約の条文そのものには書かれていませんでした。

10日間は処分の効力が生じない

規約第15条は、再審査の請求を、処分の通達の日から10日以内と定めています。第16条は、この10日の期間内、または再審査の決定が出るまでの間、処分は効力を生じないとしています。不服がある人は、総裁に理由を書いて再審査を請求でき、総務会が相当の理由があると認めると、党紀委員会が再審査をします(第2条第4項・第5項)。処分を決める前には、本人から請求があれば、弁明の機会を与えなければならないとも書かれています(第2条第6項)。

党員資格停止と役職停止は、期間で重さが変わる

3か月以上2年以下の期間を決める

党の役職停止と党員資格の停止は、3か月以上2年以下の期間を定めて行います(規律規約第12条)。2024年の裏金問題では、下村博文氏と西村康稔氏が党員資格停止1年、高木毅氏が6か月でした。nippon.comによると、党員資格停止では、党大会などの会合に一定期間参加できないといった制限がかかります。

執行猶予が付くこともある

役職停止・党員資格停止・除名には、情状によって6か月以上3年以下の期間、執行を猶予できる決まりがあります(第13条第1項)。除名にまで執行猶予が付けられる点は、私は条文を読むまで知りませんでした。ただし、汚職や選挙違反などで起訴されたときの党員資格停止(第10条第1項)と、禁錮以上の有罪判決が確定したときの除名(第11条)は、猶予の対象から外れています。

非公認は選挙の公認を出さない処分

選挙における非公認は、処分の期間中の選挙で、党公認の候補者として立候補できなくなる処分です。nippon.comによると、党の支援も受けられません。木内氏のコラムは、離党勧告を受けた議員が無所属で衆院選に出る場合、比例代表との重複立候補ができず、小選挙区で勝たなければならなくなると説明しています。

過去の処分で、どの段階がどれくらい使われたか

2005年・2021年・2024年の例

nippon.comは、過去の例を3つ挙げています。2005年に小泉純一郎首相(当時)が進めた郵政民営化法案への造反では、衆参両院で60人規模の処分が出ました。衆議院では綿貫民輔氏と亀井静香氏らが除名、平沼赳夫氏らが離党勧告でした。2021年には、緊急事態宣言中に東京・銀座のクラブを訪れた松本純氏ら3人の衆議院議員が離党勧告を受け、離党しています。

2024年の39人の内訳

2024年4月4日、党紀委員会は裏金問題に関係した39人の処分を決めました。nippon.comの一覧から、段階ごとの人数を数えると次のようになります。

処分 人数 主な対象
離党勧告 2人 塩谷立氏、世耕弘成氏
党員資格停止 3人 下村博文氏・西村康稔氏(1年)、高木毅氏(6か月)
党の役職停止 17人 1年が9人、6か月が8人
戒告 17人 不記載が500万円以上1000万円未満の議員など
※nippon.com「自民党の処分は8段階」(2024年4月2日公開)と野村総合研究所のコラムをもとに作成

2+3+17+17=39人です。離党勧告は39人のうち2人で、2÷39≒5.1%にあたります。戒告は17÷39≒43.6%でした。39人のうち、離党勧告以上の重い処分を受けた人は、約20人に1人という計算になります。

最も重い除名は、この39人の中には1人もいませんでした。重い処分ほど数が少ないことは、数字から読み取れます。

党の除名と、議院の除名は別の制度

議院が議決で行う除名と党の除名の違いを考える、白い台に置かれた木製の木槌と台座の写真
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憲法58条が定めているのは、議院による除名

「除名」という言葉は、国会にも出てきます。憲法第58条第2項は、各議院が院内の秩序をみだした議員を懲罰できるとしたうえで、議員を除名するには出席議員の3分の2以上の多数による議決が必要だと定めています。これは衆議院・参議院という議院が行うもので、政党の処分とは別の制度です。

党の処分は憲法に条文がない

自民党の離党勧告や除名は、党の規約に基づく党内の処分です。私が読んだ憲法の条文には、政党の処分についての規定はありませんでした。「除名」という同じ言葉でも、決める主体が政党なのか議院なのかで、意味も手続きも違います。ニュースで除名が出たときは、まず誰が決める除名なのかを確かめると混乱しません。

今回の退席が処分になるかを考えるときの注意点

党議にそむく行為とは何を指すか

規律規約第9条第1項は、処分の対象になる行為を3つに分けています。党の規律をみだす行為、党員たる品位をけがす行為、党議にそむく行為です。党議にそむく行為は、党大会・両院議員総会・総務会・衆議院議員総会・参議院議員総会の決定にそむく行為と書かれています。

今回の消費税減税関連法案が、これらの会議でどう決められていたのかは、私が確認した報道では分かりませんでした。退席が党議にそむく行為に当たるかどうかは、党が判断することで、この記事では当たる・当たらないを断定しません。

処分があるとは限らない

説明要求のあとに何が起きるかは、報道からは分かりません。党紀委員会が開かれるのか、幹事長が軽い処分を出すのか、何も起きないのかは、2026年11月8日時点で報じられていません。9日の回答期限のあとに出る続報で確認してください。

過去の例が今回に当てはまるとは限らない

今回の法案が国会に出されるまでの流れは、閣議決定から法案成立までの流れで扱っています。2024年の処分は、政治資金収支報告書に記載しなかった金額が基準になりました。今回は法案の採決前に退席したという行為で、事情が違います。重さの目安にはなっても、同じ段階になると読むのは正確ではありません。

処分のニュースを読むときの判断のしかた

処分名から、何が起きるかを確かめる

処分の名前が出たら、次の表で、その処分で何が起きるのかを確認できます。

ニュースの言葉 規約でわかること
説明を求めた 処分ではない。規約第14条で説明を求め、注意を促すことができる
戒告・役職停止 幹事長も出せる。役職停止は3か月以上2年以下
党員資格停止 党紀委員会が決める。3か月以上2年以下で、党の会合などに参加できない
離党勧告 離党届を出すかどうかを本人に迫る。再審査の請求は通達から10日以内
除名 最も重い。禁錮以上の有罪判決が確定したときは必ず行う(第11条)
※自由民主党規律規約をもとに作成。数字は2026年11月時点

誰が決めた処分かを確かめる

幹事長が出せるのは軽い4つだけで、離党勧告や除名は党紀委員会が決めます。「執行部が処分」と見出しに出ていても、決めたのが幹事長なのか党紀委員会なのかで、どの段階の話なのかが絞れます。

よくある誤解

離党勧告と除名は同じ意味ですか

同じではありません。離党勧告は離党を勧める処分で、本人が離党届を出せば離党になります。除名は党が決める最も重い処分です。報道によると、離党勧告に従わなければ除名になります。

説明を求められたら、処分が決まったということですか

決まっていません。規律規約第14条は、党紀違反のおそれがあるときに説明を求めることができると定めていて、処分とは別の手続きです。

党から除名されると、国会議員でなくなりますか

党の除名は党内の処分で、議員の身分を直接失わせる規定は、私が読んだ憲法の条文にはありませんでした。憲法第58条第2項にある除名は、議院が出席議員の3分の2以上の多数で議決するもので、別の制度です。

まとめ:離党勧告と除名の違いと、今回の説明要求の見方

自民党の処分は、遵守の勧告から除名まで8段階あります。離党勧告は7番目で、離党届を出すかどうかを本人に迫る処分です。除名は8番目で、報道では離党勧告に従わなかった場合の次の段階にもなると説明されています。再審査の請求は通達から10日以内で、その間は処分の効力が生じません。

石破氏ら4人への説明要求は、規約にある「説明を求める」手続きに近いもので、処分ではありません。処分があるのか、あるならどの段階なのかは、9日の回答期限のあとの報道で確かめるしかありません。ニュースで処分名が出たときは、誰が決めたのか、その処分でどんな制限がかかるのかを、この記事の表で確認してください。

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📚 参考文献・出典

この記事について 本記事は、政党の党員処分の仕組みを紹介する読み物で、特定の議員や政党への評価、法律上の助言をするものではありません。規約の条文や報道の内容は2026年11月時点のものです。最新の情報は、自由民主党の公式資料や各報道で確認してください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。